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「レイ、リリアナ嬢。今日は来てくれてありがとう」
最初に声を掛けてきたのはサルジャ様だった。
金髪の長い髪を横で一括りにしており、色気がある。
「ああ。誕生日おめでとう。婚約者のリリアナだよ」
「サルジャ様。私からも誕生日おめでとうございます。リリアナ・ミクロスです。初めまして」
金の目が細められる。
品定めしている目ではなさそうで、楽しんでいるかのような...。
「二人ともありがとう。初めましてだが、レイからいつも話は聞いていた。想像より美しい令嬢だな」
「そうなのですね」
「サルジャ。余計なことは言わなくていい」
レイがどのような話をサルジャ様にしていたのか、気になる。
「もう少し話したいところだが、挨拶に回らなくてはならなくてな」
「それは良かった、行ってくるといい」
サルジャ様は手を振って私達の元を去って行った。
何というか、親しみやすい人だったな。
レイとサルジャ様は色々言い合えるくらい仲が良いこともわかった。
「サルジャは本当に口は軽い...」
「ふふっ、そうね。でも仲が良くて羨ましいわ」
「そうかな」
私達も挨拶に回ることにした。
さすが王家のパーティー、人数が桁違いね。
体力のない私は数人で既に疲れていた。
「リリアナ、テラスで休憩しようか」
そんな私を察してくれたのだろう。
レイが提案をしてくれたので、それに甘えることにした。
「風に当たると気持ちいいわ」
テラスには私とレイしかいなかった。
「飲み物を取ってくるわ」
「じゃあ、僕も」
「大丈夫。すぐ戻るわ。それにパーティーにはあの二人がいなかったし」
レイは心配そうにしていたが、こんな大勢の前で何かできるとは思えない。
とはいえ、心配はあまりかけたくないから、すぐ戻ろうと飲み物を手に持った瞬間、何かにぶつかる。
「申し訳ありませんっ。よろめいてしまって...。ああっ、リリアナ様のドレスが」
見るとドレスに赤いワインが付いていた。
「いいのよ。気にしないで」
「そういう訳にはっ。休憩室で今すぐ汚れを落としましょう!」
「本当に大丈夫なのだけれど」
「お願いです!私の為だと思って...」
大袈裟すぎる、とは思いつつ、そこまで言われては断れない。
既に注目を集めているし。
「わかった。すぐ終わらせてくれると助かるわ」
レイが待っているんだもの。
私はワインを零した名も知らぬ令嬢の後を付いていった。