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勇者でしたが終活します。ー終活勇者のセカンドライフー  作者: 柚鼓ユズ


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40話 最終局面、突入

「その声……カーミ……なのか?」


 先程までのカーミの姿はどちらかといえば人間に近く、背格好も自分たちとさほど変わらなかった。


 だが、今の目の前にいるカーミの風貌は完全に魔族そのものであった。しかも、かなり禍々しい姿で。


「……あぁ。確かに私だ。見ての通り、だいぶ見た目が変わってしまったがな。まだ完全に馴染んだとはいえないが、じきに落ち着くだろう」


 カーミのあまりの変貌ぶりに皆が無言でいると、再びカーミが口を開く。


「まさか、いくら相手が勇者とはいえこの能力を使う事になるとはな。だが、お前を確実に葬るにはこの方法しかないと感じた。光栄に思うがいい」


 カーミのその言葉で一つの正解に辿り着き、カーミに問いかける。


「そうか。それもお前の……『祝福』(ギフト)か」


 自分の言葉にカーミが頷く。


「あぁ。『強制融合』……これが私の最後の奥の手だ。己の体内に生物を取り込んで能力を増幅する事が出来る。生きていれば人間であろうと魔族だろうとな」


 カーミの言葉にはっとする。この鉱山の中には今、自分たち以外に人間はいない。……つまり。


「察しが良いな。そうだ。この奥にいた魔族の中で、トーサと女王以外の魔族を無理矢理私の中に取り込んだのさ」


 カーミの言葉に思わず絶句する。つまり、己の部下を己の意思に関わらず吸収したという事だ。


「今お前たちが仕留めた連中は取り込む価値もない下っ端だよ。……その分、ある程度の強さや抵抗する者ばかりで多少手間がかかった上、多少の副作用もあったがな」


 どんなに畏怖や忠義心があろうと、自分のために命を捨てて糧となれと言われてはいそうですか、などと言う人間はそうそういない。自我の強い魔族であれば尚更だ。かなり強引にカーミがその手段に及んだであろう事は想像に難くない。


「……その結果がその体って事か。確かに見た目はとんでもない事になったみたいだな」


 そう自分が言うと、カーミが口を歪めて笑う。風貌は変わり果てたものの、顔部分には先程までのカーミの雰囲気が残っている。


「中には強さだけでなく、強固な自我を持った者もいたからな。それを無理矢理取り込んだ代償だ。だが、その価値はあった。今の私ならお前たちに勝てる。私は女王を……そして女王の子を何としても守らなければならぬのだ」


 そう言ってカーミがこちらに殺気を放つ。先程までとは比べ物にならない殺気に思わず背筋がぞくりとする。今のカーミは間違いなく魔王軍の側近クラスの実力と思って良いだろう。


(……まずいな。予想外の強さだ。さっきまでのカーミならスルトが加入した今ならまず問題なく倒せただろう。だが今は事情が違う。いきなり仕掛ける前に、まずは様子を見るか)


 鍵を握るのはやはりスルトの不可視の一撃になると判断し、まずは自分が動こうと思った矢先、カーミが口を開く。


「どうした?来ないのならこちらから仕掛けさせて貰うぞ」


 言うと同時にカーミがこちらに襲いかかってきた。


(……早いっ!それに一撃が……重いっ!)


 咄嗟に剣を強く握っていなければ剣を弾き飛ばされていただろう。わずかに手に残る痺れを堪え反撃を試みる。


「くっ……!」


『螺旋』と『伸縮』を組み合わせ巧みにこちらの攻撃を回避するカーミ。己の能力を理解し使いこなす相手がここまで厄介だという事を改めて痛感する。


(……単純な強さだけなら確かに魔王軍幹部にはまだ及ばないが、戦略や仕掛け方に関してはそれ級に匹敵するな。もう少し必死に鍛錬をしておくべきだったぜ)


 幸いだったのはカーミが魔族の中では比較的正攻法の戦いで挑んでくる側だった事だ。現状でも既に無数のかすり傷を負っているが、もし体に毒を仕込めるタイプの魔族であったらこの時点で既に詰んでいただろう。


「アイルっ!」


 オルリアとフウカが自分の助太刀に入ろうとするが、トーサがそれを食い止める。


「……おっと。お前らの相手はこの俺だ。カーミがあいつを仕留めるまでは邪魔はさせんぞ」


 トーサがそう言って全身を硬質化させる。その強度は先程までとは違い『貫通強化』を発動させたフウカの一撃でもダメージをまともに与えられていないようだ。


「くっ……硬い!先程までとは違う!これがこいつの真の本気だというのか!」


「噛ませ犬じゃないのね!……この一撃!魔剣じゃなきゃとっくに剣が折れるか刃こぼれしてるわよ!」


 トーサに仕掛けながらも二人が口々に叫ぶ。トーサがそれに答えるかのように口を開く。


「お前たち人間は、守るための者なら実力以上の力を発揮するのだろう?我々もそうだということだ。もっとも、それを教えられたのはお前たちにだがな」


 そう言って二人に攻撃を仕掛けようとするトーサ。だが、その攻撃を放つより先にスルトの剣が硬質化している体を僅かではあるが貫いた。


「なっ……!」


 剣がそれ以上己の体を貫くのを防ぐべく、大きく後ろにトーサが飛び退く。深追いする事なくスルトが冷静に剣を構えながら口を開く。


「……随分と雄弁な魔族だな。まさか魔王を倒した後にこんな相手と対峙する事になるとは思わなかったぞ」


 そう言って再びスルトがトーサに向かって攻撃を仕掛けた。


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