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21話 アイル一同、魔族討伐に参加する

「あんたらかい?酒場の旦那からの紹介っていうのは。話は聞いてるよ。詳しい事は今から説明するからこっちに来てくれるか」


 あれから食事を終えてすぐ、酒場の主人に仲介してもらい魔族の群れの対策本部へと案内された。部屋に着くなり男が口を開く。


「さて、先にまず一番気になると思う報酬について話させてもらおうか。結論から言うと悪いが出来高払いに加えて完全事後払いになる。……というのも、最初の頃は前金を払って魔族の討伐を依頼していたんだが、肝心の魔族を相手に逃げ出したり前金だけ受け取って姿をくらます奴らがあまりに多くてな。やむなくこういう形を取らせて貰っている訳だ。お前さん達もそれが不満ならここで帰ってくれて構わない」


 こちらを確かめるような感じで男が言う。すかさず男に返答する。


「あぁ、もちろんそれで構わないよ。あんたらだって街の一大事に無駄銭を払うのは厳しいと思うからな」


 こちらの言葉に予想と違う反応だったのか、少し間を置いてから男が続ける。


「……そうかい。なら安心して話を続けられるな。魔族の撃退や討伐についてはある程度申告制ではあるが、最前線にも俺たちのグループがいるからきちんと成果を上げた者に対してはそちらからも報告されるから、仕留め損になる事だけはないという事は伝えておくよ」


 自分たちを流れの冒険者と思っているであろう男が言う。今はそう思われていた方が自分たちには都合が良いと思い、会話の続きを促す。


「了解だ。こちらは全く構わない。それで、肝心の魔族の群れっていうのはどんな奴らなんだ?それを今のうちに聞いておきたい」


 街の連中はさておき、多少は腕に覚えのある連中がいながら未だ解決していないというなら何か特殊な魔族がいると思い男に尋ねる。


「あぁ、それも伝えておかなきゃいけねぇよな。連中の強さはまちまちでな。それこそ俺たちで何とかなる程度の奴もいればそうでない奴もいる。……ただ、一体だけ厄介な奴がいるのさ」


 一旦そこで言葉を切り、男が続ける。


「……向こうの親玉だが、剣というか物理を通さないんだよ。何らかの耐性があるんだろうな。こっちの攻撃を全く受け付けねぇんだよ。幸い、奴は基本的に鉱山前の奥に引っ込んでいるから被害は少ないんだがな。ただ、そいつを仕留めない限りこの騒ぎは終わらないのさ」


 男がそう言ったところでため息を吐く。そのタイミングで男に問いかける。


「なるほどな。……一つ聞くが、街の者や雇った連中に魔法の使い手はいないのかい?物理が通らないなら魔法が効きそうだと思うんだが」


 そう男に尋ねると、苦虫を噛み潰したような表情で男が答える。


「残念ながらいねぇな。中には多少使える奴もいるかもしれないが、少なくとも親玉の根城にまで辿り着ける腕前ってなると……な。結果、街に近付く魔族を追い払うのが精一杯っていうのが現状さ」


 なるほど。魔法を使える者がいないためこの状況に陥っているという訳か。そう思っていると男が自分に尋ねてきた。


「参考までに聞いておきたいんだが、そんな事を聞くって事はあんたたちは魔法が使えるのか?」


 男の質問に自分が答える。


「あぁ。こっちの二人は使えないが、俺はそれなりに使えるつもりだよ」


 そう自分が答えると、男が幾分ほっとした表情になって言う。


「そうかい。それは助かるよ。魔法が本当にあいつらに通用するかはさておき、今は藁にでもすがりたいところだからな。……それじゃあ、あんたらは街へ近付く魔族の撃退じゃなくて鉱山を根城にする親玉の撃退に向かって貰って構わないか?当然、そうなれば一番危険な役割になるんだが……」


 そう尋ねてくる男に頷く。フウカもオルリアも口を開いて言う。


「無論だ。根源を絶たねばいつまで経っても街に平和は訪れない。聞いた通り物理が完全に無効化されるなら私の攻撃は届かないかもしれないが、アイルがそいつに専念出来るように周りの露払いくらいは出来るだろう」


「同感。魔族って割と群れるタイプが多いから親玉を叩けば一気に崩れると思うわ。聞いた感じだとそいつが群れを統率しているみたいだから、無駄に膠着状態を続けるよりそっちの方が早いわね」


 口々にそう話す二人を見て期待半分、不安半分といった感じで男が口を開く。


「……あんたら、随分頼もしい事を言ってくれるな。だが、あんたらがそうしてくれるなら助かるよ。街への被害は最近加わった新入り剣士のお陰でほぼ完全に食い止められているからな」


 男の言葉が気になり、男に尋ねる。


「へぇ。その新入りっていうのはかなり優秀なのかい?」


 自分の問いに男が顎に手を当てながら答える。


「おう。顔を布で隠して会話も最低限しか交わさない奴で最初は皆不審に思っていたんだが、いざ戦場に立ってみればこいつが相当な使い手でな。街に入り込もうとしていた魔族をあっという間に切り伏せた上に、負傷した連中の手当てや避難もこなしてくれたのさ。そいつのお陰で街への被害をほとんど回避出来ているって訳さ」


 男がそこまで話したところでオルリアが男に尋ねる。


「ふうん。口先だけじゃなく実際に強いって訳ね。そいつが親玉を仕留めれば解決したんじゃない?」


 オルリアの言葉に男が言葉を返す。


「あぁ。俺たちも期待を込めてそいつに言ったんだよ。実際、腕利きといわれる面子を集めて鉱山前の根城に向かって貰った。だが、負傷した連中をどうにか全員無事に抱えて戻ってきたそいつが言ったんだ。『奴は俺だけでは倒せない。俺と同等かそれ以上の手合いが必要だ』ってな。それで、ひとまず街への被害を食い止める役目を任せているって訳さ。今も鉱山付近や街の周辺を見て回って貰っているよ。あんたらがそいつのお眼鏡にかなうなら最高なんだがな」


 そう話す男の話を聞き、その剣士に興味が湧く。ここまでの聞く限り、かなりの使い手のようだ。


「そうかい。そいつは是非後で会ってみたいな。とにかく、そういう事なら俺たちはまず支度を済ませ次第鉱山に向かう事にするよ」


 そう男に告げ、鉱山までの道のりや周辺の状況を聞き、準備を済ませて鉱山へ向かう事にした。


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