終わり~To the ending~
「オデット!」
キルとの昼食を終え、せっかくだからとそのまま中庭を散歩していると、シリルの声が聞こえる。
振り返ると、黄金のサラサラの髪を揺らし、シリルがこちらへと駆けてきた。
白シャツにサファイアブルーの上衣とズボン、ライトブルーのタイに、ブルーのストライプのベストと、とても爽やかな装いをしている。
「シリル! 会議は?」
「昼食をとりながら、終えた。十五時まで時間があるから、そこで座って話そう」
中庭は東屋の他に藤棚もあった。その下にはなんと二人乗りの白いブランコベンチがある。プチポワンの可愛らしいクッションも置かれ、そこはなんだかメルヘンな空間だ。
そこにシリルと並んで座ると……。
「どうした、オデット? 顔が赤いぞ……?」
「いや、その……」
「なんだ、自分に言えないことか?」
そう言って天色の瞳を私に向けるシリルは……。
その黄金の髪も相まって、童話に出てくる王子様みたいだ。
しかも今、大変メルヘンな空間にいる。
なんだか自分もお姫様になった気分であると、恥ずかしくなりながらも打ち明けると……。
「オデットは元々王女だったから、お姫様だろう。自分が王子様ではなくて申し訳ないが」
「! それは例え話だ。素敵な騎士と姫君のロマンスも、童話では定番だ」
「なるほど。ではこんな感じか」
そう言うと、シリルは自身がまとうマントをふわりと揺らす。その上で白いブランコベンチに座る私の前に、片膝をついて跪く。さらに実に秀麗な上目遣いで、私を見上げた。
そして優しく私の手を取り、全力の眩しい程の笑顔を向けたのだ。
ブランコベンチに背もたれがあったことを、主に感謝する。これがなければ私はひっくり返り、転がっていただろう。このシリルの太陽のような笑顔にノックアウトされて。
「オデット姫君。あなたのことを心から愛しています。永遠の忠誠を、あなたに誓いましょう」
凛とした声でそう告げて、手の甲へキスなんてするから……。
そんな顔をしてはいかん……と思うが、完全に頬が弛緩してしまい、ニヤニヤが止められない。
「……なるほど。オデットは自分と同じでサバサバしているようだが、こういうのに弱いんだな」
「そんな、そんなことは……ある」
「認めたな。素直でよろしい」
スッと背筋を伸ばし立ち上がったシリルが、私の頭を優しく撫でる。そして再び私の隣に腰をおろし、コロン原生林、裏門エリアの調査が終わったと教えてくれた。その結果、ヴィレンドレーとその周辺に、魔族の姿は皆無であること。さらに王都への帰還などについて、一通り話を聞かせてくれた。
その話がひと段落したタイミングで、私は過去の記憶を取り戻したことを話したのだ。
つまり、十五歳のシリルと出会っていたことを思い出したと。
「そうか。あの日のことを……。自分はオデットのおかげで無事、森を出て、その後……あれは本当に驚いた。強力な魔力を持ち、とんでもない魔術を使えると言っていたが、その通りだと思った。森が消えたからな。自分が戻ると、騎士団のみんなも騒然としていた。とんでもない魔力を持つ魔族がそこにいると分かり、一時撤退も決まったぐらいだ」
そこでシリルが私を抱き寄せる。
「あの時のオデットはとても凛々しく、ハンサムだった。自分はまだ騎士になり立てのひよっこだ。テキパキと考え、実行にできるオデットには、一目惚れだった。オデットは自身の身分を明かさなかったが、どう見ても高位貴族、王族であろうと分かったからな。必ず見つけ出し、想いを伝えようと決心した」
「男達は皆、人形のように可愛らしい令嬢を、好むのではないのか?」
「そういう令嬢を好む男性は、多いだろうな。だが自分は違う。オデットのような芯があり、行動力のある女性がいい」
そこでふわっとシリルの唇が重なり、胸がキュンと高鳴る。
「でもそういう強さよりも、魔力が使えなくても、自分で何かできることはないか。気を配り、模索するオデットも素敵に感じた。……結局、自分はオデットにメロメロだから、どんな君でも好きだということだ」
顔が近い状態でそんな風に囁かれ、体が喜びで震えている。
「それに強い魔力は、悪い奴らに悪用されかねないと、キル殿から聞いている。オデットを危険な目に遭わせるわけにはいかない。ちゃんと……オデットの魔力が減るようにしないと」
すぐ耳の近くで、そんなことまで囁かれ、もう腰砕けになる。
私の魔力を減らすということはつまり……。
「王都に戻り、皆の前で盛大な結婚式を挙げてから……と思っていたが。悪者にオデットが狙われたら困る。今晩、早速……」
「シ、シリル!」
耳にかかるシリルの熱い吐息。
その上でいろいろと妄想をかきたてる言葉に、意識は吹き飛ぶ寸前だ。
乙女ゲームのラスボスの女魔王に転生し、まさかの宿敵である勇者に助けられた。ヒロインは別の攻略対象と無事、ゴールイン。生き残ってしまったラスボスの私は、このまま処刑でもされるかと思ったら……。
まさかの勇者からの溺愛が待っていたなんて!
前世では気弱な人間だった。でも女魔王に転生したことには意味がある! そう思った。
そこで前世の私の考え方、女魔王オデットの気質をうまく融合させたところ……。
シリルは凛とした女魔王としての私を好きになってくれた。
同時に。
気を配り、何かできないかと模索する、前世の私の気質も、気に入ってくれたのだ。
何よりも「どんな君でも好きだ」と言ってくれるシリルが、私も大好きだった。
「オデット」
私の名を呼んだシリルの胸に、頬を寄せる。
そんな私をシリルはふわりと包み込み、そしてギュッと抱きしめた――。
~ fin. ~
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