信じる
私が女魔族であるが、魔力があることを打ち明けると、シリルは知っていると言った。さらにかつて私に会った時、私自身がそう言ったと言うのだ。
「しかも自身の魔力は膨大であり、使える魔術もとんでもない強さだと言っていた。でもそれは秘密であり、バレると殺される……とも言っていたんだ。だから自分は誰にも言わず、ずっと心に秘めてきた」
そうだったのか……!
私は全然覚えていない。詳しく聞きたいところだが、今は時間がない。
「本来、女性の魔族に魔力はない。よって魔力を抑える魔法もかけられているこのチョーカーを、オデットにつけることを不思議に感じる者もいたが……これは君を守ることになる。だからつけたわけだが。今は外す必要があるのだろう?」
シリルは私が何を言おうとして、何をしようとしているのか、想像がついているんだ……!
「オデットをこの場に残すなんて。しかもきっとキルと二人なのだろう? 自分を転移させるため、レウェリンもここを離れるしかない。そうなるとキルしかいない。キルで守り切れるのか? 不安だ。だが自分が残っても……魔術も魔法も使えない自分は、足手まといになるだけ。だったら……」
そう言うとシリルが手を伸ばし、私の首に手を回す。
もう条件反射で胸がドクンと反応している。
このまま、キスをされるのかと、瞼を閉じかけたが……。
シリルの手はチョーカーに触れている。
「自分はオデットを信じる。君は自分に『必ず生きて戻るから、ここは私に任せて』そう、言うつもりなのだろう? 心配だ。不安だよ。だけどオデットのことを信頼しているから、これを外す」
ゆっくりとチョーカーが外され、私は息を呑む。
シリルは自分から私を信頼してくれると言った。
セイン以上に説得には時間がかかると思ったのに、そんなことはなかったのだ。
「オデット、絶対に。約束だ。この胸の中に戻ると」
「約束する、シリル。お前の胸の中はとても安らぐ。大好きな場所だ」
「オデット」
今度こそキスをされる!
喜びで胸が高鳴り、瞼を閉じた。
ふわっと唇が重なったと思ったが。すぐに唇が離れる。
「えっ」と思ったが――。
「シリル、オデット。これ以上は危険だ。私の魔術は防御専門ではないからな。そろそろ時間だ」
キルの声に我に返る。
つい気持ちが別の方に持っていかれそうになるが、今は黒のワームと黒のギガースを殲滅する必要があった。
「すまなかった。ではすぐに行動開始だ」
シリルのこの一言で、防御魔法が展開されているエリアの中心に集合する。
レウェリンが一時的に防御魔法を強化し、さらに目くらましとなるような強い閃光を、魔法で発生させた。
黒のワームと黒のギガースが私達から遠ざかる。
「今だ!」
キルが風の魔術で、周囲の毒を北の方角に強制的に流す。
セインが風の魔術で、移動を開始。
レウェリンが転移魔法のための魔法陣を出現させる。
「いきますぞ」とレウェリンがキルを見た。
シリルの天色の瞳が私をじっと見ている。
その唇が静かに動く。
「信じているよ、オデット」と。
レウェリンとシリルの姿が消え、防御魔法が消えた。
「ファイアートルネード(火炎竜巻)」
キルが炎と風の魔術を同時に行使し、こちらへ近づいて来た黒のワームと黒のギガースを風で切り裂きながら焼失させる。
「今だ、オデット!」というキルの叫びの直後に、私は炎の魔術を詠唱した。























































