責任
防御魔法がカバーするエリアの一番端までキルを連れて行き、尋ねた。
「私の魔力を解放し、炎の魔術を使うのはどうだ? この辺り一帯は、黒の火成岩が広がっているだけだ。私の魔術を解放しても、黒のギガースと黒のワームを殲滅して終わりだろう?」
「だがここにはシリル、セイン、レウェリン、私もいるだろう?」
「セインと叔父上は風の魔術でここから離脱できる。シリルはレウェリンの転移魔法で撤退可能だ」
するとキルはため息をつき、二つの反対意見を表明した。
「まずレウェリンの防御魔法は、転移と同時に消えるだろう。さすがに距離があり過ぎる。次にオデットの魔力を解放し、炎の魔術を使った時。それはおそらく暴走状態になる」
さらに暴走する理由として、こう説明する。
「過去に一度、オデットは魔術を使った。だがそれ以降、魔力を使っていないんだ。それこそオデット自身が、火山みたいなもの。魔力というマグマを、溜めるだけ溜め込んでいる。その魔力を使うとなると、大噴火だ。黒のギガースと黒のワームを殲滅した後、その暴走を止める者も必要になる」
レウェリンの防御魔法は、転移と同時に消える――。
それはレウェリンがこの場に残り、シリルだけ魔法で転移させることができないからだ。その理由は簡単。この荒地がヴィレンドレーから遠いから。ヴィレンドレーまで戻るには、魔法使いであるレウェリンと共に転移するのが必須。そうしないと転移の途中で、魔法が途切れてしまう。
つまり私が魔力を使う時、黒のワームの毒、黒のギガースに踏みつぶされる危険にさらされる。
さらに私はあまりにも魔力が溜め込み、暴走の危険性があった。それを止める存在が必要になるのだが……。セインかキルで止めることができるのだろうか?
そこでキルは、バッドニュースとして、こんなことも言い出す。
黒のワームの討伐作戦は、数が三十体だったから、できた話だという。今は数が増えすぎて、毒の噴射のタイミングもめちゃくちゃになっている。つまり当初予定していた作戦さえ、遂行できない状態だった。
「それにオデットがその魔力を解放し、魔術を使うため、ここに残ると言えば。分かっていると思うが、自身の正体を明かすことになるぞ。このチョーカーがある限り、バレずに済むのに」
「それは……」
既にキルはレウェリンにより、首のチョーカーを外されていた。この戦闘のため、キルが魔術を使う必要があったからだ。でも私の首には、まだレース製のチョーカーがある。これを大人しくつけていれば、魔力を持つことはバレないが……。
「私の正体がバレること、それは仕方ないと思う。それで皆を救えるなら、私の正体など取るに足らないはずだ。このまま手をこまねき、被害が拡大するより増しだと思う」
黒のワームの増殖速度を考えると、このままでは今日中に、ヴィレンドレーにまで到達するかもしれないと思えた。
ヴィレンドレーに沢山の人々がいる。その被害は甚大になるはずだ。
「本気でそう思っているのか? いくらシリルと婚姻関係を結んだとはいえ、魔力持ちの女魔族と分かれば、そんなことは関係なくなる。下手をすると無理矢理シリルと別れさせられる可能性もあるんだぞ」
「そうかもしれない。だが……私は冷静に考えると、責任を果たしていないと思う。今のこの事態を引き起こしたのはカイテリアだ。原因は魔族にある。最後の魔王の一族として、私が尻拭いするしかないだろう?」
これにはキルは黙り込むしかない。
しばらく私をジッと見たキルが「分かったよ」と肩をすくめる。
「可愛い姪っ子のために、一肌脱ぐしかないだろう。セインは風の魔術でここから離脱、シリルはレウェリンの転移魔法で撤退。そして私がオデットと共に残ろう」
「叔父上が残る!?」
「ああ。レウェリンの転移と同時に、防御魔法が消えるが、すぐにファイアートルネードを使う。さらに風の魔術で風をコントロールし、黒のワームの毒を寄せ付けないようにする。その間にオデットは炎の魔術を行使しろ。……魔術の使い方は分かっているんだろうな?」
使ったことはないが、使い方だけはしっかり覚えている。前世の自動車運転免許のペーパードライバーみたいな状態だ。
「おそらく閾値を超えた魔術の行使で、理性のリミッターが外れる。そこは私が必ず止めて見せるから。だから二人でここに残り、魔王の血筋の魔族として、責任を取ろうじゃないか」
そう言ったキルは、最後にこう付け加える。
「だが果たしてこの作戦を、セインとシリルが許してくれるか、だ」























































