↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのラスボスですが、勇者と結婚することになりました。  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/60

よもや姪っ子に

「だがあの状況で、侍女で押し通していたら……。シリル達に保護してもらうのは、無理だっただろう。無論、彼らは狼藉を働く兵士を止めていた。だが間に合わない可能性が大だと思った。その場合、どうなっていたか。魔力暴走を起こし、すべてが終わる。もしくはあの乱暴な兵士達の慰み者にされ、殺される。そのどちらかだったのでは?」


 キルの言葉にあの日見た光景を思い出し、先程以上にゾクリとして、同時に不快になっていた。

 魔王の娘、オデット王女という落としどころは、正解だったと言わざるを得ない。


「叔父上の判断は間違っていない。おかげで私は生きてここにいる」


「そうだ。それにあのシリルの嫁になれるんだ。良かったじゃないか」


 シリアスな雰囲気を払しょくするように、キルが明るく口にした一言に、私はハッとする。


 できれば女に聞きたいと思うが、その一方で、魔力のない女では答えられないのでは?という気持ちもあった。それにこうなった今、魔族の知り合いは少ない。さらには血縁関係につながる者は……このキルしかないのだ。


 ここは防音魔法もかけられている。プライバシーは守られるだろう。

 そこで、意を決して尋ねる。


「先程、叔父上は、『例えば人間と魔力を持つ女が交われば、魔力持ちの人間が生まれるか――そんな実験だってされかねない』と言っていた」


「ああ、そうだな。……不快にさせたと言うなら、謝罪しよう」


「その必要はない。……だがその……実際はどうなのだ? シリルと私は……政略結婚のようなもの。よってそういうことがあるかどうか、私には分からない。だが……」


 するとキルが「ぷっ」と吹き出して笑った。

 笑いながら「すまない、オデット」と言うのだから、文句も言いにくい。

 ひとしきり笑い、涙を指で拭うと、キルはこんなことを言う。


「よもや姪っ子に、こんな話をすることになるとは思わなかったが……でもまあ、仕方ない。魔族なら誰もが知るという情報でもないからな。ここは魔族の“性”についてのお勉強だ」


 そう言った瞬間。

 キルからは笑顔が消え、これまでにない真摯な表情に変わった。

 おかげで私の背筋も伸びることになる。


「魔族の始祖であるルーキフェルについて知っていることは?」


「ルーキフェルは元々、天にあり、善性の象徴の一角とされていた。だが地の世界に興味を持ち、天から落ち、魔王となった」


「正解。そしてそのルーキフェルの地における性別は?」


「男だ」


 これは私ではなくても、魔族であれば常識的に知っていることだ。

 なぜ今さらこんな話をと思うが、キルが至って真面目な顔のままなので、黙って付き合うことにした。


「男だけでは、繁殖できない。仕方なく、ルーキフェルは人間の女と交わった。するとルーキフェルとその人間の女ライラーの間に、双子が生まれた。男児には魔力があるが、女児に魔力はない。別の人間の女とも試すが、結果は同じ。他の種族ともルーキフェルは交わりを持ったが、どうしたって魔力は男にしか受け継がれない」


 魔族の女が魔力を持たないのは、そもそも始祖が男であり、そしてこの世界にまだその概念はないが、魔力の発現につながる遺伝子が、男のみにしか受け継がれないということのようだ。


 おそらく、他の種族でも同じだろう。


 ちなみにルーキフェルは、自身の子孫を残すため、沢山の人間の女と交わったが、それはどれも手続きを踏んだものではなかった。つまり、結婚の概念を知らなかったので、手当たり次第に、人妻でさえ手をだした。その結果が、長きに渡る人間と魔族の戦につながる。


 エルフ、ドワーフ、魔法使いが人間に味方したのは、同様の理由だ。つまりはルーキフェルの被害者が相応にいたのだ。ただ、人間と違い、彼らは精霊の力、屈強な力、魔法を使える。一筋縄でいかない。よってルーキフェルは人間の女にターゲットを定め、その生涯、手を出し続け、子孫繁栄に努めた――というわけだ。


「魔族の女に魔力はない。これが定説だった。だが奇跡が起きた」


 そう言ってキルがウィンクをする。

 どんな種族でもイチコロにするウィンクに思えた。


「なぜなんだろう? なぜ私が……」


 するとキルは「そんなことも分からないか」という顔をしている。

 私が首を傾げると、こんなことを話し出した。


「オデットの魂は一つであり、一つではないのだろう。つまり、君は特別なんだ」


 キルは魔族ではあるが、天にいる者たちとは違う。

 そんな魂のことまで見えるはずがない。

 でも分かるのだろうか。私が前世持ちであることを。


「ともかくオデットは特別だ。よって奇跡を起こしたわけだが……さっき話した通り、その力は諸刃の剣。これから平和な世の中になるのだから、正直、その力は不要だとは思わないか?」


「それは……」


 正直に言えば「分からない」だった。

 魔術の使い方は習っていた。だが、使ったことは一度もない。

 違うな。

 記憶を封じられているが、幼い頃に使ったことがある。

 だがその記憶がないので、使えることで自分が何をどう感じるか、分からなかった。

 ゲームの画面では、使われた魔術を眺めているだけなので、やはり実感はない。

 その一方で。

 その威力が凄まじいものであることは、ゲームのプレイ経験からも、キルの話からも、よく理解している。


 さらに私の魔力は、使いどころが難しいこともよく理解した。

 ゲームでは当たり前のように、決められた場面で使っていたが、ここは現実世界。

 切り札として私が動いていたら、敵陣のど真ん中、周囲は何十万もの人間・エルフ・魔法使い・ドワーフの軍がいる中で、発動させていたことだろう。そして……全滅だ。


 だが私は切り札として機能することなく、魔王討伐パーティーとも戦うことなく、勇者シリルに保護された。その上で魔力を封じられ、人間たちの国エルエニア王国へ連れてこられたのだ。そこで残された魔族の王族の一員として、断罪されるかと思いきや! これからの平和の象徴となり、かつ魔族の残党の大義名分にならないために、シリルと政略結婚することを求められた。


 今となってはこの魔力、不要のように思える。

 現状、魔力を封じ、私の位置を示すレースのチョーカーをつけられているのだ。しかもエルフの手によるレースは、破壊不可能。よって魔力はあるが、使えない。意味なしだ。


 その一方で、せっかく持っている魔力を失うことで、何が起きるのかも分からなかった。

 ゆえに、キルの質問には答えにくい。


「その表情から察するに、自分でも持て余しているわけだな。だが冷静に考えてみろ、オデット。またいくさをおっ始めるというのなら。この世界の種族を根こそぎ滅ぼす気持ちがあるなら。その力、必要であろう。その気持ちがあるのか?」


「それはない。もはや魔族と人間の戦は決している。無駄な争いは止めたい。私は平和に生きたいし、この世界に存在する魔族のみんなにも、生きて欲しいと思っている」


「ならいらんだろう、その魔力は。いつ暴走するかも分からん。例えばこの王都で暴走でもしてみろ。俺も含め、みんな死ぬぞ」


 今、王都には、シリル率いる魔王討伐メンバー、女騎士のレダ、エルフのミルトン、魔法使いのレウェリンがいた。私との再会を待つ侍女のシア、ペルもいる。キルも目の前にいた。それに部屋には子猫のレオンだっている。ヒロインのフィオナもいれば、悪役令嬢のヴィヴィアンヌもいるのだ。王族や重鎮、沢山の臣下と兵士と騎士。それに広場で見かけた王都の沢山の国民達も……。


 私が魔力を暴走させたら、みんなが死んでしまう。


「嫌だ。私は……この王都を滅ぼすつもりはない。知り合った人間を殺すつもりはない」


「ならばもう魔力はいらないな」


「そうだな」


 するとキルが歯を見せてニカッと笑う。

 なんだか子供みたいな表情を見せるキルを見て、私の頬も緩んでいた。


「安心しろ。その魔力はやがて消える。シリルの愛をたっぷり受ければな」


「はい……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。