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 青龍(せいりゅう)は、私のそんな疑問には全く答えずにゆっくりと地上に向かって降りていく。


「ちょっ、ちょっ、本当にどういうことよ?」


 ◇◇◇


 その国の都は、せわしなく馬車が行き交い、河岸には絶え間なく舟が着き、そして、新たな荷を積み込んで出て行く。


 その者たちはみな笑顔だ。馬車も人を押しのけてまで進もうとはしないし、馬車に手を振る子どもたちに御者も手を振り返している。双方とも笑顔だ。


 呆然としてその光景をながめる私。


 青龍(せいりゅう)はゆっくりと都の郊外に着陸するとまだその背の上にいた私に向かって一言。

「お疲れさん。俺たちの国の都に着いたぜ。龍子(りゅうこ)。降りて地面を踏みしめてみろや」


 何だかよく分からないままに青龍(せいりゅう)の背から降りる私。それを横目に青龍(せいりゅう)はにやにやしながら人間体に戻った。しかし、何としても問いたださねばなるまい。

青龍(せいりゅう)。これは一体どういうこと?」


 青龍(せいりゅう)はしれっとした顔のまま答えてくれる。

「どうしたもこうしたも、これが龍子(りゅうこ)が創り出した国じゃないか」


「いやっ、分かりませんっ! 私が創り出した国ってどういうこと? ここは青龍(せいりゅう)の国って話じゃないの?」


「俺の国っちゃあ俺の国だが、俺はこの空間を持っていただけだ。この国をこうしたのは龍子(りゅうこ)。おまえだぞ」


「いやっ、いやいやいや。意味分かりませんっ!」


「もう四神大戦(ししんたいせん)は始まっていると言ったろうが。そして、四神大戦(ししんたいせん)はそれぞれの神が選んだ(つがい)の想像力、創造力、表現力が国を創ることから始まるんだよ」


「へっ? 私の想像力、創造力、表現力がこの国を創ったって?」


「そうだ。そして、他の三人の(つがい)白幡虎威(しらはたとらい)朱野雀美(あけのすずみ)玄田武哉(げんだたけや)も同じように自らの持つ想像力、創造力、表現力を行使して、国を創っている」


「! 三人の先輩も国を創っている?」


「そうだ。そうやって創り出された四つの国は覇権を競う。そして、勝った国の主である神とその(つがい)四神大戦(ししんたいせん)の勝者となる」


「国同士で覇権を競う? それが四神大戦(ししんたいせん)?」

 私の心の奥底から何とも言えぬ感情がこみあげた。


「覇権を勝ち取るために、この国は他の三つの国と戦うの? 戦いになったら、この国の人たちは辛い目に遭うの? 死んじゃったりもするの? 今はみんなあんなに笑顔だっていうのに」


「まあ」

青龍(せいりゅう)は頭をかく。

「そういうこともあるかもしれんがな。あいつらは龍子(りゅうこ)の想像力、創造力、表現力が生み出したものだからな。言わば『架空』の存在だ。本来の『生命』を持っているわけじゃあない」


「それでもっ!」

 私は真っ直ぐに青龍(せいりゅう)の目を見据えて言う。

「それでも、私はあの人たちの笑顔がなくなるのは嫌だっ! ことに子どもたちの笑顔がなくなるのは嫌だっ!」


「そうか」

 青龍(せいりゅう)は淡々と言う。


龍子(りゅうこ)

 そして、青龍(せいりゅう)は私の目を真っ直ぐに見つめ返す。

龍子(りゅうこ)がそう願うのなら、龍子(りゅうこ)の力、想像力、創造力、表現力でこの国の民の笑顔を守ってみろ。他の三人の(つがい)が創った国からな」


「三人の先輩方から創った国から、この人たちの笑顔を守る?」

 私の背中に冷や汗が流れる。私にあの三人の先輩方に想像力、創造力、表現力で勝てるのだろうか?


 青龍(せいりゅう)は今度はにやりと笑って言ってくれる。

「俺は、自分の(つがい)である龍子(りゅうこ)の想像力、創造力、表現力が他の三人に負けるなんて思っていないぜ」


(全く……)。

 私は思う。

(なんでこういつもいつもこっちの考えていることが分かるんだ。おまけにそんな言われ方したらやらないわけにはいかないじゃないか)。


◇◇◇ 

  

「神様こんにちはー」

(つがい)様もこんにちはー」


「へ? ちょっと青龍(せいりゅう)。この子たちは一体?」


「一体も何も龍子(りゅうこ)が創り出した子どもたちだぞ」


えっ、えーと。すまん。相次ぐ衝撃的な現状に頭が追いつかん。

「あ、そうだ。この子たちに青龍(せいりゅう)と私は見えているってこと?」


 ここで青龍(せいりゅう)にわかにゲラゲラと笑い出し、ついには大爆笑。何なのよもう。

「あはははは。龍子(りゅうこ)の想像力の中で俺たちが神と崇められて神殿の奥から出てこない存在じゃなくて、民に親しまれる存在になったんだろうよ。青龍()は嫌いじゃないぜ。こういうの」


ふうっ。

 私は溜息を一つ吐いた。

 まあ、私も肩肘張るのは苦手だし、こういうのは嫌いじゃない。


「神様、(つがい)様-」


「おう、何だー?」

 子どもたちの呼びかけに鷹揚に答える青龍(せいりゅう)


「神殿に参拝したいのです。どこにあるのですか?」


「だってよ。龍子(りゅうこ)


「え? 神殿って何?」


「俺と龍子(りゅうこ)の住む家だよ」


「! この子たちが私のことを(つがい)様と呼ぶのはまあ許そう。しかしっ! 私はまだ青龍(せいりゅう)(つがい)になると認めた訳ではないぞ」


「だーかーら、俺は紳士だと言っているだろうが。龍子(りゅうこ)がその気になるまで手は出さねえ。それは保証する。だが、神殿作らないとこの子どもたちは参拝出来ねえぞ。それは可哀想じゃないのか?」


 ぐっ、何だか外堀を埋めにかかられているような気がするが、この笑顔の子どもたちを引き合いに出されると弱い。

「くそっ、神殿ってどうやって作ればいいの?」


「神殿てえのは神とその(つがい)が住むところでもあり、民が祈りを捧げるところでもある。それを踏まえて想像力、創造力、表現力を働かせてみろ」


 私の……私の住むところ?


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― 新着の感想 ―
[一言] これは面白い設定ですね! 今後が楽しみです( ˘ω˘ )
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