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「残念だけど今回は痛み分けね。さすがは龍子(りゅうこ)ちゃん。武哉先輩()が見込んだだけのことはあります。でもまだ四神大戦(ししんたいせん)は終わっていない。玄武(げんぶ)の国が攻め込まれたわけじゃないからね。勝負はこれからだよ」


 また、今回も可愛らしい声で言ってくれますねえ。さて、私の一つ目の賭け「残務処理」は、はまったが二つ目の賭けがどうなるか。


 ともかくこのままではこちらの銃の標的になるだけなので、武哉(たけや)先輩も玄武(げんぶ)の国の兵を引き上げさせた。


 こっちが助けてくれるだろうと踏んでか、負傷者はみんな置いていった。ええ、助けますとも。消化が良く滋養のある粥を食べさせて、負傷の治療もしますとも。


 ◇◇◇


 玄武(げんぶ)の国との間は自然に休戦になった。だけど、武哉(たけや)先輩のことだ。いつ攻め込んでくるか分かったもんじゃないので、大急ぎで対策を立てる。


 前回はの気球を使っての奇襲にあわやということまで追い詰められたので、それへの対策は万全に。ドワーフの鍛治師のみなさんに無理を言ってお願いして作ってもらい、国中に大砲を配置。更に小さな小さな龍さんたちを満遍なく放って、あやしい気配にはすぐ対応。


 荒れ地になった国境線沿いも突貫工事で修復した。壊れた塹壕を直し、大砲を設置し直した。


 そして、最後のピース。私の二つ目の賭け。これもこちら内部では成果が十分出てきた。もちろん武哉(たけや)先輩という相手がいることだから、うまくいくは分からない。だけど……


「ねえ青龍(せいりゅう)

 私は珍しく自分から青龍(せいりゅう)に声をかけた。


「ん? 何だ?」

 青龍(せいりゅう)はいつも通り冷静だ。


「私はこの青龍(せいりゅう)の国は玄武(げんぶ)の国よりどの面を見てもかなり豊かだと思うけど、青龍(せいりゅう)はどう思う?」


「どう思うって、青龍()の国は四人の(つがい)の中で一番優秀で魅力的な龍子(りゅうこ)の創り上げた国だからな。そりゃあ初めから豊かだろう」


「そういうお世辞はいいからっ!」

 今回は私も一段と真剣なのだ。

「本音で言ってっ! 実際のところどう思っているのっ? 私もそうじゃないかと思っているんだけど、何しろ武哉(たけや)先輩が創り上げた国のことが殆ど分からないから不安なのっ!」


「だから本音で言っているって」

 青龍(せいりゅう)は二階の窓に近づくと言う。

(ここ)から外を見てみろや」


「!」


青龍()の国は三回侵攻を受けて、うち二回は王都を包囲されるところまでいった。だけど、見てみろ。王都の民はそんなことがあったのかと言わんばかりに明るく笑って元気で過ごしてやがる。人間もエルフもドワーフも。それどころか元は朱雀(すざく)の国や白虎(びゃっこ)の国の民だったって奴も当たり前のように溶け込んでいる」


「……」


「そんだけ侵攻受けても毎回毎回あっという間に立ち直って、飢えたり夜寝る家がなくなったなんて奴は一人もいねえ。これは豊かさの底力が違うんだよ」


「……」


青龍()はそういう国を創れる奴だと判断して、龍子(りゅうこ)(つがい)に選んだんだぜ。ちったあ青龍()を信じろ」


「……うん、分かった」

 私は笑顔で頷いた。

「その青龍(せいりゅう)の眼力を見込んで、これから言うことを聞いてもらえるかな?」


「おうっ、何でも言ってみろや」


 全てを聞き終えた青龍(せいりゅう)は腕組みをしたまま目を閉じ、大きく頷いてから口を開いた。

「物事に100%はないし、玄田武哉(げんだたけや)が何を考えているかも分からない。しかしそれでも青龍()は十分行けると思う。四神大戦(ししんたいせん)も最終盤だ。思い切ってやってみな」


 私は自然に笑顔になった。そして、頷いた。

「うん」


 ◇◇◇


 ドドドドドーン


 旧朱雀(すざく)の国と旧白虎(びゃっこ)の国の国境線の大河、その周辺に配置された大砲が次々火を噴いた。対岸の敵陣営からも反撃の砲撃がなされる。青龍(せいりゅう)の国と玄武(げんぶ)の国は開戦した。


 但し、青龍(せいりゅう)の国にとって今までやっていなかったことを初めてやった。こちらの方から先に砲撃したのだ。


 しばらくの間、撃ち合いが続く。玄武(げんぶ)の国も技術開発には力を入れてきたようだ。撃てば、撃ち返してくる。


 そして、無理はさせない。戦闘員でも大砲でもダメージを受ければ、すぐ後方に下げ、交替の戦闘員と大砲を出す。後方に下げた戦闘員と大砲も治療や修理で、また前に出せるとなったら前に出てもらう。


 警戒したのは武哉(たけや)先輩が、私がこちら方面に力を入れたと見て、もう一つの山脈の国境線から侵攻してきたり、前回のように気球で奇襲をかけてきたりすることだ。


 しかし、その様子はない。もっとも来ても、こっちも万全の対策立ててあるけどね。


 撃ち合いは続く。だけど、この撃ち合い。勝てる……はず……


 ◇◇◇


 優勢になってきた? 小さな小さな龍さんが送ってくれる情報ではこちらが撃つ回数に比べ、撃ち返される数がどんどん減ってきているとのこと。しかし、相手は武哉(たけや)先輩だぞ。やられたふりくらいは朝飯前だろうし。


青龍(せいりゅう)

 私は青龍(せいりゅう)を振り返る。


「おうっ」


「小さな小さな龍さんを相手方の大砲周辺にたくさん送り込んで」


「あいよっ」


 これでいい。本当に相手方がダメージを受けていたら、小さな小さな龍さんたちはその実情を映してくれる。やられたふりだったら、そのことを隠すため、小さな小さな龍さんたちは潰されて青龍(せいりゅう)の髭に戻るだろう。さあ、どっちだ?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 青龍の言葉にジーンとなりました。 どっちなのか私、気になります!
2024/07/04 19:04 退会済み
管理
[一言] イッケエエエエ!!!!
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