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「それで結局、最後まで残った二人は龍子(りゅうこ)玄田武哉(げんだたけや)だったって訳か?」


 まるで他人事のように言ってくれる青龍(せいりゅう)。私は大きな溜息を吐いた。


「まあね。はああああ」


「何、溜息吐いているんだ。四神高校(ししんこうこう)文芸部の猛者朱野雀美(あけのすずみ)白幡虎威(しらはたとらい)を打ち破っての決勝進出だろうが」


「まあ」

 私の気持ちは重たい。

「他校の文芸部から『鬼の住処(すみか)』とまで言われた四神高校(ししんこうこう)文芸部の強力メンバーにあって、言わば決勝まで残れたのは、私にしちゃあ上出来です。しかしっ!」


「しかし?」


「最後の対戦相手が武哉(たけや)先輩と言うのがねえ。本当にあの方のお考えは読めないのですよ。もう怖いのなんのって」


「まあな」

 珍しく青龍(せいりゅう)が私の言葉に頷く。

青龍()から見ても玄武(げんぶ)のじじいが一番やりにくい。朱雀(すざく)の野郎や白虎(びゃっこ)の親父は自分の得意技を『どうだ。俺は強いだろう』とアピールするから分かりやすいんだが。玄武(げんぶ)のじじいは『ほっほっほ』と笑っているだけだから手の内が分からないんだわ」


「そういう神様なのね。武哉(たけや)先輩を(つがい)に選ぶ訳だわ。はああ、気が重い」


「まあ今回も全力を尽くして、考えて考えて対策するしかねえな」


「対策と言っても今回は相手が何をしてくるかよく分からないのよね」


「まあなあ」


 雀美(すずみ)先輩や白幡(しらはた)先輩との対戦の時は随分励ましてくれた青龍(せいりゅう)も今回は歯切れがよくない。


「あんまり希望は持てないが、また情報収集できるか試してみるか」


「あ、龍体に変化(へんげ)するの? 外に出る?」


「ああ」


「じゃあ私も出るよ」


 青龍(せいりゅう)は外に出ると龍体に変化(へんげ)する。そして、髭を次々抜いていく。抜かれた髭は小さな小さな龍さんに変わり、飛んでいく。


 この調子で小さな小さな龍さんをたくさん玄武(げんぶ)の国と玄武(げんぶ)の国に占領された白虎(びゃっこ)の国に送り込んだ。


 だけどみんなすぐに潰され、情報は全くと言っていいほど入ってこない。小さな小さな龍さんをそれこそカマキリくらいにしか思ってなかった朱雀(すざく)白虎(びゃっこ)とは大違いだ。


 小さな小さな龍さんは潰されても死ぬわけじゃない。もともと青龍(せいりゅう)の髭だから、それに戻るだけだ。


 しかしまあ、青龍(せいりゅう)が小さな小さな龍さんを作っても作っても、それと同じ数の髭が青龍(せいりゅう)に生えてくる。つまりこれは小さな小さな龍さんがその分潰されているということだ。当然、情報は入ってこない。


「だめだな。ちょっと一息入れるか。おっ?」


 青龍(せいりゅう)は自分のそばを飛んでいた小さな小さな蛇さんを捕まえた。これは玄武(げんぶ)の分身。相手方も同じ方法で情報収集を図っているわけだ。


 つまみ上げた小さな小さな蛇さんを青龍(せいりゅう)はいつものように口に入れようとしたが、その前に小さな小さな蛇さんから声がした。

「おっと青龍(せいりゅう)さん。食べちゃう前にちょっと話をさせてくれないかな?」

 

 わおっ、武哉(たけや)先輩の声だし。


 どうする? と言わんばかりの表情で、小さな小さな蛇さんを摘まんだまま、私の顔を見る青龍(せいりゅう)


 正直、いい予感はしないけど、ここは聞かないわけにはいきますまい。


「ありがとう。龍子(りゅうこ)ちゃん。実はねえ、青龍(せいりゅう)さんと龍子(りゅうこ)ちゃんが玄武(うち)の国を訪ねてきたとき、玄武(げんぶ)様はそのまま捕まえて天上送りにしちゃえと言ったの」


「何とそうでしたか」(知っていたけどね)。


「でもねえ。武哉先輩()は、対戦相手の三人のうち、一番龍子(りゅうこ)ちゃんが面白そうなことをしそうだから止めたの。龍子(りゅうこ)ちゃんは見事その期待に応えてくれた。ありがとう」


「いえいえ」(武哉(たけや)先輩の方が私より凄いことしていると思いますが)


「でもね。こっから先は真剣勝負させてもらうね。武哉先輩()玄武(げんぶ)様も四神大戦(ししんたいせん)を勝ちたいから。あ、そうそう。武哉先輩()雀美(すずみ)ちゃんや虎威(とらい)ちゃんのように戦わずして傘下になれなんて言わないよ。そんなん、つまんないじゃないねえ。さあてと、じゃあね」


 通信切れた。本当に言いたいことだけ言って通信切りましたね。これをいかにーもおっとりとしたやさしーい声で言うから武哉(たけや)先輩、怖い。


 通信が切れると青龍(せいりゅう)は小さな小さな蛇さんを口の中に放り込んだ。そして言った。

「うーんすげえな。玄田武哉(げんだたけや)朱野雀美(あけのすずみ)白幡虎威(しらはたとらい)もしきりに龍子(りゅうこ)に傘下に入るように勧めてきた。それは後から見れば不安感に基づくものだった。ところが玄田武哉(げんだたけや)は『そんなのはつまらない』と言ってきた。凄い自信だ」


「そうだよねえ」


「まあとにかく今、分かっていることを整理して、出来るだけのことをやってみようや」


「うっ、うん」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 第六章開始おめでとうございます! わああ、武哉先輩、怖いですね:( ;´꒳`;) 反面、青龍と龍子ちゃんの絆が前よりも深まったように感じられました(*´∇`*)
2024/06/30 18:44 退会済み
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