表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/46

15

「え? 兵隊。そんなん無理だって。俺の国と白虎(びゃっこ)の親父の国は直接接してないじゃん。だから、朱雀(すざく)の国通って来ているんだけどさ。あの朱雀(すざく)が俺が兵隊連れて国を通るなんて許してくれるわけがないじゃん」


「あ、そうそう。俺と俺の(つがい)だけだよ。前も言ったじゃん。おれが白虎(びゃっこ)の親父に一目置いているように、俺の(つがい)白虎(びゃっこ)の親父の(つがい)に一目置いているんだよ。だからさあ、白虎(びゃっこ)の親父の(つがい)が創り上げた凄い国見せてよ」


「ん? 国境を越えて五里ほど行ったところに一里四方の森がある。そこの北側の入り口前で人間体になって待っていろ? 馬車で迎えに行く。うんそれはありがたいけど、大丈夫かね? 森って言ってもたくさんあるんじゃ? 何? その心配はいらない? 行ってみれば分かる? 分かった。行ってみるよ。着いたらまた通話するわ」


 私はちょっとわくわくした。

「馬車で迎えに来てくれるの? 私、馬車に乗ったことないんだ。楽しみだな。随分丁寧に出迎えてくれるんだね」


「ふっ」

 青龍(せいりゅう)は軽く笑う。

「馬車を龍子(りゅうこ)が楽しみにしているなら何よりだが、丁寧な出迎えってわけでもなさそうだぜ」


「え?」

 私は少し警戒する。

「ひょっとしてすっごいボロボロでガタガタの馬車で迎えに来るかもってこと?」


「ああ、それはない」

 青龍(せいりゅう)は即座に否定する。

朱雀(すざく)の野郎もそうだったが、白虎(びゃっこ)の親父も一番気を使っているのは自分の国の民の目だ。白虎(びゃっこ)の親父が唯一絶対神として教えてところに龍の俺が飛んできた日にはいろいろ都合がよろしくない」


「ボロボロでガタガタの馬車はないの?」


「ああない。おれたちゃ一応国賓だからな。丁寧な出迎えでないと言うのは……」


 ドカカカカッ ドカッドカッドカッ


 その時、青龍(せいりゅう)の言葉を遮るかのように凄まじい音がした。


「何? この音? 怖い」

 思わず私の口からそんな言葉が出る。


 その言葉に青龍(せいりゅう)はニヤリとする。

「安心しろ。龍子(りゅうこ)は何があっても俺が守るから。それでも不安だってのなら今この場で俺に抱きついたっていいんだぜ」


 私はそんな青龍(せいりゅう)に、よく言えば冷静になった。悪く言えば冷めた。

「私は青龍(せいりゅう)(つがい)じゃないから抱きついたりなんかしませーん」


 青龍(せいりゅう)は私のそんな返しに、何とまたもやニヤリと笑った。

「それでこそ龍子(りゅうこ)だぜ。じゃ落ち着いたところで、何が起こっているのか。この音のもとを見てみろや。これも白幡虎威(しらはたとらい)がその想像力・創造力・表現力で生み出したもんだぜ」


「!」

 そうだった。怖がっている場合じゃない。何が起こっているのか、しっかりと確認しなければ。


 私は顔を上げた。音のする方を見据えた。そこにいたのは……


 ◇◇◇


「騎兵隊? いやあれは……」

 私は思い出した。

「あれは『モンゴル騎兵』だ」


 白幡(しらはた)先輩は、西域のような異世界を舞台にした恋愛物語を得意としていた。そうだ。これは確かに白幡(しらはた)先輩が想像力・創造力・表現力で生み出した世界だ。


 やがてモンゴル騎兵の先頭を走る白馬の姿がはっきりと見えてきた。馬を駆るのは鎧をまとったイケオジホワイトタイガー、そう、白虎(びゃっこ)だ。


 そして、その白虎(びゃっこ)の背中に抱きついている真っ白なデール(モンゴルの民族衣装)を身につけている女性こそ「第11回エレクトリックボードノベル大賞」唯一の入選者白幡虎威(しらはたとらい)先輩だ。


 二人の騎乗した白馬を先頭に多くのモンゴル騎兵が続く。それらが囲んでいるのはキンキラキンの馬車だ。


 青龍(せいりゅう)が言ったとおりボロボロでガタガタの馬車ではなかったけど、がっちがちに監視されるためのお迎えだわ。確かに丁寧とは言えないね。これは。


 ◇◇◇


白虎(びゃっこ)の親父、お忙しいところの出迎え、すまねえ。しかもあんな絢爛豪華な馬車まで用意してもらっちゃって」


「ふん」

 白虎(びゃっこ)は馬上でふんぞり返る。心なしか白幡(しらはた)先輩もふんぞりかえっているような気もする。

「こっちも暇じゃあないんだがな。まあ青龍(せいりゅう)がそこまで頭を下げるってんなら仕方ねえ。それに青龍(せいりゅう)(つがい)白虎()(つがい)の可愛い妹分だって言うじゃないか」


 はあ、私が白幡(しらはた)先輩の妹分。雀美(すずみ)先輩も同じようなこと言ってたしなあ。モテる女はつらいぜ。じゃなくて四つしかない国の一つを傘下にすれば、それでもう半分は制したことになる。随分有利になるもんなあ。


「ありがてえぜ。青龍()はもとより白虎(びゃっこ)の親父に刃向かおうなんて気はありゃしねえ。それに加えて、白虎(びゃっこ)の親父のすげえ(つがい)の想像力・創造力・表現力で創られた国を見せたら、そんな気はまるっきりなくなるわ」


「ふっ、そうかそうか」

 青龍(せいりゅう)にうまいこと乗せられた白虎(びゃっこ)は上機嫌だ。


青滝(あおたき)さん」

 おおう、今度は馬上から白幡(しらはた)先輩が私をお呼びだ。

「はっ、はひ」


「ふふふ。何でも私が創った国に来る前に雀美(すずみ)が創った国を見てきたそうね。どうだったかしら?」


 うぐっ、答えにくい質問を初手からぶつけてきましたね。ここは断じて両先輩のどちらかをおとしめる回答は禁忌。だが、私とて伊達にこの数ヶ月というもの四神(ししん)高校文芸部で過ごしてきたわけではないわ。

雀美(すずみ)先輩の創られた国は一人一人が強靱な身体を持つ、戦いに長けた強い国だと思います。少なくとも龍子()が創った国よりは。但し……」


「但し?」


白幡(しらはた)先輩の創られた国より強い国かどうかは分かりません。まだ白幡(しらはた)先輩の創られた国を見ていませんし。ただ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 後輩力が強い( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ