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済まないシンデレラ・・・・・僕は魔法使いだけど、綺麗なドレス姿に変身してあげられないし馬車を出したりできないんだ。出来ることは城を更地にするくらいさ・・・・・

よろしくお願いします・・・・・。

「泣かないでおくれよシンデレラ・・・・」


 ボロボロな服を着たシンデレラ。解れたところを縫って直し、穴の開いたところを余った布切れで塞いだのだろうか。人の手によって破られた様な箇所も見える。


 「魔法使い様、どうしてこんなにも哀れな私をお助けになさってくれないのですか」


 シンデレラ・・・・・確かに君の身の上話を聞けば誰もが憐れみ助けてあげたいと思う事だろう。僕も助けてあげられるのなら助けてあげたいさ。


 でもね、君の言っている事は無理なんだよ。


 「私はただ、ただ、あの忌々しい継母や姉たちを苦しめてやりたいだけですのにっ!」


 「僕は魔法使いだけどそんな事はできないよ・・・・。そういった事は呪いに精通している呪術師や降霊術士にお願いしてよ。いや、それよりもそんな事をしちゃだめだよ」


 僕はしがない魔法使い。旅の途中で偶々通りかかった所をこのシンデレラと名乗る少女に捕ま・・・・・話をかけられて助けてほしいと言われてしまったんだ。


 シンデレラは貴族の娘として産まれたのだが半年前に父が病死してしまい今は継母とその娘、シンデレラから見れば義姉となる者たちと暮らしているそうだ。


 父親がいた頃より継母たちから軽い嫌がらせを受けていたらしい。父親がいたからその程度と言える範囲で済んではいたが死んでしまった。


 ストッパーとなっていた父親が死んでしまった事により継母たちの虐めは日に日に激化してゆき今となっては身が擦り切れるほど働かせられ、身も心もボロボロなのだそうだ。


 継母たちは今、お城で王子様主催のパーティーに出かけており姿はない。その隙を狙って僕に助ける様にお願いをしていた。


 そんなシンデレラに助けを求められているけど頓智喜納な事ばかり言ってくる。


 「どうしてよっ! 魔法を使えるのにどうして私を助けてくれないのっ!」


 「確かに魔法は使えるけど魔法は万能じゃないのだよ」


 「どうして・・・・・・どうしてよっ!」


 「やっ止めなさいっ!? 一体どこからそんな危ないものを出したのですか!」


 なんて強かな娘なのだろうか。僕がシンデレラのお願いを叶えられないと謝れば一体どこに隠し持っていたのか分らぬが分厚い斧を片手で振り被っている。


 「どうして・・・・・・私のことを助けてくれる奇特な御方はいらっしゃらないの・・・・・・」


 大地に倒れ込み片手で泣いている顔を隠し、もう一方の手で斧を振り被る。この様子を近くで見ている俺は本当に助けた方が良いものか迷ってしまう。


 一体どこの世界に泣きながら伏している状態で斧を持って威嚇する少女がいるのだろうか。


 疑い始めてしまうとその考えは止まることなく、演技や反撃の機会を狙う獣にしか見えなくなっていた。


 「う、うぅ・・・・・お父様っどうして私の事を置いて死んでしまったの⁉ 私はただ慎ましく小さな幸せの中で生きて行きたかったのに」


 訂正。


 やっぱり可愛そうに思えてしまう。済まないシンデレラ、少しでも君のことを疑ってしまったこんな僕だけど許しておくれよ。


 「僕は殲滅を主とした魔法使いなんだ。君の望むファンシーな事で願いを叶える事はできないが城を木端微塵にする事なら御やすい御用だよ」


 魔法使いには様々な分類分けをされている。破壊、再生、構築、守護、活性の五つ。


 その中でも僕は取り分けて破壊に準ずる魔法に適性があり、他の四つも使えはするがそれでも最低限な事しかできない。


 シンデレラの言う事は活性に属する上位魔法である転換式能力低下魔法であろう。


 活性には適性のない僕にはできないんだ。ごめんねシンデレラ。だから代わりと言っては何だが継母たちごと城を吹き飛ばすことなら簡単さ。


 「・・・・・何を言っているのですか。そんな事をすれば私と貴方はすぐに世界中のお尋ね者ですよ」


 「・・・・・そうだね。シンデレラの言うとおりだ今の発言は取り消させてくれシンデレラ」


 「やるにしてももっとバレないように密やかにしなくてはいけませんわ」


 「そっちかいッ!?」


 僕が思っていたよりも斜め上の考え方に悪寒が走った。なんて物騒な少女なのだろう。齢15にも満たなそうな幸薄い少女が言っていい言葉ではないだろ。


 「私は別に国の重要人物を滅ぼしたい国家転覆を狙う反王家組織の人ではありませんがあの憎き継母たちと倒すためなら仕方ありませんが・・・・・」


 「いいのかいっ!?」


 一体どれだけの恨みをシンデレラは抱えているというのだ。罪のない他人を大勢巻き込んででも倒したい程に憎んでいる少女は今までどれほどまでの仕打ちを受けてきたのだろうか。


 「私は今までしたことのない炊事から洗濯、狩りや掃除、山賊の討伐、お買い物、税の徴収、政治などをこなしてきました」


 「そうかいそうかいそれは大変・・・・・・ん?」


 「どうかしましたか。魔法使い様?」


 「いや・・・・・気のせいだ続けてくれ」


 シンデレラの話す過去に違和感のあるワードが時折混ざっている気がしたがきっと気のせいだろう。こんな可哀想でおしとやかな娘が物騒な事をさっきから言っている気がする。


 「毎日毎日、無理難題をこなしていく度に自分の成長を感じつつ私の中で沸々と湧き上がる謎の思いがありました」


 「その思いが君をここまで駆り立てたというのか」


 「私が幸せな人生を送れないのも全てはこの国が悪いのだとも思っております。だから憎き奴らが滅びてくれるのならば王子の一人や二人くらい滅んでも構いませんっ!」


 何という責任転嫁・・・・・とも言えはしないか。確かに国の中枢者がこの状況を問題視すれば解決したはずだが流石に考えが行き過ぎている気がする。


 「君も貴族の娘なのだから王子様に助けてもらえるとか考えたりしないのかい」


 「・・・・・・」


 少女ならば一度は考えるはず。絶望の淵に立たされた状態から運命の人である王子様に助けてもらうような展開を望むことだろう。


 僕も少し過激になりすぎていた。ここは平和的な解決に向けて話し合おう。


 「僕の知り合いに構築が上手い魔法使いがいるんだ。綺麗なドレスと豪華な馬車を用意させよう! それでパーティーに出席して王子様のハートをゲットするんだッ‼」


 「・・・・・私、別に王子様に見初められたくないです。仮に王妃になっても面倒くさい事ばかりですしだったらいろんな所へ行って食べ歩きの方が性に会ってます」


 「そ、そうかい・・・・・」


 最近の10代は昔と違って王子様とか運命の人とかには夢を見ないのか・・・・。


 ああ、だから王子は自ら主催したパーティーを行ったのだろうか。直属の貴族や城に勤める者たちに任せればいいところを王子が直接関わっているのは未だ決まらない婚約者を探すためだとも言われている。


 シンデレラのような娘が居るからこそ、いい歳でも婚約者がいないのだろう。


 最近の若者の心理に触れた気がした俺は感心して頷いている間に「食べ歩き・・・・・そう、ね。確かに・・・・・いいわね」とシンデレラは呟いていた。


 やはり何か思う事でもあったのだろうか。言ってごらん。この魔法使いにとシンデレラの考えを聞こうと耳を傾ければ今までとは真逆の答えが返ってくる。


 「あ~もう面倒になってきた。ねえ魔法使い様、私をここから遠く離れた場所に連れてってくださらない?」


 「ええ・・・・・・先程まであんなに意気込んでいたのに結果はそれなのかい」


 「やり返すとかよく考えたらめんどくさいと思えてきた。継母たちが居ないうちに逃げた方が建設的じゃない。荷物纏めてくるから少し待って頂戴」


 「えぇ~・・・・・・・・・・いっちゃった」


 シンデレラ、おおシンデレラ、なんて君は行動力のある娘なんだ。


 別に僕がいなくてもきっとシンデレラなら一人でどうにかできた気がする。むしろ今から逃げるのならば魔法使いの僕じゃなくて行商人とか馬車を持った人達の方が良かったんじゃなかろうか。


 魔法を使えるというのになんて無力なんだろうと地面にしゃがみ込み大きな杖の先でぐるぐると渦巻きを書き始めた。


 やっぱり破壊系統の魔法がどれだけ使えても人を助ける事には繋がらないのだろうか。今もこうして何の役にもなっていない。


 魔法に人生を捧げてもう10年も経つというのに僕はなんて情けないのだろう。


 何重にも折り重なった渦巻きの中心を見つめ続けると近くで重い荷物が降ろされたような鈍い音がした。


 「ん、んんっ!?」


 ゆっくりと地面から視線を上へ見上げるようにすると大きな布袋がそこにはあった。ぱんぱんに膨れた袋の中には黄金の輝きが見えている。


 女性では身長の高いシンデレラの腰の高さまである布袋の中は全て大量の金貨が入っているのだった。


 「シンデレラ、この金貨の山は一体どこから持ってきたのかい?」


 「この金貨は私がこの一年半で貯めた金貨です」


 「???」


 ダメだ。聞いたはずなのに帰ってきた質問の答えで余計に意味が分からなくなった。


 「父が病気で床に伏してから領地の管理は私が行ってきました。実権を手に入れた私は予てより考えていた領地の強みを生かした産業によって莫大な利益を確保することが出来ました。丁度良かったですね。来月には国へ税を払わなくてはならなかったので丸儲けです」


 「・・・・・は、ハハハ」


 失笑ですよ。本当に・・・・・・このお姫様を僕なんかが助けようとしてごめんなさい。


 なんて強かな女性なんでしょう。魔法が使えると粋がっていたわけではないが魔法が使える事を誇っていた自分が恥ずかしくなってしまう。 


 「なんて立派に育って・・・・・うう・・・・・」


 何故だろう目頭が熱いな。これだけの金貨を稼ぐまでに一体どれほど苦労をしてきたのだろうか。強く育ってくれてありがとうシンデレラ。


 「泣き真似はいいから早く行きましょう」


 「はい・・・・・お、重い」


 決してシンデレラが重いわけではありません。シンデレラの唯一の荷物である金貨の入った布袋が重いのです。


 杖の先に括り付ければ軋み音を上げる。相棒が少々心配になるも僕とシンデレラは杖にまたがり空へと飛び立った。


 「出発っ‼」


 「は~い」


 「伸ばさない!」


 「うす・・・・・」


 こうしてシンデレラは大量の金貨と共に新たなる人生を歩み始めたのだった。


 

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