92 敵地の周辺国って……バカなの?
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
ちょっと聞いてみようか。
「ブーゲリア、僕だけど」
『ナギ様! ご迷惑をおかけ致します。それで?』
「うん。一応、ギルマスの拘束と冒険者の拘束は終わった。それで副ギルマスが泊まるのかと聞いてくれてさ。ドルーシア国周辺の騎士団はいつ頃到着するのかな。今はオニキスも落ち着いてるから。明日早朝なら、ここから出発した方がいいかなと思ってる。でも、夜明け前ならば、近くで待機するつもり」
すぐに折り返すと言われたので、頼んでおいた。
その上に、副ギルマスをギルマス代行としてもいいかと問うてみた。それは問題ないらしい。後任が決まるまでは少々時間がかかると聞いた。
それならと俺からの提案した。
副ギルマスのアグリストさんをギルマスに昇格させた方がいい。ギルマスはギャンブルのために金が必要だったみたいだから。
鑑定したけど全く問題ない人物だし、職員たちも彼がいなければギルドはやっていけなかったと証言した。ここの冒険者とも顔見知りだし、何より職員からの人望がある。それならその方がいいでしょう?
そう言ってみたんだ。
それもすぐに問い合わせして返事をするということだ。
じゃあ、もう少し待ちますか。
『ナギ、お腹すいた』
え? と壁の時計を見れば、既に四時を過ぎている。
「何か食べるかな。ここの食堂は美味しい?」
周辺の人たちにも評判ですよ、と聞いてメニューをもらった。安全の為にここで食べて欲しいといってくれたので、そうしよう。
じゃあ、と皆が言うメニューをメモしてくれるのはウエイトレスさんだ。
とんでもない量に、戸惑いながら書いてくれてる。
もちろん、オニキスも出てきて人型で注文していた。ちょっと気分が落ち着いたのかな。
やっと注文が終わって、ウエイトレスさんは慌てて階段を降りていった。
その間に、何か食べたいと言うので、シフォンケーキを出してやる。一人ワンホール。俺とノルは半分こした。
飲み物は紅茶と果実水です。
アグリストは、あまりの素早さに動きが止まってるよ。
「アグリストさん。僕が焼いたケーキですが、どうぞ」
ひと切れ皿にとって差し出した。そして紅茶もカップに入れて進める。
「あの。私もいただいてよろしいのですか?」
どうぞどうぞ。
一口食べて感激している。これほど柔らかいケーキは食べたことがないらしいよ。娘さんに食べさせたら喜ぶだろうと笑顔で言ってた。そう聞けば放っておけないよね。
じゃあ、と新しい小さな籠を取り出して、プレーンのシフォンケーキを中に入れた。そしてそっと蓋を閉める。
「これ、娘さんにどうぞ。僕は素人なので気にせず食べてもらって」
驚いたアグリストさんは、深く頭を下げた。
『ナギ様。お待たせしました。副ギルマスのアグリスト氏についてですが、あとで水晶で面接はしますが、是非お願いしたいそうです。ドルーシア国周辺国の騎士団は、明朝には到着する予定だそうです』
それなら食事が終わったら飛ぶ? 夜はどうなの? ときけば問題ないとオニキスは言う。まあ、普通の魔物が飛ぶ高度じゃないからね。
運ばれてきた大量の料理にそれぞれが食らいつく。
ご多分に漏れず、俺も食べる。
食べながら、ドルーシア国の場所を教えてもらった。地図を取り出して道順を説明してくれるけど、オニキスに乗って飛ぶからと言えば、真っ直ぐならここがいいと、山越えではなく草原や街を通った方がいいと聞いた。それが一番短時間で到着するらしい。
どれくらいの距離かを聞けば、オニキスにとってはそれほど遠くはないらしい。
じゃあ、気にすることはないね。
念の為に、明日の早朝、ブーゲリアに連絡をくれるよう頼んでおいた。寝過ごしたら大変だものね。
どうやら陣を置くらしいので、各国に連絡をしてくれると聞いた。およその場所も聞いたから問題ないでしょう、多分。
食事を終えた俺たちは、ギルドの訓練場にいる。
なぜだか戻った冒険者まで揃ってこちらを見ていた。当然職員もね。
ドドーーーン!
轟音と共に普通の姿になったオニキスをみて、全員が動かない。
「いろいろご迷惑をおかけしました。機会がありましたら、依頼を受けに来て下さい。またお会いできる日を楽しみにしております」
アグリストさんは、笑顔で握手してくれた。
「こちらこそ、突然失礼しました。では、行きますね」
いってらっしゃい、とやっと動き始めた皆が手を振ってくれた。
バサリと大きな翼を羽ばたかせたオニキスは、空に昇って行く。狭いので、その場で乗ることができなかった俺たちは、フラットの背に乗って、待ってくれてるオニキスの背に乗った。
結界を張ってもらって、より上空へと登って行く。
どれくらい上がったのかはわからないが、オニキスは飛び始めた。
轟々と音を立てて飛ぶオニキスだが、今は落ち着いていると思う。
向こうで騎士団との打ち合わせでキレなきゃいいけど、と少々不安は残るんだけど。でも、大丈夫だと思う。オニキスには村人とブルードラゴンの敵討ちはさせてやりたい。そうじゃなきゃダメだ。
いろいろ考えるのだが、騎士団との話し合いが終わらなければ、何も始まらない。それまで少し待つことにしよう。
出発してから三時間でドルーシア国に到着した。おそらくこの街道のこのあたりに陣をはるんだろう。それなら、と少し高台に無音で降りてもらった。すぐに人型をとったオニキスと皆でフラットの空間に入った。
今何時だろうか。
出かけるのが早くて良かった。
午後六時半ごろ出発して、今は九時半だ。どれほどの速度で飛んだんだろうねオニキスは。ドルーシア国も、なぜあの国だったのか。間に一つ国を挟んだだけの距離。移動することを考えればそれが精一杯だったんだろうね。間の国はかなりデカかったけど。その後、オクリア国の端まで来たんだから、移動時間は想像もできないくらいだろうね。
もう一度ご飯を食べたいと言うサンとフラットに呆れるのは俺だけだ。オニキスは問題なく同意し、ノルは少しだけと言い訳けした。
じゃあ、と肉のリクエストを聞き入れて、コカトリスの丸焼きを取り出す。そしてトンカツ、メンチカツ、コロッケなどなど。全員が白米希望だったから、一所懸命ご飯をつぎ分ける。
深皿には、おかずをそれぞれが取り分けてるよ。こういう所は行儀がいいんだね。
俺も少々食べましたよ。結果、一人前食べたけどね。
まだ大丈夫なので、風呂に入るように促せば、ドヤドヤと行ってしまった。でも、全員入れないでしょ?
まあ、どうにかしてはいるんだろうね。まるで銭湯だよ、と独り言つ。
食器類をクリーンして片付ける。
そして、料理の不足分をコピーしまくりで、ある程度増やしておいた。
一番増やしたのは白米でしょう。ご飯がなければ俺は元気が出ないのです。あ、今思いついた。明日の朝はクリームパスタを食べようと。つまり白米は食べずにクリーム系でいきますよ~
入れ替わりに風呂に入った俺は、ゆっくりと湯に浮かぶ。でも、できるだけ寝たいので早々に身体と髪を洗って出ました。
髪を乾かすのに時間がかかるのは仕方ない。魔法で乾かすようになってずいぶん時間短縮になったけどね。
すでに皆、それぞれのベッドに転がってる。
フラットの側にそっと寝転がって、サンを抱いて眼を閉じた。
みごとに夜明け前に目が覚める。
皆を見れば、当然起きてましたよ。やっぱり心が騒いでるのかな。
準備できた時、オニキスが他国の陣をみつけてくれた。どうやら揃って陣を築いているみたい。それなら、外に出るかな。
空間から出て行けば、たくさんの槍がこちらに向けられる。
「Sランク冒険者のナギです。そしてパーティメンバーですが、こちらの将軍はどなたですか?」
こちらへ、と案内されたのは、ひときわでっかいテントだった。
冒険者カードとユリアロウズ国の顧問カードを確認してもらって、中に招き入れられた。
「早朝より、ご無理を言います。この陣の将軍であります、トランサル王国第一王子ブルックスです。どうぞよろしくお願いします」
第一王子が出てきてるんだね。他の国も責任者が挨拶した。
「冒険者のナギです。こちらは、メンバーのノル。そして僕の眷属で、黒竜のオニキス、シルバーウルフのフラット、ヒュージスライムのサンです。どうぞよろしく」
「あの。ナギ殿はおいくつですか?」
十歳です!
それを聞いた各国将軍たちは、驚いてるよ。Sランクだしね。
「すばらしいですね。そのお歳でSランクとは。その上にお美しい」
あははは、それは関係ないですよね。
それから、ブルードラゴンに会いに行って今回の事態を把握したこと。ドラゴン信仰の村全体が殲滅されていたこと。当然、村人は誰一人生きていなかったことを話した。オニキスの友であったブルードラゴンは、ドルーシア国が素材回収の為に持ち帰ったことなどを告げる。
「それでは、どのような対応を希望されますか?」
「我は仇をとりたい。それだけだ。主にも許可をもらっておる。マントール国とは違い、殲滅したいのが本音である」
うん、オニキスの怒り再燃だよ。
「……ということは、国ごと全てと言うことでしょうか?」
オニキスは無言だ。
「あの。できればそうさせてやりたいです。ですが国民はどのような環境で生活を?」
どうやら国民は勇者に傾倒している者たちが多いらしい。
「それならいりませんよね?」
は? と戸惑っている。
「勇者は確保したいですが、面倒なので王城ごと滅したいです。ですが、ここにいるんでしょうか」
どうでしょう、と頼りないことだね。
王城にいるとオニキスは言う。どうやら、勇者のために用意された離宮にいるらしい。
「じゃあ、俺とフラットで確認してくる」
おお、ノルが斥候の役目を果たしてくれるらしい。
フラットは了解してくれた。サンは? と見てみれば鞄の中で寝ちゃってました。
さっそくフラットとノルは空に上がっていった。
「それで。僕たちが国を滅した後は、どうするんですか?」
一番聞きたいことを聞いてみた。
「それですが、ナギ殿たちが殲滅されないのであれば、等分に分けようかと思っておりましたが」
あ、そういうことですか。
「僕は国などいりません。だからあなたたちで分ければいいでしょ?」
は? とその場にいる大将クラスの人たちが固まった。
なんで固まるの?
「あの……国盗りに興味がないのですか? ではなぜ彼の国を攻撃するのでしょう」
何いってんのかな。どこの国の将軍だよ、こいつは。根本的に理解できていないんだな、こいつらは。
「はぁ。僕たちの思いは周辺国にも伝わっていないということですね」
あまりに腹立たしくて睨んでやった。まあ、十歳のガキが睨んでも怖くないだろうけど。
勇者召喚した国には腹が立つ。
勇者にも腹が立つ。
そしてあの冒険者たちにも腹が立ってる。もちろんギルマスにも。
こいつら、本当にバカだ。
「ナギ殿。どうやら我々が考えていることとは違う思いがおありのようです。どうか詳しくお話を聞かせていただきたい」
えっと、トランサル王国第一王子ブルックスだっけ?
『オニキス、トランサル王国はどんな国か知ってる?』
『うむ。世界でも五本の指に入ると言われる大国であるな。国民は楽しく暮らしておると思うが。我らが怒りを向ける必要もないほどであると聞いておる』
そうなんだね。おぼっちゃんか。
「ブルックス第一王子。僕は最初に説明しましたよね。オニキスの友、ブルードラゴンを討伐し、ドラゴンを崇める村人たちを殺し建物すら破壊した。何か悪いことをしたわけじゃない者たちを勇者の腕試しだけで。勇者召喚も、周辺国へ攻め入って国土を広げたいという理由。そんなやつらがやりたい放題でいいのですか?」
ああ、腹が立つ、なんで理解できないの、こいつら!
「国土を広げるため? そのために勇者を召喚し、その成長度合いを確認するのが目的で、オクリア国ギルドや冒険者を巻き込んだということですか!」
やっぱりバカだよね、こいつら。今更何いってんの?
「あなた、何を聞いてたんですか? 最初に僕は話しましたよね。僕のような子供が何をいっても仕方がないのかもしれない。でも、ユリアロウズ国に義理立てして連絡はしました。私のいるユリアロウズ国はバカじゃない。それに、オニキスの思いもわかってくれた。そうじゃなければ僕にとってはただの国。オニキスだけじゃなく、眷属であるフラットやサン、パーティーメンバーのノルに危害を加えるやつは同じことですよ」
ブルーの瞳が固まってるよ、王子様。本当にバカだよね。
ガキでも中身はそこそこのおっさんだぞ! それなりに社会にもまれて生きてきたんだ。理屈はわかってるんだよ!
あー、腹が立つ。
「これでいいですか。もうお話する気もなくなりました。僕たちは好きなようにやらせていただきます。いいですね!」
……
ありゃ、無言だということは了解したんだろうね。
「行こう、オニキス。そろそろフラットとノルが戻ってくるよ」
「承知した。お前たち、我が主を怒らせたことを後悔することになるだろう。覚えておくが良い」
読んでいただきありがとうございます。
うーん、やっぱりダメですね、国は。
王族でさえバカですよ。各国も同じです。くだらない奴らですね。キレないでね、ナギちゃん!
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