91 冒険者ギルドすべてをシメましょう。
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
ギルドにいる冒険者がやけに多いな。依頼は受けないのか?
「あの、ギルドマスターに面会を。僕はナギといいます」
「はぁ。ナギさんですか。冒険者?」
はい、そうですよ。
カードを見せてくれるかな?
どうぞ。
「……少々お待ちください!」
あはは、お姉さん、階段をとんで上がったよ。
ドドドドドと駆け下りたのは、ごっついおじさんだ。
「どいつだ、ナギは!」
見てないよね、あんた。
「僕ですけど」
「……お前、が? ナギか。Sランクのナギ?」
「はい。僕がSランクのナギです」
キョトンと俺を見下ろしてるギルマスだけど、どうしたのかな?
「あの、面会は?」
「……わ、悪い。大丈夫だ、二階へ上がってくれ」
はぁ~い、と皆で階段を上がった。
「急な来訪で驚いたんだが。なにか急用か?」
「まぁ、急用ですね」
そうか、と何かを考えている。
「あの、さっき食堂で聞いたんですけど、勇者様がこの街に来ていたというのは事実ですか?」
「……ま、まぁ。事実、だ」
ふうん、正直に言うんだね。
「勇者召喚が召喚されたという話しは聞いてなかったので、驚きました」
「……まあ、聞いてないだろうな。我が国じゃないぞ。それは事実だ」
「ふうん、そうなんですか? でも、ギルドが何か依頼を出したって」
まあ、それは……
「勇者召喚した国に頼まれて、ギルドから依頼したって、冒険者たちが話してましたけど」
はぁ~~~~~と大きくため息をつくギルマス。
まだ言わないか。はっきりしろよ、おっさん!
「依頼って、世界ギルドにも連絡がいくんですよね。どこのギルドで誰の依頼をどの冒険者が受けたかって。違いますか?」
「……その通りだ」
なるほど。カマかけただけなんだけど、あたりだね。
「じゃあ、世界ギルドに問い合わせしますね。他国の依頼を受けたってはっきり聞きましたし」
ちょっ! ちょっと待ってくれ!
あれ? これ、イケるかな?
「ちょっと待って欲しい。確かに依頼はあったんだ。あったんだけど、ギルドの依頼ってことにしたのは頼まれたからだ。本当は依頼として受けてない。勇者の実力を試したいからと言われてな。それにかなりの金額を提示された。ギルドも経営状態が厳しくて。それで受けたんだよ」
あはは、ダメだこいつは。少々脅すかな。
「そうですか。それで勇者召喚をした国は?」
それだけは勘弁してくれ、殺される! と泣きつかたんだけど。
「同じ事ですよ。ドラゴンを崇めている村人を全員殺して、村を殲滅した。その上、何もしていない、村を守っていたドラゴンを殺したんです。その国に殺されなくても、そんな非道なギルド、というかギルマスは処分します。僕にはその力がありますしね。聞いたことありませんか? 国がひとつなくなったって」
ガタガタと震え始めるギルマスは、思い出したようだね。
「あ、あの。その国を滅ぼしたのはドラゴンだと聞いた。そのドラゴンに殺させるのか?」
「いいえ。これ以上、辛い思いはさせたくありませんから。僕の眷属であるドラゴンには、その国を罰するだけの理由があった。でも、僕の許可がなければしなかったと思いますよ。僕が殲滅してもよかったんです。でも、彼の役目を果たさせただけですから」
おおおおお、お前が?
「僕は十歳です。これでも、三歳から冒険者を始めました。両親が魔物に殺されたから。たくさんの人に助けてもらって生きてきた。それは眷属も同じです。僕の周りには、意味もなく命を狩る人はいなかったしね」
そう言ってやった。かなりの嫌みだと思うけど。
「それでも国名を言わないなら、今度は僕がこの街を殲滅します。冒険者を辞めることになってもいい。理由を聞かれたら、正直に話します。そうすれば、その国もただでは済まない。僕を狙うならその国も殲滅する。それだけです」
がくりと項垂れたギルマスは現実を見たのかな。
「どうしますか?」
「俺が話せば、俺は殺される。助けてくれるのか?」
なぜ?
「だってお前! ここで話すんだから、助けてくれてもいいだろう?」
「嫌ですね。人を人とも思わないやつの命なんか知らない。殺されればいいんですよ。あなたがしたことの結果でしょう?」
うううーーーーと泣き出したギルマスだけど、こんな所でのんびりしていられないんですよ。
「どうしますか? 決めて下さい。ただ、あなたが正直に話してくれたということは、世界ギルドには報告しましょう。あとはあちらの判断です。護衛依頼でも出せばいいでしょう」
仕方がない、と顔を上げたギルマスは、訥々と話し始めた。
勇者召喚を行った国は、ドルーシア国という小国。
理由は、勇者を召喚して隣国に攻め入り領土を広げるため。
魔王の復活は確認されてないが、戦争を仕掛けるには弱小過ぎるからと一発逆転を狙った。
ギルドとしては、最初は断った。だが、金をちらつかせて迫ってきた。ギルドの経営が思わしくなくて、最終的には金に負けたらしい。
今回のドラゴン討伐は、勇者たちの成長度合いを測るため。素材はドルーシア国が持ち帰った。たくさんの高ランク冒険者や魔法使いを雇って、ここへ来たらしい。
ただ、まさか村まで殲滅するとは思っていなかった。村人を一人残らず殺すなんて……
ギルマスは言葉に詰まった。
ここのギルドからの依頼という形で出かけた皆が、村人を殺した。この事実はただでは済まないよね。
「ブーゲリア、聞いてた? この内容を国王陛下に伝えて。世界ギルドへの連絡も頼むね。で、俺はどうすればいい? オニキスは必死で堪えてるんだ。ドルーシア国はなくなってもいいんでしょ?」
『もちろん、そうなると思います。それにしても酷い話しですね。すぐに陛下に連絡して、世界ギルドへ知らせましょう。ナギ様たちはどうされますか?』
「俺たちはここにいた方がいい? それともドルーシア国に向かっていいかな」
三十分ほど待って欲しいと言うので、しかたないね、と待つことにした。
『オニキス、大丈夫? 待てるかな』
『うむ。すまぬな、主。我は勇者を亡き者とする。そしてその国も。ここのギルマスはどうでもよいが、依頼を受けた冒険者を集めるか?』
『おお、それがいいね。ギルマスに招集かけさせる』
頼んだ、とオニキスとの念話を終える。
ギルマスに話せば、すぐにやる! と職員たちに伝える。それも、良い話しをちらつかせて、ね。
こいつ、何とか死ぬことだけは回避したいと思ってるんだろうね。でも、それは無理だよ。完全にオニキスの怒りをかってるんだもの。
約束通り、三十分後にブーゲリアから連絡が入る。
『ナギ様。お待たせしました。世界ギルドへの連絡は終わりました。全世界の国々へドルーシア国のことは伝えております。それで、大変申し訳ないのですが、そちらのギルドマスターを捕縛していただきたいのです』
「それはいいけど。このままおいておくの?」
『いえ。その国、オクリア国といいますが、国王は今回のことは全く知りませんでした。ですから名誉挽回だと騎士団を派遣するそうです。それまではギルドの牢へ入れて欲しいのです』
鍵はどうするのかな?
『鍵ですが、全てナギ様が持っていただいて良いそうです。魔法使いに破壊させるということでした。職員や冒険者たちに、牢破りをするなら命はないと布令を出すそうです。実行した冒険者たちは、警備隊の牢へと入れます。そちらの鍵もナギ様にお預けしたいのです。ことが終わり次第、捨てていただいて良いので』
あはは、それって、俺がターゲットになる気がするよ?
『その頃には、ドルーシア国へ行かれている頃でしょう。彼の国は、まだ気づいておりませんが、周りの国から騎士団が向かっております。それまでは、近くで待機していただければと思っておりますが、いかがでしょうか』
「ふうん。ドルーシア国をどう扱うかは、うちの子たちと相談しておくよ。できるだけ待つけどね。それから、あっ! フラット!」
ググンと大きくなったフラットは、ギルマスの身体を床に押し倒した。抵抗してはいるけど、もう動けないよね、ギルマス。
じゃあ、また連絡するからとブーゲリアとの通信を終えた。
「ノル、ギルマスを拘束してくれるかな。強くしていいから」
わかった、とアイテムボックスから取り出したロープで、フラットに抑え込まれたままのギルマスの両手首、両足首を縛った。それを見たフラットは、ゆっくりと足首だけを押さえつける。起き上がれと言われて、身体を起こした時、グルグルと縛り上げられた。
コンコン、とドアが鳴る。
「誰ですか?」
「失礼致します。副ギルドマスターのアグリストと申します。入ってよろしいですか?
どうぞ、と招き入れて、即鑑定する。
うん、この人は依頼が嘘だったということは知らなかったみたいだね。
アグリストは拘束されたギルマスを見て、ため息をついた。
「冒険者たちが戻って来ましたが、いかが致しましょうか」
そうですか、と俺は立ち上がる。
「フラット、サン。こいつを見ててね。煩くしたり逃げようとしたら気絶させていいよ。できたら殺さないで」
りょーかい! 返事をくれた二人に、焼き菓子と果実水を出してやった。果実水をボウルに入れてくれるのはノルだけどね。
こちらです、とアグリストに案内されたのは会議室だ。
入ろうとしたとき、ノルが追いかけてきた。
「失礼しま~す」
わざとふざけた感じで入って行く。
「誰だお前。ギルマスはどうした?」
「ギルマスは拘束しました。僕はSランクのナギです。勇者について行った方は、全員いますか?」
いるぞ、と聞こえた。うん、間違いなさそうだね。
「それじゃお話ししますね。先日の勇者のドラゴン討伐についてですが、村人も村も殲滅したのは間違いないですか?」
「……間違いない。勇者たちに言われたからな。俺たちは雇われだ。だから仕方なかった」
ふうん、そう来たか。
「そうですか。じゃあ、あの依頼が正式にギルドからの依頼じゃなかったということを知ってた方はいますか?」
嘘だろ、何言ってんだ、と口々に言う。
「あの依頼は、ギルドからの正式依頼ではありませんでした。もちろん、世界ギルドも知らない事です。内密に勇者召喚をしたドルーシア国が、金をちらつかせてギルマスを動かした結果です。なので、依頼ではなく虐殺ですね」
そんな……冒険者たちは項垂れる。だが、一人が立ち上がって言った。
「たとえそうであっても、依頼を受けた書類はあるんだぞ。だから俺たちは依頼を受けたって事だ!」
あはは、バカだなこいつ。
「すみません、あの書類はギルド発行ではありません。それに、依頼を受けた記録もない。どういうことか理解できますか? あの日の事に関してはギルドは無関係です。確認してみて下さい。ギルドのマークが違うでしょう? おそらく偽造だと思います」
副ギルマスのアグリストの説明で、全員が書類を取り出した。確かに、ギルドのマークとは違う。
そんなこと……
俺たちは騙されたのか……
それでもギルドの責任は……
いろいろと苦情が出てるが、通るはずない。
「どんなに言われても、あなたたちに弁解の余地はない。それは確かだよ。既に全世界に連絡したし、世界ギルドにも連絡がいってるから。冒険者としては生きていけないし、犯罪者として奴隷落ちか斬首だろうね。じゃあ、拘束させてもらう。大人しくしてた方がいいと思うよ」
ノル、と言えばアグリストが数人の冒険者を呼んでくれた。
部屋に入って驚いていたけれど、それぞれを拘束してゆく。途中、警備隊が来たので一緒に作業してたね。
このまま副ギルマスを昇進させればいいのにね。中身も全く問題なく、人望もある。職員もギャンブル好きのギルマスではなく、アグリスト中心で仕事が回っていたと認めてるんだもの。
警備隊は、鍵を取りに来て欲しいという。それならついでにギルドの牢にギルマスを入れて欲しいと頼んだ。すぐに対応してくれたので、ギルドの牢の鍵は俺のアイテムボックスの中だ。
警備隊には、フラットとサン、ノルに行ってもらった。
俺は連絡がくると困るから、ギルマスの部屋で休んでる。オニキスはどうしてるかな、と赤い鞄の中を覗いてみれば、伺うようにこちらを見上げている。
『どうしたの、大丈夫?』
『主。申し訳ない。我は己の感情だけで動こうとしておった。それを静かに動いてくれた主には感謝する。やはり眷属になってよかった。そうでなければ、我はただの暴れ竜になっておった』
『あはは、気にしなくていいよ。僕も暴れたくなるほど腹立たしいよ。冒険者が盗賊以外の人を殺める、罪もないドラゴンを殺める。そんなことは許されない。普通の魔物は間引く必要もあるんだけどね、ドラゴンは別。静かに暮らしているということは、知能が高い。だから人と共存していたんだ。それを私利私欲だけで討伐するなんて許されないんだ。だから、もう少し待って。ドルーシア国に行ったらきっちりカタを付けるから』
ありがとう……そう聞こえた。
「ナギ様。本日はどうされますか? どこかにお泊まりでしょうか?」
「別にどちでもいいんだよ。今のところ、ドルーシア国が今回の騒ぎを知らないなら、この街に泊まってもいいよ。でも、そうじゃないなら出発したい」
なるほど、とアグリストは考えている。
ただいま~と戻って来たノルたちから鍵を受け取る。そしてアイテムボックスへと放り込んだ。
アグリストの話しを聞かせれば、泊まっていいなら泊まる? と聞き返す。
どうしようかな。
「オニキス、どうする? 速く行きたいでしょ?」
『うむ。そうではあるが、世界はどうするのだ? それによって明日の朝でも良い。ブルードラゴンも村人たちも戻ってこぬからな』
そうだね、と鞄の中にむかって話している俺を、アグリストはじっとみている。
サンがバッグをのぞき込み、オニキスの腕を引っ張る。
『おにきすぅ、でてこないのぉ?』
いや、出よう。
そう聞こえて、小さな黒竜が赤い鞄から出てくるのを、驚いて見ているのはアグリスト。
「ナギ様。そ、そのドラゴンは?」
「僕の眷属だよ。小さくなってもらってるけど、本当はかなり大きいんだ。ギルドよりもでっかいかな」
ええ! と驚いている。
読んでいただきありがとうございます。
ナギさん、お見事!
でも、オニキスもよく我慢してるよ。できるなら敵を取らせてやりたいよね。
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