85 地上に戻ったそうそう。どういうこと!?
こんばんは、こんにちは。
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
回収が終わると同時に奥の大きな魔方陣が光り始める。
キラキラととてもきれいな魔方陣だ。そこに全員が乗れば輝き始めて、浮遊感のあとはどこかに降り立った。
どこかの部屋だね、と外に出れば、騎士たちが整列している。どゆこと?
「お疲れ様でございましたナギ様! すぐに王宮へお越しください!」
なんで?
「国王陛下がお待ちでございます!」
ダメだよ。宿か借家を探すから。
「え、えっと。それは……申し訳ございません。私たちも命を受けておりますので、何卒お願い致します」
え~とぐずっていれば、数人がこちらを見ている。あ、途中で助けた人たちだ。
「お~い! お兄さんたち、大丈夫だった? 無事戻れたんだね~」
向こうも大きく手を振ってくれてるよ。
小さなドラゴン姿のオニキスと背負ったノルは手を振り、フラットは大きく尻尾が揺れてる。フラットの首の鞄に入ったサンも腕を伸ばして手を振っていた。
俺も思いきり手を振っておいたよ。
でも。でもね、この騎士さんたち、どうしよう。
「ギルドマスターは? ギルドに報告する必要があるので」
「王宮で共にお待ちでございます!」
これ、外堀を埋められてる?
どうしようか、とノルとオニキスに相談する。
「いかなきゃダメみたいだよ。このままずっとさらされてるのも嫌でしょ」
嫌だ。
『そうだな。主の気持ちは理解できるが、今日の所は行った方が良いぞ』
くそー! 腹が立つ。でもこの人たち、なんで今日待ってたの?
「ねえ騎士さんたち。なんで僕らが今日戻ってくるとわかったの?」
「はい。入られてからずっとこちらで待機しておりました!」
なんでそんなバカなことを……
思わず呟いちゃったよ。
「で、馬車で行くの?」
はい! と元気に答える。
「どれくらい時間がかかるかな?」
「一時間程かと!」
いちじかん……?
「あのね。さっき最下層を出てきた僕たちに馬車で一時間って。酷くない? 王宮と連絡取れる? 宰相と話したいんだけど」
すぐに! と水晶を取り出して連絡している。
『シュウ様! お疲れ様でございました。随分早いので驚いております。申し訳ございませんが、こちらにお越し下さい。御食事をご用意してお待ちしておりますので』
「えーーーっ。俺たち王宮の料理は嫌いなんですけど。冒険者が食べるような大皿料理じゃなきゃいらないです。それに家を借りたいので、探す方が先決でしょう?」
『りょ、料理は問題ございません。ユリアロウズ国に連絡して聞いております。それにデザートのことも。あと、王宮で寝泊まりしていただいてよろしいのですが』
「狭い部屋はいらないし、それぞれの部屋も大きい方がいいから一軒家を借りようかと思ってるんです。だから早く戻れるならいいけど?」
『承知しております。一度部屋を見ていただければ』
「ふうん。じゃあ、しかたないね。但し、今から一時間も馬車に乗るのは無理ですよ~だから王宮内で、ドラゴンが降り立てる場所ありますか?」
『はい、騎士の修練場でかまいませんので』
でも、そこからが遠いよね。
「王宮にでっかいテラスありますか? 身体の大きさを調整して降りてもらうから」
問題ございません、と宰相がテラスに目印をつけてくれるらしい。赤い旗だって。
「じゃあ、今から行きますね。騎士たちはゆっくり戻っていいですよね」
問題ございません! だって、騎士さんたち。
先に行くね、とフラットに椅子をつけてもらう。サンの鞄は俺が肩からかける。俺の後はノル。そして椅子の前には小さいオニキスが乗った。
一瞬で結界を張ってくれたフラットはふわりと跳び上がる。
『ねえ、ナギ。来るときにみたお城に行くんでしょ』
『そうだよ。場所わかる?』
『うん、マップに赤いのがあるからわかる~じゃあ、ちょっと早く飛ぶね』
お願いね、とノルにつかまるように伝えた。
グンと速さを増したフラットは気持ちよさそうに飛んでいる。
馬車で一時間ならフラットなら十五分くらいかな。
王城が見えてきたので上から確認すれば、赤い旗の側で宰相が両手を振っている。
『あの旗のあるテラスに降りて』
りょーかい~とゆっくり高度を下げてくれた。
静かに降り立ったフラットはすぐに結界を解除して身体の大きさを調整してくれた。
ノルはゆっくりとおりてオニキスを受けとめる。すぐさまその背にぶら下がったオニキス。続いてサンの鞄も受け取ってくれたので、俺は鐙に脚をおいてスルスルと下に降りた。
フラットはすっと椅子を抜いてからアイテムボックスに片付けた。
「お疲れ様でございました。かなり早かったので驚きました。どうぞ、こちらへ」
案内されたのは謁見の間だろうか。
大きな扉が開いている。
「ようこそ、ナギ様。私、迷宮国シルビア国王のエド・ナンダルシア・シルビアでございます。この度はお疲れ様でございました」
「こんにちは。冒険者のナギです。こちらはパーティーメンバーのノル。そして僕の眷属でドラゴンのオニキス、シルバーウルフのフラット、スライムのサンです」
とりあえず、紹介だけはしましたよ。
「ナギ様。お疲れ様でございました」
宰相の側で頭を下げるのはギルドマスターのエリュクだね。
貴族だろうか、きらびやかな宝石満載の服を着たやつらが怪訝そうに俺をみてるけど。
「それで、僕たちは休みたいし、一軒家を探したいので失礼したいのですが。何がご用ですか?」
何を偉そうに下民が、と聞こえたよね。誰が言ったのかな? あ、あいつだ。お前の顔は忘れないよ、絶対。
思わず睨んじゃったけど、威圧までは使ってないはず、です。でもあいつは顔をそらしたよね。
「宰相が提案したと思いますが、住居は王宮をお使いくださいませ。それに御食事の用意が間もなく調いますので、食事をしながら話しませんか?」
ちょっと、庶民っぽく話すの?
「あの人たちも一緒ですか?」
そうですが……
「じゃあ、嫌ですね。僕たちはあの人たちがいう下民ですので、とてもこちらで食事などできません。では、失礼します」
踵を返して入り口に向かって歩き出す。当然、皆付いてくるんだけど。
「ナギ様。どうか、どうかお待ちくださいませ!」
あはは、宰相は必死だね。なんでこんなに必死なのかな?!
「全て、全て下がらせますので。ですので、どうか、今一度陛下とお話を!」
なんだかかわいそうになってきたよ、宰相が。
「あのね、宰相殿。僕、ああいう人たちが嫌いなんです。皆の税で肥え太るのが貴族じゃないと思います。でも実際は民の収める税を国からもらうんでしょ? 一円ももらわず、全て自分でまかなうのであれば問題ない。でも違う。それが現状です。僕たちだって依頼を達成して税を引かれます。街で食事をしても税が上乗せされた料金を払う。それが当たり前だから。でもね、その庶民に対して下民などと言える人は信用できない。上級の人間なんだと思っているのでしょう? それならば、この国は僕にとって魅力ある国ではない。迷宮だけ踏破してとっとと出て行きますので」
困った顔してるよね、国王は。宰相は項垂れてるよ。
じゃあね、と宰相に手を振って歩き出す。
「失礼なやつだ! お前など、宿すら取れないようにしてやる!」
あ、いっちゃったね。
くるりと振り向いて、歩き出す僕には怒りしかない。
貴族どもの前に立って、全員を鑑定する。これだけの貴族がいてどういうこと?
「宰相殿。貴族はここにいるおじさんたちだけ?」
「いえ。下級貴族はこの場に降りません」
ふうん。
国王をチラリと見れば、どうでしょうといわんばかりの視線を送ってくる。
フルフルと首を振った。
「あなた。僕に宿が取れなくするっていいましたよね。それに下民だっていった。ギルマス! 宿は取れませんか? とれないなら、少しやすむためにユリアロウズ国に戻ります。オニキスとフラットならすぐですから」
「問題なくご用意できると思います」
「広い部屋がある?」
問題ございません、と淡々としたものだ。それよりもドロップ品と話しが聞きたいんだろうけど。
「宰相殿。僕も通信用水晶は持っていますので、話しがまとまったら連絡を。気に入らなかったら、一度自分の国に戻ります。残りの迷宮には潜りにきますけどね」
ふふっと笑ってフラットに乗った。振り返れば、ギルマスが慌てて駆け出すのが見えましたよ。
『どこに行くの、ナギ』
『そうだね、ユリアロウズ国に戻ってもいいけど、とりあえず少し待つかな。商業ギルドで家は借りれないのかな。まだギルマスは戻らないだろうし』
『それなら街を歩いてみるか? 美味い物もなくなったしな』
おお、それはいい考えだね。
じゃあ、街に行こうとフラットは飛んだ。
街に入った門の側で俺たちはフラットから降りた。するするとフラットも大型の狼になったあと、街を散策する。
皆の興味は食べるもの以外ない!
屋台で止まって買い込み、次の屋台でも、次の屋台でも……
もうエンドレスだよ。
他にも見たいものもあったけど、置物などは置く場所もないからね。
さて、宿をどうするかを考えなくちゃ。
そろそろギルマスは戻ってるかな。
ギルドの近くには屋台はないので、ここぞとばかりに囲んだ眷属たちは、早く食べたいと文句を言い始める。
到着しなくちゃ食べられないでしょ、と歩いてやっとギルドに到着~
「済みません、ナギですけど。ギルマスは?」
「あ、どうぞお二階です」
そう言われて勝手に上がることにした。
ドアをノックすれば、どうぞと聞こえたので中に入った。
そこには意外な人がいたんだけど。
「あれ? 宰相殿はここにいてもいいのですか?」
何やってんの、仕事は?
「はい。問題ございません! 今の私の仕事はナギ様のために動くことでございますので」
ああ、そうなのね。
どうぞ、と促されて腰を下ろせば、オニキスが食いたい! と俺をつつく。
「失礼して、この子たちに食べさせてもいいですか?」
どうぞどうぞ、といってくれるギルマスに甘えて、後ろに深皿を三人分置いてやれば、それぞれがアイテムボックスから取り出すけど、オニキス以外はそのまま食べられない。ま、サンは食べられるけど、肉串に引きずられます。
ノルが後ろで串から抜いて皿に盛ってくれる。かなりの量だけど、これくらいは食べちゃうだろうね。サンがどうぞ、とノルに肉串を渡してるのがかわいい。
「それで、宿の事なんですけど」
「先ほどは失礼致しました。貴族たちがあのような考えだとは思っておりませんでした」
いや、ほとんどがそうでしょうよ。
「とりあえず、宿を探しましたが、広さはどれくらい必要でしょうか?」
そうですね、とでっかいベッドが一つ以上で、同じ部屋の中に一人部屋が二つ、大きな風呂があってルームサービスがあればなおいい。そして安全面に問題ない宿。
「るうむさあびす、とはなんでしょうか?」
「あ、ごめんなさい。えっと軽食などを部屋まで持って来てくれたり、飲み物や菓子類を運んでくれたり。できたら部屋で食事したいくらいです。宿では好機の目にさらされることが多いので」
なるほど、とギルマスは考え込んでしまった。
「別に借家でもいいんです。とりあえず、一週間ほどは休みたいし、料理もつくって保存しておきたいので。それにドロップ品の整理もしたいので」
なるほど、と宰相も腕を組む。
「無理ならユリアロウズ国に帰ってきますよ」
いえいえ! と焦ってるよね。戻ればドロップ品のことを聞かれるだろうし、最悪、ユリアロウズ国が買ってしまうからね。
「では、王宮では無理ということですか」
うーん、王宮はねぇ。
そうだ! とでも手を打ち鳴らした宰相がこちらを見る。
「離宮ではいかがでしょうか。完全に独立しておりますし、使用人もおります。料理人も用意致しますので」
でも使用人に関しては鑑定するよ、絶対。
宰相は入り口と裏口には騎士を置くし、出入り業者は王宮から向かわせるという。それに賓客が使う離宮なので、寝室も広いしいくつもあるらしい。それはいいかもしれないね。
「でも、今日の貴族は絶対に近寄らせないで欲しい。下級貴族には会ってないけど、悪いことをするやつはだいだい上級の貴族」
なるほど、と頷く宰相だよ。知らなすぎるでしょ。
それなら一度見て欲しいという。でも離宮に庭はあるのかと聞いて見れば、ぐるりと庭があって、正面の庭はかなり広いらしい。オニキスもそこから飛んでいいんだって。それならいいかもね。
でも、今夜からは無理でしょう。
問題ありません! と請け負ったけど大丈夫?
さっそく支度を、と水晶を取り出して連絡し始めちゃったよ。大丈夫なのかな。
「よかったですね。正直、そこまでの宿は我が国にはありません。観光よりも迷宮の方が有名でして。他国の貴族が訪れることは、国のしがらみしかありませんので」
ふうん、まあ、めんどくさくないからいいんじゃないの。
「ナギ様。さっそく準備を始めておりますので、今から移動致しましょう」
馬車で?
馬車です。
えー、といってみる。
十分くらいだと聞いて頷いた。
既に全部食べた眷属ズは満足げだ。あちゃ~汚いよ。クリーンしてやって、食器もクリーンすると、それぞれがアイテムボックスに片付けた。
『話し聞いてた? 今から行く?』
『うむ。一度見てみればよい。行くか』
そうだね、と立ち上がる。
恭しく頭を下げる御者に促されて馬車に乗り込んだ。俺は一人では乗れないので、ノルが持ち上げてくれました。はずかし~。
本当に十分で到着した門から馬車のまま王宮とは反対側へと進んだ。
読んでいただきありがとうございます。
騎士三たちも大変ですね。
でも、バカ貴族は使い物にならない。まあ、それは現代にも言えることかな。個人的な感想ですよ、これは。宰相はたいへんですね。頭ハゲるんじゃないの?
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




