84 最下層のボス、ノーライフキングが天に登ったよ。
こんばんは、こんにちは。
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今日もよろしくお願いします!
※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
さっそく調理台でブルーブルの肉をカットしていく。
皆少々厚めでも問題ない。
それに、ミスリルで作った牛刀はかなりの切れ味なんだよね。ひくだけで切れちゃうから楽ちんだ。
サンがやって来て、カウンターの上でお手伝いしてくれるから、野菜サラダを盛ってもらうことにした。皆の深皿にこうやって、とやってみせればすぐに覚えてやってくれる。その後に、ゆで卵のむいたやつを置いてもらうよ。
せっせと肉を切りまくって、王宮で切ってもらってたものも含めれば、十キロくらいはあるかな。足りないだろうけど。あと、米を研いで空になってる二つで米を炊く。それは旅用の魔道コンロを取り出して炊くことにした。
スープは王宮でもらってたオニオンスープでいいでしょ。
この時間に風呂に入ってもらおう。
「ねえ、そこでごろごろしてるなら、今の間にお風呂に入ってよ。まだまだ肉も切るんだからね」
「我は食事の後でよい」
『僕もごはんたべたい~』
『俺もさきに食事がいいな』
はぁ? お前たちぃ! ま、でもいいか。肉もクリエイト先生に切ってもらおう。
焼き肉のタレはっと。少々足りないかな。じゃあ、十本コピーして。
ニンニクおろしは前にたくさん作ったのがある。ワサビをすりおろすかな。あとは……
光が収まった時、大型のトレイの上には二十キロ分くらいのブルーブルの焼き肉用スライス肉があった。
ありがとう、クリエイト先生!
もう一つお願い、とワサビを二本取り出してすりおろしてもらう。もちろん、コピーで数は増やしておきましたよ。
さて、そろそろ焼くかな。
キッチンの外に出した魔道コンロで肉を焼く。そろそろご飯が炊き上がるからね。
あとは余熱で蒸らそうと、キッチンのコンロの上に炊飯鍋を置いて、フライパンを四個取り出した。
サンは一所懸命薬味を分けてくれてる。オニキスとノルの分だけど。俺たち子供組はニンニクだけプラスすることにした。
じゃあ、焼くよ~
四つのフライパンにブルーブルの肉を放り込んで焼きまくる。
かなり大型のフライパンだから片手で振ることはできないけど、トングで回しながら焼きますよ。
肉汁がなくなる前に焼き肉のタレを入れて前後に揺らす。
子供組の分はその段階でニンニクを入れますから。匂いが漂うので、皆がざわめきます。
最初に盛り付けたのはフラットとサンの分。
残りのフライパン一個分はノル。二つ分はオニキスで終わりです。
続けてフラットとサンの分を焼くのですが、今回は俺の分もあるので、フライパン二つ分焼きますよ。あと二つは大人用です。
ガタガタとフライパンを揺すりながら肉を焼く。このフライパンなら、日本の焼き肉定食が何人前取れるでしょうか。おそらく一つで四人前は取れるでしょう。ああ、恐ろしや~
フラットにひとつ分、サンと俺でひとつ分、分けました。すぐに大人用はそれぞれに深皿に放り込みます。
皆、肉ばかりですが、俺は炊いておいた炊飯鍋から白米を注いでがっつきます。もちろん、その間にもフライパンの中では肉がジュージューいってますけど。
やっぱり焼き肉にはご飯!
うまいなぁ、と感激していれば、オニキスがご飯が欲しいと言う。
「じゃあ、ご飯かがりはオニキスね。手伝ってくれるんでしょ?」
うっ、と唸ったけど、立ち上がったオニキスは欲しい人、と聞いてから皆の分をつぎ分ける。最後に自分も深皿に直接入れて、焼き上がった肉をおいてくれと差し出した。これ、焼き肉丼じゃないの。
それを見たフラットも焼き肉丼製作希望。当然、サンもノルも。
それなら最初から焼き肉丼にしろよ!
肉を焼きながらパクパク食べる俺は、少々怒ってますよ。
結局、何回フライパンをひっくり返したでしょうか。
二十キロほどのブルーブルの肉が皆の腹に入りました。すごいとしかいいようがありません。普通の人じゃ養えないやつらです。
あはははは~
一人笑っていればどうしたのかと聞かれたので、そのまま話したよ。
「うむ。確かにそうだ。我らを養えるのは主殿くらいであろうな。よい主をもったぞ」
フラットもサンも賛同してくれるんだけど、喜ぶべきなのかな。
「俺も同じ気持ちだよ。前はいつもピリピリしてたからね。パーティといっても名ばかりだったし。でも今は違う。毎日が楽しいし、何ができるか考えたり、何をすべきかを考える。とても幸せだと思ってるよナギ。あの時、俺を残してくれてありがとう」
そう頭を下げてくれるノルだけど、こっちこそだよ。辛抱強くいろいろ考えて動いてくれるノルの存在はありがたいと思う。みんなうちの子だからね。僕が食事の面倒を見るのはあたりまえ。だからこれからもよろしくね。
そう言えば、オニキスもフラットもノルも笑顔で頷いてくれた。ただ一人をのぞいては……
『あるじぃ~でざーとはぁ? サン、しふぉん、がいいの~』
ブハッと吹き出してしまった。なぜ? と問うノルにサンの言葉を伝えれば、少し遅れて吹き出した。
じゃあ、と食器をキッチンに持っていってテーブルをクリーンする。
人数分のシフォンケーキを取り出して、サンはミルク。フラットは番茶ラテ。ノルとオニキスは紅茶を渡した。俺はもちろん番茶ラテだよ。
風呂に入ってぐっすり眠った俺たちは元気が戻ったよ。
朝から爆食いを要求されるほどね……
朝食後、空間から出て四十一階層へ降り立つ。
大嫌いな蟲ですよ。
台所に出没するGの超でっかいやつ、ムカデのでっかいやつ。サーペントくらいの大きさ。蜘のでっかいの、蠅のでっかいの、などなど。とにかく数が多いし、飛ぶんだよね。これはオニキスのブレス殲滅で終わったけど。
ボス部屋にはいろんな蟲がミックスされた変なのがいたけど、ここもあっという間に終わった。
四十二階層はジャイアントオーガだね。
朝からむさ苦しいことこの上ない。
でも、めげないのはうちの子たち。どんどん倒して、倒して、倒しまくってボス部屋です。一階層ごとのボス部屋があるみたいだね。
ここには、オーガーエンペラー? 普通ではみないランクのオーガがいたよ。
四十三階層は、目が二つあるサイクロプス。二つ目の目があるやつです。ボス部屋には、三つ目があるサイクロプスがいました。
四十四階層はでっかいミノタウロスなんだけど、首が二つあった。気持ち悪いなぁ。ボス部屋にはキメラがいました。
四十五階層は、マンティコアっていうらしい。よく分からないライオンだかサルだかそんな感じのやつがいたんだけど。しっぽに毒針がありました。ボス部屋はオルトロスという頭が二つある犬? かな。その側にはブラックドッグっていう闇系のでっかい犬がいた。
四十六階層は海っぽかったね水が。だって、シー・サーペントがたくさんいたもの。ボス部屋には、広い海があって、クラーケンがいた。なんで海?
四十七階層は砂地で、サンドワームのぶっといのがごろごろいました。ボス部屋は、ヒュドラ。これはオニキスの指示通りに動いて終わりました。
四十八階層は雪原で、トナカイみたいなでっかい角の魔物が出ました。オニキスも見たことがないらしい。ボス部屋は、俗に言う雪男みたいだった。魔法がきかない毛らしくて、いろいろやったけど、最終的にはオニキスのブレスでやっつけた。
四十九階層はヘビモスですね。ボス部屋にはでっかいグリフォンがいましたよ。フラットが楽しそうに倒しちゃったけど。
全階層のボス部屋でドロップ品とオマケのドロップ品をアイテムボックスに回収した。なかなか興味深いものがありました。確認するのが楽しみだね~
さあ、次は現在の最下層に挑戦です。本当に最下層? ときけば、間違いないらしい。じゃあ、行こうかな。
さて、何がくるやら。
おっと、また出たよ、きったないやつら。
ゾンビやらなんやら、リビングデッドたちがたくさんです。中にはリビングアーマーたちもチラホラ。
ああ、酷い匂いだし、嫌になるよ。
ここは任せろと、オニキスがドラゴン姿でブレス放出! 広範囲を焼き尽くしてゆく。
後には何も残っていないのが怖い……
多分半分くらいまではこの状態が続くよね。早く終わって欲しいよ。
ただ後をついて行くんだけど、死に損ないがでてくる。それはノルの爆裂玉やフラットとサンの凍結で終わるんだけど。
その間、俺はドロップ品とオマケのドロップ品をアイテムボックスに回収しまくりですが、なにか?
半分ほど進んだ後は、デュラハンだ。
『結界を張った。呪いがあるからだ。急所は腕にもつ首だ。首を吹き飛ばせば後は簡単!』
ありがとう、オニキス! フラットとサンは空中からデュラハンの首を凍らせてゆく。あとはノルが爆裂玉で粉々にしてゆく。狂ったように首を探すデュラハンはサンの指ライフルの的だね。
俺も少し参加しましょう。
デュラハンの首を破壊すると同時に指ライフルで撃ち抜いてゆく。
オニキスは上空から同じように攻撃してるけど、首は一発で吹っ飛んでるよ。当然身体もね。パワーすごすぎじゃないの。
そろそろボス部屋だね。
全てを狩り、俺は全てをアイテムボックスに回収する。
「では行こう」
妙に冷静なオニキスは、ボスの予想ができてるのかな。
『よく来たな冒険者。いや、ドラゴンが? シルバーウルフの王が? なぜお主らがここにおるのだ』
あれ、しゃべるんだね。
「僕の眷属だからね。話ができるの?」
『うむ。我は不死の王であるから話もできる。お前の持っておるのはリッチの杖ではないか。ドラゴンとシルバーウルフ王を眷属に持つもの故か』
「わからないけど、前に倒したリッチからドロップしたものだよ」
『そうか。では、我を倒したなら、この杖、ノーライフキングの杖をお前にやろうではないか』
ほんと! すごいね、もらえたら最高だ。
「それならお願いしようかな。魔法で戦うの?」
それがよかろうと聞こえた。
『主殿、止めておけ。そやつはかなりの魔法の使い手。勝てるものはおらぬぞ』
『ナギ、止めた方がいいよ。ねえ、皆でやっつけよう!』
「大丈夫だよ。僕頑張るから。みんなは呪いがかかると困るから、そっちでオニキスの結界の中にいて」
『ならばナギよ。楽しませてくれることを希望する』
うん! 希望されちゃったよ、ノーライフキングに。
なぜだか怖いとは思わないんだ。
だって、紳士的に話しをしてくれたから。それにアンデッドとはいえ王とよばれる存在だ。卑怯な戦いはしないと感じるんだよね。
ブワリとわき上がるのは魔力だろう。
すごい魔力だね。
どの魔法で攻撃すればいいのかわからないけど、全ての魔法を使うと決めた。
ボン! と二メートルくらいの火球が飛んでくる。
<相殺>
一瞬で消えた火球にノーライフキングは驚いてるみたいだよ。
相殺できればと思って氷魔法をイメージしたんだけど、成功だったね。
『なかなかにやるようだな。それではこれはどうだ』
真っ黒い霧がすごい勢いで迫ってくるよ。
<浄化>
一瞬で消えた黒霧にまたも驚いてるんだけど。
なかなかのものだ、と自分の杖で俺を指す。その後、杖の先からは雷みたいな光が飛んできた。
<相殺>
再び消え去った光に、驚いているのだが、ここからが本番みたいだ。
絶え間なく火球が飛んでくる。水、風、氷、雷と休む間もなく攻撃が続いている。相殺を回避を繰り返して避けまくってるけど。さすがに途中で身体強化をかけた。三十分以上避けまくっただろうか。
『なかなかやるではないか。お前ならば、我を天へと昇らせてくれるやもしれぬな。我を天へ送ってくれるか?』
「天に昇りたいの? うーん、できると思うけど。でも、もう闇の王なんかにはならないようにね。天には僕のおじいちゃんがいるんだよ。だからよい人になって」
『お前の祖父がおるのか? 何やつだ』
「創造神だよ。アルムおじいちゃん」
『ふむ。創造神の孫』
「あ、血の繋がった孫じゃないよ。でもね、僕のことを孫だって可愛がってくれるんだよ。会えないけど、大好きだよ」
『わかった。我も徒人になれるよう努力しようではないか。あとどれほど生きることになるのかと考えておったが、やっと逝ける。だが、お前が我に勝利する他ないのだ。頼んだぞ、創造神の孫よ』
やってみるよ。
そう答えた。
このノーライフキングを天に送りたい。浄化したい。そして徒人として次の人生を歩むことができるようにしてあげたい。
<昇天>
今までに見たことがないほどの光がノーライフキングを包み込む。
『これが死というものか、ナギよ。お前の魔力は清んでおって心地よいものだ。やっと我は天に昇れるのだ、感謝する。約束通り、お前に我の杖を下げ渡す故、使って欲しい。ありがとう、ナギ。この姿になって二千三百年。ここにきてからもかなり経つ。だが、お前と会えてよかった。我が人生の終止符をお前に託して良かった……さらば、ナギよ。さらばナギの仲間たち……感謝する……』
それから一分くらい経った頃、やっと光は収まった。もうそこには何もない。
「いっちゃったね、王様」
『うむ。なかなかの王であったな』
『かっこよかったね、あの人』
フラット、人なのかな?
『おじいちゃん、いいひとだったね』
いや、だから人なの? サン。
「なんだかかっこよかったですね。復活するんでしょうか」
それはないでしょうよ。
『うむ。それはないな。五十階層のボスは替わるであろうし、フィールドの魔物も変わるやもしれぬな』
じゃあ、ドロップ品だね。
目の前には杖が浮いている。まるでお前のものだというように、俺の前にあるんだけど。
手に取って見れば、浮力は消えた。これ、本当に俺にくれたんだね。ありがとう、王様。
かなりの大きさの魔石、そしていろんなものがたくさんあった。オニキス、フラット、サン、ノルと名前が書いてるものを見つけて驚いた。小さな宝石箱に入ってたんだよ。それとは別に大きな宝石箱にはいろんな財宝がわんさかある。王様が頭につけてた王冠もあったけど、これは売らないよ。あと、魔剣が数本。全て違う魔剣だったけど、鑑定してみると、この迷宮に来る前、王様を討伐しようとやってきた勇者が持っていたものらしい。すごいもの手に入れちゃったよ。それと対になっていると思われる短剣もあった。他にもいろいろあったけど、宝石箱も素晴らしいものだったので、全てを持ち帰ることにした。そしてオマケのドロップ品も当然回収しましたよ。
読んでいただきありがとうございます。
ノーライフキングの気持ち、なんだか切ない。
ナギが送ってあげたから、アルムおじいちゃんが何とかしてくれるとおもうよ。
次の世でも指導者になるべき人のような気がします。そうであってほしいな。
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




