71 アルムお爺ちゃんの夢を見た、気がする。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします!
さて。今日は朝から大変だよね。
朝ごはんは何を食べるかな。
おにぎりと味噌汁。それとだし巻き、だけじゃ足りないか。じゃあ、厚切りベーコンで決まりかな。
二人に声をかけて、キッチンへと向かう。
フライパンをコンロに置いてスイッチオン。
おもむろにアイテムボックスからベーコンの塊を取り出して、一センチくらいにカットしてゆく。一口大に切ってフライパンに放り込んで、並べてからブラックペッパーをかけてゆっくり焼きましょう。
そうだ、マカロニサラダがあったね。
中くらいのボウル二つと普通のボウルに取り分けて、テーブルに置いた。
充分に朝食を食べた俺たちは、ボス部屋前の安全エリアへと空間を出た。
『じゃあ、ボス部屋に挑戦だね。ナギ』
うん、と扉に魔力を流した。
ギィと開いてゆく大きな扉の奥は、またもや氷の世界。
やっぱり寒さ対策をしててよかった~
三人で中に入れば、ボボボボボと明かりが灯されてゆく。
バカでかいボス部屋の中には氷の山がある。かなりの大きさの山は壁一面といっていい大きさなんだけど。
その前には、またまたクマだ。
でも、その迫力は桁違いだね。
これは見たことのない魔物だから、とりあえず鑑定っと。
<鑑定>
山神熊カムイ Aランク:氷のダンジョン 魔物 山の神と称される巨大な熊。地属性を行使する。人語を解し、人化の術も使う。性格は陽気なモノが多いが、山を侵されると激怒する。
そういうことか。
地属性を使うんだね。これは面倒な気がする。
『矮小な人族か。なにゆえここに来た。我の山を汚すか。ならば許さぬぞ。我が滅してくれよう』
あははは、こういうことなの?
メキメキと音がした途端、氷の地面が盛り上がる。
バキバキバキッ!
地面から氷の太い槍が生えた。嫌な予感は大当たりだ。サンを呼び寄せててよかったよ。
空中から見下ろした巨大熊カムイは、真っ白な姿でこちらを見上げている。これはどうやってやればいいんだ?
氷の世界にいるということは、炎が苦手なはず。だけど、普通のファイヤーボールくらいじゃ無理でしょうね。
『フラット。どんな攻撃が通るかわからないから、とりあえず、炎の魔法でやってみてくれる?』
『強いのがいい?』
うん!
わかった、とフラットはカムイに向き直る。
<獄炎>
フラットの魔法が炸裂したけど、正直驚いた。
ブワッとカムイが燃え上がったから。その上、この世のものとは思えないほどの炎がカムイを包む。
グギャーー!
おお、効いてる効いてる!
カムイはゆっくりと移動し始める。どうやら氷の山へと逃げたいみたい。
でも、それは許されそうにない。より強くなった炎がカムイを引き戻す。
氷の槍があちらこちらから飛び出してくるんだけど、サンはそれを氷刃で切断してゆくんだ。すごいよね。
じゃあ、俺も負けじと炎の刃を繰り出してカムイを攻撃していった。
グガァーーーッ!
最後の雄叫びだったのか、カムイの身体はゆっくりと傾いていった。
ドドドーーーン!
倒れたカムイは既に生きていなかった。
フラットとサンと一緒に氷の地面に降り立つ。
少しだけ待ってみたけど、何もおこらないみたいだね。
よかったぁ~ 心から安心したよ。
『ナギ、やったよ!』
「うん、すごいね、フラット。サンも頑張ってくれたね」
えへへへ~と二人は胸を張る。あ、サンの胸ってどこなんだろうか。
二人をなでていれば、カムイが消えていった。
うん、よかったぁ。
その後に出てきたのはドロップ品。
えっと、皮とガラス? いや、水晶みたいだね。それもかなり大きいよ。そして魔石。でっかくて透明な宝石のような魔石だけど、これはなんだろうね。
<鑑定>
ホワイトトパーズ:迷宮産 無色透明で水晶のような宝石 ヒーリングストーン 人の内面強化をしてくれる 最高級品 魔力を持っている宝石
おお、すごい!
内面強化だって。ヒーリングに使えるんだね。なんかすごいものが出てきたね。
ドロップ品はこれだけじゃない。
火魔法の能力が強化されるネックレス。外部からの火魔法攻撃をある程度軽減する指輪があった。
『あるじぃ、たからばこがあるよ~』
おお、サンが見つけてくれたね。
かなり豪華な箱だよ、これ。
中に何が入ってるのかな。
変な仕掛けはなさそうだし、開けてみようか。
中にあったのは真っ白い剣。これすごいなぁ~ 『カムイ剣』だって。山神熊カムイの剣ってことなのかな。とりあえず持っててもいいかな。オニキスに聞いてみようか。まあ、後の話だよね。
オマケのドロップ品を回収して次の階層へと向かうために転移陣の上に乗った。すると、いつもと違う光がわき上がる。
何これ?
スゥーッと浮遊感を感じた後、降り立ったのは調査団運搬用のコンテナの裏だった。
「主殿! 戻ったか」
あれ? オニキスだ。
「戻って来たのかな」
そうか、二十二階層で終わりなんだな。でもコアの部屋には入れなかったから、まだまだ成長するんだろうね。
「ただいまぁ~」
「よく無事で戻った。フラットもサンもご苦労であった」
ふぁふ、キュイキュイと二人も嬉しそうだ。
どうだったのかと聞かれて、いまのところ二十二階層でおわりだったと伝える。でも、まだまだ成長すると思うと素直にいっておいた。
詳しいことは戻ってからね。どこへ帰ればいいんだろうねと言えば、王宮へ戻って欲しいらしいと聞いて、うへぇ、と顔をゆがめた。
とりあえず戻って休めと言われたので、そうするからとフラットに乗ってその場から飛び立った。
「お帰りなさいませ、ナギ様」
おお、ブーゲリアが向かえてくれたよ。なんで?
オニキスから連絡があったらしい。
何か食べてからお休み下さいと言われて、喜んで食堂へ向かった。
「お帰りなさいませ」と皆に迎えられる。ただいま、と椅子に座る俺とテーブルにのるサン、俺の隣りにお座りするフラットの前には、軽食が出された。
サンドイッチとかじゃなくて、パンケーキだ!
温かいものを食べて安堵する。あの寒さを思い出してブルリと震えた。
クレープみたいなお菓子も出てきて、腹に溜まるものをと考えてくれているのがわかる。三人でバクバク食べまくってしまった。
そしてお腹がいっぱいになって風呂へと向かう。当然、侍従が先導してくれた。
でっかい風呂で泳ぎまくった俺たちは、身体を洗い、俺は長い髪を洗う。
いつものように風魔法を纏ってソファに座れば、果実水が置かれたので反射的にゴクゴク飲んだ。お代わりまでしちゃったよ。
その後は、でっかいベッドに転がって、三人でゴロゴロする。するんだけど、長く続くわけもなく。
あっという間に眠ってしまった俺たちだった。
俺は夢を見ていた。
ううん、夢だと思う。
++++++++
ナギよ。
お前はこの世界で何をしたい?
儂はお前を自由にしてやりたいのじゃ。お前が心から信頼できる者らと共に楽しむところがみたいの。
王宮のことなど放っておけば良い。
お前の利益になる部分は問題ないのじゃが、人情に振り回されることなくお前の人生を楽しむのじゃ。
ミスリルも手に入ったであろう? 薬草やポーションもできよう。もちろん、冒険者としての活動はお前たちのためには必須となるがの。
とにかく、儂の望みはお前が楽しく生きてゆくことじゃ。お前が悲しそうに悩む姿はみとうない。そのためならば力を貸すからの。いつでも連絡すれば良い。
良いか、大きな組織に飲み込まれぬようにするのじゃ。
お前と眷属とで家族をつくれば良い。それがお前の世界なのじゃ。
前世では思わぬ最期をむかえさせてしもうた儂じゃが、この世界ではお前の爺として見守るぞ。儂の手助けもしてもらえれば嬉しいの。
儂は地上に降りて直接手を下すことができぬのじゃ。その使いをお前に頼みたいが、どうじゃろうか。
また返事をきかせて欲しいのじゃ。
朝起きれば身体も心も軽くなっておるじゃろう。残りの迷宮を探索して、皆で旅に出るがよい。
返事を待っておるぞ。
アルム爺
++++++++
ん? 夢みてた?
あーーーーーっと。
ちょっと待って、朝だよ?
隣りにはフラットとサンが寝てる。
もしかして、皆で朝まで寝ちゃったの?
『ナギ、おはよう』
「うん。おはよ。ねえ、朝になってるよ?」
『そうだね。夕べ起きなかったからさ』
『朝ご飯行くけど、サンはどうするの~?』
『いくよ~あるじぃ、だいじょうぶ?』
うん、大丈夫だよ。
よかった、と嬉しい声がきこえちゃったよ。
サンはフラットの頭に乗っかって、俺の隣を歩く。
「おはようございます、ナギ様。お身体は大丈夫ですか?」
あ、侍従さんだ。
「おはよ。さすがに疲れてたみたい」
よかったです、と先導してくれる。
部屋に勝手に入るなと言った翌日から、ここ、階段の降り口で待つようになったんだよ。気を使ってくれてるよね。
おはよう~と皆に挨拶しながらオニキスに手を振る。
「主殿。疲れておったのだな。腹が減ったであろう」
うん、ペコペコだよ。
そう言えば、ガッツリ系の朝食が出てきた。
オニキスとフラットは朝からステーキかよ。サンは? 肉でした。
あははは、俺も食わなきゃな、とグリルしたチキンを見つけて頬張る。
ん? これワサビ醤油みたいな味がするよ。
野菜のソテーにもよく合う! どうしてワサビ?
聞いてみれば、ビーサという根菜類らしい。これスライスしてるけど、おろし金でおろせばワサビだよね。今度やってみよう!
ふと思いついちゃった。
これって白米に乗せればどんぶりができるよね。
旅飯にはいいかもしれない。牛丼とカツ丼くらいしかつくってないから、試してみよう。
あ、それなら焼き肉丼もいいよね。ざっくり細切りレタスをのせて焼き肉をトッピング。
それならオークのミソ豚丼もいい。たっぷりタマネギを入れて、ちょっとビリ辛もいいね。
うん、旅飯を思いついちゃったよ。
えっと、大きなどんぶりっていうか深皿も買わなくちゃね。
いくつかかっておこうかな。
どんぶりの具は鍋ごと、フライパンごと入れればいいかな。その方が手っ取り早いね。
そうだ、迷宮の探索が終わったら、旅飯をいろいろ考えてみよう。メンバーたちに試食してもらって作り置きだ! おいしい食事がないと元気がでないからね。
そんなことを考えつつ、お代わりしてたべちゃいました。
それからは迷宮のドロップを確認することにしたんだけど、すぐに後悔したよ。
フラットとサンにも出してもらったよ。
もちろん、ノルとオルティアさん、侍従さんにも手伝ってもらった。
だって、とんでもない数があったからね。
やっと終わったのはお昼過ぎ。
疲れた~
今度は全てをフラットとサンに収納してもらって、脱力した。
じゃあ、と昼食を食べる。
食べる、食べる、食べる……
食後のお茶をいただいているとき、ブーゲリアに聞いてみた。
「ねえ、ドロップ品はどうすればいいかな。ギルドに持ってった方がいい?」
正直行きたくないけど。
「それは全て国で買い取らせていただきます。我が国の未開発ギルドで出たものですから、初物というわけで。ぜひ、よろしくお願いします!」
あはは、ブーゲリアは興奮してるけど、大丈夫?
「まあどっちでもいいよ。売れないなら売れないで他国で売るしね」
とんでもない! と叫んだよブーゲリア。笑っちゃいそう。
とりあえず、オニキスに聞いてからにする。
オニキスなら長く生きてるからいろんな事がわかるしね。それに鑑定のグレードが違うでしょうよ。あれ? 俺、オニキスの鑑定したっけ? うん、まだだね。
全部落ち着いたらやってみようっと。
フラットもサンもかなりレベルが上がったと思う。この国を出てから皆を鑑定しよう。もちろん、俺もね。
じゃあ、とりあえず、明日から再び迷宮だね。
今日は旅飯作りに時間をかけることにした。
とりあえず、何をつくるか。
肉はいろいろあるから問題ないんだけど。あ、解体頼んでたっけ? うーん、覚えてないけど、まだ解体を頼みたいのがあるから、後で行こうかな。
最近、日本の食材を食べてない。悲しいんだけど仕方がないんだよね。こんにゃく芋とかこのあたりにないかなぁ。調べてみようかな。
<サーチこんにゃく芋>
ん? 王宮の畑にあるみたいだけど、なんで?
見に行きたいけど、今はフラットの空間の中。キッチンがないからね、ここじゃなきゃ。
当のフラットはサンを連れてオニキスのお手伝いにきてるんだ。
その間に、と思ったんだけど。
もしかしたらできるかな。王宮内にあるならできるかも。板こんにゃくと糸こんにゃくがほしいなぁ。
(クリエイト)
ぶわっと光ったあと、調理台の上にはこんにゃく各種がある。
ありがとう! クリエイト先生!
今度は、それをコピーしまくる。多分俺しか食べないだろうから、たくさん作ってアイテムボックスに保存だね。
糸こんにゃくはおいといて。板こんにゃくを使おう。
甘辛煮と焼いたこんにゃくに焼き肉のタレを絡める。似たような感じだけど、甘辛煮は和風だよ。こういうとき、ゴマとかあればいいんだけどね。ん? ドレッシングとかソースがあるんだからあるでしょうよ!
(クリエイト)
あはは、やっぱりね。いりごまがたくさん出てきたよ。でも大袋だね。こういうときフリーザーバッグがあればいいのに。S、M、L、LLとあったらいいな。でも、この世界にはビニールはない。それなら俺の魔力でお願いしようか。箱入りでお願いします。できればダブルファスナーの方がいいです!
(クリエイト)
ピカッとさっきよりは長く光ったけど。
その間に、アイテムボックスにこんにゃく各種を片付けた。
光が収まった後には、俺の家で使ってた箱入り冷凍保存袋が鎮座している! それじゃあ、今度はコピー連発だね。
はぁ、ちょっと疲れたかも。
でも、これから料理を始めるんだから、と焼き菓子を取り出して立ったままで食べる。ガッツリ二個食べちゃったよ。
読んでいただきありがとうございます。
アルムお爺ちゃんは本当にナギが可愛いんですね。
王宮なんか放っておいていいって。あはは、すごいこと言うよね。
でも、ナギじゃないとできないんだろうね、神様のお手伝いなんて。そんな気がします~
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




