63 メルトとノルの新生活。でも、後のトラブルの予感が……
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
このあたりから、大事件が起こりそうな予感がします。
今日もよろしくお願いします!
休憩しようと、お茶とお菓子を取り出して皆に振る舞う。
その間に、俺はオニキスに念話するんだ。
『オニキス、今いい?』
『うむ。主よ。悩んでおるな』
『そう。俺、メルトとノルの邪魔してる?』
『そういうわけではなかろうが、今の状況は良くないと思うぞ。ノルは別として、メルトは確実にお前に依存しつつある。それに街も困っておるのは本当だ。高ランク冒険者が何人もいなくなっておるのだ。だが、魔物は減らない。そうなればどうなる? 主はまだ子供故、森には入れぬが、あやつらは違うのだ』
『……やっぱりそうだよね。ギルマスに聞いてみたいと思ってるんだけど』
『一度戻るか? 国のことは主がおる方がよい。だが、ずっと迷宮に潜りっぱなしと言うわけにはいかぬだろう。それ故、一度戻って現状を確認すれば良いではないか。主が留守の間、家は二人に使わせれば良い。その方が家も喜ぶ』
なるほど。家も放りっぱなしだし、一度戻るかな。
『じゃあ、この階層が終わったら一度戻ろうか。街の現状を聞いてから決めればいいよね』
『うむ。それがよかろう』
オニキスはずっと感じていたらしい。俺が悩んでいたことも感じてくれてた。
それなら一度戻って街の様子を見るかな。ギルマスにも会いたいし。魔物もたくさんあるしね。
いくらかお金を返さなきゃだけど、それも話したい。
家は使ってくれていいし。
「ねえ、僕からの提案だけど。このあたりで迷宮から出て、一度街に戻らない?」
どうして? あはは、メルトとノルがハモったよ。
「街のことも気になるんだ。僕は年齢が足りないから森に入れないけど、メルトとノルがいないとSランクとAランクが少ないって事だよ。森の魔物はなかなか減らないし、高ランク冒険者がいるといないじゃ全然違うよ。メルトはベテランSランクだからね。ノルも優秀な斥候だし」
ふむ、と二人は考えてるよ。
「まあ、それもそうだな。じゃあ、一度戻って見るか、家も心配だし」
じゃあ、ここから戻ろうかと上に戻る転移陣に立った。
外に戻ったとき、太陽の光がまぶしすぎて眼を閉じちゃった。あまり時間はかかってなかったってことだよね。
一度、王宮に戻ってブーゲリアに話しをすることにした。
王宮内は忙しそうだ。
国からも重鎮たちがやって来て会議をやっているみたいだね。
ブーゲリアを呼んでもらい、一度街に戻るからと話した。
「どれくらい戻られるのですか?」
「すぐだよ。街の高ランクを二人も連れてるからね。ギルドで話しをしてくる。戻るのは数日かな。まだミスリル鉱脈も半分しかできてないし。迷宮も途中で戻ったんだ。結界を張ってあるから大丈夫だよ。その間に何かあるなら連絡して。できるだけ早く戻るから」
「承知しました。ですが、オニキス殿だけでもいてもらえないかと……」
うーん、どうするかな。
『オニキス、ブーゲリアが言ってるけど、人型にはなれないんだよね』
『いや、問題ない。人型が良ければそれでも良いが、美味い物を食わせてくれるならば、という条件付きであるな』
あははは、と笑ってしまう。
「ごめん、おかしくって。オニキスがね、いてもいいけど美味い物を食べさせるのが条件だって。多分、肉はかなりの消費量になると思うよ。人型にもなれるらしいし。それでもいいの?」
「それはありがたいです! ぜひ、お願いしたい。人型というご無理はおかけしますが、食事の事でしたら美味しいものを提供することはお約束します。肉も各地から集めましょう。国民の分以外は全てこちらで買い取っても良いくらいです」
すごいね。
「それならアイテムボックスに獲物がたくさんあるんだけど、少し置いて行こうか? ここで解体できるの?」
大丈夫だというので、冷蔵のマジックアイテムに入れることにした。
解体場には、料理長が待っててくれた。
そして以前ギルドに務めてたらしい解体専門のおじさんもいた。
「ナギ様。この者は解体の腕は一流です。ギルドで冒険者と少々もめまして。嫌気がさしたとき、私がここへ引き込みました」
引き込んだって、と笑ってしまったよ。
「じゃあ、どれくらい出そうか? えっとね……」
解体してない魔物を言えば、ワイバーン、オーク、ムーンベア、ディグビッグなどを指定した。それに、サンドクラブの脚もたくさんあったので出しておいた。あと、ドロップしたオークとクマの肉もね。
これだけあれば助かる、と料理長はほくほくだ。
解体のおじさんも楽しくなったと、解体を始めちゃったよ。
人型になったオニキスは、黒髪のイケメンだった。
背が高く筋肉質で、かっこいい。服はブーゲリアが用意してくれたよ。着替えもたくさんあるみたいだけど、偉い人みたいだね。
「主。気をつけて行くのだぞ。何かあったら呼んでくれ。我はここでは仕事をしておるのだ。いるだけでいいらしいが、依頼として金をもらえると聞いておる。それが嬉しいのだ。主たちに美味い菓子を食わせたいからな」
え? 俺たちにお菓子を?
わ~い、と喜んでるのはフラットとサンだ。
じゃあ、行ってくるね。
そう言ってメルトたちは空間に入り、俺とサンはフラットに乗った。
フラットの背はいつも快適だ。
でも今は結界を張ってくれている。
だって、とんでもない速さで飛んでるんだもん!
普通の移動手段なら一週間以上かかるけど、フラットなら半日だったよ。
懐かしいギルドの入り口をくぐって中に入る。
「あれ、ナギさん! お帰りなさ~い!」
えっと、また戻るけど。
「あはは、一度戻りました。ギルマスは?」
いるわよ、と階段を駆け上がってゆく。
「ナギ! 戻ったのか?」
「一度戻ったよ。また行くけど」
「そうか、とりあえず無事で良かった」
あはは、ありがと。
「ナギ! 上がってこい!」
は~い、と階段を上がる。フラットはここで寝てるそうだ。あれだけ頑張って飛んでくれたからね、寝てていいよ。
ボウルに水を入れて置いてやった。
「無事に戻ったな。で、まだ終わってないんだろ?」
「うん。まだだよ。ギルドの方はどうなの? 魔物討伐は上手くいってる?」
「んや~、なかなか進まないな。マックスたちは頑張ってくれてるんだけどな。ショルダーもピットも頑張ってるぞ。それでも高ランクの魔物となるとなかなかだ。お前たちが戻ってくれればいいんだけどな」
「あはは、僕はダメでしょ。まだ七歳だし。でもメルトとノルが戻ったらどう?」
「そりゃ助かるさ。二人も増えたらな。それにショルダーとピットとでも臨時で組んでくれたら最高だぞ。回復役と魔法使いがいれば全く不安はないな」
ふうん、そういうことか。
「どうする、メルト」
「そうだな。誰か回復役、魔法使いとかいるのか?」
「最近、こっちへきたやつらがいる。回復役と魔法使いのコンビだから依頼が受けられなくてな。ピットとショルダーが一緒に連れてってるぞ」
そうか、と二人は顔を見合わせてる。
「じゃあ、俺とノルはこっちに戻るか?」
ん? とギルマスが驚いてる。
「いいのか? 何かあったか?」
「違うよ。僕と一緒にいたら、活躍する場が違ってくるからね。家は二人が使ってくれたらいいよ。誰も住んでいないとせっかく作ったのに、もったいないでしょ」
そういうことか、と頷いてるよギルマスが。
「そうしてもらえれば助かるが、いいか?」
よろしくお願いしますと二人は頭を下げていた。
そろそろショルダーさんたちが戻るだろうし、顔合わせだな、ということになった。
食事はどうする? と聞けば食堂で食べて帰るらしい。朝から頼めば家を汚さずにすむからなと笑ってた。
じゃあ、と今までの取り分をざっと計算したお金を渡す。
「これ、こんなに必要ないぞ。今までだって食べることも寝る場所も用意してもらってたんだしな。まあ、しばらく食べるくらいは俺たちも持ってるし、何より家を借りるんだ。あれだけの広さと風呂まであるんだからな」
そう言って革袋を返してくるんだけど、そういうわけにもいかないし。
じゃあ、とそれぞれ金貨五十枚ずつ入れて渡した。
これだけは持ってて欲しいと言えば、わかった、と苦笑いだ。
多分、俺がいなければお酒も飲むだろうしね。魔法袋は二人とももってて良いからと、それぞれに鍵を渡した。ギルマスも返してくれたからね。
一度家にもどるか、と言うことになったけど、顔合わせがあるでしょと言えば、そうだな、だって。
忘れてたんかい!
じゃあ夕食を食べることにして、食堂に向かった。
いつもどおりガッツリ注文すれば、嬉しそうに肉を取りに来てくれるお兄さん。水を何杯もお代わりしてくれるウエイトレスさんも変わりなさそうだ。
まだ少し早い夕食だけど、食べ始めれば止まらない。
フラットはステーキを二十枚頼んでいるけど、既に八枚目だよ。サンは口元をドロドロにしてクリームパスタを食べてます。俺はクリームパスタと角煮、グリルチキンなんかを食べてる。時々、フラットに横取りされるけどね。
メルトとノルもガッツリ系だ。
「ナギ! 戻ってたんだな。フラット、お帰り~」
あ、ショルダーさんだ。さっそくフラットにお菓子を渡してる。テーブルの上にいるサンにもくれたみたい。
「ただいま。ギルマスから聞いた?」
「おう、聞いたぞ。メルトとノルが力貸してくれるなら百人力だ」
「そうだね。悪いね、ナギ。気を使わせて」
「こっちこそ、悪いと思ってるんだ。ここでずっといたいのにね。でも終わり次第戻ってくるよ。あっちのギルドにも行ってないし。人が足りなくなったら依頼出すから来てくれる?」
当然だ、と回復役と魔法使いを紹介してくれた。
回復役はCランクのマリー、魔法使いも同じくCランクのランだ。
「噂に聞いてたナギ君ね。どうぞよろしくね」
「かわいいね~男の子なんでしょ? お姉さんと買い物行こうよ」
あはは、お姉さんたち、かなりのダイナマイトボディだね。
「戻って来たらゆっくり話したいね。メルトとノルをよろしく。僕は明日には戻るから」
ええ~、と残念だと連呼するお姉さんたち。
早々に食事を終えた俺たちは戻ることにした。
だって、メルトはショルダーさんたちとお酒を飲み始めたからね。ノルも帰るといったけど、ランさんに気に入られたみたいで、がっつり腕を掴まれてた。
俺は年齢的にダメだしね。何より、酒の匂いが嫌だ。
先にギルドを出て、街をみながらあるく。
といってもギルドの裏だけど。遠回りして戻ってみた。
変わらない街に安堵する。
そうだ、明日、ミルロット商会で買い物しておこう。それから戻ればいいや。
家はきちんと結界に守られていた。
うん、いい家だね、やっぱり。
鍵を開けて中に入れば、少し空気がよどんでる。それなら、と屋根の窓を開けて空気を抜くことにした。
風呂だ! とお風呂に入ることにする。
湯を張っている間に、キッチンをみてみた。
余分な鍋はいらないだろうし、食器は多すぎるけどおいててもいいよね。炊飯鍋はたくさんあるし、全てを旅のぶんとして揃えてるからこのままでいいかな。
『ナギ、お風呂入ろう~』
わかった~
寝室へ行って着替えを手に取る。
そして、風魔法で乾燥しておくことにした。
『お風呂、気持ちいいね~』
『サンはここのおふろが、いちばんすきぃ~』
二人ともご機嫌だね。あっちの王宮では豪華なお風呂に入ったけど、なぜだかここの方が落ち着くんだ。なんでかな。
ぷかぷか浮いてるサンの周りを子犬のフラットがバシャバシャ泳いでるんだ。かなり可愛いね。
最初はフラットと二人で冒険してきた。そこに眷属としてサンが加わってオニキスが加わった。気の置けない身内だとこの子たちの事は思ってる。でも人はそうはいかない。いろいろ考えるし気も使う。だから思いついた今回のこと。
その方がよかったんだと思うけどね。
何だかすっきりした気分だ。
明日はまた戻るけど、三人で迷宮に潜るかな。オニキスはどうするんだろう。聞いてから決めるかな。
俺がミスリルに拘ったのには理由がある。
クリエイト先生にお願いして剣を作ってみたかったんだ。
大きくなるごとに剣を作らなきゃならない。でも、ドールーハみたいな職人がどこにでもいるわけじゃないし。それなら作ってみてもいいかなと考えたんだ。それだけじゃなくて、他のものも作りたい。軽くて丈夫なミスリルだからこそ、いろいろ試してみたいんだ。魔道具を作るのにも使えるし。あ、でも魔法が通りにくいんだっけ?
まあ、いろいろやってみればいいよね。
ゆっくりと眼をあける。
隣のマットには大きなフラットが横たわってる。俺の腹の前にはサンがいる。
久しぶりにここで眠った。
やっぱりここが一番居心地がいい。
自分の家に戻ってきたって気がするもの。
ふぁ~とあくびが出ちゃうけど、そろそろ起きて朝食の準備しなくちゃね。
着替えをしてればフラットが起き上がってフルフルと身体を震わせる。サンも大きく口をひらいてびろーんと身体を伸ばしてるんだけど、これってあくびして身体を伸ばしてるって事だよね。
「二人とも起きてね。ご飯食べるでしょ」
『ごはん、たべる~』
『朝ご飯はなに、ナギ』
「何がいい? オムレツはあるよ。それとハンバーグとかだし巻きとか?」
『じゃあ、白いご飯とおかずは全部!』
『サンも~』
はいはい、と着替えを済ませて引き戸を開けた。
ん? メルトは? ノルは?
二人とも戻ってないの?
『二人は戻ってないみたいだね。誰かの宿に泊まったのかな』
そうじゃないかな、と食事の準備を始めた。
おかずをいろいろ取り出してゆく。ハンバーグは、こんもりと山になったよ。オムレツはそれぞれの器に。だし巻きは大皿に並べた。そしてサラダを出す。葉野菜のサラダが食べたかったから。
炊きたてご飯もアイテムボックスから鍋ごと出して、それぞれにこんもり山盛りにした。
読んでいただきありがとうございます。
ナギは二人のためにと考えたけど、どうしてこういうことするかな。
このあと、何もなければいいんだけど。ちょっと暗い予感がするよ。
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