59 マントール国なんてうっちゃいますよ。いざ、出陣!
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
国盗りしちゃいましょう。
今日もよろしくお願いします!
「ナギ様。昨日に引き続き、本日もご足労いただきまして申し訳ございません」
おお? 陛下が頭下げるって、いいのかな。
宰相も一緒に頭下げてるからいいのか?
ま、それは放っておこう。
「こちらこそ、連日お時間をいただき、ありがとうございます」
美味しい紅茶を飲みながらそう答えてみましたよ。
「それで。そちらのお気持ちを聞かせていただけますか?」
脚をぷらぷらさせながら聞いてみる。ソファに座っても脚がつかないんですよ、俺は。
数枚の羊皮紙がテーブルに置かれる。
どれどれ……
・マントール国の統治権を譲る事に対して(国全体をユリアロウズ国として統治する)の対価として以下の金額を支払う。
白金貨五百万枚
・ナギ様ご一行はいつでも王宮に逗留できる。
・それ以外に必要な事柄に対しては、別途相談の上決定する。
うん、なんだこれ?
えっと、白金貨五百万枚っていくらだろう。
日本円に換算したら……ご、五百兆円!?
なんでこんな金額が提示されるの?
「あの。この金額ってどういう風に算出されたのですか?」
どうやら、これから先、国民が増加し商人たちその他の税収が見込める。それについて、戦いもせずに譲ってもらうのだから、マントール国に攻め入った場合の軍事費、雇い入れる傭兵への対価、兵糧部隊、騎士などが亡くなった場合の補償金などを鑑みて、一年分の国家予算くらいはと用意したらしい。
メルトは目が点になってるよ。
ノルは真っ青だね。
俺は、少々呆れてる。フラットとサンは全く気にせずお菓子を食べてる。オニキスは一瞬驚いたけど、宰相の説明に大きく頷いてるから、そんなものなのかな。
ふぅ、と息を吐いて首を捻った。
これほどの金が用意できるなら、別に隣国は必要なくないか?
俺の態度をみて、陛下と宰相は不安そうだ。
「あの。ナギ様。金額が少ないでしょうか?」
いえいえ、とんでもございませんよ~
「別にそういう意味じゃありませんから」
そう言って、こちら側の情報を開示しようと顔を上げた。
「じゃあ、こちらも情報を提供しましょうか」
・ミスリル鉱脈がある
・金銀銅はごくわずか、残りは鉄
・迷宮がある。未開の迷宮が全部で五カ所、そのうち魔物が溢れそうなのが三カ所、二カ所はまだ大丈夫
この情報を聞いた陛下と宰相の顔から血の気が引いた。あはは、マントール国の価値が上がっちゃったからね。
「あ、あの。ナギ様。思いも寄らぬ情報でしたが……ナギ様はミスリルや迷宮をどうされますか?」
うん、宰相偉いよ! 心折れそうだよね。
俺もちょっとかわいそうになっちゃった。うーん、正直、国の統治権買取の金額がかなりだったからね。
「僕は正直いって、どうしたいかは考えた。でも、国としてはどう? マントール国は全く気づいていないけど」
はっ? と宰相の意識が飛んでったみたい。大丈夫か?
「気づいてないよ。だから、そのままだったらかなりの継続的利益が上がるよね。設備投資もかなり必要だけど」
ふむ、と宰相は考え込んでる。
「ナギ様は、ミスリルや迷宮はどう使われるおつもりでしょうか」
ああ、陛下は宰相の態度が見えてないの?
「うーん、使うというか。ミスリルは欲しいよね。あと迷宮は今のままじゃ現場にも行かれないよ。もちろん、ミスリル鉱脈にもたどり着けないね。うちのメンバーじゃなきゃ無理です」
やはり、と項垂れた。陛下は甘いよね。
「では、ミスリルも迷宮も利益が上がることになりますが。それはどうさせていただければよろしいですか?」
やっぱり宰相は賢いね。ちゃんと具体的な回答を求めてるよ。
「僕はミスリルが欲しいかな。それと迷宮は調査が入る前に潜りたい。それくらいでしょう」
「なるほど……ミスリルの採掘権はナギ様ということですね」
いやいや違うよ~
「そうじゃなくて。全部採掘するってこと。魔法でできると思うんだ。試してみないとわからないけど」
なるほど。頷いているから、理解はできるんでしょうね。
「とりあえず、ミスリルと迷宮のことは後で話しができましょう。先ほどのマントール国の統治権に対して、金額的にはいかがでしょうか」
うん、別にいいんじゃないですか。
「ありがとうございます。それでは、先に国の統治権買取のについて契約を致しましょうか」
でも、ミスリルが発掘できなきゃ話しはかわるけど。
「それは後日、別契約を致しましょう。先ほど提示したものに書いたとおり、別途相談の上決定と致しましょう。こちらとしては、もしミスリルの採掘ができなかった場合、国の採掘量に対しての割合を決めて、毎月お支払いをするという形をご提案するようになるかと思います。迷宮ですが、こちらの調査には時間がかかりますので、その前に入ることに関しては問題ないかと」
ふむ。とりあえず、僕にとって悪い話しじゃないよね。
「じゃあ、とりあえずマントール国に攻め入りますか?」
ええ! と驚いているけど、なんで?
「こちらとしては、買取になるなら下手な工作はいらないんだよね。だからいつ攻め入ってもいいでしょう?」
それはそうですね、と唸ってるけど。
「すみません。ただですね、ナギ様たちが国を落とされた後、他国の反応が心配で……」
なるほど。それは簡単なことでしょうよ。
僕たちがマントール国の制圧に向かったら、すぐに騎士団が後を追って王宮になだれ込む。
先発のオニキス主体で王族とその関係者を処罰する。同行するメルトとノルは、騎士団を迎えて、オニキスの指示に従い動くことになる。
そしてオニキスの役目が終わり次第、ユリアロウズ国が勝ちどきを上げる。それでマントール国はユリアロウズ国が制したということになる。
俺が話す内容をメモしながら宰相は大きく頷いた。
じゃあ、騎士団長が詳細を話し始めるんだけど、それは後にしてくれる?
「オニキス、いつ行く?」
『我はいつでも良い。今からでも良いぞ』
あはは、気が早いね。
まあ、突然の方が慌てるよね。
うーん、どうするかな。俺たちが移動するのは簡単だ。俺とサンはフラットに。メルトとノルはオニキスに乗ればいいだけだ。馬でマントール国の王宮までいくとなるとどれくらいかかるんだろうね。
聞いてみれば、騎士が馬で駆けても一週間くらいはかかるって。ダメじゃんよ! あ、違うか。ダメじゃないよ、多分。
「いいこと思いついた! 騎士団長、今からマントール国に向かうなら何人くらい?」
「……必要な人数を揃えましょう」
「そうじゃなくて。弱いやつはいらないよ。ちゃんとした騎士、剣士だけね」
「そ、そうですか。それでは八十人程かと」
うん、十分じゃないかな。
「後で馬とか馬車とかを連れてくるのも面倒だね。基本的に一緒に連れて行くとして。とりあえず、国を落とした後は、誰が指揮を執るのかな?」
それは、とさすがの宰相も口をつぐんじゃった。
貴族たちと話せる方がいいよね。それくらいの能力を持ったやつはいないの? 頭のいい人がいいね。
探してみます、と宰相は執事と話しを始めた。
「ねえ、フラット。もしかしたら、空間に騎士や馬たちを入れてもらうことになるかもしれない。八十人くらいって大丈夫かな?」
『無理ならいくつかに分ければいいよ。今作ってるのは僕らの空間だけだから。騎士を下ろしてオニキスが処罰したら、あとはユリアロウズ国がやるんでしょ? 僕たちは関係ないよね』
「そうだね。チャンスは作ってあげるんだから、あとをどうするかはユリアロウズ国の腕の見せ所だね。僕たちには関係ない。迷宮に行くかなぁ」
『それがいいよ、あるじぃ~。サンもいきたいよ』
行こうねぇ、と笑ってみせる。
オニキスも行くと言うし、メルトもノルも当然行くと手を上げた。
「じゃあ、宰相、どうしますか? 多少準備が必要でしょうから、午後一番に行きましょうか」
そうですね、と宰相は顔を上げる。
「ただ、ひとつお願いがあります」
うん? 何かな?
「王宮内を完全掌握するまで、オニキス殿にいていただきたいのですが」
そういうことですか。
でもね、そこまでする必要が俺たちにある?
「もちろん、今ここでマントール国の統治権の譲り渡しを行い、その後の移動と言うことでいかがでしょうか」
うん、別にいいと思うけど。
ノルはどう思う?
「うーん、そうですね。まあ、権利うんぬんのことは勧めていいと思います。ただ、王宮内の掌握まではどうかと。どなたが行かれるのですか?」
そう聞けば、奥の扉から一人の若者が出てきた。といっても、宰相の少し年下くらいかな。
「初めまして。私は、宰相シールド・アル・フォランドールの弟、ブーゲリア・クロル・フォランドールです。兄の元で日々研鑽を摘んでおります。この度はご無理をお願い致しますが、どうぞお力をお貸し下さい」
おお、鑑定結果も兄のシールド宰相と同じくらい優秀だね。これなら問題ないかな。
貴族たちの反応が怖いんだろうね。だからオニキスをってことでしょうけど。
「では。オニキスが始末をつけたあと、その場で決めることにしましょうか。とりあえず、実行に移しますか?」
どうぞよろしくお願いします。
シールドとブーゲリアがそろって頭を下げる。後で陛下も頭下げてるよ~
『あるじぃ~、ごはん、べてからいくの~』
『ナギ、お腹すいたよ~』
『我も空腹だぞ、主』
あはは、そういえば食事してからの方がいいかな。
「じゃあ、僕たちはお昼にしますので。準備ができ次第言ってくださいね。騎士さんたち、馬たちも一緒に連れて行きますので。ブーゲリア殿も一緒にね」
「わかりました。しかし、ナギ様。契約の方を済ませていただきたいのですが」
あは、不安なのかな。別の国に売るかもしれないって?
じゃあ、契約しますか。
目の前に置かれたのは羊皮紙に書かれた契約書です。
重々しいね、これ。
ちゃんと書いてあるよ、マントール国の統治権をユリアロウズ国に譲り渡すと。ミスリル鉱脈と迷宮、その他事柄については後に話し合うと言うことになってますね。ノルにも確認してもらったから大丈夫ですね。
国王陛下のサインと印がちゃんとある。そこに俺も名前を書いたよ、ナギとだけ。そして拇印をおしましたよ~
白金貨十万枚が入って入るという大きくて華美な箱が置かれる。それが五十個並びました。ふん、これほどのお金はみたことないね。とりあえずアイテムボックスに収納した。そして契約書に領収済み、と書いてくれと言われたので書いた。ただし、免税と小さく書かれてたのは確認しました、しっかりとね。
じゃあ、何食べる?
話していれば、是非とも王宮料理人の食事をと言ってくれる。でも貴族のご飯は苦手だしね。
「大皿料理ですけど、大丈夫でしょうか?」
ブーゲリアが言ってくれてほっとした。
じゃあ、皆でごちそうになろう!
食事をしながら考えてたけど……
今から向かえば夜になっちゃうよね。それが少し心配だ。逆に夜の方がいいって思う部分もある。オニキスの威厳がかなりの力になるからね。
そっちをとった方がいいのかな。でも魔法使いが気になるね。本来なら朝一番に突撃! とかなんだろうけど、意表を突くのもいいかもしれない。
アルムおじいちゃんならどう言うかな。
もし、ピンチになったら教えてもらおう。
今の俺は皆がいてくれる。
この国のことが終わって、ミスリルを手に入れ迷宮を探索したら別の街に向かうかなぁ。他の国で迷宮を探索したい気持ちはある。いや、かなりあるんだけど。
ユリアロウズ国のことは統治権を譲ればそれで終わりだし。ミスリルは魔法かクリエイト先生の力で鉱石を手に入れればそれでいい。あと、迷宮は望むところだね。
うん、それなら国外に出てもいいかも!
みんなの気持ちを聞いてからになるけど、マントール国が片付いたら話してみよう。
食事を終えた頃、騎士団やブーゲリアの準備が整ったと報告があった。
全員集合しているらしい。
結局、マントール国へ向かうのは騎士団が七十人ほど、そして騎士団長。あとブーゲリアとその補佐の文官数人になった。
フラットにお願いして、騎士たちは二つの空間に馬と一緒に入れた。食料などもいれたよ。もう一つの空間には騎士団長とブーゲリアたちを入れました。
俺とサンはフラットの背にある椅子に座ってる。巨大なオニキスの肩にはメルトとノルがいる。安全の為にベルトを作りました。
もちろんクリエイト先生にお願いしたよ。便利なのもは、具体的に形を指定しなくても、用途と仕様を思い浮かべれば作れるようになったんだ。これはとても助かる~
じゃあ、出発!
俺の号令でフラットは空に上がる。うしろにはオニキスがバサリと大きな翼を羽ばたかせた。
地上ではたくさんの人が手を振ってくれてますよ~
お見送りですね。ありがたや~
読んでいただきありがとうございます。
国盗り始める交渉がおっそろしいことになってますね。あはは、もう笑うしかない。
でも、未開発のダンジョンはみんなにとって楽しいものになるのでしょうか……
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




