57 おーへいなオニキスとビビる国王の面会だよ~
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
大人はズルいよ!
今日もよろしくお願いします!
「ふむ。一般的な処分である。もし、ナギの命がなくなるような事になっておったらお主は国の宝を奪った罪で斬首となっておった。お主は貴族でナギは平民ではあるが、ナギの代わりはおらぬのだ。故に、お主の考え方を変えねばなるまい。詳しいことは宰相に聞くが良い。下がれ!」
陛下はかなり怒ってくれてるけど、いいのかな。後で俺がどんな立場になるか考えてる?
領主様を追い出したあと、陛下は異例の対応をする。
応接室に移動したんだよ、僕たちを連れて。聞いたことがないんだけど。でも、迷宮のことを詳しく聞きたいから、らしい。
仕方がないので、全員で移動した。
そこには、たくさんの焼き菓子や軽食が山盛りに置かれてる。そして飲み物も、ね。
じっと僕をみる二人に、いいよと答えて置かれた皿にとりわけた。
僕も少し食べてから、陛下をみた。
「ナギ。丁寧なことばなど必要ない。いつもどおりで良い。疲れるであろう? それでだが。この度の調査結果に報告できることはあるか?」
あれ? 陛下は何か感づいてる?
「そうですね、あると言えばあります。確定的なこともないとは言えません」
あるのか? と眼がまん丸だね、陛下。
「はい。あるものと出会いましたので」
「堅苦しい話し方はいらぬ。家族と思うて話せば良いのだ。ささっ、先を話せ」
少し待ってくださいね、とオニキスに連絡を取ることにする。
『オニキス、今王宮なんだけど。陛下が何があったか話せって言うんだ。どうしよう』
『うむ。話して良いとは思うぞ。必要なれば、我がその場に姿をさらしても良い。少しでも早く彼の国を罰せねばならぬのだ』
じゃあ、話してみるよ。
陛下に迷宮での話しを聞かせた。
オニキスというドラゴンはあの迷宮の管理者だった。頼まれて核を預かっているんだけど、再びあの迷宮が生き返ることはない。そのために、特別に創造神から授かった魔法で、オニキスは自分の影の中にいることも伝えた。
敵国は西の隣国であるマントール国。
この国が欲しくて、迷宮から魔物がここを目指すように仕向けている。多数の魔法使いを用意してまで魔物を追い込みたいらしい。その上で戦争を仕掛ける。
この国の経済は安定して資産も多い。だから手に入れたい。自国の領土として欲しているんだ。
そう説明すれば、陛下は怒りをあらわにする。
「もし、不安ならオニキスを呼んで欲しいと言ってました。どうしますか?」
ドラゴンを、か?
そうだよ。
うぬぬぬ、と唸ってる国王だけど。
「ちゃんと言質はとった方がいいと思うよ」
あ、おもわず言っちゃったよ! それも普通の口調で!
「やっと普通に話してくれるのだな。これからもそれでよいぞ。親戚の叔父くらいに思ってくれればよい。それならば、オニキスとやらと対面を希望するが、この部屋では無理であろう。ホールに参るか」
すぐに宰相が動き出す。
陛下の後を連なって歩く僕たちは、誰も知らないとはいえ、恐ろしいことをしてますね。
でっかいホールに到着した。みたことない位の広さだね。
「ナギ殿。ここへドラゴンを呼び出していただきたい」
宰相が頼んできたんだけど、大丈夫なのかこの国は?
じゃあ、と皆の前に立った。
『オニキス、今から召喚するけど、ここは王宮の大広間だ。元の大きさじゃ壊しちゃうから適当に頼むね』
『承知した。国王もおるのか』
コクリと頷いて、皆を背にしたまま姿勢を正す。今は僕の前に影があるからね~
<召喚>
ズズズズーと影から黒いものが引き出されるように出てくる。
すぐに黒いドラゴンの姿に戻ってゆく黒い塊は、ズズーンと王宮を揺らしてシンとした。
『主よ。国王は何処か』
「久しぶりだね、オニキス。国王陛下はこちらだよ」
じーっと高価な装飾一杯の陛下を見下ろすオニキスに、陛下の腰はぬけそうなんだけど。まあ、普通の人ならドラゴンを目の前にすれば同じかな。
『お主がこの国の王であるか。我はオニキス。我が主ナギに名を賜りし者。此度の異常事態であるが、現実は理解しておるのか』
「は、はははは、はい! ですが、先ほどまで存じておりませんでした。何かあるのだろうとは思っておりましたが、まさか隣国が我が国を狙っておるなどとは思いもよらず……」
『ふむ。頼りなきこと。しかし、そのような治政なればこその繁栄でもある。主がこの国で生まれしこと、感謝致せ』
随分大仰に話すけど、その方がいいかもね、威力増大だ。
オニキスは西の隣国マントール国の悪行を話した。
俺も聞いたことのない情報があったりと、いくつか爆弾を落としてくれたけどね。
「それでね、オニキス。これからどう動くのがいいのかな。何か策はある?」
『まずはこの国の対応が知りたい。人ができることは限られておる。故に戦い方は重要。ならば、それを知らねばなるまい、主』
そういうことか。
人は人としてしか戦えない。
オニキスやフラット、サンたちとは同じじゃないんだ。
あははは、なんか怖いことを聞いた気がする。僕は何者なのかな。少々疑問には思うけど、それもおじいちゃんがくれた「能力」なら、ありがたく受け取っておこう。
数日戦略会議をという陛下をぴしゃりと否定したオニキスは、明日の朝には結論を出すように言い渡す。言い渡したんだよ、えらそーに。
当然、陛下は承知したよ。大丈夫かな。でも、僕はこの国が嫌いじゃない。貴族は嫌いだけどね。だからなんとかなるなら、守りたいんだ。
それまでは王宮にと言われたけど、やなこった!
出直してくるからと言えば、オニキスだけでも残ってくれないかと陛下が頼み込んだ。
そんなことできるの?
聞いてみればできるらしい。オニキスも美味い物が食べられるなら残ると言うんだけど、どうしてうちの子たちは食べるものへの執着が激しいんだろうね。
それならもう少し小さい方がいいですよ、オニキス。
『む、そうであるな。ではもう少し小さくなろう』
小さくなりました。それでも三メートルに足りないくらいあるよ?
これで勘弁してくれと言う。
そこまでしか小さくなれないのかと聞けば、サンくらいまでなら小型になれるらしい。それは一度みてみたいね。
じゃあ、その姿で残ってアドバイスすることになったみたいだから、僕たちは宿に戻ることにした。だって、宿のご飯は美味しいものね。
王宮を出てからギルドへ向かった。
一応、ミノタウロスは見せましたよ。
狩った者の所有物だからと言ってくれたので、今から持っていきます。
「すみません、魔物の買取をお願いします」
今度は買取カウンターへ直接きました。
「あ、ナギ君。謁見は終わった?」
「うん。ミノタウロスは僕のだから買い取りに出せばいいって。ここには出せないけど」
そうだね、と再び裏に連れて行かれる。
「ナギ!」
え? 誰なんだよ大声で。
ギルマスでした。迷惑ですよ~
「戻ったか。宰相殿から連絡があった。ミノタウロスは出してくれるんだろ?」
「はい。僕のものっていってくれたから。買取お願いします」
よしよし、と嬉しそうだ。
でっかい台があるけど、乗らないよね。
「あそこじゃ無理だけど、出していい?」
無理なのか、と床にシートを引くらしい。
二枚敷かれた広い場所にミノタウロスを出してゆく。一頭出す度に床が揺れる気がする。
「これは素晴らしいですね。すべて買取ということでよろしいですね」
「はい。お願いします。預けたやつはまだですよね」
「できれば明日の方が。明日ならミノタウロスの査定もできてますし」
じゃあ、そうします。
預かり明細をもらってギルドを出た。
ギルマスはご機嫌で手を振ってるけど。
宿に戻ってクリーンしてから身体を休めることにした。
夕食まで時間があるから、お昼寝しましょう。
ベッドにダイブした僕はすぐに眠くなってきた。
フラットとサンは、買ってた肉串やサンドイッチ、甘味などを頬張っている。楽しそうだね、と思った時、寝ちゃいました。
「悪かったな、ナギ」
んー? なんのこと?
「こんな高い剣を買ってもらって。ありがとうね」
「あはは、そのことか。全然問題ないよ。だって、戦う道具だもの。じゃんじゃん使ってね」
朝食を済ませてから、買い物に出かけた。
フラットとサンは肉串、揚げ物、甘味などを買いまくる。そしてアイテムボックスに入れまくった。驚く店主たちだが、快く対応してくれたよ。
その後、向かったのが武器屋です。
二人の剣を金貨四十枚で買いました。もちろん、金貨十枚は値切ったよ。
そこで礼を聞いたはずなのに、また礼を言われたんです。律儀な二人ですね~
ギルドの訓練場を借りて使ってみるというので、僕たちは観客席で見物してるよ。
二人の戦いぶりはすごい。
ノルもAランクでいいんじゃないの?
王宮に行って、マントール国をどうるすかを聞くんだけど、オニキスは戦争になろうがなるまいが、潰しちゃうでしょうね。迷宮をダメにしたんだから。その後はどうするかな。
別の国の迷宮に行きたいけどどうかな。
でも、マントール国をなくして魔法使いを殺したとして、今魔物を送り出している迷宮はどうなるんだろう。放っておけば魔物流出は止まるのかな。それとも、迷宮を止めなきゃダメって事かな。うーん、オニキスに聞いてみないとわからないね。
それに国がなくなったら誰が統治するんだろう。僕はいやだし、眷属たちも無理なら、メルトかノル? 二人が嫌だって言うならどうなる?
戦わずしてこの国が受け取ることになるのかな。
それって棚ぼたでしょうよ。それじゃ、嫌だな。俺も脚を失いかけたし、皆、迷宮でも戦ったよ、かなり。だから自動的に手に入れるなんて許せないなぁ。隣の国は何があるんだろう。知識は持ってないけど?
朝からオニキスに呼ばれた。
目覚めとしては悲しいものがあるよね。
でも、朝食はしっかり食べましたよ、当然。
『主よ。昨日、この国の戦力を確認したが、なかなかにして難しいものがある。平和ボケということだ。戦もそこそこなければ向上心も失われるというものであろうな。だが、我は彼の国を罰することを是とする。いかがいたすか』
「でもさ。今更どうこういっても無理でしょ。それならオニキスとフラットでやっちゃう?」
やっちゃうって、とメルトが呆れてるけど、とりあえず無視だね。
「それともう一つ。そうなれば、あの国は誰のものになるの?」
国王と宰相の顔色が変わる。
ふふん、そのあたりは話してるんだね。
『我は国などいらぬ』
「僕だっていらないよ、面倒だし。で、陛下と宰相殿はどう考えてるんですか?」
今ここに貴族たちはいない。でも騎士団長はいるんだよね。彼も貴族だけど、信頼できるって事かな。
「あ、あの。我が国の騎士を戦場に行かせてはいただけませぬか?」
なんで?
「それならば我が国が宣戦布告ということになりますので、彼の国の管理は……」
あはははあは~、普通に爆笑しちゃった。大人ってずるいね。
「何言ってんの? 棚からぼた餅って事? じゃあ、騎士たちで戦えばいいでしょう。この世界では、国は滅ぼした者のもの。冒険者だって魔物は倒したものの所有だよ? だからそうすればいいじゃないですか。オニキスの使命については、こっちで勝手にやらせてもらう。じゃあ、話しは終わりだね。これからは敵になる可能性もあるから気をつけてね。じゃあ皆、戻ろうか」
立ち上がった俺たちは踵を返す。
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
ん? 今度は宰相? 一応振り返って見たけど。
「と、とりあえず今一度お座り願えませんか」
皆の顔を見渡せば、呆れてるよね、これ。
「先ほどは失礼致しました。確かに我が国の利益ばかりを考えた話しを口に致しました。申し訳ございません」
深く頭を下げるんだけど、陛下も一緒に頭下げてるよ?
「ナギ様はどのようにお考えなのでしょうか」
ふうん、そう来たか。
「僕は七歳だけど、よくある話だよね、国王が十歳くらいって。でもそれは王太子が後を継いだ場合。だから裏で補佐したり手を出す人がいる。でも僕なら問題ないと思うんだ。でも国なんか欲しくないんだよ。だからオニキスが王宮を殲滅して王族や悪い貴族に責任追及したあとは、どこかの国に引き取ってもらおうかと思ってる。まあ、売るって事だよね」
あれ? 二人が安心したみたいだね。
「でもね! 僕にも欲しい物ややりたいことがあるんだ。だからそれを叶えるためのものがあるかどうかによる。あれば少し話しが変わるよ。結果、手放すのは同じだけどね」
顔を見合わせる陛下と宰相はゴクリと唾を飲む。
「だから今から調査に行ってもらいます。その間待ってもらえるかな?」
も、もちろんです!
あはは、小学生かよ!
『フラット、オニキス。調べて欲しいことがある。マントール国に迷宮があるか。知られている迷宮も、未開の迷宮も含めてね。それと、ミスリル鉱脈とオリハルコン鉱脈。その他の鉱脈もあればいいけど、絶対じゃない。それぞれ規模もわかればいいかな。発見次第念話をもらってもいいよ。こっちでメモするから。おおよその場所もわかったらありがたい』
『では、さっそく行って参ろう。フラット良いか?』
『うん。ナギ、行ってくるね~』
『気をつけるんだよ。高い所から探索してね。人に見つかれば魔法使いが多い国だ、万が一にも攻撃されたら嫌だしね』
了解~ 承知した!
フラットは本来の姿に変化する。こんなに大きかったっけ?
オニキスは外に出てからドドン! と元の姿になったよ。やっぱりでっかいよね~
一瞬で行ってしまった二人だけど、僕たちはどうするかな。
そうだ、お茶にしようかな。
読んでいただきありがとうございます。
オニキスはかなり偉そうに話していますね。まあ、彼にとっては普通ですけど。
でも、つくづくズルいですよね、国って。呆れます。
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