56 くだらない冒険者に絡まれるは、変な気配はするわ。やっぱり王都は嫌い。
こんばんは、こんにちは。
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後でね、とそれぞれ別れて歩き出した。
俺とフラット、サンはギルドに向かう。
いつもながら賑やかなギルドだが、今は昼間だからまだいい方だ。
「すみません。Aランクのナギですが、ギルマスはいますか?」
Aランク? とギルドカードを見せろと言われる。
さっと取り出して見せれば、驚いてそのまま二階にかけあがった。
「ナギ! 無事に来たな。早かったな、一人か?」
「ちがうよ。メルトとノルが一緒。パーティー組んだんだ」
「そうか。まあ、上がって来いよ。菓子でも食うか?」
うん! とフラットに乗って階段を上がる。大型の狼サイズでも俺なら全く違和感がない。
「それで、メルトたちは?」
宿を取りに行ったんだよ、馬もいるしね。
なるほど。それで?
「新しい眷属を紹介したいから。サン、出てきて」
キュ~と出てきたのはスライムですよ。
「スライムか。かわいいな。で、サンも特殊能力持ちか?」
うん、希少種だよ。
「お前の眷属たちは普通じゃないな」
あはは、普通じゃないって。
その夜は、宿でゆっくり休むことができた。
フラットは一人でベッドに転がったからだ。二つをくっつけようか? と聞いてみたが断られた。お兄ちゃんだからひとりで寝られるんだと。なんだか親離れしたようで少し寂しい。でも、お兄ちゃんになったと自覚してくれるのはいいことだ。
朝食は皆で食道へ向かう。ここは従魔も同席できるので、ありがたい。
いつものように全メニューを食べ尽くすのかという程の注文をして大人しく待っていたのだけれど、どこにいてもバカはいるものだ。
「おい、お前たちの従魔か?」
「僕のですけど」
「ふうん。じゃあ、悪いが出てってくれないか? 獣臭くて嫌なんだ。冒険者か? お前は従魔がいなきゃ戦えないかもしれんが、俺たちはちゃんとした冒険者だぜ?」
なにそれ? 理解できないんだけど。
全く無視して運ばれてきた食事に手をつける。フラットは待ちくたびれたみたいでガツガツ食べ始めた。サンも同じ。変なやつらの話などなかったような雰囲気だね。
「おい! 聞いてるのか!」
「ここは従魔を蔑視しない宿なのに。なんでそんな宿に泊まったの? 最初からおかしいよね」
このぉっ! と剣に手をかけて立ち上がる男にはメルトが対応してくれる。
「他の人の迷惑になるから外に出ろ」
男の首根っこを掴んで引きずって行くんだけど、男の仲間たちは、小さくため息をついて食事を再開した。
いいのか? と思いはしたが放っておくしかないよね。
全く気にしてないフラットたちは黙々と食べている。お代わりさえ注文するくらい楽しんでるんだ。
無言で戻って来たメルトだが、あの男は戻ってこない。
「ねえ、さっきのおじさんは?」
「おじさんってお前。ギルマスに話してもらうようにいって頼んだから問題ない。そっちのやつらは仲間だろ。ギルドにいるから引き取りに行けよ」
「すみませんね、迷惑をかけて。あいつ、大して強くないくせに威勢だけはよくって。何度トラブっても治らないんですよ。だからいつになってもランクが上がらない」
項垂れる仲間たちは辛そうだ。
「お兄さんたち、パーティーなの?」
「違うよ。あいつは誰とパーティー組んでも啖呵切ってパーティーを抜けるんだけど、後がなぁ」
ふうん、厄介な人だね。
「お前たちのランクは?」
「俺とこいつはBランクで、この子たち二人はCランクです。あいつはここ何年もCランクのまま。ギルドからは人柄に問題があるってランクアップを制限されてる」
そういうことか……
「まあ、それは本当だろうな。相手の実力も読めないようじゃ、魔物の力も把握できない。ということは命の危険度が上がると言うことだ」
なるほど、と頷いてる人たち。でも、何とかしようとしても、本人が悪くないと思ってるなら仕方がないよ。
「あの、あなたたちのランクは?」
ん? とこっちを見るメルトに仕方なく頷いたんだけど、ペラペラしゃべって欲しくないんだけどね。
「俺はSランク、こいつはBランクだ。で、この小さいのはAランクだ」
えええええーーーーー?!
そんなに驚かなくていいじゃん!
「あ、あの。歳は?」
「ナギは七歳だ。特別に世界ギルド本部が許可した逸材だぞ。剣も魔法もすごい」
なんでメルトが自慢してるの?
「確かに、ナギさんは規格外ですね。だからこれだけのランクの従魔がいるんですよ。シルバーウルフと希少種のスライムとすごい面々です」
ノルもしゃべりすぎなんですけど!
す、すごい……
あー、ほら。お兄さんたち固まったじゃないの。
「それほど規格外かな。お兄さんたち、あの人と行動を共にしてるの? それなら気をつけた方がいいよ。同じ穴の狢って思われたら大変だよ」
そうだな、とメルトとノルも頷く。
それなら、すぐにギルドに行って、縁を切ると話すらしいから大丈夫でしょ。
何とかなるならしてあげたいけど、自分が人に迷惑をかけてるって自覚のない人は無理だよね。反省しないと始まらないし。
じゃあ、と手を振ってお兄さんたちは食堂を出て行った。どうやら一泊だけだったみたいだね。
『メルト、今いいか?』
ん、ギルマスの声だ。
『連絡が遅くなったが、今日の昼前に領主様は到着するらしい。それで王宮に連絡すれば、昼の一時に謁見になったから。悪いが頼めるか?』
「急ですね。まあ、別にいいと思うけど」
いいか? と聞くんだけど、先に聞いて欲しいな。
仕方ないでしょ、と返事をした。
『ナギもいるのか? ナギ、悪いけど頼むよ、何とかしろって言われてるんだ。予定より連絡が遅くなったから謝ってくれって。本当に大変だよな』
水晶をこちらに向ければ、ナギだ! と嬉しそうなおじさんの顔。あはは、緩んでますね、顔が。
「ギルマスも大変だね。僕は領主様と一緒に行くわけじゃないし気にしなくていいよ。悪いのはあっち。僕たちでもギルマスでもないから。じゃあ、サクッと会って話してくるから」
『わかった。で、終わったらどうするんだ?』
んー、それだよね。
「今からギルドに魔物の解体を頼もうかと思ってる。買取のおじさんがミノタウロスは王都ギルドの方がいいだろうって。買取額もいい値段らしいし。他にも途中でいろいろ狩ったんだ、サーペントとか」
『サーペント狩ったのか! それは持って帰ってくれ! こっちでも欲しいやつはいるんだよ。ドールーハも欲しいだろうし。なあ、そのつもりでいてくれよ』
たくさんあるから大丈夫だよと話した。
いろいろ狩ったし、全部を王都で出したら帰れなくなりそうだしね、と言えば呆れてた。あはは、それくらいあるって事だよね。
じゃあ、と通信を終えた。
ミノタウロスは、陛下に聞いてから解体に出した方がいいって。みたいと言うかもしれないからね。それくらいはいいけど、その分遅くなっちゃうかな。
仕方なく、宿の延泊を頼んでからギルドに向けて宿を出た。
「ナギさん、いらっしゃいませ。今日はどのような御用向きで?」
あ、昨日いた男の人だ。
「あの、魔物の買取をお願いしたくて。隣ですよね」
そうです、と先を歩いて一緒に移動する。
「よう。元気そうだな。買取か?」
「うん。いいかな。いろいろあるけど忙しい?」
いいぞ、と奥の解体場へと向かう。
ミノタウロスが二頭いるけど、陛下に見せてからになるっていえば、それは絶対ここで解体したい! とおじさんが張り切ってる。あと、サーペントがたくさんいるよと言えば、欲しい! 叫んだよ、この人。
あははは、全部は無理だよね~
地元のギルドでも欲しいっていってると主張して、サーペントは半分にしてもらった。
後は狼系とかワイバーンとかが大量にいる。そしてオークも山盛りだけど。
「時間かかるでしょ?」
そうだな、と腕を組んでいる。肉はいるか? と聞かれる。
「サーペントって食べられるの?」
「美味いぞ! ワイバーンよりもランクは上だな」
ふうん、そうなんだ。
「じゃあ、サーペントとワイバーンのお肉は欲しい。オークまで頼めば遅くなるし」
すぐに戻るのか? と聞かれたので決めてないと返事した。
ミノタウロスは? と聞かれたんだけど、全部買取でとお願いした。お肉はあまり美味しくないって聞いてたからね。
それならワイバーンとサーペントの肉だけか?
うーん、ワイバーンの皮も欲しいな。あとサーペントの革も欲しいと答えておいた。
サーペントの数は、リストを確認すれば、二十七匹だった。すごいよね、この数は。
ノルとメルトに聞けば、サーペントかワイバーンで防具を作りたいと言ったので、ワイバーンの皮を二頭分、サーペントの皮は一匹分で頼んだ。もちろん、肉は全部こっちにもらうけどね。たくさん食べるから、美味しい肉は要確保なのだ! すぐに出してくれと言われたので次々取り出す。
ワイバーンは全部、サーペントは十四匹。解体場がざわめいたよ。なんだかすごい事になってるね。今日は他の解体依頼は受けられないでしょ。ごめんなさい。
ギルドを出たのだが、まだ時間はある。
「ねえ、魔物の素材の買取金は分ける?」
「いや、その必要はないだろう。ワイバーンはフラットの獲物だし、サーペントもほとんどフラットとサンとお前が狩った。俺とノルは数匹だろうし、いつも通りお前が使ってくれ。宿代も全部お前が出してくれるんだから、俺たちには必要ない」
ノルも大きく同意している。
うーん、と考える。
「ナギ。この前も言ったけど、お前には苦労をかける。でも、その分俺たちはできることをして依頼料を生活費、宿代の代わりとして渡す。手持ちがなくなれば言うから。ノルもそれで問題ないって。だからそうしてくれ。ただ、依頼で魔物討伐した素材代金はそれぞれがもらうから」
ふふふ。とってもありがたいよ。
だから快く感謝の気持ちを伝えた。メルトもノルも僕たちと一緒にいることを望んでくれているんだと確信して嬉しくなった。
そろそろゆっくり向かうかな。と王宮に向かって歩いている。
ふっと首を振ったフラットが言う。
『ナギ。誰かが見張ってる気がするけど、どう? 前にも感じた感覚なんだけど……』
『そんな感じだね。すぐには仕掛けてこないと思うけど、気をつけよう』
わかった、とフラットは頷いた。
もし、マントール国のやつらだとしたらやっかいだね。王都で騒ぎを起こされれば、関係ない人が危険に晒される。それは許せない。今日、陛下と会ったときに、マントール国のことを話しておこう。そうなるとオニキスの事を話す必要がある。だから最後の最後だね、話しは。
丁度良い時間になりそうなので、大門へ向かった。
前を歩いているのは、領主様の騎士団長だ。
俺たちは最後を歩いているんだけど、後には近衛兵が並んでいる。
フラットは普通の大きさで大きな身体をゆさゆさ揺らして歩いてんだ。たぶん、近衛兵たちには前は見えてないでしょうね。
まあ、いつもの姿でと言われたから仕方ないんだけど。サンは、僕がかけているバッグに入ってるよ。まあ、人だとはみてもらえないかもね。
大声で何か聞こえた気がしたけど、変わらず進んでいるので気にしてないんだけど。
中に入れば、謁見の間がざわつく。
貴族だろうか、数人は情けない声を発して逃げようとしてるんだけど、滑稽だなぁ。
臣下の礼をとる僕の隣りにはサンが陣取る。後にフラットが寝そべった。
僕たちの前にはメルトとノルが臣下の礼をとってるよ。
「国王陛下。本日は謁見の機会をいただきありがとうございます。無事、迷宮の調査が終わりましたので、詳しく報告をさせていただきたく参上いたしました」
「うむ。ご苦労である。では、お主は其方へ移動するが良い。実際に迷宮に入った者たちに話しをききたいのだ」
あれ、陛下。領主様が泣きそうだよ。
「国王陛下。私はメルトでございます。再度の謁見の機会を賜りまして、恐悦至極に存じます。隣りにおりますのは、この度結成致しましたパーティー『静かなる波』のメンバーでBランク冒険者ノルでございます。後に控えておりますのは、ナギですが、さっそくAランクにランクアップいたしましたので報告致します」
「うむ、ご苦労。汝たちのパーティーが迷宮の最下層に達したのであるな?」
はい、とメルトは大人だね。
「ふむ。ナギよ。久しぶりである。此度も無茶な話しを押しつけて迷惑をかけた。して、眷属を紹介してくれぬのか?」
「はっ! 再度の謁見の機会をいただきまして感謝致します。私の眷属を紹介させていただきます」
それからはフラット、サンを紹介してゆくんだけど、陛下は大喜びなんだ。なぜかな、動物が好きなの?
「強力な仲間である。ナギはまだ七歳と聞いたが、此奴らがおるだけで周りも安心するであろう。我も心強いぞ、我が国に汝らが居を構えてくれておるというだけで安堵するのだぞ」
そううことなのね。
でも、戦争には参加しないよ、僕たちは。
心の中で思わず呟いたのは内緒だ。
でも、隣国のことは話す必要がある。いつ話しを切り出すか、それが問題だね。
「今回の活躍に対して、褒賞をと思うておるのだが、後の話しといたそう。ギルドマスターより報告が上がったのだが、先日のミノタウロス討伐のおり、ナギを深い穴に突き落としたのは、領内の騎士だと聞いたがどういうことか。説明せよ」
一瞬で真っ青になった領主様は、申し訳ないと項垂れる。該当騎士は、僕に対してやっかみを向けた結果だと。まさか落ちるとは思ってなかったらしい。騎士の処分は既に終わっているらしく、騎士の資格を剥奪して解雇されたという。
まあ、それくらいしか処分のしようはないんだろうね。
読んでいただきありがとうございます。
みんな子供のナギに喧嘩を売る。馬鹿じゃないの、結果、すぐに追い詰められるのにね。
毎回王都ではいろいろあるから、嫌いになるのは仕方がないよ、ナギちゃん~
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