53 そうだ、Aランクだから言いたいこといえばいいんだよね。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします!
やっと依頼料を受け取ったよ。
マックスさんたちはパーティー単位で金貨百枚。そしてショルダーさんとピットさんは各金貨十五枚。あとはそこそこです。
ノルは最後まで迷宮に潜ったからと金貨十五枚だ。でも、それじゃおかしいでしょ、とランクアップを頼んだ。鑑定の結果、問題ないということで、Bランクにランクアップできたよ!
ついでに俺もAランクの手続きをされてしまった。あはは、七歳のAランクだよ。
そして、俺とフラットの依頼料は金貨二十枚。そして食事の提供に対しての労力は金貨十五枚だった。
俺たちは無事パーティーを組んで、名前を『静かなる波』とした。これはナギの意味を聞かれて答えた結果だ。全く静かじゃないけどな、とギルマスが笑ったが、静かなナギを怒らせると怖い、とマックスさんが呟いた。
なんだよそれ!
じゃあ、とサンドクラブを受け取ってギルドを出た。当然のように嬉しそうにフラットの尻尾はぶんぶん動いてるよ。
「ノル、今夜からどうする? 宿を取るか?」
メルトは何を言ってるの?
「そうですね、その方がいいでしょう」
「だーかーらー、何言ってんの? 一緒に住めばいいでしょ」
え? と二人はこちらを見る。
「僕、戻ったらもうひとつロフトを作るから。だから一緒に暮らそうよ。同じパーティーなんだからその方がいいでしょ?」
いいの? とノルが言う。
問題ないよ、と街を歩いた。
今夜はあるもので何かを作ろうと思ってるからいいよね。
少し肌寒くなったし、早く戻ってストーブつけて。そう言えば、メルトは嬉しそうに笑った。
家に戻って結界を解除する。
塀の引き戸の鍵はメルトがあけてくれた。
中に入って戸締まりをすれば、ノルが驚いてる。
「ここがナギさんの家なの?」
そうだよ、と開かれた玄関から中に入った。
フラットは無言で水場に入り、水魔法で水を張って脚を洗ってる。
全員をクリーンしてから上に上がれば、きょとんとみている。でも靴を脱ぐんだと理解したんだろうね、上がってきた。メルトはストーブに火を入れる。僕はタオルを持ってフラットの前で待ってたよ。
「フラットの脚を拭くの? 俺がやるよ」
そう言ってくれたのでノルに任せた。
じゃあ、さっそく。
大きな寸胴鍋を用意してお湯を沸かす。
塩を入れて蓋をした。
「フラット、ご飯作る前にお風呂入ってくる? サンも一緒にね~」
『先にいいの? じゃあ、行ってくる』
手を振って送り出す。
その間にノルの寝床だね。
どこに作ろうかな。メルトの反対側にしようか。
対面になるように同じ物を取り付けたい。階段は共有。新しく作るロフトへは釣り廊下か吊り橋をつくる。
耐荷重なども全て同じ。ライトも欲しい、空気抜きは別方向へとる。
(クリエイト)
ぶふぁ~っと光ったその場所はしばらくそのまま光ってた。
その間に俺はサンドクラブを取り出してみる。胴体は買取で頼んだので、脚だけがたくさん。
これ、本数は二十本だけど、でっかいし太いから茹でるの大変だよ~
さて、何を作るかな。鍋にする? それともかに玉? うーん、どうしようか。
あっさり系が食べたいよね。肉なら別に焼いてもいいし。
じゃあ鍋にしようか。オークのロース薄切りを足してもいいよね。うん、決まり!
忘れてたけど、ロフトが出来上がってた。二人に言われて気がついたほどサンドクラブを茹でる準備に気持ちを注いでたんです、はい。
「ありがとうナギさん! 俺、すごく嬉しいです」
ふふふ、よかったよ。
さて、お布団はどうするかな。
「メルト、布団セットコピーするけどいい?」
クリーンかけてくれよ~
当然です!
メルトの寝床に上がって、クリーンしてからコピーする。
ノルに自分で運んでもらった。でなきゃ、布団と一緒に落ちるよ俺。
フラットとサンがお風呂から出てきました。
風を纏ったフラットと、その上でタオルにくるまったサン。とっても可愛い取り合わせ。
『あるじぃ~おふろってきもちいいね。だいすきになったよ~』
「そうでしょ。僕もお風呂は大好きだよ。じゃあ、次はメルトとノル、入ってくる?」
食事の支度は大丈夫かと聞けば、サンが手伝うと手を上げてくれた。
カニの脚を茹でている間に、野菜を取り出してカットする。
サンは全ての野菜をきれいに洗ってくれた。あの丸っとした身体から腕が二本生えてるんだよ。かなりツボった。
シャーシャーと魔道具から出てくる水はきれいな水なので、楽しそうに洗ってくれる。
次はどうするのかと聞くので、まな板を出して、ナイフでカットして見せた。
じゃあ、やる! と言うんだけど、大丈夫かなぁ。
渡した包丁を器用に持ってカットするんだけど、ちゃんと考えてるんだ。僕たちが使う角度を九十度変えて、使ってる。そうじゃなきゃ、落っこちるから。
頭がいいよ、ほんと。
俺の眷属たちは皆頭がいい。かしこいんだ。だからいろいろ覚えてくれるし、助けてくれるんだ~
サンドクラブを取り出してザルに入れて冷ましておく。切るのはメルトの仕事だね。
じゃあ、食べようか。
いただきます!
あいさつもお手の物ですよ~迷宮で覚えた二人は嬉しそうです。
前に作った大きな土鍋が、魔道具の上でぐつぐつ音を立ててる。たくさんの野菜はきれいにカットされてるんだ。サンには感謝だね。
今日はカニ鍋です!
カニの身をとるのに、良い方法はないかと考えて、バカッと開くように一部を切り取ってるんだ。だからするする食べられるよ~
「これはなんと言う料理ですか? 食べたことないです」
ふふん、ノルは知らないよね。
「これはカニ鍋っていうんだよ。僕の生まれた場所ではクラブのことをカニっていってたんだ。で、野菜とかたくさん入れてクラブを入れるんだ。味は濃くない?」
「美味しいです。とても美味しい。こんな料理は最近食べてませんでした」
よかった、とメルトをみれば、カニを頬張りながら頷いてる。どっちかにすればいいのにね。
白米も大量に炊いたから、大丈夫。
そう思ってたんだけど、もう三分の一を切ったよ。ヤバイかなぁ。そんなことを思いながら、フラットのカニをむいている僕です。
よかった、足りた……
でも炊飯器は空っぽです。
明日の朝食はパンだよと伝えておくのは忘れない。
片付けはメルトとノルが請け負ってくれたので、僕は一人でお風呂に入ります。
ふぅ~
温かさが身にしみる。
今日、家を持って街を出るって言ったけど、それに近いことはできるかもね。今作ってる小屋でもいいけど、部屋はないしトイレやお風呂もない。キッチンだけでダイニングもないから、長い旅だと寝るだけになる。
それならもう少し大きな家にして、部屋を造り、キッチンとダイニングを作ってトイレやお風呂も用意したい。それならば、どこにいても、ここにいるのと変わらないリラックスができそうだよね。
ベッドやキッチン、ダイニングセットなどはコピーできる。さすがにストーブは必要ない。温度も一定だからね。
お風呂は広い方がいいかな。一人ずつ入れば時間もかかるから、これくらいは必要かな。本来なら、フラットと僕、サンと一緒に入りたい。
王都での用事はいつ頃だろうね。
家を作るにしても、材料はたくさんある。ただ、水と排水、トイレの魔道具は用意する必要がある。それは、この前の魔道具屋さんを覗いてみようかな。
そして欲しいのは冷蔵庫だね。
アイテムボックスに入ってるミルクや飲み物、バターやチーズ、すぐ使う予定のお肉、下ごしらえした唐揚げなどが入れたい。それと、パンを焼けるオーブンが欲しいな。
パンのネタって売ってないのかな。
とりあえず、こねて成形するくらいならできるけど、ネタだけって売ってくれないよね。じゃあ、作るしかないってことでしょ。イースト菌だっけ? ああいうのがあるのかな。別の何かがあるかもしれない。本屋さんでも見てみようか。
いつもは無理かもしれないけど、旅してる途中に仕込むことができるし、寝かせることもできる。そう、フラットがいるから、ある意味時間が取れるんだ。それなら皆に美味しいものを食べさせたい。うどんも寝かせることができるしね。
冷蔵庫の一番小さなのってどのくらいの大きさなのかな。魔道具屋さんでこれもチェックかな。
いや、違うね。まずは家を作って僕の考えを理解してくれるかどうかを話す方が先だ。
お金はたくさん持ってる。だから快適さの為に使おうと思ってるんだ。仲間と一緒に楽しい日々を過ごしたい。僕たちだけの旅をしたいと思ってしまうのはダメなことだろうか。
早朝、外で剣を振る音が聞こえる。
ん?
隣りにフラットの姿はない。サンもいないんだけど。
これ、寝過ぎた?
慌てて着替えをしていれば、そとでメルトとノルが模擬戦してる。フラットは鼻先でサンを放り上げて受けて。それを繰り返してるんだ。
なんかちょっと楽しそう。
朝食の準備が整ったので、声をかけよう。
「ごはんだよ~」
はーい、と皆の声が聞こえる。
クリーンを掛けるために入り口で待っていれば、ドタドタと戻って来ましたよ。
<クリーン>
今朝は普通に洋食ですよ。
野菜サラダは山盛りにして、ベーコンの厚切りとスクランブルエッグ、コンソメみたいなスープだ。
美味いな、とメルトとノルはご機嫌だ。
サンも無言で食べてる。フラットはでっかいボウルに顔を突っ込んでます。そういえば、フラットがかなり大きくなったように見える。シルバーウルフの王だったお母さんよりも大きいよ。
これはどういうことなのかな? ステータスもみてないけど、痩せ気味じゃないでしょ、もう。
よかったよ、ほんと。
サンも少し大きくなったよ。普通のスライムと認識できる大きさになったから、皆成長してるんだよね。一番成長が遅いのは俺かな。まだ七歳だからね。中学生くらいの歳になれば大きくなるはず、だと思うんだ。
うん、そう思っておこう。
「ナギ、今日はどうする? 魔物はまだ解体できないんだろ?」
「うん。ていうか、出してすらないよ。一杯で後回しになったから」
そうか、とがっくり項垂れてるよ、メルトは。
「時間あるなら相談したいことがあるんだ」
全員リビングでくつろぎながら話すことになった。
夕べ、お風呂で考えてたことを話してみた。
フラットとサンは大賛成だって。
ノルもいいですね、と嬉しそうだ。
「それ、今度王都に行く前に作るのか? ていうか、王都に行って陛下に会うのか?」
うーん、それは……
「まだはっきり決めてない。会うことになるだろうとは思うよ。だって、オニキスがそれなりの情報持っているしね。でも、それをはっきりすれば戦争になる」
それはそうだろうな。でも!
あはは、メルトはかなりお怒りみたいだね。
「でも、はっきりしなくちゃお前が襲われ続ける。闇雲に攻撃されるのは許せない!」
俺もそう思います。
あれ、ノルの賛成なの? まあ、僕も襲われたくはないよ、それは。
「それもあるよね。でも一番嫌なのが戦争に巻き込まれることなんだ。のんびり冒険者生活したいのに、なんでこうなるの? 相手国も僕の能力が欲しいんでしょ?」
うん、無言だね。
どこへ行っても結局誰かに利用されるのかな。それならあちらこちらの迷宮に潜って戦う方がいい。ドロップ品を手に入れて、時々魔物を狩りに行くか肉を買うか。まあ、買い出しは必要になるだろうけど。
はぁ、誰も知らない所に行きたいな。
そんなことは無理なのかな。ただ、子供だから便利に暮らしてるだけなのに。日本でもきいたことがある。思いも寄らないものが軍事利用されるって話し。一方的に決められても、こっちはどうすればいいんだろう。
だから国王に会ってはっきり言いたい! 情報は渡すけど、僕の人生は渡さないって!
何かを決意したように見えるメルトは、ギルドに行くぞと立ち上がる。
え? 行くの。まあ、いいけど。
じゃあ、お肉を確保するべく頼んでみよう。
「ギルマスに用があるんだが」
メルトさん、ナギさん……
何か聞いてるんだろうね、お姉さん。すごく不安そうに見える。
「じゃ、僕は買取の方へ行ってくるから」
ああ、と隣のエリアへと入って行く。当然、フラットとサンは一緒だ。
「おう。少しは落ち着いたか? 言いたいことがあったら言えばいいんだ。気にすることはないぞ、お前だってAランクなんだからな」
あはは、ありがとおじさん!
「少しお肉が欲しいなと思ってる。解体は進んでる?」
「そうだな。数がたいしたことなかったからそろそろ出来上がると思うぞ。お前の出すか?」
うん、と嬉しすぎて笑ってしまう。
どれくらいあるのかと聞かれて、フラットの持ってる獲物の種類と頭数を言えば、かなりあるな、と驚いてるよ。
僕の持ってる数を伝えれば、ひっくり返ったよ、おじさん。
「ミノタウロスがいるよな。オークの数はしゃれにならんな。しばらくいるのか?」
んー、わかんない。領主様がいつ陛下と会うか、じゃない?
「一緒に行くのか?」
まさかぁー!
「いつ王宮に行くのか決まったら、その日に行くよ。道中は別だし」
「なるほど。じゃあ、明日出かけるかもしれないってことか。じゃあ、ワイバーン二頭とオークのデカいのがあれば出せ。一日延びるごとに十頭ずつ増やせばいい」
わかった~
さっそく、フラットがワイバーンを二頭取り出す。隣でオークを出すのは僕。
とりあえず、それで頼むことにした。ミノタウロスは王都ギルドで頼めばすぐやってくれると聞いたので頼むことにした。
本当はまだお肉はかなりあるんだけどね。でも、空っぽにはしたくないんだ。無理なら途中で解体しなくちゃだし。僕、スキルは持ってるけどやったことないしね。
読んでいただきありがとうございます。
フラットとサンはとてもかわいいです~
サンの料理スキルが発動ですね。想像して楽しくて、思わず微笑んでしまいました。丸っこいスライムが腕を生やして包丁を持ち、ちゃんと落ちないようにと角度を変えて野菜を切る! ああ、イラストがかけたらいいのに……
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




