48 階層の転移魔法陣を壊した馬鹿なやつがいました。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします!
「ナギ、こいつの話を聞いてくれるか?」
うん、当然だよ。
ノルの話しは聞くに堪えない内容だった。
ソロで活動し始めた頃から、同じギルド内の嫌われ者たちにちょっかいを出され始める。
宿の中を壊され、金が盗まれる。
酷いときには獲物を横取りされたり、迷宮の中で死ぬほど痛めつけられた。たまたま通りがかった人たちが助けてくれて一命を取り留めたほど。
今回の依頼も、いち早く申し込んでたノルを見て、そいつらも来たらしい。評判はわるくないし実力のある冒険者。よくあるいじめだから、と自分を納得させてた。
でも、移動して選抜が終わってから再発したいじめ。ノルも学習して、金は最低限しか持ち歩かない、荷物は宿に預けておくなどの対策をとった。それでも斥候として選んでくれてから、余計に嫉妬は酷くなった。だから今日は戻りたくなかったんだと告白した。
おそらく話せないこともたくさんあったんだろう。それをほじくる気はない。でも、俺の鑑定で罪を犯した者ははじいたはず。
あ、そういうことか。いじめであって、犯罪として認識されていない。次からはそういうのも明らかにしたほうがいいな、と心に刻む。
「大変だったな。気づいてやれなくて悪かった。これからは、俺たちの仲間だ。だから気にせず動けよ」
メルトはサラッとそんなことを言ってるけど、いろいろあると思うよ。
「僕は良くない視線には気づいてた。でもそれが誰のものかがわからなかったんだ。ごめんなさい。ノルの実力は十分理解してるけど、なぜランクアップしないの?」
「あいつらが。俺をいじめてるやつらが上がれないからランクアップするなって脅されてて」
なんだよ、それ!
おお、叫んじゃったよ。
「そんなの気にしなくていいよ。街に戻ったら僕がギルマスに話すから。それまでは話しをしないでおこう。じゃなきゃ、また嫉妬が増える」
その方がいい、と皆で納得した。
じゃあ、とフラットたちを見れば、既に何も残ってない。
クリーンを掛けてフラットの頭にサンを乗せてやれば、嬉しそうに寝床に向かった。
えっと、確かあったはず。
何してるんだ? と聞かれて捜し物とこたえる。
「あった! これだよ。もっと前の階層で見つけてた収納袋。あまり大きくはないけど。時間も止まらないしリストもでない。初歩的なものだよ。ドロップアイテムなんだ。誰のものでもないドロップだから使えばいいよ」
え? と固まったノル。
「ナギがいいって言うんだから使えばいい。俺もナギに作ってもらった。でも、どれくらいの広さがある?」
「たぶん、その小屋の中くらいだと思う。だからいろいろ入るでしょ」
ありがとうございます!
ノルが大泣きですけど。
「本当に嬉しい。同じメンバーにこれほどしてもらったことはないです。本当に感謝します。俺、皆さんのためなら何でもしますから! よかったらギルドも変わりたい。仲間に入れて欲しいです!」
あはは、そういうことは無事戻ってから話そうね。
はい、と嬉しそうにリュックを袋に入れた。
袋はしっかりした紐でベルトにつけるようになってる。見かけは小さいから、それほどだとは思わないでしょ。皆の荷物はメルトのストレージだしね。
じゃ、寝ようかな。
三人まとめてクリーンして、それぞれがベッドに横たわった。その瞬間、意識がなくなったのは俺とサンだった。
早朝、思ってもいなかった事故が起きた。
それは転移魔方陣が機能しないと言うこと。
なぜそんなことになったのか……
昨日最後に使ったやつが原因だった。
転移魔方陣を傷つけたから。
何故か。
持ち出しできないはずの中層階から鉱石を持ち出そうとした。欲をかいて大きな鉱石を数人と一緒に転移魔方陣で運んだ。そこまでは良かったが、その場から動かすとき、書かれていた魔方陣をかなり傷つけてしまった。その上、その鉱石は外に出した途端、消えてなくなりパニックに陥った。それを見た警備騎士に捕らえられて拘束された。
その日は夜遅いので、翌朝日の出から確認に赴いた国の偉い魔法使いたちが、転移陣が発動しないことに気づいた。当然、使用不可能となり閉鎖という事に落ち着いた。
おそらくだが、迷宮本体が修復しない限り難しいという判断だ。ただし、各階の転移陣だけしか確認できていない。
ないとは思うが、最下層のボスを退治したあと戻るための魔方陣。これは問題ないだろうということだった。
理由は簡単。
転移場所が違う。そして魔方陣が全く違うそうだ。だが、最下層のボス部屋に到達した者は、ボスを倒して戻るか、それとも死か。選択肢はそれだけになってしまった。ボス部屋は中に入れば戻れないから。
なんだよそれ!
じゃあ、皆は来られないと言うこと?
「いや。迷宮をくぐり抜ければ来られる。だが、昨日の様子を見た限りじゃぁ、ここまで来るのは難しいと思うぞ。どうする?」
あはは、俺に聞くんだ。
このあたりから怪しくなりそうなんだけど。
「でも、迷宮には入ってくれるのかな」
うーん、と迷ってるように見えるんだけど。
「俺が聞いたのは、マックス、ショルダー、ピット、それとマックスのパーティーメンバー。あとは有能な斥候と魔力の多い僧侶と魔法使いを選ぶらしい。鑑定するって言ってたが、どうなるかわからない。残りはは連絡要員とか補給要員だ。今から携帯食をかき集めるらしい。それにギルドで時間が止まる袋を借りるらしいから、屋台とかでいろんなものを買いあさってから潜るそうだ。まあ、すぐには来られないだろう」
それ危なっかしいけど。
でも努力はしてくれるって事でしょ。じゃあ、進むしかないよね。
「ノルはどう思う? 僕は進むしかないと思うんだ」
「俺も一緒に行きますよ。メルトさんも行くんですよね。それなら仲間は一緒に行動するべきです!」
おお、かっこいい!
「当然俺はナギと行く。それならナギとフラット、サン、ノルそして俺だな。これいっちょ前のパーティだぞ」
「それも最強のね」
あははは~と笑ってる二人だけど、これからの方が大変だよ~
じゃあ、ボス部屋だね、とフラットが空間を空けてくれた。
当然の様に誰もいませんよね。
この階層に降りてこられるのは限られた冒険者だけらしいから。
ギギギィーーーー
重々しい音で開いたボス部屋は、真っ暗だ。
中に入ればライトは付くんだけどね。
ごがあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!
ん? 何がいるのかな。
「ミノタウロスだ! デカい!」
ノルの指先を見ればいましたよ、デカい牛人間が!
その周りにはオークがたくさんいる。
「ノル! メルト! オークをお願い! 僕たちは上に上がるから!」
了解!
フラットの背に乗ったまま宙に浮く。
これ、デカすぎでしょ。
どうやって倒すかな。
『ナギ、なんの攻撃する? 魔法でしょ』
『魔法しかないよ、ここまで大きいと。じゃあ、フラットと俺で好きなようにやってみる? 最初は様子見で』
わかった~
間の抜けた癒やしの声が聞こえた途端、ミノタウロスが風の渦に包まれる。その中では雷がバチバチと弾けるように舞ってるんだけど。こわぁ~
ドドドドドーーーン! とミノタウロスが尻餅ついた!
驚いたのはオークを狩ってる二人でしょ。
じゃあ、次は俺のターンだね。
<氷の散弾大口径>
バンバンバンバン!
ブシャブシャっと肉に散弾が食い込んでいる。大口径の散弾でと思ってたけど、かなり威力がありそうだね。
<氷の散弾大口径>
バババババババ!
うひゃ~、脚を潰そうと思ったんだけど、片脚はほぼ吹っ飛んだね。
フラットの魔法がそれにたたみかける。
風刃が両腕を切り離し、片脚の膝下がなくなった。
オークはどうかな、と見てみれば、どんどん出てきてるんだけど。これ、ヤバいよね。
じゃ、凍らせちゃおう!
<氷の壁>
一瞬でオークの出口を凍らせた。これってどこまで続くのかな。これで終わりになる?
さて、ミノタウロスにトドメを刺そう。
フラットがやりたそうにしてるんだけど。
『トドメ刺したい?』
うん!
じゃ、どうぞ~
シュバババ!
ありゃ、ミノタウロスの胴が真っ二つになっちゃったよ。
最後のオークを倒したのはノルだった。
やっぱりノルはBランク以上でしょうよ。
「お疲れ様~」
そう言い、小さくなったフラットから降りた。
「すごいことになってるな、ミノタウロス」
あはは、まあね。
とりあえずドロップ品を回収してっと。
あ、ミノタウロスのドロップ品は、角と牙、そして革だね。
サラッと収納して次に向かった。
とりあえず、次の階層に入ったところで一休み。のどを潤して進んだ。ここからはどうやら余りいい匂いのしないエリアらしい。これはまずいね、とフラットの火炎魔法で炎を吹き出してもらって進むことにした。それでも見えないドロップ品もあるんだから不思議ですね。正規のドロップ品も一緒に回収しながら俺はメルトの隣を歩いてる。
何か起こるかなと思ってたけど、罠ごと焼き尽くされてるし、部屋のドアも溶けて開かないからそのままスルーした。
そんな風に二階層をおりる。
そしてここはボス部屋前。
『お腹すいたよ、ナギ』
おお、時計を見れば昼を過ぎてるね。
じゃあ、ここでご飯にするかな。
安全地帯がないから空間を開いてもらって中に入った。そこには、管理棟がある。そのまま開いてくれてたんだ。便利だよね~
当然、昼食はガツガツ食べる。
フラットは魔法を使いまくったので、かなり空腹らしい。
好きなだけたべていいからね。
当然、シチューは鍋ごと置いたよ。そしてやまもりのおにぎり、トンカツ、ステーキ、牛丼、お好み焼き、生姜焼きなどなど。
さすがにメルトとノルも途中でギブアップした。
フラットはしばらくとまりそうにない。
もう一人とまらないやつがいる。
それはサン。
テーブルの上で俺の前に座ったサンは、取り分けるごとにするりと食べてしまう。食べるごとに身体も大きくなってる気がするんだけど? 成長期ってやつかな。
楽しそうに身体を揺らしながら食べる姿は微笑むしかない。
メルトとノルには少しやすめば、とベッドへ追いやった。だって、いつ終わるかわからないからね、この食事は。
シチューは三人分を注いだ後、フラットが全部食べた。そして小さくカットしたお好み焼きはサンが全部食べた。うどんが食べたいというフラットにうどんをコピーしてやれば、サンも欲しいと意思表示する。かわいくて笑ってしまったけど、うどんをコピーして、小さな入れ物に入れてやれば、すぐなくなる。そして残りはボウルごと身体に入れて、ボウルだけ出してくれた。
今度は何食べるの?
おにぎりを短い腕? 指? で指し示すので、おにぎりを取り分ければ、あっという間になくなる。
「サンはお腹すいてたんだね」
『あるじぃ、さん、おながすいてた、よ~』
あれ? 念話かな。
『ねんわだよ~ふらっとおにいちゃんにおしえてもらったの~』
『フラットお兄ちゃん? あ、そうだね、ふらっとお兄ちゃんだよ。教えてもらって良かったね』
う~ん、と短い手が上がる。
フラットは無言で食べ続けてるけど、牛丼は五人前くらい食べたよ。サンもちゃんと一人前は食べてます。
『ナギ、唐揚げはないの?』
あ、わすれてたよ。
『ある。ごめん忘れてたよ。食べる?』
うん~とハモってるのがかわいい!
大皿に山盛りの唐揚げを取り出せば、フラットは直接バクッといきました。サンは、その衝撃でこぼれたやつを食べてます。あまりにかわいそうだから、新しいのをボウルに入れてあげました。
すぐにおにぎりと唐揚げのお代わりリクエストが来たので、おにぎりを出して、唐揚げを置く。サンのボウルにも山盛り唐揚げ入れました!
その代わり、とサラダも山盛り食べさせますよ~
いい匂いだな、と起きてきたのはメルトたちだ。
「唐揚げ出すの忘れてて。フラットに言われて思い出したんだぁ」
じゃあ、俺もと二人も座って手を伸ばす。
そんな風に美味しそうに食べるなら、俺も食べたいよ。
結局、おにぎり&唐揚げパーティが始まった。
終わったのは午後六時でした。
もう、何もしたくないほど食べたよ。サンは既にフラットとベッドです。
まあ、こんな時もあってもいいよね。この人数で先に進むんだもの。
寝起きで大事な事に気づいた。
もしかして、ここから出れば、また臭いエリアかな。
『大丈夫だよ~だって安全エリアから入ったから。同じ所に出ればいいんだよ』
なるほど、とひと安心だ。
夕べ、あれだけ食べたにもかかわらず、皆の食欲は止まらない。朝食もガッツリ食べました。
ボス部屋の前に出て、ゆっくりと扉を開いた。
薄明るいこの場所は、今までよりも匂いがきついよ。
前には背の高い骸骨がいた。
周りにいるのはゾンビやスケルトンだち。嫌だねぇ。
「光魔法が使えたら一瞬で浄化できるんでしょうけど、これは辛いですね」
ノルの言葉に反応したのは俺だ。
「僕、光魔法と浄化魔法使えるよ」
ええええ? と驚いたのは二人だけ。
やってみようかな、と発動方法がわからないので、浄化してみることにした。
フラットの背に乗ったまま上に上がる。早くしないとメルトたちが襲われるよ、汚いやつらに。
<浄化魔法>
ブワーーーーーーッと光ったあと、断末魔の叫び声が聞こえる。
光が収まった時には、何も残っていなかった。あ、ドロップ品はありましたよ。
全てのドロップ品を回収した後、出てきたのは素晴らしい宝石が入った杖とコートだ。
鑑定してみれば、杖はリッチと呼ばれる高位魔道士の使うものだ。そしてコートはリッチのローブ。これは全ての攻撃が無効になるものらしい。
とんでもないものがでてきたね。
とりあえずアイテムボックスへゴーだ。
読んでいただきありがとうございます。
フラットおにいちゃんって、サンが言ってたけど、フラットは良いおにいちゃんになりそうですね。
それにしても、強いよフラット。ノルもかっこいい! 誠実な人っていうイメージですので、後々お楽しみに~
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




