44 フラットの実力、ちょっと見せちゃいました。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします!
周りを見れば、食べた後の船が重なってる。
『フラットお願いがあるんだけど』
早々に朝食を終えたフラットはご機嫌だ。
『いいよ、なに?』
『皆が食べた入れ物を集める樽を置いてくれる? あそこのメルトたちがお話ししてる近くにおいて欲しいんだ』
いいよ~と樽を咥えた。
「みなさ~ん! 今からフラットがゴミを回収する樽を置きます! ゴミはそれに入れてくださいね。ルールは守りましょう!」
そういえば、食べてる人たちが右手を挙げてくれた。
さて、料理を補充するかな。
ミニステーキは当然人気だ。魚のフライはどうかと思ったけど、かなり出てるよ。全部均等になくなってるのは嬉しいな。
次々と並べて行くけど、トレイの半分くらいで止めておく。
嬉しそうな顔を見れば、こっちも幸せになるよね。
驚くことに、一時間もかからず全員が食事を終えた。
それどころか、ゴミを全部回収して樽を持ってきてくれたんだよ。
俺とミミカさんたちは、食後のお茶を楽しんでる。
皆が落ち着いた頃、三人で食べ始めた。
「ナギ! 残ってないか?」
あるよ、まってね。
トレイにいろいろ乗せて持って行けば、嬉しいと涙を流しそうな勢いだ。
「さっき出したから大丈夫だと思うけど。もっと食べる?」
ほしいと皆が言うので、残りを取りに来て欲しいとお願いした。前に置かれた料理に嬉しそうだ。どうやら打ち合わせは終わったみたいで安堵する。
「紅茶持ってこようか?」
ミミカさんたちが食べてるテーブルに、特別だと焼き菓子を置いた。
うそ? と喜んでる。
手伝ってくれた報酬だよ、安いけど。
俺は残りをサンドイッチにしておいたので、かぶりつく。
そうだ、ごはんとパン持って行くかな。
「メルト、ご飯とパンは?」
両方いる!
じゃあ取りに来て!
立ち上がるメルトよりも先にマックスさんが走ってきた。
これもらってっていいのか?
どうぞどうぞ、と渡せば喜んでメルトと一緒に持っていってくれた。
「これで残らないよ。残飯整理だね」
あははは~と笑えば、二人も吹き出した。
八時半前。
カイトとマックスさんがいろいろ片付けて持って来てくれた。
じゃ、とその場でクリーンしてアイテムボックスへと入れる。
ついでにお皿も全員分クリーンしておいた。
メルトが打ち合わせしてた間に、フラットがテントや寝袋は引き受けてくれたよ。その上、自分で鞍を取り出してつけてるよ。
最後に、皆曰く『管理棟』を片付けてからメルトが戻るのを待った。
馬を連れて戻ったメルトは、悲しいお知らせだという。
なんだよ。
途中の街で止まれば宿があるけど、そのまま通り越すらしい。昼頃街に着くから仕方ないと辛そうだ。
なんでメルトが辛そうなのさ。
どうやら少しでも俺を休ませたかったらしい。
「大丈夫だよ、僕は。管理棟もあるしね、ふふふ」
悪いな、と今日も頑張るか! って。
一応気遣ってくれたんだね。
後でな、と言ってしまったメルトを見送ってフラットを撫でる。
『フラット、今日も頑張って。ごめんねフラットばかりしんどいけど』
『僕はナギといつも一緒だからいいよ。ナギを乗せてお話ししながら走るのは好き。それに空も飛べるし~』
ほんとにいい子だよ、この子は。
『そうだね。走って、空を飛ぼうね』
うん~
と声が聞こえたとき、並べ! と聞こえた。
フラットに乗ってベルトをつける。ここからは多分フラットの偵察が必要になるだろう。
「ナギ、フラット! 悪いが先に空に上がってくれ! 先行偵察だ!」
は~い!
フラットは大喜びで飛び立つ。
俺も気持ちいい風を感じて手を振った。
街道沿いを探索しながら広範囲に確認して行く。
『マックスさん、少し向こうにオークが数頭いますね。あと、街道沿いにゴブリンが向かってます。二十体くらいいますから気をつけてください。後はゴブリンに追われて角ウサギもいますね。通り過ぎるまでには届かないと思うけど、でっかいボアたちが三頭いますけど、これはフラットに任せますか?』
『わかった。じゃあ、ボアはたのめるか? 残りはこっちで問題ない。終わったら連絡を』
了解!
今日はメルトが持ってた通信カードを借りている。というかコピーしたんだ。内緒だけどね。
『フラット、ゴブリンたちの向こうを確認してから、でっかいイノシシを狩りに行くよ。二人だけだから空からの方がいい?』
『うん。そうする。一緒に空から狩るのは初めてだね。楽しいね』
あはは、楽しいんだね。
地上では既に戦いが始まってるみたいだね。
前方五キロは何もいない。それならでっかい獲物に行きますか。
『じゃあ、ボアを狩りに行こう』
『うん、イノシシをかるぞー!』
あはは楽しそうだね。
それにしてもデカいな。
これは見たことがある。ブラックファングボアだったけ。
おお、デカいデカい。これ、かなりの獲物だね。お肉は美味しいのかな。
フラットは速さを活かして突進する。そして、水刃で一頭目を切り裂いた。首がごろんと転がる。すごいね、フラット。再び空に上がったとき、氷の矢を打ち込んだ。
<氷弾>
バン!
ありゃ、少し弱いかな。でも、確実に動きを止めた。
残り一頭はフラットの水刃で首が飛んだ。
俺はどうするかな。もう少し大きな弾にしてライフルを使おうか。
<魔力増量氷のライフル弾>
バン!
ブシュ! と音を立てて飛び出した氷のライフル弾は一直線にとんで、ボアの頭を撃ち抜いた。
おお、すごい威力だね。貫通したからよかったけど、そうじゃなきゃ頭が吹っ飛んでただろうね。
あたりを探索しても、他にはいない。確認してからゆっくり地上へ向かうフラットだけど、さすがシルバーウルフ王の子だ。
そっと獲物に触れて、三頭分を回収した。もちろん転がった頭もね。この牙は高額買い取りだと思うよ。
空に上がったフラットは、皆のところへ引き返す。
遠くで戦っている音が聞こえた。
まだ戦ってるの?
ゴブリンたちに苦戦してるみたい。
あれ?マックスさんとメルトはどこだろう。ピットさんもいないね。他のパーティーメンバーは残って戦ってるみたい。
ケガをした人をレインさんが治療してる。それを守ってるのはミミカさん一人だ。これはダメでしょうよ。
『フラット、俺は下に降りるよ。魔法を使ってゴブリンたちを殲滅する。フラットはメルトたちの所へ行って! 時間がかかりすぎだ!』
わかった~と地上近くまで降りてくれたので、ベルトを外して飛翔魔法でとんだ。
行ってくるね~と飛んでいったフラットを見送って、ミミカさんの側に降り立つ。
どうやらレインさんの魔力切れが近いね。
「これ飲んで!」
ポーションを差し出して飲んでもらう。
確認した後、結界に入れた。
ミミカさんにはここで戦ってもらおう。
じゃ、俺は行くかな。
怪我をした人を見つけてはヒールをかけながらゴブリンを切り倒す。でも、まだ十体以上はいるよね。増えたのかな。
ああ、邪魔くさいな!
飛翔魔法で上に上がって、全員に撤退を指示する。
「皆、下がって! 魔法を使うよ。怪我人も連れて下がって。後で治療するから!」
右手を挙げて答えてくれる。戦っている人もゴブリンを蹴り飛ばして下がった。怪我人も協力して結界まで避難している。
よし、そろそろいいかな。
<氷の散弾>
バン! 指拳銃が炸裂する。
ブシュシュシュシュシュ!
散弾にしたからゴブリンはバタバタ倒れている。
もう一度散弾を放てば終わった。
「怪我人は?」
こっちだ、と集めてくれてたみたいだね。見れば、それほど重傷じゃないみたい。
<エリアヒール>
ふわっと光った皆が治療されて行く。
ここにいる人は大丈夫そうだ。
他には?
こっちへ! 少し重傷の人だね。まだくっつくかな、腕は。
うん、大丈夫そうだ。
このまま持ってて、とくっつけたままで、付き添っていた男に頼む。
<ハイヒール>
ぱぁっと光った腕は、きれいにくっついた。
他には! 振り返れば、皆が固まってるんだけどなんで?
結界の中ではレインさんが興奮してるんだけど。
結界を解除すれば息をきらしてる。
「なんで? ナギ君、ハイヒール使えるの?」
あ。つい、つかっちゃったよ。
「うん。レベルが上がったからみたい。あははは」
すごいね、と尊敬の眼差しだ。魔力は大丈夫かとミミカさんにも心配されちゃったよ。
「大丈夫だよ。これくらいなら気にするほどじゃないから。いつでも言ってね」
そうする! と二人が揃って真面目顔で言った。
『フラット、そっちはどう?』
『うん、ちょっと苦戦してるよ。オークがまたたくさん出てるの。ナギは終わった?』
『おわったよ。じゃあ、今から行くね』
は~い、と念話を終えて振り返る。
「奥の方が大変そうだから行ってくるよ。えっと、マックスさんの斥候の人。皆をお願いね。近くに魔物はいないけど、雑魚は出るかもしれないから。もし、大量で相手できそうになかったらミミカさんに結界張ってもらって」
任せろ!
じゃあ、と手を振って飛翔する。
森の中だけど、木の高さがあるから見晴らしはいい。
これ、フラットは戦いにくいだろうね。
ぶもうぉぉぉぉぉーーー
ぐもぉぉぉぉぉぉーーー
おお、聞こえてきたね。
どうやって戦ってるんだろう。
マックスさんの背中が見える。
さすがSランクだね、大剣で首や腕を切り飛ばしてるよ。
ピットさんとショルダーさんも頑張ってるけど、倒したオークが邪魔みたい。それなら、俺が回収しよう。
<獲物回収>
一瞬で消えた獲物に驚いて振り返ったショルダーさんだけど、危ないよ。
「ナギが来たぞ! 獲物を引き取ってもらえ、戦いにくい!」
こっちだ! と聞こえて飛んでいけば、マックスさんとメルトが前線にいた。
<獲物回収>
さっと消えたオークに右手を挙げた二人は目の前のオークから目を離すことはない。ここは任せても大丈夫だね。
『フラット、どこ!』
『奥にいるよ~オークいっぱい出てるんだー』
行くよ! そう伝えて飛翔した。
フラットは血だらけだ。どうやら魔法と腕で戦ってるみたい。
『フラット。氷で数を減らすから。空に上がって!』
は~い!
<魔力増量氷の壁>
オークを囲むように分厚い氷の壁が出来上がる。
隣りにきたフラットをクリーンしてやれば、元のきれいな輝きが戻った。
「これ、奥からでてるの?」
『違うよ~奥が家みたい』
そういうことか。
「じゃあ、洞窟の中を焼き払う? フラットの火炎魔法使ってみれば?」
いいの?
嬉しそうなんだけど。
「あまり大きすぎないようにね。前から奥に向かって吹き出すように炎を出してみて」
りょーかい、と氷の向こう側で魔法を放つ。
ゴオーーッと音がするほどの炎が吹き出てる。これはすごいや。すぐに消えるよオークたち。
そろそろいいかな。
「フラットもういいよ。止めて」
は~い、と炎が止まった。
一瞬で収まった洞窟の炎は、プスプスとくすぶっている。中を探索したけど、オークはいない。というか炭だけだ。
じゃあ、と凍ったオークをアイテムボックスに入れたフラットに乗って空に上がった。
皆の所へ先に戻ってもらう為に、一度下ろしてもらったんだ。本当に移動が楽だよ。身体が小さいから、強化かけないと走れないから。
「フラットは?」
「皆の所に先に行ってもらった。ケガはない?」
大丈夫だ、と皆笑顔だ。
クリーンを掛けて綺麗にしたあと、オークの末路を説明すれば、二人は驚いてるよ。まあ、そうだよね。
この前ランクが上がって、魔法が増えたし強化されたんだと教えてあげた。
「なあ、聞いたことないけど、フラットのレベルってどれくらいだ?」
マックスさんは気になってたみたい。
ステータスレベルは60だよ。
なにぃ~!?
まだ三歳だから。
そう話せば、がっくりと項垂れたマックスさんが少しかわいそうだな。
大人になったらどうなるんだよ、と気が抜けたように呟いた。俺にもわからないよ。
「まあ、いいじゃない。戻ろうよ」
はい、とマックスさんが素直だ。笑っちゃダメだと思ったけど、笑っちゃった。
早めに休んでから行こうという声に、少し休むことになる。
フラットに果実水を入れて、焼き菓子を取り出した。二本食べたけどね。果実水を飲んだら、飴が欲しいと言う。
はいはい、と飴を口に入れてやれば、嬉しそうに舐めてる。
でも、飴が小さいから一分もたない。
一度に五個入れてから背伸びした。
「大丈夫か、ナギ。フラット、魔力は大丈夫か?」
『だいじょうーぶ~』
「問題ないよ。フラットも大丈夫だって」
飴がいい仕事してるよと笑い合った。
読んでいただきありがとうございます。
フラットの活躍はすごいですね。あの炎はかなり怖い。見た人たちは絶対にフラットには逆らわないと思ったでしょう。
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