35 我が家に居候がひとり、加わりました。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
何とか戻ってきました~
今日もよろしくお願いします!
『ただいま~』
あ、戻って来たね。
『こっちはちょっと小さいの』
全然いいよ、でっかいじゃん!
『あれはナギが射ったの?』
うん、新しい弾丸作ったから、お試し~
『すごいね~』
俺たち二人の会話は、人が見れば無言のやり取りなので、じっと待ってくれてる。
「あ、ごめん。フラットと話してた。これ、持って帰っていい?」
「当然だ。かなりの金額になるぞ。素材が売れるからな」
ふうん、とフラットが果実水を飲み終えて、再び出発した。
初日からこれかぁと思ってたけど、その日はそれだけしか魔物に会わなかった。
馬車で進むのとは全く違う速さで駆け抜けたので、もうすぐ半分くらいらしい。
夜はフラットが結界を張ってくれるというので、見張りは必要ない。大喜びの大人二人組だけど、酒を飲もうとしているに違いない。だから釘をさしてやった。
俺との旅は、移動中の酒は無しだと。
項垂れた二人だけど、納得してくれた。よかった素直な二人で。
夕食は、俺の担当になった。なぜかは解らないけど。
美味い、すごいと叫ぶメルトと、同意するギルマスはうるさい。でも喜んでもらって嬉しいよ。
ひとしきり大騒ぎした後、食器をクリーンして火はつけたままでそれぞれのテントに入った。
フラットの結界なら、このあたりの魔物に対して不安はないからね。
早朝、目を覚ました俺たちは、旅の朝飯としておにぎりと惣菜みたいに作っておいた卵焼きやスープで済ませる。
宿の朝食よりすごいと言うメルトは、一生食べたいと変なことを言ってたけど。
さて、今日の走り具合で到着予定が大きく変わるかな。
馬の準備ができ次第、出発した。
途中で休憩してまた駆ける。昼食を食べてまた休憩する。
たどり着いた野営場所は比較的安全な場所だ。
今日は魔物に遭遇しなかったから早かったね、とシチューを大鍋で取り出す。そしてマジックアイテムに置いた。冷えるから温めながら食べる為だ。
ここで唐揚げも出してみる。
初お披露目だよ、フラット以外。
「なあ、これって鳥肉か? 味付いてるんだろうけど、かなり美味いぞ」
えへへ、美味しいでしょ。
ホカホカご飯には最適なおかずなのですよ。
このために鳥肉かぁ、と感慨深げなメルトは、フラットと同じくらい食べまくった。
やっと街に到着できると出発した俺たちは、同じように襲ってくる魔物を狩りながら進む。
途中で鳥も狩りましたよ。
メルトが唐揚げが食べたいから頑張るんだ、とフラットと鳥を探索して狩ってました。わざわざ魔物の中に突っ込まなくてもいいのにね。
もうそろそろ午後三時になる。
やっと見えてきた街並みに安堵したのは俺だけじゃないだろう。
街に入ってからはゆっくりと進む。
そしてギルドに到着した。
やっと戻った~
そんな心の声が聞こえたのはフラットだけだ。
「お帰りなさい! お疲れ様でした~」
受付のお姉さんが手を振ってくれる。
「やっと戻った。この年で遠出は疲れるな」
あははは、と返事に困ってるよ。
「ナギさんもお疲れ様。フラットも頑張ってくれたんでしょ」
ふぁふっと答えるフラットは嬉しそうだ。
とりあえず、皆にクリーンをかける。旅の汚れは落としたいからね。
「ナギ、お疲れさん。魔物出すんだろ。終わったら上に来い」
うん、とメルトを見れば、さっそく依頼を見ている。
「フラットはどうする? ちょっと魔物を出してくるよ」
『ここで寝てる~』
了解、とその場を離れる俺に付いてくるのはメルトだ。そう、メルトの魔物もあるから。
「おじさん、ただいま。無事戻ったよ」
「戻ったか。遠かっただろ、王都は」
「うん。特に行きは遅かったから。帰りに魔物を狩ったんだけど、いい?」
もちろんだ、と奥へと案内される。
いつものように魔物を取り出して鑑定する。
ギルマスとメルトの分を指し示せば、メルト? と見た。
迷宮の依頼を受けて来たというメルトに、なるほどと納得してるよ、おじさんは。
メモを貼り付けてゆくのは助手のお兄さんです。
それぞれにメモを貼って、二人の分は終了する。
後は俺の分。
別の場所にと言われて、反対側へと移動した。
オーク、オーク、オーク、オーク……
そしてでっかいオーク。
次は、鷲、鷲。そして鳥、鳥、鳥……
「なんだこれは! お前とフラットでこれだけ狩ったのか?」
そうだよ。
「氷はお前だろ、でこっちはフラットか。どっちもきれいなもんだ。鳥系の肉は全部いるのか?」
さすが解ってらっしゃる。
「うん、鳥のお肉は全部欲しい。あと、オークもかな。一番でっかいやつは?」
「あれはオークキングだな。肉は数段美味いぞ」
じゃあ、キングの肉も!
やっぱりな、と苦笑するおじさんは慣れてるよね。
じゃあ、明日にはメルトとギルマスの分は解体できる。素材はどうする? と聞かれたメルトは全部買取でと答えた。ギルマスは直接聞くらしい。
俺の分の肉は明日の夕方で、精算は明後日の昼頃だと言われた。
お願いしますね。
そしておじさんにお土産を渡す。
「これ俺に?」
うん、そうだよ。他の人にも、と一廻り小さいお土産を人数分渡した。
ありがとよ、と嬉しそう。ベイクドチーズケーキにしたんだ。子供がいるって聞いてたから。他の人は焼き菓子だ。
受付に戻ってお姉さんたちにもお土産を渡す。
同じ焼き菓子と飴を人数分取り出した。
キャーと大騒ぎになっちゃったけど、まあ喜んでもらってよかったよ。
次は食堂に向かう。
お弁当はほとんどなくなったから再注文だ。
「戻りました~」
お帰り! 皆が喜んでくれる。
お土産を渡せば大喜びだ。女性には飴もつけたよ。
「あの。お弁当を注文したくて。結局、冒険者の食事担当は僕になっちゃったので、ほとんど残ってないんです。いいですか?」
「もちろんだよ。そうか、ナギが食事を。大変だったな。前と同じでできる度に引き取ってくれるか?」
「それでいいよ。じゃ、お願いします」
了解! と嬉しそうに手を振ってくれた。
「ギルマス、ナギです」
入れ!
失礼しま~す。
中に入れば、さっそく書類の山と格闘している。
「なんでメルトが一緒なんだよ」
「だって、宿に行くのに荷物もあるし」
まあいい、と座れと言われた。
「今回も世話になったなナギ。これは食事代として納めてくれ。皆からも徴収するから気にするな」
いいんですか?
当然だ。
それなら、とありがたくもらった。
いくら入ってるかは知らないけどね。
「それでだ。領主様との話になるんだが、かなりの人数が街に来てるらしい。他の街のギルドでも募集したからな。だが、王都以外は、こっちで判断しろということだ。だから明日から忙しくなる。お前に面接を手伝ってもらいたい。お前の鑑定なら背景までわかるだろ。ヤバイやつは連れて行かない。頼めるか?」
そんなにたくさん来てるの?
「ああ。ギルドの部屋も途中で問い合わせが来たから、知ってるやつだけ許可した。もう満室だ」
すごいね。
「明日は何時からですか?」
「そうだな、九時くらいでどうだ?」
「わかりました。じゃあ、場所は?」
「会議室だな。護衛としてフラットにもいてもらう。そしてメルト、ついでにお前もいていいぞ。依頼するのはナギだけだけどな」
カタカタと笑うギルマスは意地悪だね。
はいはい、と呆れた顔で嬉しそうなんだけど。器用だねメルトは。
じゃあ、明日、と立ち上がれば紙を差し出される。
依頼を受けて帰れと言われたので、受け取った。
一日金貨一枚? 依頼主は領主様か。それで高いんだね。
明日の依頼を受けてギルドを出た。
当然のようにメルトも付いてくる。帰る途中に宿がいろいろあるからだ。
最初の宿では断られた。
次の宿もその次も。
なんで? と次の宿で聞いてみれば、どこも満室で泊まるところはないらしい。定宿として確保してる人だけは問題ないけど、といってたので、皆が戻っても宿はあるんだろうね。
どうするかな、とメルトが頭を抱えてる。
『泊めてあげればいいのに』
ん?
『ろふと? だっけ。あれがあるでしょ。泊めてあげれば?』
そういうことね。
でも、いいのかな。
鑑定結果は問題ないけど、どうしようか。
悩んでるメルトを見てかわいそうになってきた。
ちょっと待って、とおじいちゃんにメールすることにした。
++++++++
アルムおじいちゃんへ
ナギです。
ご無沙汰してごめんなさい。
王都でのことは知ってるでしょ。
それでね、メルトって冒険者が困ってるんだけど。フラットが泊めてあげればっていうの。どうしようかと思ってね。
どうすればいいと思う? 鑑定結果だけじゃ判断できないから。
気になることがあったら教えて欲しい。
ナギ
++++++++
ナギ。
よく連絡してくれた。
そやつは良い人間である。
それにお前に対して尊敬と慈しみを持っておるのじゃ。
ともに暮らしても良いであろう。歳は少々離れておるが、頼りになるのじゃ。お前も少しは甘えればよい。気持ちを楽にする時も必要じゃからの。
例え戦後の有象無象が入り込んできても、そやつが共におれば問題ないじゃろ。良い出会いじゃ、大切にするのじゃ。
クリエイトも楽しいんでおる様じゃの。誕生日にはステイタスを確認すれば良い。
そうじゃ、パーティというものを組むのもよいの。
楽しむのじゃぞ。
アルム爺
++++++++
あはは、おじいちゃんも喜んでるよ。
『フラットの言う通りだったね。だから一緒に住もうか』
『うん。おじいちゃんも甘えていいって言ってるし、悪いやつが来ても、メルトと僕がやっつけるよ』
ありがとね、フラット。
「なあ、ナギ。お前の家の庭でいいんだけど、テント張らせてもらえないか? 俺、そこでいい」
そう来たか。
「なにそれ。うちに止まればいいじゃない。ロフトっていうところがあるんだけどね。そこなら一人でゆっくりできるよ」
「いいのか?」
「気に入るかどうかわからないけど、とりあえず見てみてよ」
嬉しい! と跳ねてるんだけど。メルトもまだ十六歳だから、日本では子供だよね。
三人で歩いて家に到着した。
うん、結界はきちんと機能してる。
「フラット」
ふわぁっと家の結界が解除された。
うをぉ!
あはは、メルトが驚いてるよ。
「ここがお前の家か?」
そうだよ。
「すごいな、ここ。その年で持ち家ってどうなんだよ」
ふふふ、そう思うよね。
とりあえず中で話そうよ。
玄関で靴を脱いでといえば驚いている。
フラットは脚を洗ってますよ。
どうぞ、と中に入ったとき、メルトは固まった。
フラット、脚拭いて上げるからね~
いつまで固まってるのかな、メルトは。いい加減にしてよね。
フラットの脚を拭っても正気に戻らないメルトに、いい加減腹が立つ。
「ねえ! 早く移動して。邪魔だよ!」
あ、悪い。
へこむくらいなら、さっさと動けよな。
とりあえず中を案内する。
トイレ、風呂、俺とフラットの寝室。そして裏口など。まあ、これだけなんだけどね。
キッチンはこっちだよ。で薪ストーブね。
「薪ストーブか。つけるか?」
できる?
任せろ!
じゃあ、頼もうかな。
「着替えしてくるから、お願い」
了解、と薪を準備し始めるメルトは慣れてるんだろうか。
寝室でもう一度クリーンしてから普段着に着替えた。
フラットは監視してるみたいだね。
「上手だね、メルト。僕、つけたことない」
なんで?
「だって、家ができてから二日で王都に出発したから」
そういうことか、と頷いている。
「じゃあ、僕はご飯を作ります。あ、ロフトはあそこ。上がってみて」
おう、と聞こえたのでキッチンに移動した。
えっと何を作るかな。
ごはんとパン、どっちがいい? フラット。
当然、両方、でした。
じゃあ、米を研ぎましょう。
アイテムボックスから炊飯器を取り出してキッチンカウンターの上に置く。内釜はクリーンしてあるからきれいだ。
そうだ、いろいろ出しておくかな。あ、でも旅用は別に買ったから必要ないかも。唐揚げはつけ込んで明日揚げるとして。今日は何を作るかな。
シャカシャカと米を研ぎながら考える。
魚もあるけど。フライにでもするかな。そうだ、醤油があるから、俺は刺身が食べたい!
じゃあ、シャケと鯛のフライ、それとオークのロース肉でトンカツだね。
メニューが決まったら、後は準備するだけ。
揚げ物用の鍋をアイテムボックスから出しておく。油も出して……
米を炊く準備をしてからパンの在庫を見てみるけど、あまりないね。じゃあ、買い物に行ってもらうかな。
「メルト、買い物頼める? フラットが店は知ってるから」
いいぞーと聞こえたのはロフトらしい。
「ナギ、ここ気に入った。いくらか払うからここに住まわせてくれ。食事代も払うぞ」
「あはは、そんなことは気にしなくていいよ。気持ちだけもらっとく。でも、気になるなら任せるよ。それでパンだけど」
先に降りるから、と降りてきた。
荷物を片付けてたんだろうね。普段着のメルトは年相応だ。
「フラット、メルトを前の商会に連れて行ってくれる? 一度行けば、会頭さんなら覚えてくれるから。それと、これ。お土産だって渡しておいて」
ふぁふっと鳴いたフラットは出かける気満々だ。
お土産をメルトに渡して革袋を取り出す。
「食事用のパンを三十人前くらい買ってきて。なかったら明日行くからあるだけね」
よっしゃ、と大型犬くらいになったフラットと一緒に家を出て行った。鍵のことはフラットに任せておこう。
その間に、サラダを作る。
葉物野菜をぶっちぎるだけなんだけど。ドレッシングは作るかな。あとは、魚と肉の処理だね。
ふんふんと鼻歌交じりで作る自分に驚いた。
楽しんでるよね、俺。
まあ、楽しい方がいいよ。
魚をきれいに洗って鑑定すれば、生食可能と出た。じゃあ、お刺身だね。
包丁で皮を剥いで斜めにスライスする。
丁寧にお皿に並べた。さすがに大根の桂剥きはできないから、葉物野菜を敷いてみました。マグロと鯛の刺身はたくさんできました。多分、フラットも食べるだろうと思ったからね。
フライの分は塩をして休ませておく。
オークのロース肉は筋切りをして包丁の背で叩いて塩こしょうだ。
油を鍋に入れてコンロをつけたので、その間に鍋ごとスープを取り出してストーブの端っこに置いた。
さて、卵を溶いて小麦粉、卵、パン粉をつけて行く。でっかい皿にのせているけど、たくさん作ろう。
読んでいただきありがとうございます。
何とか戻り、魔物も出して、お弁当も注文して……
本当に忙しいよね。
ちゃんとご飯もつくるって、居候の分も。本当にナギは偉い!
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




