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29/202

29 王都へ向けて出発したけど。かったるい旅でした。

こんばんは、こんにちは。

いつもありがとうございます。


今日もよろしくお願いします!


 フラットの背には俺専用の椅子がついている。

 何頭もの馬が順番に街道沿いに並んだ。今日初めて会った蒼翼の面々とも挨拶したので、フラットの背に乗って準備万端だ。

 喉の渇きを癒やしたフラットもご機嫌だ。

 お腹がすいたら、このままで口に軽食を入れてやることができるので、ご機嫌だね。


「皆、待たせたね。じゃあ、今日から数日頼みます」

 領主様が馬車の中から頭を下げてくれる。

 そこにはギルマスも乗ってた。後で馬に移動するらしい。ギルマスの馬は荷物を積んだ二頭引き馬車の先頭にいる。だから三頭で引っ張るらしい。そうでなきゃ、もたないからだって。やっぱりギルマスは優しいよ。

 それなら、俺たちが守らなきゃね!


「出発!」

 騎士団長さんの声が聞こえて、隊列は出発する。でも、全然進まない。騎士団がたくさんいるからだ。

 領主様の馬車は気にせず、できるだけ走れと言われているらしいけど、荷物を積む馬車の馬は大丈夫なのかな。まあ、ギルマスの馬がいるから大丈夫だろうけど。

 魔物が出たら、ギルマスが自分の馬で安全な場所に誘導するらしい。それを守るのはフラットの結界だ。 

 もちろん、ギルマスは馬と一緒に参戦するけど。



 やっと動き出したのは十五分くらい後だ。

 かったるいなぁ、とフラットとはなしていた。

 やっと動ける、と喜んだが、街を出るまではゆっくり進むと聞いた。貴族って面倒だね、ほんと。

 

 スタートが遅かったので、午前中の休憩は無しになった。まあ、いいけど。

 フラットは途中でお腹がすいたと言う。アイテムボックスからホットドッグを取り出せば、後を振り向いて大きな口を開けた。

 三本放り込めば、むしゃむしゃ食べて、再び口が開く。

 ううっ、まだ食べるの?

 次は五本入れた。でも絶対足りないだろうな、とサンドイッチの三個入りを準備して待つことに。当然のように開いた口に放り込んだ。

 それを二回繰り返して、水袋から水をどんどん流し込む。

 隣ではショルダーさんが楽しそうに笑ってるんだけど。しゃれにならないんだよ、こっちは。

 水袋の水も半分以上飲んじゃった。お昼には魔法で一杯にしないとね。


 昼食も無事に終わり、フラットは森の中へ移動してトイレまで済ませた。大きい方もしてきたらしいよ。ここはクリーンしなくていいよね。


 まだまだ街に近いので、このあたりは魔物は少ないらしい。大きな街道だからすれ違う馬車や馬も多いけど、みな軽々走って行く。この隊列の後に続いちゃった人たちはかわいそうだね。


 冒険者たちはあまりに遅すぎる移動にイラついてる。

 まあ、俺たちも同じだけど、とにかく遅い!

 これで四日かかるんだな。普通に馬で走れば、二日か三日の昼までには王都の門をくぐるらしく、別の意味で疲れてるよ、皆。


 夕食も楽しくいただいて解散になる。当然の様に護衛をするわけだけど、俺が眠くなるからと最初になった。まあ、最初の方がいいけどね。ということで、今は『草原の風』のリーダーと一緒に話しをしている。

 フラットは森に近い場所で寝ているように見えるけど、探索していますよ。

 楽しい話しをいろいろ聞いて、あっという間の二時間だった。

 もうそろそろランクアップできそうなんだと嬉しそうなリーダーは優しい人だ。

 この後は、高ランクの人たちが草原の風メンバーとペアになって護衛するらしい。これも訓練の一環だとギルマスは言ってた。それならなんで俺はここにいる?

 まあ、そんなことはいいけど。


 夕食は結局、この前と同じで俺の料理になりましたよ。

 その方が美味いと言ってくれるのは嬉しいけど、それぞれに夕食代だとお金をもらうのは気まずかった。ひとり小銀貨一枚だと鶴の一声だったんだ。まあ、気持ちは嬉しいけど、お代わりする人は有無を言わさず二食分になる。ギルマス、俺、食堂の人じゃないからね。

 ついでに昼食もと俺の弁当を明日から提供することになっちゃった。これも小銀貨一枚でスープをつけてくれと言われたので、渋々承知しておいた。まあ、お弁当と言っても、普通のランチ以上の量が入っているんだけどね。ただし、メニューは選べませんよ。

 フラットは自分の食べる分がなくなると心配してたけど、全く問題ない量を確保してるから、と言えば安堵している。もし、弁当が足りなければ、何か作ることになるけどね。三日間全員に行き渡るかと言えば無理だろうけど、俺には必殺技がある。コピー魔法だ。途中で寝る前にコピーしておいたから、弁当は足りるはず。ご飯もパンもコピーしたよ。だって、みんなかなり食べるから。あとは、クリエイト先生にも何度もお世話になりました。

 おじいちゃんのおかげで助かるよ、ほんと。


 そうそう。

 旅に出る前日にメールでお知らせしましたよ。

 おじいちゃんは、くれぐれも気をつけるように言ってた。世の中のいろいろには直接手が出せないらしい。創造神だから何かを作り出すために力を貸してくれるのは問題ないけど、起こるトラブルを回避したり、争いを止めたりはできないという。できないというか、しちゃいけないらしい。それは人の乗り越えなくちゃならない事柄。そういうことなんだな、と納得しちゃった。俺はかなりいろいろもらってるけど、これほどのことをする相手はいないと聞いて嬉しくなった。


 

 そんな風に王都まで駆け抜けました。いや、のんびりと進みましたね。

 途中で魔物たちにも襲われたけど、騎士たちは邪魔になるので、二回目の襲撃から、フラットに馬車に結界を張ってもらって先に進めとギルマスが送り出した。

 役立たずの騎士は邪魔ばかりするんだ。戦いにくいったらないんだよ。

 最終的に、領主様と文官たち、それと荷を運ぶ馬車が無事ならそれでいいから。そうそう、冒険者たちの馬は、フラットのひと吠えで、荷を運ぶ馬車の周りに集まるんだ。それを結界で覆うフラットはすごい。

 先輩冒険者たちはさすがだ。

 急所を確実に攻めて仕留めて行く。

 俺とフラットの役割は、襲ってきた魔物たちの奥にいるであろう高位のやつを叩くこと。

 空から探索して攻撃するんだ。

 リーダーが倒れれば群れはバラバラになるから。

 でも、おかしい事もある。

 普通ならゴブリンなどの雑魚が襲ってくるらしいけど、今回は違った。オークやフォレストウルフなど、街道沿いではあまり見ない魔物たちによく襲われた。これも何か関係があるんだろうか。

 商人たちの護衛依頼のランクを上げるように話す必要があるな、とギルマスが呟いていた。

 当然、ギルドには連絡するんだろうね、あのカードで。

 その時思い出して、カードを返すと言えば、戻るまで持ってろと言われた。まあ、それならいいけど。



 やっと王都に到着したのは出発して四日目の昼前だ。

「皆、ありがとう。おかげで無事到着できた。明日は謁見になるが、時間に遅れないようギルドに集合して欲しい。頼むぞ」

 はい、と頷いた皆は喜んでいる。

 この役立たず騎士たちと離れられるから。

 いろいろ言うだけで戦えない騎士ってなんのためにいるのかな。


 俺たちはギルマス以外、ギルドに向かう。

 ギルマスは、領主様と一緒に国王陛下と話をするらしい。ギルドの偉い人も来るっていってたから現状報告かな。


 ギルドではマックスさんに任せているので、付いてゆくだけだ。

 フラットは、出かける前に世界共通の従魔ネックレスというものの中でも眷属のネックレスというやつを買った。結構な値段がしたけど、自分で作る事もできると聞いたので、ミスリルで作ってみることにした。以前、盗賊のアジトで見つけた中にあったからね。

 この情報はミルロット商会会頭に教えてもらった。本当に頼りになる人だね。


 王都の門で、それを確認した王都騎士たちは驚いていた。

 シルバーウルフでかなりでっかくて、その上ミスリルの眷属のネックレスを掛けているなんて、とこわごわとフラットの首元を確認してたよ。もちろん、伸縮自在の魔法を掛けてあるので、小さくなればそなりの大きさに変わる。これはすごく便利なんだ。おじいちゃんとクリエイト先生に感謝です。



「護衛依頼、お疲れ様でした。それぞれ書類をお願いします。依頼料をお支払い致します。魔物などの買取希望がありましたら、隣の建物に買取カウンターがありますのでそちらへ。お支払いもそちらで致しますので」

 ふうん、そうなってるんだね。

 皆がカウンターに依頼書を置く。

 俺も必死で腕を伸ばして、ペラリと紙をおいた。いきなり小さな手のひらと依頼書が現れたので驚いた受付の人は、俺を上からのぞき込んだ。

「あの……」

 あはは、かたまちゃったね。

「こいつはナギ。Cランク冒険者で間違いなく、今回の依頼を受けています」

 マックスさんが説明してくれる。

「そうでしたか。失礼致しました。あまりにもかわいいので驚きました」

 どこでもそうですから、とマックスさんは俺の頭を撫でてくれる。だからぁ、髪の毛が絡んじゃうんだって!

 手で髪の毛を整えていると、いろんな視線が突き刺さる。


 そのあと、それぞれに依頼料が渡された。

 財布に入れて、アイテムボックスへと収納しておく。嫌な視線もあるからね。

 じゃ、と隣の建物に移動することになる。

 全て俺のアイテムボックスに入っているから、当然俺も一緒だ。鑑定すれば狩った人はわかるので、カウンターで分けることにした。ていうか、リストに出てくるからわかるんだよ。


 カウンターの上に魔物を取り出して行く。

 草原の風のメンバーたちの獲物をとりだし、隣へズレる。そしてショルダーさんの獲物。蒼い翼の面々たちの獲物と順番に取り出していった。買取カウンターもかなりデカくて横長いけど、このあたりで折り返しする。

 マックスさんたちのパーティーメンバーが狩った獲物を捕りだしたあと、次は俺の番になる。

 全員が終わるまで待っていたけど、買取のお兄さんは終わったと判断したらしい。

「以上ですか?」

「いや、この上のが全部なくなれば、他のを出すから」

 え? うん、理解できてないよね。


 皆の獲物は奥へと引き取られて、マックスさんがこっちを見る。

「ここに出していいの? でっかいやつばかりだけど」

 いいですか? と聞いているけど理解できてないらしい。

 いいから出せと言われて、小さい物から取り出す。

 オークが五体。フォレストウルフが七体。オークのでっかいやつが三体。一番デカかったオークが一体。フォレストウルフのリーダーと思われるかなりの大きさのやつが一体。その隣りにいたでっかいやつが一体。

 そしてフォレストバードのでっかいのが二体。これで端っこまでいっちゃったけど、あとはどうしようかな。

「まだあるのか?」

「うん、ワイバーンがいる。あの鳥と一緒にいたから」

「……だそうだが、どうする?」

 呆れた顔をしたお兄さんは、ハッとして我に返った。

「あの、ワイバーンですか?」

「うん。そうだと思うよ。でっかい鳥たちは二頭だけ仕留めたら逃げたけど、そのまま僕の方に来たから」

 数は? はい、一体だけです。

 なるほど、と頭を抱えてるんだけど。

「では、あちらが開いたようなので」

 はいはい。

「お前、相変わらずすごくきれいに仕留めてるな。首が落ちてるのはフラットか? で、氷と剣がお前か」

 うん、そうだよ。

 さすがのマックスさんも呆れてる。

「すみません、ギルドカードを……」

 はい! アイテムボックスから取り出して渡した。

 出来上がった明細をマックスさんと一緒に確認する。間違いないけど、お肉はもらえる?

「ねえ、マックスさん。ワイバーンのお肉が欲しいけど、もらえるのかな。それとでっかい鳥のお肉も」

 肉か?

「悪いけど、こいつが肉が欲しいって。解体した後、こっちにもらえるか?」

「もちろん問題ありませんが、どれの肉ですか?」

 フォレストバードとワイバーンのお肉と答えておいた。

「オークはいらないのか?」

「うん。まだ一頭と半分くらいはあるから。鳥のお肉はいろいろ作りたい料理があるの。ワイパーン、美味しいでしょ?」

 そうだな、と頭をポンポンしてくれる。

「じゃあ、塊で取れる部分だけにしてくれ。細切れはいらん。ナギ、ワイバーンの革はいらないのか? いろいろ作れるぞ。それに、ファングウルフの毛皮は?」

「じゃあ、ワイバーンの革は欲しい。狼のはいらないよ。フラットが嫌な気持ちになったらかわいそうでしょ」

「そうか? その割に、フラットがほとんど首落としてるけどな」

 わははは~と笑うマックスさんだけど、俺が嫌なんだ。

「では、明日のお引き取りでよろしいでしょうか?」

 それでいいか?

「王様と会った後でいい?」

 いいだろ、とマックスさんは言いたい放題だ。

「明日、陛下との謁見があるからその後で立ち寄る。それでいいか?」

 はい、問題ありません。

 どうやら謁見のことはギルド職員は知ってるみたいだね。


 じゃあ、と精算は俺だけ明日になった。

 宿に移動するかと外に出れば、皆がいない。

「みんなどこに行ったの?」

「先に宿に向かってるはずだ。俺たちも行くぞ」

 は~い。

 フラットは大きな身体を揺らしながら俺たちに付いてくる。大通りの歩く人はビックリしてるけど、逃げ出したりする人はいない。やっぱり都会だね。

 フラットに手を振る子供までいるくらいだから、いいんだろう。


 十分くらい移動して宿に到着する。

 前にはピットさんがいてくれた。

「遅かったな。フラットの事は話してあるけど、大型犬くらいの大きさにしてくれって。いいか?」

 うん、と頷けばスルスルとフラットは大型犬サイズに変身した。当然、ネックレスも縮んだよ。

 中に入って、マックスさんと俺は手続きをする。どうやら二泊は領主様がとってくれているらしい。名前だけを書いてギルドカードを見せれば終わった。

 じゃあ、と階段を上がる。

 俺とフラットは二人部屋で二階だ。隣はマックスさんとショルダーさんだった。

 ふぅ、とクリーンを掛けてからベッドに乗っかった。

 ころんと転がるフラットもふかふかで嬉しそうだ。

 んーっと身体を伸ばして脱力する。

 すぐにでもねちゃいそうだ。


読んでいただきありがとうございます。


この回で一番好きなシーンは、ナギが必死で冒険者ギルドのカウンターに依頼書を出すところです。それを見た受付嬢が固まる。ここ、自分でも頭に浮かべると微笑んでしまいます。(自画自賛になる?)


コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。

明日もどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやぁ、ナギ君の一生懸命に頑張って、依頼票をカウンターに置くのは、正直悶え死にましたねwww 可愛いです♡ 明日も頑張って欲しいなぁ。
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