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2 やくそうの、ぼうけんしゃに、なりましゅた!

こんばんは、こんにちは。


二話目も続いて投稿しました。良かったら読んでください。

どうぞよろしくお願いします。

 ガラガラと進む馬車の側には、馬に乗った冒険者が両側に一人ずついる。護衛だろうが、街までの道にも魔物がでるのか。それなら、戦い方を見ておこう。



 残念なことに、魔物との遭遇はなかった。

 身体が小さいから無駄だろうが、前世の俺は格闘技をやっていた。師範代だった。既に師匠よりも強かったけど。平行して、杖道(じょうどう)というのもやってた。木刀と杖で二刀流みたいなやつ。大学でやめたから四段だけど、いつか役に立つことがあるだろう。

 これからは地味に稼いでしっかり食う! 身体を作って行くために。

 ただ、宿がどうなるか。それだけは不安だ。


 馬車の中は俺と商人さんだけだった。

 大きな荷物をいくつも持った商人さんとはいろいろ話した。

 三歳にしてはしっかりしていると言われてドキッとする。そう、子供らしくなきゃね。

 隣国マントール国王都の街の中に店があるから、欲しい物があれば安くしてくれると聞いた。店のカードももらったので、大切にしまっておいた。


 宿を探そうと、まずはギルドに行くことにした。

「こんちは……」

 ん? お姉さんがキョロキョロ探してるぞ。

「ここ、でしゅ」

 やっと下を見てくれたよ。こういうとき、チビは困るよ。

「あ、ごめんなさいね。何か用かな?」

 差し出したギルドカードを見て驚いている。


「さ、三歳で冒険者?」

 はい、と笑顔を返しておいた。

「それは失礼しました。それでナギさん。御用向きは?」

「えっと。やしゅいやど、いりましゅ」

 ……?

「や、安いやどね。一人なの?」

 うん、と両親のことを話した。

「……そう。辛かったね。少し待ってて」

 パタパタ駆けてゆく足音を聞きながらギルド内部を見回す。

 いろんな人がいて、皆かっこいい!


「よう。待たせたな」

 そう聞こえて身体がふわりと浮き上がる。

「宿探してんだって? じゃぁ、ギルドの部屋があるぞ。十部屋くらいはあるが、ギルマスの俺が許可しないやつは使えない。お前は既に二件の依頼をこなしてる。それに薬草採取は皆嫌うから、お前には頑張って欲しいんだ。しばらくここにいるのか?」

「うん。ちいさいしゅから、あちこち、ちゃいへん」

 そうだな、と頷いてくれる。

「じゃあ、普通一日小銀貨五枚だけど、月極にするか? それなら一日小銀貨一枚でいいぞ。飯は食堂があるし、裏の水場は自由に使っていい。どうだ?」

 素泊まりで千円か。なかなか安いんじゃないか?

 普通の宿屋はいくらくらいなのか聞いてみれば、一泊小銀貨六枚以上らしい。それなら激安でしょうよ。

 じゃあ、月極にしてもらうことになり、最初の十日分、銀貨一枚を支払った。全額支払うことができないということにしておいた。数日頑張れば上手く回るだろう。両親が残してくれた金貨や銀貨は使うつもりはない。本当の最終手段だから。


 ギルマスは多分、元冒険者だろう。

 カウンターに座っている俺が見上げてもかなりデカい。

 支払後、職員と食堂の人たちに紹介してくれる。ギルマス直々って、どういうこと?

 これから一人で生きてゆくんだから、皆見守って欲しいと話してくれる。俺ってすごく恵まれてるな~

 好き嫌いはあるかと聞かれたので、ないと答えれば、料理長が銅貨七枚でお任せメニューの朝・夕食を作ってもいいかとギルマスに掛け合ってくれる。昼はどうするんだと聞かれて、干し肉とパンがあるからと言えば、俺専用メニューと言うことで許可がおりた。普通のメニューが小銀貨一枚前後かららしいので激安だ。

 さっそく夕食から出してくれるらしい。

 じゃあ、とギルマスは俺を抱いて部屋に連れて行ってくれる。

 狭い部屋だけど、家のベッドくらいの寝床はある。運のいいことに、端の部屋だったので窓がふたつだ。特別だぞ、と笑ってくれるギルマスに、丁寧に礼をいっておいた。


 さて。 

 じゃあ、生活魔法の検証だな。

 まずは人差し指に火をと思えば、ろうそく程の火がともる。

 次はっと、水袋に水をと思えば満たされる。

 後は……そうだ! 身体をきればいいんだけど。えっと、きれいにするってなんていう? 浄化? 洗浄? うーん、アニメなんかじゃクリーンっていってたけど。

 しょわしょわ~という感覚で身体がすっきりした。髪の毛もさらさらで服の汚れもなくなった。

 うん、これは便利。これって話してもいいことなのかなぁ。わざわざ話すこともないだろうけど。

 明日からは薬草採取だな。

 じゃ、とリュックを下ろしてアイテムボックスに入れて、肩掛け鞄だけを手に階段を降りた。



 食事前に依頼ボードを見に行く。

 常時依頼の薬草採取を見たいけど、見えない。背が低いことが徒になる。

「ナギさん。これ、薬草の常時依頼一覧なの。こっちで見ていいわよ」

 やった、ラッキー!

 ありがと、と笑顔を返せば、かわいいと嬉しそうにお姉さんたちが跳び上がった。なんでだろう。


 常時依頼はいろいろある。

 マーグル草、ヒヨリ草、ラズの実などいろいろあって、生息地も書いてある。

 リストの下段を見て驚いた。

 どう見ても日本で見たことのある植物じゃないか! ギルドの依頼書には絵が描いてあるのですよ、ありがたいことに。

 アケビ、アロエ、ウド、オオバコ、オニグルミ、クズ、クロモジ、ゲンノショウコ、ザクロもある。サンショウやシソ、スギナなんかも薬草として使われるんだな。

 胃痛や下痢、傷薬、腎臓とかの臓器にも効能があるもの、やけどなんかの皮膚に関係する薬草の採取が難しいらしい。レア薬草ということか。でも名前とか季節はバラバラだな。まあ、異世界設定と言うことでいいでしょう。

 常時依頼ばかりなので、その一覧表をもらった。明日、早朝から出かけるつもりだ。


 その後、激安とは思えないほど豪華な夕食をいただいて、酒を飲み始めた人たちにつかまらないように部屋に戻った。





 早朝、太陽に起こされる。

 さらっとクリーンをかけて着替えをした。

 短刀を腰につけてリュックを背負う。もちろん肩掛け鞄は必須だね。


 朝食を食べてギルドを出たのは七時前。

 場所によっては野営するかもって言えば驚かれたけど、まるっと無視して笑顔でギルドを出た。


 意気揚々とギルドを出た俺は、小さな身体に大きなリュックを背負って街を出た。

 採取した薬草はアイテムボックスに入れるけど、取り出すときにはリュックの中から取り出すと見せかける。中で入り口を開くことができると実験済みだ。肩掛けバッグでは無理があるので、おのずとリュックになるというわけだ。


 今日は皮膚薬と鎮痛薬、化膿止め用の薬草を中心に集めたいと思っている。

 この世界でしか見たことのないマーグル草、ヒヨリ草、ラズの実。日本で聞いたことのあるアロエ、ザクロ、サフラン、シソ、シャクヤク、スギナなどなど。もちろん、この世界の名前もあるけど、面倒で覚えてない。まあ、田舎ではこう呼んでた、で通るでしょ。


 まずは、一番値段の高いマーグル草に挑戦だ。

 ギルド情報では、このあたりから生えているらしい。


<サーチ・マーグル草>


 ポポポポポっと光が見えてそれぞれに小さな画面が出ている。これは便利だね。

 もう少し先だね、とトテトテ駆けるんだけど、三歳なのでかなり遅い。

 でも、自分で笑っているのがわかる。この世界に来た時には落ち込んだけれど、日本では経験できないこと。自然を感じて大気を感じ、空を見ながら駆けることができるなんて。以前なら考えもしなかったことが楽しい。

 ただし……

 余計なものが出てこなければ、ね。

 

 数十本採取した時、少し先に群生地を発見した。

 だが、その時、余計な客も引き連れていたらしい。

 気配を感じて斜め後を見てみれば、これって角ウサギってやつだね。


<鑑定>

 角ウサギ:レベル2 

 食肉にできる。角は武器素材として買い取りされる


 うん、いいじゃんよ。じゃあ、これも倒しておくかな。

 ならば身体強化だね。

 小さな身体に身体強化をかけて解体用のナイフを手に、飛ぶように迫ってくる角ウサギの正面に立つ。キキキと聞こえたのは「バカめ」とでも言ったのだろうか。

 角が胸に届く寸前、最小限で避けて首を引き裂く。

 飛び散る血しぶきを気にすることなく、別の個体と向かい合った。同じように正面から相対して受け流すを繰り返して、確実に首の血管を切り裂いていった。

 合計五体の角ウサギを狩って、アイテムボックスへと収納する。解体のスキルもあるけど、今は薬草メインだから。それに解体込みで買い取ってもらった方がお得らしい。鑑定先生の情報だ。自分にクリーンをかけて、再び薬草を採取してゆく。


 昼食は不味い干し肉とまるでクッキーかと思うほどの堅さのパンを食べ水を飲んでやり過ごす。


 結局、日暮れ前にはギルドに戻って来た。

 おお~、これがよく聞いた夕方の混雑か。息子情報だけど。

 そんな風に感心しながら列に並べば、俺の存在を知らない冒険者たちが驚きの視線を送ってくる。でも、そんなことは気にしない。行儀良く順番を待っていれば、皆も同じように待っていた。ラノベで読んだような争いはない。少し残念な気がする。なんでだろう。


「ナギさん。お帰りなさい。薬草採取はどうでした?」

「はい。たくしゃんとれましゅた」

 そうなの、と抱えている薬草を受け取ってくれる。リュックをおろして中から出しました、みたいに、取り出せば受け取るを繰り返して、やっと終わった時にはカウンターは薬草だらけだね。

「すごい量ですね。それも珍しいものばかり。少し待ってくださいね。数を確認して計算しますから」

「はい。おねがいしゅましゅ。つのうしゃぎ、いましゅけど、どうしゅましゅか?」

「角ウサギに襲われたの? よく倒せたわね。じゃあ、計算する間、あっちのカウンターで角ウサギを出してくれるかな」

 トテトテと移動する。

「よう、無事に戻ったな。で、何か狩ったのか?」

「はい。つのうしゃぎ、いましゅ」

 おお、出してみろと言われて、リュックを開いて手を突っ込み、<アイテムボックス>と頭に浮かべれば、手のひらにするりと出てくる。取り出す側から、カウンターに引き上げてくれるので楽ちんだ。

「全部で五体だな。お前、すごいな。怪我はないか?」

 大丈夫、と答えればよかったなと頭を撫でてくれた。

「じゃあ、解体込みで買取だな。うん? 首をきれいに切り裂いてるな。なかなか狩りの腕もいいらしい。将来楽しみだな」

 えへへ、とギルドカードと明細をもらって再び受け付けへと向かえば、ちょうどよかった、とお姉さんに呼ばれる。

 これ、とメモを渡せば、すごいわねと感心してくれた。

「それでは、角ウサギは解体料をひいて銀貨一枚と小銀貨五枚。薬草は全て十本でひと束なので、銀貨七枚と小銀貨六枚と銅貨五枚です。じゃあ、これ」

 そういって、合計で銀貨九枚と小銀貨一枚、銅貨五枚を渡してくれた。

 お疲れ様、と聞こえて嬉しくなる。

「珍しい薬草がたくさんあったから助かるわ。皮膚の病気や傷薬もたくさん作れると思うの。明日からも頑張って。でも、無理はしちゃダメよ。なるべく魔物と会わない方がいいからね」

 優しいなお姉さん。

 ありがとうと感謝の言葉を返して、そのまま食堂に向かった。


 おかえり、とウエイトレスが声をかけてくれる。

 ただいま、と挨拶すると、少し待ってねと調理場に向かって「ナギさん帰ってきました~」と声をかける。

 うふふと微笑んでしまう。こんな風に温かく迎えられるのは、どこでも同じで嬉しいものだ。


 家族は急な俺の死で戸惑っただろうけど、立ち直ってくれると思う。そういう家族だ。一緒に同じ道を進むと公言していた妻と息子なら後を任せることができる。だから俺はこの世界を、第二の人生を長生きしたい。アムルおじいちゃんが守ってくれるから、後悔しない一生を過ごすんだ!


 感傷に浸っていれば、大きなプレートが置かれる。

 お金は今朝払っているので問題ない。これ、特別メニューだよね、絶対。いつまでも甘えているのは申し訳ないんだけど、今はお世話になろう。そう感謝を込めて食事をした。



読んでいただきありがとうございます。


もう一話、続いて洋行する予定です。どうぞよろしくお願いします。

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