197 ノルのことはきちんと話しました。
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
手を振ってギルドに向かって歩き出すよ。
フラットはシルバーウルフの姿のままだね。だいぶん小さくなってるけど、俺の背より高いんだ。
ギルドをそっと覗いてみたら、今はすいてるね。
ゆっくり中に入るけど、フラットが入れば驚いて剣に手をかける人が数人いた。でも、受付のお姉さんたちはフラットを見て立ち上がる。
「ナギさん! 久しぶり~元気そうだね。大きくなったね、お兄さんになってるじゃない」
「こんにちは。お久しぶりです。大きくなりましたか? でも、マックスさんよりは随分小さいけど」
それは仕方ないわよ、と皆が出てきてフラットにもふもふしてるね。
「フラットも大きくなったね~」
「もっと大きいですよ、本来は。ここに入りきれないから。サンも大きくなったし」
そうなの! とサンはヒョコリと顔を出したね。
あはは、かわいいんだけど。
「ナギ!」
あ、マックスさんだぁ。
上がってこい、と言われたから上がりましょうかね。
フラットは大型の狼くらいに小さくなってくれたので、サンはフラットの頭に乗っかったよ。
「お久しぶりです~」
「ナギ! 大きくなったなぁ。それにもっと美人になったぞ」
美人って。とケタケタ笑う。
「フラットもサンも元気そうだな」
「うん、元気だよ。そうだ、おやつでも食べる、フラット」
う~ん、と聞こえたあと、スルッと人型になったね。
乳母車を側に寄せれば、何だ? と皆が見る。
そういえば、ドールーハは、ヒヒイロカネの話でソラを見てなかったね。まあ、それほどのことなんだろうね。
「そのちっこいのはなんだ?」
「ケットシーか?」
「そう、姿はケットシーだね。この子のお父さんは異世界の神様なんだよ。アルム神様から頼まれて、俺の眷属になったんだ。だから、俺は子育て中」
おう? とギルマスとマックスさんが驚いてるね。
乳母車から籠を外してソファの上に置けば、サンが飛び込んだよ。
そろそろ起きるかな?
『あるじ~、ソラ、起きるよ~』
「そうだね。このまま食べさせようか」
『いいね~』
フラットが人型になって籠の隣に座ってくれた。
「お、おい。フラットが……」
「人化したんだよ。話もできるから」
そうか、と驚いてるね。
目を開けたソラは、ボーッとして、見てるよ皆を。
『あるじ、おちちゃ~ここ、ろこ?』
「ここはね、俺の生まれた街のギルドだよ。ご飯の続き食べる?」
『ちゃびりゅ~』
じゃあ、これね。
小さいテーブルを取り出せば、フラットが組み立ててくれる。サンはアイテムボックスから保存容器を取り出して置いてくれたよ。そして保冷バックからミルクの小瓶を一本だしたね。
『いちゃらちま~』
どうぞ、といえば、ギルマスがじっと見てるんだけど、なんで?
「ナギ、僕たちも食べていい? サンと一緒に食べたい」
「うん、いいよ。できるだけ汚さないようにね」
は~い、と二人はそれぞれでっかい保存容器を出しました。
飲み物も、ギルドのテーブルの上に置いたね。サンは色違いの保冷バッグを出したね。籠の中でソラと一緒に食べてます。
「これ、赤ん坊のはメシか?」
「うん。朝、出かける時には寝てるからね。料理長がいつも持たせてくれる。フラットとサンのはおやつだね。俺も持ってるよ、おやつ」
まったく、お前は……
え? マックスさんが呆れてるけど。
「それで、家を作ったんだって?」
「まあ、そうだね。入り切らないから表に出てるのは一部だけだよ。あとは空間の中」
「で、住むのか、この街に」
「うーん、ここで依頼を受けることはないかな、今のところ。今の依頼が終わらないからね。だからしばらく他国だよ。でも、毎日戻るつもり。食事や寝泊まりは屋敷でするから」
どうやって?
「空間を繋いでね。だから、普段は使用人たちに任せることになる。馬番は今依頼を受けてる国にいてもらってるけどね」
「どこの国だ?」
トランサル王国だよ~
「え? あの、新しく迷宮が発見された国だろ? 東と西の辺境に一度に見つかったって。もしかして、お前が見つけたのか?」
「うん、そうだよ。だから街作りもやってる。やりたくないんだけど、なんかそんな感じになっちゃったんだ。だから、メンバーにも街で依頼を受けさせたいと思うんだけど、無理。それに護衛以外でSランク以上が受ける依頼がある?」
「……いや、ないな。王都ならあるが、このあたりはないぞ。盗賊の討伐か犯罪者の確保くらいか」
犯罪者の確保?
どうやら聞いてみれば、俺が住んでた頃の辺境伯が貴族じゃなくなって、今は盗賊というか犯罪組織を作っているらしい。かなりの規模らしいけど、居場所もわからないんだって。
だから、気をつけろと言われた。
まあ、そうだろうね。最後にギルドの近くで襲ってきた奴らは、あいつの手下だった。ノルは気づいてたけど、話してはなかったはず。なんでわかったんだろうね。
まあ、そんな組織を持ってるくらいだから、情報が集まったのかな。
「それ、危険でしょ。どうして捕まえないの?」
「そりゃ、お前。騎士団じゃどうにもならんだろうよ」
「それはそうだけど。どうして冒険者に頼まないの? その方が早いだろうに。相変わらず、国王はバカなの?」
バカって……
あ、言っちゃったよ。まずかったな。でも、バカだよね、絶対。
「冒険者でも、受けられる人間はそうそういないぞ。お前くらいじゃないか、受けるとしたら。お前、今ランクは?」
「ええと、途中からギルドを通してないけど、一応、SSSランクだね。王族も貴族も構いなしってお墨付きはもらってるけど」
はぁ~~~~~とマックスさんが盛大に溜息をつくんだけど。
それで、ノルはどうしてる?
やっぱり聞かれたか。
フラットが心配そうに見てくれるんだけど。
話さないとダメだよね。
「ノルはね。人間としてのノルは死んだの。貴族の護衛に一人で参加したんだ、俺達が魔物討伐が忙しかったから。そこでバカ貴族に目をつけられた。アイテムボックスや剣を盗むために他の冒険者たちも殺されたんだ。でも、ノルはいるんだよ、今も」
「そうか……え? いるってどういう事だ?」
「話すと長くなるんだけど、俺がアルム神様の使徒だって知ってる?」
どうやらギルマスは聞いてたみたい。マックスさんはソファから転がり落ちたけどね。
「アルムおじいちゃんがね、ノルのことは任せろって。人には戻せないけど、別の姿で戻してくれるって。あまりに俺が辛そうだし、俺を守りたいから何とかしてほしいって、ノルからも懇願されたんだって。だから、俺の眷属として生まれ変わったんだよ」
そう言えば、クビを傾げてるね。
じゃあ、説明しようかな。
パンテーラオスクーラ(闇豹)に生まれ変わったノル。
レベルは1000超えで、特殊個体ダークビーストキングといって、 闇の獣王 、悪魔の獣王なんだ。
なんだと?
聞いたことないと言うんだけど、それはそうだよ。俺のためにおじいちゃんが作ってくれた魔物だし。俺の眷属にと思ってたら、我も我もと希望者が殺到したから、新しい魔物にしたんだって。
人型も取るし、今は俺の代わりもやってくれる。
今日から、トランサル王国の東の迷宮に、重要なポストに置く二人のメンバーを連れて潜ってる。数日は経験のために連れて行ってもらった。
その間は、普通の冒険者みたいに過ごすと思う。おそらく二十五階層くらいまでだと思うよ。
「なんでだ?」
「そこは魔族がいたんだよ、未開通の時にね。だから俺が作り変えたんだ、魔族を滅してね。まあ、その調査も兼ねてるかな。多分、一週間くらいは時間取ると思うけど」
「なんだ、それは。二十五階層までで一週間だど?」
「そうだよ。俺たちだけじゃそれほどかからないし。最下層まで行ってもそれくらいだった気がするけど」
おっそろしいな、とビビってますね、マックスさん。
だって、フラット、ノル、オニキスに乗って移動するし、途中からは魔法だけになるからね。
そう言えば呆れてた。
まあ、とりあえず、お昼ご飯を食べたら向こうに戻ると伝えたら、 夕方まで待てば、みんな戻ると聞いたんだけど、それは無理だね。
あっちで仕事があるんだよ、と正直に言ったよ。
まあ、そうだろうな、と悲しそうなでっかい二人ですね。
じゃあ、と階段を降りて、買取カウンターに向かって、おじさんに挨拶します。魔物は? と聞かれたけど、暇なのかと問えば、そこそこ忙しいらしい。じゃあ、今回はいいよと言えばないのかと聞かれたんだけど。
多すぎて普通じゃ無理。
屋敷に解体専門がいると言えば、本当に規格外だと呆れられた。おじさんは珍しいものがいいらしいけど、それは職人も同じだからと答えれば、そういうことだな、と苦笑してたね。
じゃあ、と手を振って外に出る。
そこで懐かしい人にあった。
いつも買ってたパン屋さんだ。
久しぶりだと喜んでもらったよ。
いくつでもいいと言われたので、半分以上買っちゃいました。相変わらずだと笑われたよ。
食堂のシェフが呼んでいると言われて顔を見に行った。
討伐に行くときの弁当が評判になって、今ではかなり頼まれるらしい。だからありがたい、と喜んでもらえた。
また時間があるとき、みんなで食事に来ると告げて、ギルドを辞した。
ゆっくりと歩くシルバーウルフのフラットを見て、皆手を振ってくれる。覚えてくれてるんだ、と嬉しくなった。
のんびり歩いて屋敷に戻ったよ。
そういえば、メルトのことは聞かなかったけど、たぶん、もういないんだろうね、この街には。いられないか、家事を出したんだし。
門を開いて中に入ると、道行く人がびっくりして見てるよね。
いきなり屋敷ができてるから驚いてるみたい。仕方ないけどね。
「ただいま~」
浄化したフラットは人型に戻ったね。
ソラは乳母車の中でまだ食べてるよ。
もう、あきれちゃうね。
途中でフォレアから連絡があったんだ。
いろいろと忙しいらしいけど、本格的に迷宮を開く日程を教えてくれと言う人が多いらしい。それなら戻ろうかな。
昼食を食べて戻るからと伝えて、息を吐く。
すると、ダイニングテーブルにはいろいろと料理が並び始めてた。
フラットとサンは大喜びで座ってるよ。ソラも椅子に座って、朝食の最初の保存容器を開けて食べてる。二個目は午後からになりそうだね。
いただきます!
そう言い、食事を始めれば、自分も食べるんだと、ソラがあちこち指さしてる。専用侍従が取り分けてくれるんだけど、大丈夫なの? 食べ過ぎじゃないのかな。
俺は白米とパリパリチキンをガツガツ食べてますよ。
そしてタコの酢物。味噌汁と煮物が大盛りです。フラットとサンは、メインは肉だね。俺も角煮を食べてるけど。ホロホロとこぼれるほどのオーク肉は最高です。
追加で小さな容器にクリームパスタが出てきたよ。
これは毎日でも食べられる旨さなので、すぐに手をつけました。うん、俺もよく食うよね。
デザートを終えて、迷宮管理事務局の所長室奥にある小部屋に空間をつなぎます。
<虚数空間魔法>
つなぎっぱなしになるので、魔力多めでつなぎました。
うん、問題ないね。
じゃあ、屋敷の小さい応接室には仲間しか通れない結界を張ります。そして偽装して普通の壁に見えるようにしました。
執事と侍従長、料理長には確認してもらって、事務局の方も見てもらいます。同じように仲間しか通れない結界を張り偽装しました。
驚いてるけどね。
一応、夕食は俺たちだけになるね、今日は。
そう伝えておきました。
じゃあ、と屋敷に戻って行きましたね。
一応、応接室には鍵をかけるようにしています。
もちろん、ここにも鍵をつけてますよ。所長室からは鍵がないと入れない。中からは自由に出られます。
セキュリティーを強化しました、あはは。
じゃあ、俺達は所長室へと入ります。
「フォレア、戻ったよ」
『おかえりなさい。あの東の迷宮を開く日ですが、十日後くらいでいいでしょうか』
「そうだね。それくらいでいいかな。ちょっとノルに聞いてみるから、もう少し待ってて」
わかりました、と水晶を切る。
『ノル。どんな具合?』
『おう、まあ、そこそこいけるぞ。もう十五階層を抜けるところだ』
『すっごい、早いね!』
『まあ、そうだな。十階層くらいまでは簡単に進んだぞ。その先の方が時間がかかってるな。それで、どうした?』
『ああ、あのね、迷宮をいつ開くかって問い合わせが多いらしいんだ。だから十日後くらいでいいかな』
『いいんじゃないか? それまでかからないと思うぞ。二十五階層当たりで終わらせようと思ってるからな。それで、屋敷はどうだった?』
『うん、成功だよ。もう繋いでるから。で、今は戻ってるんだ。これから、マンションを作ろうかと思ってるんだけどね。これ、家賃の回収とか大変だよね。どうするかなぁ』
『それは戻ったら話そう。誰か人を置いたほうがいいかとは思う。人手不足だな』
そうだね、ととりあえず念話を終わらせた。
はぁ~とため息が出ちゃうよ。
こういうとき、好きな時間に空間に入れないのは辛いかな。でも、フラットがいないとダメだし、同じか。
フラットたちはソファに座って待っててくれてるんだ。
読んでいただきありがとうございます。
さて。
とりあえず、屋敷もできたしギルドにも報告したけど。
残りの依頼を終わらせないとね……
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