192 アルムおじいちゃんが現世に来た!
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
ゆっくりと立ち上がった大司祭は、俺を見る。
『ナギ、いろいろすまぬの。中々にして王族という輩は欲深きものじゃ。故に、難儀をさせてしまう。じゃが、今回、儂は黙っておられぬ。お前が国のため、民のためと考えて行動し、指示をしたことを簡単に破る。これは息子がバカだというだけではない。このような王子が将来国を治めることができると思うておるのか、国王。隣国がこの国を狙っておるのじゃぞ』
ええ? 国を狙ってるの? そこまで考えてるんだね、隣国は。
その上、おじいちゃんは凄いことを言っちゃったよ。
『東の辺境は問題はないであろう。ナギたちが居る間に限るがの。隣国は、ナギがおる故考えておる。じゃがの、ナギが結界を張ればそれでしまいじゃ。良い人間、敵意を持たぬものしか入国できぬ。じゃが、隣国と面しておるのは辺境であるが、別の領地に攻め入ることは可能じゃ。ならばどうなる? 辺境領はナギが関わった。先は見えておるであろう。ナギは既に依頼を受ける気はなくなっておる。東の依頼は終わらせるであろう。じゃがの、西は無理じゃ。ナギの言う事を聞かぬなら、自由にさせよ。ゴーレム迷宮は攻略するであろう。その上、国境は王都を過ぎたあたりからはない。当然、結界も解除するであろう』
そんな……
国王が固まったぞ。
あはは、仕方がないだろうよ。
「アルム神様。此度だけではなく、いろいろとナギ様にはご迷惑をおかけしております。ですが、なんとか西の依頼をお願いしたいのですが、無理でしょうか」
おっと、宰相はそういうか。
まあ、そうだろうな。宰相は何とか国に富をもたらし、民の生活が少しでも良くなるようにと考えてるんだから。
『ふむ。そなたの言い分は理解するがの。じゃが、ナギの気持ちを考えれば理解できるであろう。旅をしたいと望むナギじゃ、金もある、儂の仕事も手伝うてくれるのじゃ。その思いを収めつつ依頼をこなしておる。全て街に住む民が仕事を得て生活できるように、将来を見据えて生きて行けるようにと考えてのこと。そこまで己の思いを心に納めて戦っておったのじゃ、これ以上の無理は言えぬ。それはそなたなら理解できよう』
「……はい。確かにご無理ばかりを申しております。ですが、なんとか。なんとかお助けいただきたい! そうでなければ私は……」
なんか妙な言い方をしたな。
宰相は何を考えてる?
『そなた、事が終われば国を出るつもりじゃの? 違うか』
え? そんな、なんでだよ宰相。
「さすがアルム神様でございます。私の心はお見通しでしたか。そのとおりでございます。西の辺境を開いたあと、王宮を辞するつもりでございます。そこまでやり遂げれば、国内は安定するでしょう。その後は己の人生を過ごしたいと思います。お許しいただけませんか」
あ、無言でおじいちゃんが宰相を見てるね。
でも、宰相はこれからどうするんだろう。もったいないよね、この人。できれば仲間になってほしいくらいだけど。でも、楽しくないかな。本来なら事務局を任せたいけど、この国にいろというのは酷だろう。それなら、一緒に他国に行けばいい。まあ、それは俺の勝手な希望だけどね。
『フォレアであるか。お前は何をしたい。どのような人生を過ごせば幸せなのじゃ?』
「……私は。この国と生まれた国しかしりません。生まれた国といっても、子供の時に両親と国を出たのです。故に、ほぼ、この国で成長しました。ですので、ナギ様が羨ましかったです。みなさんが眩しかった。いつか自分も各地を巡ることができれば、と日々思っておりました。私の幸せ、それは皆さんのように人々のためになり、アルム神様のお手伝いをさせていただけることでございます」
あれ? そうなんだね。宰相がそんな風に考えてるなんて知らなかった。人もいろいろあるよね。俺だって転生者だし。
『なるほどの。確かにそなたは頭もよいし善人である。できればナギの助けになってくれればと思うほどじゃ。どうかの、今少し息苦しいであろうが、東の辺境でナギを手伝ってはくれぬか。武の部分は眷属たちがおる。故に、知の部分を助けてやってほしい。ナギはどちらも担う役目がある。じゃがの、知の部分を少しずつ請け負って貰えば、眷属たちとナギの仕事は捗るのじゃ』
「それはとてもありがたいです! 私のような者でもお役に立てるでしょうか」
『問題ない。さすれば、宰相職の難儀も理解するであろうの、国王よ。そして王子たちも甘える暇はない。宰相の変わりはおらぬであろう。優秀な宰相の後を任せられると差が明らかになるからの。どうじゃ、ナギ。ノル、オニキス、フラット、サン。お前たちは受け入れるか?』
問題ございません、と頭を下げたね、みんな。
『では、決まりじゃ。して、国王。此度の始末どうつけるのじゃ』
「……は、はい。我が子息のしでかしたこと。本来ならば死罪でしょう。いえ、王弟共々死罪といたしましょう。そうでなければ、民と同等とは申せませぬ」
『うむ。それがよかろう。決めることは多いのじゃ。西の辺境伯を決めねばなるまい。そして、いかにしてナギに頭を下げて依頼を続行するか、それを考えよ。ナギが承知せねば諦めよ。良いな』
は、はい……
あ、国王が凹んだぞ。
まあ、処分としては仕方がないね。
おじいちゃんが言わなきゃ、俺がやってた。裏切りは許さないから。
「父上、なにとぞ、なにとぞ今一度チャンスを!」
知らぬ顔の国王だが、宰相まで手を引くと言って、これからどうなるのか不安なんだろうね。とりあえず、後の話はおじいちゃんに任せようかな。ダメかな、どうするのがいいんだろうね。
『ナギ。お前はどうしたいのじゃ。西の辺境はほかに何がある?』
「知らないよ。そのあたりは調べてない。民がどのように暮らしているか、知らないんだ。だから仕事を生み出せると思ってた。でも、これ以上裏切りは嫌だ。代官は問題なさそうだったけど、落ち着いて鑑定はしていない。それにブルックスからも何も報告はなかった。だから王族は嫌いだ。貴族はどうか知らないけどね」
なるほどの、とおじいちゃんが呟いたね。
『ならば儂が大司祭に報告をさせようぞ。領主を代官にするか、他の貴族にするか、それはお前が見極めればよいのじゃ。お前が使える人間はお前自身が探すほうがよい。決まれば、儂が大司祭を通して辺境の教会へ信託を下す故な』
あはは、かっこいいよ、おじいちゃん。
「ありがとう、おじいちゃん。俺は手をひこうと思ってたのに。おじいちゃんから見て、西の迷宮は辺境に必要なんでしょう?」
『そうじゃの。そうでなければお前が国を治めるしかない。お前が作った辺境ならば、何かあった時、独立させることも可能じゃからの。内乱は問題なかろうが、他国に目をつけられる。その可能性が大きいのじゃ。じゃがの、お前の使う悪人進入不可の結界があれば、問題ない。国全体に施すことも可能じゃが、それはその時に考えればよい。貴族の中でいらぬ者は全ての依頼が終わる前に切り捨てよ。儂がそう望むのじゃ。あのような者らは必要ない。国も無駄金を使うのはやめよ。領主を置けばよいだけじゃ。貴族である必要はなかろう?』
そうだね、その通りだと思うよ。
「わかった。おじいちゃんの言う通りにする。確かに、俺も気に入らないんだ。街道を通る馬車でさえ偉そうなんだから。役に立つ人はそのまま領主としていてもらうけど、役に立ちそうってレベルならいらない。それくらいじゃないとダメだよ。国王はどうするつもりか知らないけどね。まあ、最悪は東西の辺境だけでもまともにしたいかな」
『うむ。それで良いじゃろう。その間に国王がどうするか決めるはずじゃ。その時に判断すればよい。じゃがの、ユリアロウズの屋敷は作るが良いぞ。使用人たちは、変わらず忙しいであろうが、お前たちもこの国へ出勤すればよい。そしてきちんと休むのじゃ。これからは、局員もいてくれる。故に任せることも重要じゃの』
「わかった。そうするよ。また、メールするからね。いそがしかったんでしょ、ごめんなさい」
『気にするでない。今はお前の両親が代わりを勤めてくれておる。なかなかにして優秀である。創造神の元で手助けするべき者たちであるの。故に心配するでない。じゃが、いつも大司祭の身体を借りることはできぬからの。今まで通り、メールになるが許せよ』
「ありがとう。すごく嬉しい。両親にも頑張ってと伝えてね」
『うむ。ならば、儂は神界に戻ろうぞ。ナギ、ノル、フラット、オニキス、サン。ナギを頼むぞ。ソラはまだまだ時間がかかるが、確実に成長しておる。頼んだぞ』
お任せください、と皆が言ってくれたよ。
サン、と呼ぶおじいちゃんは、サンを抱き上げ何かをした。
励めよ、と伝えて優しく撫でてくれた。すごいね、サン。
ではの、とソファに腰をおろしたと思ったら、大司祭の身体から力が抜けた。
ああ、おじいちゃん、帰っちゃったんだね。さみしいな。でも、ハッキリ言ってくれて良かった。
「それじゃ、ナギ。戻るか。宰相、いやフォレアか。いつ屋敷に来るんだ?」
「はい。すぐにでも。いかがでしょうか」
俺を見てるけど、国王はどうするの?
大きく頷いてるけど、宰相がいなくなれば大変なことになるよ?
「ねえ、フォレア。俺は西の辺境の依頼を受けた方がいいのかな」
「それはナギ様にお任せします。ですが、代官を見て判断していただきたい、もしくは適任者を探して頂きたいのです。これは宰相としての立場で話しておりますが」
ふうん。そういうことか。
で、国王はどうするの?
うーん、いろいろ考えているんだろうけどね。
誰か自分で探しなよ、代わりを。
「ならば、宰相。いつでもよい、ナギ様のところに向かうがよい。しかし、できればナギ様の依頼が終わり、支払いを終わらせるときまでいてもらえるとありがたい。その間に、交代のものを探そう」
まあ、そうなるかな。
「じゃあ、それがいいか。最後の仕事、頑張っておいでよ。ただし、国王。宰相のことは国で守って。傷つけたら承知しないよ」
もちろんでございます。
請け負ったね、国王。任せたよ、と立ち上がる。
じゃあね、と手を振り空間に入った。
そのまま屋敷のホールに空間を開いた。
「お帰りなさいませ」
執事がいつものように出迎えてくれたね。
ああ~
お? ソラか。
「ただいま、ソラ。ごめんね遅くなって」
『いいしゅ~、おちごちょ、おわりぃ~?』
「うん、今日のお仕事は終わったよ。いい子にしてた?」
あい~と笑顔で抱きついてくれた。
ゆっくり抱き上げれば、食堂にと言われる。
皆を浄化して、食堂に入っていきます。
アニとブートが階段を降りてきましたね。
そういえば、お腹すいたね、と笑えば皆が頷いてくれる。
いろいろな料理が並び始めたよ。
いい匂いにつられていってしまう。あはは、情けないけどいつも通りだね。
今日は俺の好きな料理がたくさん並んでる。まあ、いつもそうなんだけどね。
わぁ~と驚くほどの料理が山盛りだね。
肉は当然ある、ハンバーグもね。それにトラウトもあるよ。
よだれが出そうだ。
じゃあ、頂きましょう。
そう言い、全員が食事に突進した。
かなり美味い。
懐かしい料理がたくさん並んでいる。嬉しい、本当に。
なぜ、涙が出るんだろう。
俺は悲しいのか? それとも、嬉し涙……
「ナギ、どうした。具合が悪いのか? 大丈夫か?」
ノルの言葉にクビを振るしかない。
わからない。
なぜ泣いているのか、わからないんだ。
俺、どうしちゃったの? 泣けるほど悲しいのか。そんなことはない、はずだけど。
ナギ、とノルが手を引いて食堂を出てくれる。
応接室のソファに座って肩を抱いてくれてる。
その腕の中で静かに涙を流す俺はなに?
しばらく泣いていたけど、なんとか涙が収まってきたみたい。
「大丈夫か? 悲しい涙か嬉し涙かわからないが、泣きたいときには泣けばいい。遠慮するな。お前は様々背負ってるんだ。俺たちも背負わせてほしいけど、どうしても背負いきれない部分がある。それは許してくれ。でもな、苦しいから背負ってほしいと言ってくれ。そうすれば、全員で力になる。お前は俺達の主だ。当然の話しなんだよ、ナギ。出会いも分かれもある。お前の場合は前世との別れもあった。だから頼ってもらいたいんだ。疲れたら安め。俺達に仕事をさせてほしいんだが、ダメか?」
ああ、ありがたい。
眷属たちは無条件で俺に対して忠誠を尽くしてくれる。困った時にはこんなに素晴らしい仲間がいるんだと、改めて感じさせてくれた。
「ごめんね、ノル。どうして涙が出たのかはわからない。でも、涙が出るってことは、身体か心が悲鳴を上げてるんだと思うんだ。最近は自分でおきられない。執事に頼んで起こしてもらってるんだよ。皆とわかれて階段を上がると、ぐったりするんだ。フラフラで何もする気がおきない。ただ、風呂に入って寝るのが精一杯なんだ」
そうか、と覗き込んでくれる。
「じゃあ、少し休みながらだな。けど、約束してほしい。絶対に無理はしない。魔法を使うのはいい。そうでないと逆に身体に悪いからな。けど、マンションを作ったり、ゴミ処理場も作るだろうし、公衆浴場も作るだろ。その時は俺の時間を開けてくれ。側にいて守るから。魔力切れはないだろうけど、体力が落ちれば無理がかかる。だから俺をそばに置け。いいな」
あはは、嬉しいよ、ノル。
「俺も人間とは言い難いけど、とりあえずノルにお願いする。フラットは弟だけど若い。オニキスは別格でしょ。サンは頼りになるからね。ソラは勉強中かな。だからお願いします」
任せろ、と言ってくれたので心から安堵した。
ふっと身体の力が抜けてノルに体を預けてしまう。というか、すごく眠い。お腹すいてるのに。ご飯食べたい。デザートも食べたい。おいしい果物が欲しい。パンケーキや蒸しパンも食べたいのに。
なんで眠いのかな。
ノル、どうしよう、眠くなりそう。寝ちゃったら食べられ、ない……
読んでいただきありがとうございます。
初めてですね、アルム神様が現世に来たのは。大司祭が依り代になったけど、大丈夫なのかな。若くはないから少し心配だね笑
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