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18/202

18 とんでもない戦いだったよ。大嫌いだ、牛頭なんてぇ~

こんにちは、こんばんは。


いつもありがとうございます。

なんだか秋ですね。

私の住んでいる地域では、10月に入ればぐっと寒くなりました。なんでだろう……


今日もよろしくお願いします。

 明るい穴の底をぐるりと見渡したミノタウロスだけど、静かに気配を消してた俺と目が合った。

 うん、合っちゃったよね。

 もぅ?

 お、なんだこのちっこいの、ってか?

 でもこっちから仕掛けることはしない。知らんぷりでじっと見ていた。まるでオブジェになった気分だよ。

 ドシンドシンとこちらにやってきたデカブツは、右手に大きな斧を持ってる。

 じーっと俺を見つめた後、徐にそれを振り上げた。

 あれ? やっぱりそうなるんだね。敵認定されたのは間違いないでしょうけど。

 さて、どう対抗するか。

 大きさからして、剣は使い物にならない。

 それなら魔法だけど、どうやるんだよ。腕とか切り落としたりできるのかな。試してみるなら距離がある間の方がいいね。


<魔力増量氷の刃>


 指拳銃でバン! と射ってみた。

 バシュッと氷の刃はミノタウロスの右腕を切り裂く。でも、一回で切り離すことはできなかった。

 うーん、じゃあどうしようかな。


<魔力増量氷の斬撃>


 ドシュッと大きな円を描いて氷の斬撃と思われる刃が飛んでいった。

 ブシューーーー

 さっきとは違い、ミノタウロスの右腕は肩から切断された!


 うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー

 ビリビリと震える程の叫びで、身体が硬直しそうになった。

 でも動けなくなれば命取りだと本能で感じて、横に飛び退き距離を取ることを考えた。

 でも、ここの広さは限られてる。

 土の壁を作っても、あの巨体ならすぐに打ち砕くだろうね。

 怒りのミノタウロスは、左手を振りかざしてドスドスと突進してくるんだけど、一番最初に到達しそうなのは巨大な拳だ。

 うーん、これは逃げた方がいいと思う。

 サッと避ければ、拳は土の壁にめり込んだ。

 ドドン!

 大きな音だけど、壁は大丈夫なのかな。

 それよりも気になることがひとつある。

 ミノタウロスは一頭だけなのかな。もし、他にも洞窟から出てきたら大変な事になるね。他の魔物でも同じだけど。

 困ったなぁ……


 土に埋もれた拳を引き抜いたやつは、俺を見て怒りをあらわにする。まあ、気持ちはわかるけど。

 今度はどう来る?

 ドッドッドッ……駆け始めたけど今度は注意しているみたいだね。それならフェイントかな。

 同じ方向に逃げると見せかけて、反対側へ駆け出した。

 だが、これが失敗だと気づくのはすぐだった。

 ミノタウロスは俺の身体めがけて体当たりしようと身体を捻って倒れ込んできたから。ギリギリで逃げられると判断してそのまま駆けたんだけど、それも失敗。

 少しだけ、ほんのちょっとだけ引っかかったやつの角に押されて身体が浮き上がる。そのまま壁に激突しちゃった。

 思い切り全身を振り回され打ちつけられた痛みが突き刺さる。グッと声が出なくなるほどの痛みに、無様に地面に落ちた。ふ、ふ、ふ、と小さく息をするが、どれほども酸素が入ってこない。これはかなりヤバイかも。だって、今の俺は六歳だもの。


 ぐぉぉぉぉーーーーー

 こいつ、こんなちっこい子供相手に嬉しそうに立ち上がったぞ。つまらない大人だな、お前。

 まだ息が整わない。

 それに全身の痛みで身体を起こすこともできずにいる。これ、冗談抜きでヤバいぞ。

 やっぱり子供だと一人で対応出来ることは限られてる。

 でも諦める気はない。絶対にやっつけてやる!

 魔力を全身に巡らせて身体を正常に戻そう。


<ハイヒール>


 ブワッと全身が光って、すぐに痛みは引いていったけど、いろんな所を治してるんだろうか、もう少しかかりそう。

 ニタニタと口角を引き上げたミノタウロスは、ゆっくりと俺の方へ近づいている。

 速く治って、お願いだから。

 

 どうやら少し光が収まってきたみたい。

 でも敵は目の前だ。

 しゃがみ込んで倒れた俺を見ているんだけど、デカっ!

 この口なら、ひと口で終わりそうだよね。

 それだけは嫌だ。


 そんな風に思っていれば、やっと治療が終わったようだ。

 タイミングを見計らったように、でっかい手のひらが迫ってくる。今しかない、と立ち上がって反対側へと移動した。

 この奥に何もいなければいいんだけどな、と洞窟の中を探索する。奥はかなり深いけど、奥まで探索することはできそうにない。だってやつがこっちに来てるからね。

 このままでは逃げ場がなくなるぞ、と策を練る。

 でも、ミノタウロスは止まらない。

 両手を広げれば穴の半分くらいは塞がれる大きさなので、その隙間を逃げ回るしかないかな。魔法で牽制してもいいかもしれない。

 さっきの氷の魔法はかなりの効果だったから、アレでいくかな。

 立ち上がって俺を見下ろすミノタウロスのどこを攻撃するかと考える。やっぱりヤバイのは腕かな。

 さっきと同じように太い腕が迫ってくる。


<魔力増量氷の斬撃>


 ドシュッ! と氷の斬撃が太い腕を切り落とした。ただし、二の腕の真ん中くらいの所だけど。


 うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー

 おお、雄叫びだー!

 痛いんだろうね、残った腕を振り回しながら怒りの表情で俺に向かって駆けてくる。ヤバイでしょ、血が飛びまくってるんだけど、やめて!

 絶対に次は脚でしょうよ!

 そんなことを思っていれば、怒りに震えるミノタウロスは意外な行動に出た。

 突進してくると見せかけて、俺を蹴ったんだ!

 察して避けたんだけど、遅かった。身体の側面を思い切り蹴られて、洞窟の入り口側にたたきつけられてしまった。

 がぁっ……

 そのままずるっと滑り落ちて、ぺしゃりと身体が崩れてしまった。

 ううう、痛い。さっきよりも痛いよ。

 動けないのがとてもまずい気がする。今襲われたら対応出来ない。頼むからどっか行けよ! あ、でも穴を開けたの、俺だった。

 

 はぁ、まずったなぁ。

 やっぱり子供の身体って何をするにも大変だ。生きてたら、速く大きくなりたい。

 あ゛ーーーいぃだいぃーーー


 あれ? ミノタウロスの様子がおかしい。

 俺を見ているけど、ヨダレがダラダラ落ちてるんだけどどうして? もしかして食べる気なの?

 うん、そうみたいだね。

 やっぱりかよ! 


<エクストラヒール>


 ピカッと光った俺の身体は見る間に治療されてゆく。

 速く、速く!

 すぐそこにミノタウロスの顔がある。

 どうやって逃げるかな。正直舐めてました、ミノタウロスさん。

 本当にすみません。だから見逃して! 

 そんなことあるわけないのに、思ってしまう。痛いのは嫌いだ。

 治療が終わればどう逃げるか。それが一番の問題だ。もうミノタウロスの口は大きく開いている。

 それならこれしかないでしょ。初の試みだけど、理論的には可能だ!

 光が消えたので、新たな魔法に挑戦する。


<風魔法フライ>


 ぐんっと身体が引き上げられて、まっすぐ上へと上ってゆく。

 うん、これならいける!

 そう思った途端、激痛が走った!

 

 ギャーーーーーー

 思わず叫んでしまうほどの激痛が走る。

 何が起こった?

 下を見れば、丁度いい高さに見えたのか、逃がさないという事なのか。

 俺の右脚はミノタウロスの口の中にある。

 このまま飛べば引きちぎられる。


<浮遊>


 魔法でその場にホバリング状態だ。

 バキッと音が聞こえたが、脚は切り離されてないみたい。さっきの音は骨が折られた音だったのか。

 なんでだよ、お前!

 俺は偶然穴に落ちただけだぞ。

 なんでこんな目に合わされるんだよ。

 最初だって、お前にの攻撃に対して対抗しただけなのに。

 お前みたいなやつが外に出たら、迷惑なんだよ!

 痛みと怒りに俺の感情はグルグル回る。

 ボタボタと血が滴っているのだけれど、それさえも忘れていたみたいだ。


 俺の脚を加えたままのミノタウロスをどうするかと考える。逃がしてなるものかってことだろうね。

 魔法でバラバラにするのは、多分できると思う。でも、こいつは金になるはず。魔物図鑑にはそう書いてあった。それなら復讐として殺してギルドに持ち込む! 消してしまえば楽だろうけど、俺の右脚の代償として、せめて俺たちの肉になれよ!


<魔力増量氷の斬撃>


 バンバンバン!

 指拳銃で頭を狙い、脚を狙い、腹を狙う。

 ブシュシュシュシュバッ!

 氷の斬撃は大きな氷の円形になり飛んで行く。

 太い首に、氷の斬撃は軽々と食い込んで切り離した。

 そして、ミノタウロスの太い両脚、腹を切り裂いた。ゆっくりと倒れて行く。

 ゴロゴロと転がり落ちる角の生えた頭と、その隣りには、ズズズーン! と大きな身体が横たわった。


 やった! やっつけたぞ! 

 あ、ふぅ、ふぅ……

 あれ? どうしたんだろう、めまいがしてるんだけど。

 あ、忘れてた。右脚咥えられたままだ。

 このままじゃヤバいよね。

 ゆっくりと穴の底へと降りた。そして、無理矢理やつの口を開いて治療する。


<エクストラヒール>


 ピカッと光った所で、意識が飛びそうだ。

 うん、少しだけ寝たい。寝ても魔力があればヒールは使えるのかな。



『ナギ、聞こえる? どうしたの、何かあったの、ナギ! ナギ……』

 んん……

 誰かが呼んでる?

 あれ、俺寝ちゃってたのか?

『ナギ、ナギ、ナギーーー! どうしたの、何があったの?』

 あ、フラットだ。心配してるみたい。

『ごめん、寝てた。そっちは終わった?』

『ナギ、大丈夫?』

『うん、大丈夫、だと思う。ね、片付けは終わった? 村長さんには?』

『終わったよ。依頼書にサインはもらってないけど』

 よかった、無事に終わったんだね。

『ここにもデカいのがいるんだよ。回収してからあがるから、少し待って』


 ミノタウロスを魔法で一気に収納した。

 さて、どうやってあがるかな。

 それならさっき考えてた風魔法の応用であがってみよう。


<飛翔>


 ふわりと身体が浮き上がる。 

 ゆっくりと上に向かって上がっているんだ。これは便利かも。

 もう少し、もう少し。

 地上の光が見えてきた。

 

 やっと地上にあがれば、フラットが駆け寄ってくる。

『大丈夫だった? ケガは?』

『治したから大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて』

 うん、と大きな顔を寄せてくれる。

 フラットは血だらけだ。もちろん俺もだけど。

 二人でクリーンで綺麗にした。

『ねえ、オークは? 全部狩ったのかな。それなら集めに行かないとね』

『うん。あっちに集めてあるよ』

 先を見れば、オークが山になってるよ。すごいね、フラットは。

 ありがとう、と二人で移動する。フラットは村長さんを呼んできてくれるらしいので、メモを書いた。

 それを咥えて駆けていったフラットだけど、早いよね。

 

 すぐに戻ったフラットは、うしろに馬車を連れている。といっても、馬車はずっと後だけど。

 オークはいったい何頭いるんだろうね。先に倒したのもあるから、二十頭近いかな。

「ナギ殿! 依頼が終わったとメモをもらいましたが」 

 はい、と頷けば若い人と一緒に駆けてくる。

 これは……

 かたまっちゃったよ、村長さん。


 これほどの数がいたのか、と若い男たちも驚いている。

「とりあえず、森の中にいたのも討伐しましたから、しばらくは大丈夫かと。それと、そこに大穴がありますけど、知ってますか?」

 聞いてみれば知っているらしい。

 どうやって埋めるかと相談していたって言うんだけど。

「あの。少し待ってもらえますか? これ、ギルドに報告しなくちゃならないので。どうするかはギルドか領主様か、誰かから連絡があると思いますので」

 わかりました、と落ちたら危ないから柵を作りましょうと言っていた。

 

 依頼完了のサインをもらってオークをアイテムボックスへ回収した俺は、フラットの背に乗った。

 じゃあ、と手を振って走り出すフラットはまだまだ元気そうだね。

 村長さんたちも手を振って送り出してくれた。


 来た時と同じようにフラットの背に乗って駆ける。

 風を切って走るのは気持ちがいい。でも気を抜けば落っこちそうだよ。おじいちゃんが言ってたように、クリエイトで椅子をつくるかなぁ。フラットに聞いてみようっと。



「ナギさん、お帰りなさい。依頼達成報告ですか?」

「はい。あと、ギルマスに話しがあるんですけど」

 わかりました、と完了の書類を取り出して渡した。そのまま階段を上がる。ゆっくり上がってゆく隣りにはフラットがいてくれる。


「ナギです」

 入れ。

「戻ったらしいな。それで何かあったか?」

 はい。と一連のことを話した。

 音もなくやってくるオーク。そして落とし穴とミノタウロスのこと。

 脚に大けがしたことは内緒だ。そうじゃなきゃ、回復方法を聞かれるから。


「それはどういうことだ。信じられん。何かが関わってるって言うことか?」

「わかりませんけど、事実としてありました」

「それで、誰が狩った? ミノタウロス」

 ゆっくりと手を上げれば、ギルマスの動きが止まった。

 お前……なのか?

 うん、俺ですけど。

「ちょっと待て。お前が一人で狩ったのか?」

「はい。フラットには残りのオークを頼んだので。俺の不注意で穴に落ちたし、興味本位で壁を壊したから」

「いや、いや、いや。Cランクでミノタウロス単独討伐とかありえんだろ! ケガはなかったのか?」

「途中で治療しながら戦いました。壁とかに吹っ飛ばされたので」

 そ、そうか……

 うん、ギルマスが壊れた?


読んでいただきありがとうございます。


やりましたね、ナギ!

でも、痛そうでした。イラストでもかければ、大きさの対比がわかるんでしょうが、6歳の子供なら、かなりデカイと主ます、多分。


明日もどうぞよろしくお願いいたします。


コメント・評価をいただけると、九龍はとっても元気になれます!


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[一言] 絶対に次は脚でしょうよ! そんなことを思っていれば、怒りに震えるミノタウロスは意外な行動に出た。突進してくると見せかけて、俺を蹴ったんだ! 次は、足だと予想していて、蹴られたのがどうして意…
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