178 美味しいジャムを味わったあと、この先の話しをしました。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします!
※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
石の国境とミスリルの国境の繋ぎ手を見たかったから、石の国境の上を飛びます。ずーっと進んで、ここからミスリルですね。
ええと、二本の光があったけど、こういうことか。
縦の板状で隙間が空いてる塀に沿って、もう一つの塀がある。同じ様な塀がずれた感じだね。高さは五メートル以上あるかなぁ。人が入れないほどの隙間で魔物さえ入れない。当然つ立つの塀は頭上でつながってる。横には繋がりがない。そう、てっぺんしかつながってないんだ。細い棒状なら魔物は掴んで上がってくるかもしれないけど、これほどの幅がある板なら、ツルツルのミスリルなので、握って登ることは無理だろう。それに転倒防止にもなるしね。きちんと石壁にめり込んでるから、頑丈だし。
すごいな、これほど考えてくれてるんだ。このままで西まで走れば、問題ないだろうね。国境の反対側の木を切るかな。
鬱蒼としてるから、別にいいでしょうよ。だって間引きもできてないんだから。
じゃあ、さっそくやりましょうかね。
ミスリル国境の南側の木を切りたい。倒した木は隣国側に倒しておいてください。こちらに木が倒れてこないようにしたいです。どれくらいの幅が必要か、それはお任せしたいです。国境もまっすぐじゃないでしょうし。できている間だけでいいです。その先は作った時に再びお願いします。
(クリエイト)
ズバババっと大きな刃が走り出しました。
おお、すごいね。隣国から文句が出れば対応しましょう。反論は正当にできるからね。それなら、この国に迷惑をかけてもらっては困る。だからそちらでもう少してっぺんの木を切ってくださいね。こんなことで争いになるのは本意ではないので、と伝えましょう。文句を言うということは、俺に対しての反論。それなら話が早いでしょうから。
思わずクツクツと笑っちゃったよ。
じゃあ、次はこのまま入国門の様子を上から見ましょう。
おお、騎士たちは緊張しながら最上階の見張り台にいるね。正面、入国待ちの人達、そして南北の確認をしてますよ。どうやら、光が走ったのを見て、驚いてるみたいだけど、俺の仕事だと手を振っておこう。
あはは、大きく振り返してくれたね。そして指さしてるから、両腕で丸を作って示せば、理解してくれたらしい。
頭がいい人でよかったよ。
じゃあ、迷宮近辺に移動だね。大通りは街道と違和感なく繋がってるよ。
集合住宅が建ってるのは目立つね。
コインシャワーは後日、中を確認しようかな。
区画割りもちゃんとできてるよ。ここがあれだから……
うん、マンホールも上出来!
行商エリアは、縄も張ってくれてるから問題ない。
野営場にある公衆トイレと水場は不可視結界にしてるけど、上は透明の結界。だから確認できるんだ。水も出たし、問題ないね。
あと、野営場は綺麗に囲いができてあって、土も柔らかそうだ。まあ、人が歩けばすぐに固まるけど、何年も放置したあとよりはいいでしょう。
迷宮への道は、とても綺麗に出来上がってる。
緩やかなカーブを描くそれは、両側に細い水路がある。これはいい考えでしょう。あ、水道の栓が片方に三か所あるね。両側にあるから、それぞれに水を引くこともできるでしょう。
迷宮へ向かう道と野営場の間には馬車がゆっくり通れるほどの空間がある。
これはゴミ処理場と公衆浴場のスペースだよ。
後々楽しみだね。
とりあえず、大通りも問題なく通り抜けてるし大丈夫。
じゃあ、戻ろうかな。
ノルはどのあたりにいるんだろう。
「ノル。今、どの辺?」
『お疲れ。今は屋敷に向かってるところだ。一応、辺境門までは行った。ハルトたちAチームは街道よりひとつ裏の道を戻ってる。そろそろギルドあたりまで戻ってるだろうが。お前は?』
「俺も、そろそろ戻ろうかと思ってる。とりあえず、迷宮の入口、広場、そこまでの道、大通りは終わったよ。そうだ、国営の集合住宅もできたし、コインシャワーも完成した。中の確認はしてないけどね。あと、行商人のエリアもちゃんと仕切ってある。後でしなくちゃと思ってたら作ってくれてたんだ」
『すごいな、それは。屋敷に戻るのか?』
「うん。後で相談があるんだけど。これからのことだよ。どれくらいかかる?」
『じゃあ、少し急いで戻ろう。空を戻ることにする。まあ、俺とフラットオニキスでなら、Bチームは乗れるだろうし』
「わかった、じゃあ、俺も戻るね」
おう、と念話を終えた。
じゃあ、戻りましょう。って、飛べばすぐなんだよね。
ゆっくりと工房の近くに降り立ちます。
「お帰り、ナギ様」
ただいま~
棟梁に手を振って、奥の部屋に向かう。
「こんにちは、ナギです。おじいちゃん、具合はどう?」
少し時間をおいて、お母さんが出てきた。
お世話になりますと頭を下げてくれる。
どうやら、今日は脚の調子が良くないらしい。それなら治療しましょうと中に入れてもらった。
もうすっかり家だね。
「おう、ナギ様。すみませんな、こんな心地のよい家に住まわせてもらって」
「別にいいよ。無料じゃないんだし。そうだ、お母さん、家賃は半額でね。王都から来た人たちは、広さや仕様が違うけど、それぞれの家賃の半額でお願いしようと思ってる。仕事はあるから問題ないと思うよ」
「それでいいんでしょうか。それではあまりにも……」
「大丈夫だよ。孤児院や迷宮のことを頼みたいからね、仲間だよ、みんな」
ありがたい、とお母さんは泣きそうだね。
じゃあ、とおじいちゃんの脚を見せてもらおう。
少し前に治療はしたんだけど、変だね。
ベッドに横になってもらって全身を確認することにした。
ええと、どうかな。
異常を探したいんだけど。
あ、これ。
どうやら確認できそうだね。
じゃあ、鑑定できるかな。どこが悪いのか。不具合箇所は?
……わかった、これは辛いね。
脚は失ったけど、そのことで不具合が起きてる。
背骨や腰に無理がかかってるんだね。
それなら、どうしようか。とりあえず元に戻るかな、骨を戻して義足を造ろうか。
じゃあ、とりあえず、治療ですね。
(中度治療)
ブワッと光ったおじいちゃんは、すぐに収まった。
その後は……
欠損の脚につけられる義足がほしいです。歩くのに身体に無理がかからないようにしてほしい。飛んだり走ったりは無理でしょうから、普通に歩けるようになればいいです。脚を引きずるくらいは仕方ないかもね。
そのあたりの調整はお任せします。
(クリエイト)
おっと、右足が光ったよ。
身体の光が収まってたおじいちゃんは驚いて見てるよね。
はい、できたよ。
これ、どうやってつけるんだろう。
あ、理解した。鑑定でわかったよ。
「これはね、義足といって、おじいちゃんのためだけに作ったんだよ。これは、こうやって……」
凹んだところに切断面を入れてもらう。切断されたところは当たらないようになってるみたい。そして、太もも部分はスルスルと縮まってゆくんだ。これ、魔道具みたいだけど、ブレスレットのアイテムボックスと同じ原理みたいだね。日によって調子が違うだろうし、歩いてても変わってくる。それに対応してくれてるみたい。これはいいね。魔石は必要ないらしい。空中に漂う魔力を集めて使うらしいからね。
説明すれば、素晴らしいマジックアイテムだとおじいちゃんとお母さんは大きく目を開いてるよ。
これほどのものは払えないというんだけど、大丈夫だよ。息子と話をするから気にしないで。もとより、お金をもらうつもりはないんだと言えば、それはダメだとお母さんに叱られた。息子に話して欲しいと。これほどのものは普通なら買えない。作れもしないだろう。それならば、毎月の給金から払わせて欲しいと言うんだ。そうでないと、それが当然だと認識すれば息子が駄目になるって。
なるほどね、そういうことか。
わかったよ、と引き受けておきましょう。
俺はどうしても手を出しすぎるからね、気をつけないと。
じゃあ、と手を振って部屋を出る。
おじいちゃんはまっすぐ立って見送ってくれた。薄いミスリル製らしいので、軽くて丈夫だと喜んでたね。ちゃんと義足には靴も履けるらしい。
これなら、お母さんの手伝いもできるって喜んでたよ。
屋敷に戻れば、孤児院の院長が来てた。
中から開けてもらうために待ってるらしいよ。
「どうしたの、問題がある?」
「いや。そうじゃない。ビワとブドウという果物のジャムができたから、試食をと頼まれた。それと帳簿を持って来たんだ」
そう、じゃあ俺も待ってようかな。
ここには仲間が通れる結界を張ってます。そこで空間の入口を少し開いてるんだよ。
あ、来たね、執事が。
「いらっしゃいませ、院長先生。お帰りなさいませ、ナギ様」
こんにちは、と頭を下げる院長と、ただいま~と手を振る俺です。
中に入れば、おかえりなさいと皆に迎えられる。
そこで院長と一緒にクリーンして、歩き出す。
あいあ~と駆けてくるのはソラだね。最近、声が出始めたんだよ。ちょっと嬉しい。会話は念話だけど。
「ただいま、ソラ。お利口さんしてたの?」
『あい! おにや、おしゃんぽしゅ~。はにゃ、ちれいっちゃ~』
そう、お散歩したの。お花、きれいだったんだね。
右手をグッと上げてくれるんだよ。
クリーンしてから抱き上げました。そして屋敷の玄関へと歩きます。
そこで、担当侍従が脚を綺麗に拭いてくれました。
「ありがとう。大変だったでしょ」
とんでもございません、と笑顔で答えてくれたよ。本当にうちの使用人たちは優しいよ。
さて、おやつを食べようかな。
「ナギ様。おやつは?」
「まだ、食べてないんだ。だから食べようと思ってるんだよね」
それなら、と眼の前に置かれたのはトーストした食パンです。隣には小さなカップにジャムがあります。ビワとブドウだね。
これは美味しそうだよ。自然な色だから安全だということでしょう。
じゃあ、とスプーンの背でジャムを塗り拡げます。それを見た院長も、同じようにやってるよ。
サクッと音がするトーストは、自然な甘さが口に広がってかなり旨い。
これ、変な甘さはなくて、とてもいい感じだね。
瓶にでも入れれば、時間的に大丈夫かなぁ。
屋敷では、アイテムボックスで保存するから大丈夫だろうけど、一般販売はできないよね。
売りは無理だな。衛生面が問題だから。
「料理長、これおいしいよ。すごいね、俺の理想そのままだよ。砂糖は入ってないんでしょ?」
入っておりません、と聞いて安堵する。これは果物そのものの甘さだよ。
ソラが驚いて食べてるよ。クリーンしたけど意味がなかったね。
くすりと笑って見ていれば、おいしいよ~と言ってます。
そんな時に匂いがしたのかな。
フラットをはじめとして、皆が戻ってきたよ。
Bチームは、家に戻ったらしい。今日の分のサインはノルがしてくれたんだって。控えは、ちゃんと下の写しを渡してくれてたよ。これも作ったんだよね、専用で複写式の明細書を。これをあとで俺が王都ギルドに持っていくんだよ。既に長期で依頼は出してあるから。
「ナギ、お疲れ様~ねえ、それ何? すっごく美味しそうな匂いがしてるんだけど。僕のもある?」
あはは、フラットは鼻がいいね。もちろん、あると思うよ。
じゃあ、とキッチンへ向かって一直線に駆けていったよ。自分もちょうだいと言ってるね。
用意してくれてたみたいで、侍従たちがワゴンを押して歩き出す。
急いで戻ったフラットは、ちゃんと椅子に座って待ってます。こういうところは、まだ子供だよね。当然のようにサンはソラの隣の椅子に座って待ってるよ。
オニキスも待ってるね。かなりの年齢なのに、こういうところはちょっとかわいく見えちゃいます。
ハルトはまだ戻ってないけど、ブートとアニも笑顔で待ってるよ。
本当に皆、かわいいんだから。
サンにノルと仕事の話をするから、とソラをお願いして、ゆっくり食べてと伝えます。りょうかい~と引き受けてくれたので安心です。もちろん、専属侍従は側に立っていますよ。
皆にソラをお願いして、俺とノルはリビングのソファに腰をおろした。
「結局、どこまで進んだんだ?」
「かなり進んだよ。ええと、残りはね、辺境住宅部分魔物避けの塀と探索者協会、それと別件で迷宮部分の塀、ごみ焼却場、公衆浴場くらいかな」
「すごいな、それは。別件の部分は宰相と話すか?」
「そうだね、とりあえず、今出来上がってる内容を確認して、足りない分は契約書を作ってもらわないとね」
それは? と聞かれたので、いくつかあるけど、と話をする。
探索者協会のこと。迷宮事務局というのを考えてたけど、とりあえず、迷宮事務局を作って、その中に探索者協会を置きたい。その他には、商人のための区画家賃や集合住宅の家賃回収、コインシャワーのお金の回収・清掃。ゴミ袋の販売・ごみ収集。ごみ焼却場の管理全般、公衆浴場の管理、迷宮の街内に限りった警備、憲兵の設置管理など。
それくらいかなぁ、と首をひねった。
「それ、迷宮事務局ってかなりの組織だろう? 人選が問題になるが、どうする?」
「それだよ。とりあえず、人を募集するよ。そのための掲示板というものを作った。新しい領主の館の前に作ったよ。あとは馬車の終点にもね。それ以外に、商業ギルドのなかに作らせてもらった。冒険者ギルドはまだだけどね。あとは、王都ギルドにも出させてもらいたい」
募集一般職だけだと言ったら驚いてた。
王宮の文官なんかはいらないし、仕事が遅すぎる。だから、そのあたりは鑑定してから実際に仕事をさせて考える。
一般の民、貴族の子息子女でも既に親元を離れていて能力があれば鑑定する。それ以外は知っている人くらいだといえば、ノルも賛成してくれた。
読んでいただきありがとうございます。
やっと形になってきましたね、辺境も。
これからは、国も頑張らないと、ナギに叱られそうですよ。笑
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
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