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167 ノルが本気でキレちゃったんだけど。

こんばんは、こんにちは。

いつもありがとうございます。

今日もよろしくお願いします!


※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様

        『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。


「ナギ、皆を回って、今日の討伐分をお前のアイテムボックスに回収してくれ。お前がいけば、手で触れば移動できるだろ?」 

 わかった、とオニキスたちのところに向かうよ。

 最初はハルト。

 アイテムボックスに手を触れて、今日の討伐魔物を移動した。

 ちゃんと討伐魔物ファイルの中に、ハルトのファイルができた。じゃあ、次はブート、アニ、冒険者たち。

 おっけ、冒険者たちの分は全部回収できたね。

 じゃあ、次は眷属たちだ。

 フラットのアイテムボックスに手を触れて、今日の討伐分だけをと移動する。オニキスはストレージなので、自分で移動してくれた。

 

 テーブルに戻れば、サンが待ってる。

 サンに触れて魔物を移動したよ。そしてノルのストレージからも魔物が移動してきたね。

 後は俺のファイルがある。

 これで全部かなぁ。


 よっこらしょ、と椅子に腰を下ろす。

 ノルはデザートを食べながら俺をじっと見る。なんだろう、もしかしてバレてる?

 でも、何も言わないんだけど。どうしたんだろうね。


「合計したか」 

 ちょっと待って、と今日の討伐ファイルの総数を確認する。

 これって、最初の討伐数より多かったよ。

「すごいよ、この前の東西辺境から王都周辺の街道周りの討伐数より多いんだけど」

 はあ? とノルが驚いてる。

 フルレットとパーミットも背筋を伸ばしたね。


 数を教えろというので、仕方なく話すことにした。

「総数は七千五百三十三頭だよ。高ランクが多いけどね」

 あ、貴族二人はひっくり返りそうになってる。

「やっぱりか。そろそろスタンピードを起こしそうだとは思ってたが、間に合ってよかった。もし暴走してたら、どれほどの民が命を失ったか。おそらくは、パーミット領は全滅、辺境もこちら側はなくなってただろうな」

 俺もそう思う。これだけの魔物が途切れることなく駆け下りて来たとしたら。

 普通の建物はなくなるだろうし、石造りでも、終わるまで大丈夫とは言い切れない。魔物が次々と体当たりしたら?

 考えたくない現実が見える。

 これほどになるまで放ってたなんて、信じられないよ。


 ギルマスの部屋に行くと言うノルは、俺を連れて立ち上がる。サンとソラはフラットのテーブルに連れていったよ。聞かせたくないんだろうね。

 こんな危険なところに孤児院を持ったり職人や使用人たちを置いてた俺はどうなんだよ。でも、これでしばらくは大丈夫だろう。それでも、絶対はないから対策を建てないとね。


 オニキスたちに頼んで、ウエイトレスに追加があったら頼むと伝えてギルマスの部屋に向かう。

 少し遅れて貴族二人も階段を上がってきたね。


 コンコン。

 入れ、と聞こえて、ノルが無造作にドアを開ける。

「失礼する。俺はノル。ナギと共にアルム神様の命を果たすために存在するものだ」

 手を引かれて中に入った俺の脚は止まってしまった。

 そこにはキリングがいたからだ。


「あ、あの。ナギ様、討伐は?」

「終わったから来たんだが、俺たちは座れないのか?」

 いえ! どうぞ、こちらへ。

 そう言い、ギルマスがキリングを促しソファを移動させた。その後から入ってきたのがフルレットとパーミットだったので、さすがのキリングも、ソファから立ち上がり部屋を出ようとしたけど。

「お前、キリングか。ここにいろ、話しを聞いておけ」

 なんで俺が、と突っかかりそうなんだけど、やめたほうがいいぞ、キリング。

「いいから座れ! このギルドのトップ冒険者だろうよ、話しを聞いておいたほうがいいぞ」

 うっ、と言葉に詰まったキリングは、小さなスツールに腰をおろした。


 さて。

 じゃあ、話しをしようか、とノルが言う。

 宰相に水晶板をつなげと言われたので、取り出して繋いだ。

『ナギ様。お疲れ様でございます』

「うむ。宰相、昨日受けた依頼は、さきほど終わった。スタンピードの直前だったようだが、なんとか間にあったぞ」

『ノル様。本当ですか? スタンピード……』

「それでだ。ナギはまず、パーミット領の冒険者ギルドに来たんだ、討伐を始めたから。そして、そこにいたSSランク冒険者のキリングに参加して欲しいと言った。こいつだ」

『キリング、でございますか。それで、参加したのですか?』

「いや。こいつは拒否した。それどころか、ナギの心を大きく傷つけた。ナギはその話しをしなかった。表にも出さずに山頂から中腹下あたりまでの魔物を淡々と討伐していった。その間に、森の木々を理に従って整理しながらだ。だが、俺にはわかった。ナギの心が悲鳴を上げていることが」

 え? と宰相は俺を見る。

 そして心配そうに、大丈夫ですか、と聞いてくれたんだ。


 それからのノルは、鬼の形相で宰相に話しをしたんだ。


 ノルは俺の態度が気になって、食事中にアルムおじいちゃんに問い合わせをしたらしい。そこで事実を知った。

 キリングがナギの噂を聞いて、いろいろと情報を集めてた。そして勝手に解釈して、ナギを見た時「人か?」と聞いたらしい。当然人だと答えた、鑑定してもいいと。だが、国も滅ぼす、王族や貴族も情をかけることなく始末する。盗賊は当然全て狩る、そして悪と判断した相手は殺す。そんな人間はいないといい、俺のことを『バケモノ』だと言った。

 人殺しのバケモノ。

 それを聞いても、淡々と対応したナギ。

 そして木々の整理をするためにスキルを発動し、その穴を塞ぎ整地をする。後で木こりが穴に落ちたら大変だからと、先日の依頼と同じように森を手当した。

 その上、山頂から中腹までの超高ランク、高ランクを凍結魔法で仕留めるように大きな魔法を使い、ひとり空に上った。

 結界を張り、かなり上空で泣いた。

 流れる涙を止めることなく泣いたんだぞ、ナギは。

 

 そこまで知ってるの、ノルは。なぜ?


 食事のときに、少しおかしいナギに気づいた。俺にはわかるんだよ、こいつのことが。

 それで、食事を取りながらアルム神様に聞いた。

 神は全てご存知だった。だが、他の仲間に聞かせまいと、無理をしていた姿を見て、怒りを覚えた。そんなやつがいる街、高ランクで貴族待遇を手に入れているSSランク冒険者がのんびりギルマスの部屋で茶を飲んでる。そんな街のために俺達は密集する魔物の中に飛び込んだ。仲間も同じ、依頼を受けてくれたSランクの冒険者たちも魔物を狩るためにその中に身を投じてくれた。

 移動を眷属が引き受けてくれたので、かなり早くすすんだが、その間、ナギは眠る赤子をバッグに入れて結界を張り、ひとり戦ったんだ。

 それで、今日。

 昼飯を食いに来たとき、アルム神様に聞いてギルマスに面会に来たら、キリングがいた。ここで茶を飲むのがこの国のSSランク冒険者ないのか? 命をとして依頼を引き受ける冒険者は必死に頑張る。だが、ナギよりランクが下の冒険者がのんびり時間を過ごす。

 やはりこの国はダメだ。

 俺はアルム神様に言われていたから、ナギと一緒に頑張った。だが、宰相。今の依頼を終わらせれば、国との付き合いはしない。ナギの孤児院や使用人たち、職人たちがいるから来るが、門も通らない。依頼がなくなれば、ナギが冒険者を雇い入れると言ってたから、そいつらの依頼はずっとある。だが、国とはこれ以上付き合えない。俺が間違ってるか、宰相! SSランクだから、この国の貴族と同等だろうよ。そんなやつらと付き合えるか!



 あらら、ノルが本気でキレちゃった。

 アルムおじいちゃんは、ノルに自由にしろといったのかな。フルレットとパーミットの顔から血の気が引いたよ。

 もういいのに、ノル。


「ノル。もういいよ。俺はバケモノなのかもしれない。でもね、アルムおじいちゃんが、三歳の俺が両親を殺された時、薬草専門の冒険者として頑張れるように手を尽くしてくれたんだよ。フラットのこともそう。みんなとの出会いもね。だから、俺は何を言われても、アルムおじいちゃんの使徒として働く。ただ、俺が一緒にいれば、みんなもバケモノの仲間と言われる。それが辛いんだ。だから、ユリアロウズ国に家をつくろうかと話したけど、そこを拠点にノルに皆を率いてもらおうと思ってる。冒険者たちは依頼を受けたらいい。俺はひとりでアルムおじいちゃんのお仕事をするつもり。だから、サンとソラは赤ちゃんだし、頼めるかな。ここの依頼は全部終わらせる。お金は全てノルに預けるから。百年くらいは孤児院とかも続けて行けると思う。でも、ノルも稼いでくれるでしょ、だから心配してない」

 

 もっと落ち着いて話そうと思ってたのに、言っちゃった。

「ナギ! 何いってんだよ。アルム神様は望んでおられない。お前は爆弾を抱えているようなものだ。能力と身体の成長がついて行ってない。だから、魔法を使わないと体調が悪くなる。でも、今のお前はコントロールできてると思う。ひとりで背負うと、そのリズムが壊れる。お前の魔力が暴走すれば、この世界は終わると俺は思ってる。俺たちはそうなっても大丈夫だ。空間があるからな。だが、お前がいなけりゃ意味がない。こんなくだらない奴らがどうなろうと、どうでもいい。お前を失えば、眷属たちは命がない。それは理解してるか? サンやソラの命もなくなるんだぞ?」


 ああ、そうだった。

 血の契約だ。だから、俺が死ねば皆の命がない。

「そう、だね。だけど……」

「こいつらが何を言っても気にするな。俺たち眷属は、お前がひとりで生きなきゃならなくなった頃からの話しは全て聞いてる。だから、お前の能力は意味があるんだとも理解している。何もせず、偉そうにいうキリングや貴族、王族などは気にするな。お前のことを理解している貴族や王族も他国にいるだろう? だから皆を放り出すな。俺の側にいてくれ、共に背負うから」

 

 本当にノルは。

 ありがたいよ、ノル。

 俺、本当にヘタレだけど、これからも頑張れるかな。

 大丈夫かな。


 大丈夫だ、俺達が側にいる。

 大きく頷いたノルが言ってくれた。


「ナギ様。わたしたちもナギ様を尊敬申し上げております。我が国に多大な利益をもたらすものを発見していただき、そのために力を尽くしていただける。本当にありがたいと思います。できることは多くはありませんが、何なりとお申し付けください。民との繋がりはしっかりと結びますので」

 あはは、フルレット、ありがとうね。

「私もです、ナギ様陛下の前で私はナギ様に命を救われました。これからもご指導賜りたいと思っております。何でもいたしましょう、民との対話を持ち、良い領にしていきたいと思います。どうぞ見捨てないでください」

 パーミット、貴族が俺みたいなガキに頭を下げるなよ。


「では、ギルマス。お前とギルド職員はナギの鑑定でも良い者たちだと聞いた。森はきれいになったのだ、領主のケツをたたき、魔物討伐、木こりの護衛など頑張ってくれ。では、失礼する、騒がせて済まなかった」

「い、いえ! ナギ様。本当に申し訳ございません。言われる通りだと思います。たとえ高ランクであっても、民のために依頼を受けて戦ってくれる。民の力になってくれる冒険者を育てていきましょう。どうか、これからも我がギルドを目にかけていただきたいです」

 大げさだよギルマス。俺みたいなガキにそんなことを言わないで。高ランクがいるじゃん。まあ、話し合ってやればいいよ。

 

 それだけ言って、ノルに肩を支えられて立ち上がった。

 貴族二人も立ち上がったよ、いいのかな。


 じゃあね、とギルマスに手を振り、部屋を出た。



「結局、何も言わなかったな、キリングは」

「あはは、ノルにあの勢いで言われたら、何も言えないよ」

 そうか? ととぼけてるけど、ノルの考えたとおりになったんだろうね。


 食堂に戻れば、ワイワイと楽しそうに話している。

 サンとソラは口元から手のひらまで、ドロドロですね。

「ただいま。ソラ、サン、酷いことになってるね」

 うん? と二人は顔を見合わせて爆笑してます。

「笑い事じゃありません。お外で食事をしているのに、これではどこに行っても食事できませんって断られるよ。それでもいいの?」

 いやら~と泣きそうな二人です。

「いやなら少し気をつけて食べてね。フォークもスプーンもあるんだから。きちんと使わないなら、捨てようか。孤児院の子に上げようか? 孤児院の子はそんなかわいいの、持ってないよ。普通の小さいやつだよ?」

『ごめしゃい』『ごめんなさい、あるじ。ちゃんときれいにちゃべるしゅ』

 ちょっと意地悪しすぎたかな。

「そう。ちゃんとしてくれるならいいよ。頑張ってるならこぼれても仕方ないけど、お遊びみたいなのはダメ。いい?」

『はい!』

『あ~い!』

 ふふふ、かわいいね。

「じゃあ、クリーンしてあげるから。もう終わったの? まだ食べる?」

 フルフルと首をふる二人だね。

 

 じゃあ、とクリーンしてテーブル、床なども綺麗にした。

「それなら行くぞ。とりあえず、王都ギルドだ。フラット頼めるか?」 

 りょうかい~

「じゃあ、サンとソラをお願い。お金払ってくるから」

 ああ、とノルが二人を受け取ってくれる。そうだ、乳母車を出そうかな。

 アイテムボックスから乳母車を取り出せば、ちびっ子たちは、ぴょんとテーブルから飛び降りた。

 すぐにノルが結界を張ったよ。

 サンがアイテムボックスからおもちゃを取り出したね。これで安心だ。


「すみません、お騒がせしました」

「いえ。いつもたくさんありがとうございます」

 笑顔で気にしないように、と言ってくれたので安堵する。

 言われる金額を取り出して、金貨を一枚置いた。

「これは?」

「長時間大人数で店内を占拠しちゃって、お詫びです。チップだと思ってください。じゃあ、また」

 ナギ様! と呼ばれたけど、そのまま走り出た。


読んでいただきありがとうございます。


バレちゃいましたね、ノルに。 

でも、自分でこぼしちゃうんだもん、面白すぎるよ、ナギ!


コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。

明日もどうぞよろしくお願いします。

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