147 アパートを建てましょう。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします!
※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
「失礼します」
誰?
あ、ナナ。どうしたの?
「お茶をお持ちしました。料理長から、おやつの試食をお願いしたいと」
うれしい、ありがとう。
ちゃんとワゴンを押してきたね、偉いよ、ナナ。
『ノル、どこなの?』
『食堂でアダムと話してるが』
『そう。じゃあ、後で話そうかな。みんな仕事をって言ってくれてるんだ』
『わかった、行くから。アダムも同席していいか?』
『もちろん!』
ありがとう、ナナ。
ノルとアダムさんが来るから、お願いね。子どもたちは?
「はい。今はリリ姉さんとララちゃんと学習中です。赤ちゃん組は同じ部屋でゴロゴロしてますけど」
そうか。よかったよ。どこでやってるの?
「テラスです」
それならいいかな。でも別に部屋があったほうがいいかもね。
「邪魔するぞ」
ノル!
アダムさん、すみません、待っていただいて。
「いえいえ。既に子どもたちの洋服や靴などは渡しましたので、あとは食材の注文をいただきました。たくさんありがとうございます。他にはありませんか?」
ええとね、子どもたちの学習するためのものがほしいです。読み書き算術を教えたいので。必要なものは先生に聞いてほしいです。あとはお絵描きができるような紙とか色付きのペンとかがいいですけど……それは俺が作りますね。他にはうちの料理長や執事に聞かないと。
「それは俺が連絡する」
助かるよ。
じゃあ、続けようかな。
「じゃあ、俺ですけど。木は森にたくさんあるのでなくてもいいかと思いますが、できれば果実がなる木がほしいです。花壇はどうしましょうか。場所がわかれば作りますが。あと、畑ですが、短時間で育つものがいいかと思います。いかがですか?」
それはいいね。
木の苗はありますか、アダムさん?
「はい。取寄できますよ。甘い実がなるものがいいでしょうか?」
そうですね、甘いものや甘酸っぱいものかいいかもです。あと、料理のときに使うようなものがあれば。その辺りは料理長に聞いてください。花の苗とか種は?
「もちろん、可能です。季節ごとにある方がいいでしょうね。子どもたちが触っても大丈夫な花にしましょう」
お願いします。この者が庭師の、名前はなに?
「スキットです」
スキットと相談してください。お金のことは気にしないように。
「ありがとうございます」
じゃあ、スキット。庭師として頑張ってね。俺の屋敷の庭師は優秀だから、こっちにきたとき、いろいろ教えを請えばいいよ。条件は洗濯の人と同じでね。
そうだ、みんなの名前をノル、あとで聞いておいて。屋敷の注文は聞いてくれる?
「わかった。任せとけ。どうせ、商業ギルドに行くんだろ? フルレットがきたらアダムも一緒に行ってくれるから。フラットが戻ってからだな」
わかった。
はぁ。忙しいね。
にっこり笑って見せるんだけど。
「ナギ様はおいくつなのですか?」
ええと、もうすぐ十二歳かな。大人になるのは遠いよ~
グッと言葉に詰まったよ、みんな。
「す、すみません。それで鉄の職人の私ですが、何か仕事がありますか?」
あるよ~
それからは俺の考えを話す。
年寄りっていうけど、大工や木工職人だったって聞いたよ。それに元気でしょ? それなら働いてもらおうと思ってる。
今度の国の依頼にね、木材と鉄を組み合わせたものを作りたいんだ。大きいのや小さいのが必要になる。鉄だけなの? ミスリルは使えない?
「ミスリルは無理です。特殊な炉も必要ですし、やり方が全く違うので」
そうか、それなら鉄で防錆・防炎・防水をかけようかな。それなら木も大丈夫だしね。
「そんな仕事があるんですか?」
うん。この国だけでも東と西の辺境にかなりの数が必要になる。全部俺が任されてるんだ。自分でつくろうかと思ったけど、作ってくれるなら助かるよ。たくさん仕事がありすぎでこんがらがりそうだもの。一部契約は終えてるし、その分は先払いしてもらってるからね。全く大丈夫だよ。
そうだ、国境も作り直すけど、国境門も作り直す。そのときに鉄で作ってもらいたいものがあるんだ。よかった、頼めるなら助かる~
「素晴らしいですね。ナギ様はどれほどの能力をお持ちなのでしょう。アダムス商会も何かあればお使いください」
ありがとうございます、アダムさん。いろいろお世話になると思います。この国では、知り合いの商会がいないので。アダムス商会は西の辺境や王都にはないのですか?
「残念ながらございません。危険が伴いますので、無理ですね。私は当地の生まれですので、ここがあっていると思います」
なるほど、そういうことですね。
それなら安心して孤児院のことを任せておけます。どうぞよろしく~
満面の笑みで引受けてくれたよ。
その後、ノルに呼ばれていっちゃったけど。
じゃあ、みんなも荷造りしてくる?
宿舎は建てるからね。お年寄りの部屋は小さくてもお風呂を作ろうと思ってるけど、どうかな。みんなシャワーでいい?
「シャワーもあるんですか? 嬉しいです。年寄りもシャワーでいいと思いますよ。どうせ、皆独り者ですし」
そうなの? 家族持ちはいない?
「いません。スラムに住むと話したら、皆離れていったそうです。だから長も含めて、独り者ですよ」
そうなんだね。じゃあ、それほど大きい建物はいらないね。
それなら絵を書いてみようかな。
そうだ、前に使ってたスケッチブックと鉛筆を出して書こうか。
ええと、人数は二十人くらいだったよね。あまり薄い建物だと不安だから、上に伸ばすのをやめようか。
ええと。
一階が四室かな。
どれくらいの建物ができるかな。あ、大丈夫かな。東西にならどちらもある程度日当たりは確保できる。それに、みんな仕事をするから昼間はいないしね。
じゃあ、街道まで使えるなら一階が五室にしようか。
じゃあ、一階は東西で十室になるね。それで三階建てにしよう。
余れば貸してもいいからね。
ひと部屋の間取りだけど、ドアを入ってすぐにミニキッチン兼洗面だね。そしてその隣にはトイレとシャワーになるかな。あとは洗面台とキッチンの反対側にカウンターにも使える棚でしょう。食器でも本でも何でも入れられるから、両方から開けるようにするかな。いや、面倒だね。それならキッチンエリアから開くほうがいいね。
そして、キッチンの正面には小さな窓が欲しい。
奥にはクローゼットとチェストかな。あ、カウンターの反対側部屋側に、跳ね上げ式の板をつけよう。それなら机はいらないから。
寝室部分は六畳くらいでいいかな。
掃き出し窓が欲しいよね。そしてベランダだ。仕切り壁の前は鉄の手すりだね。当然、防腐・防水・防錆でしょう。全天候型だね。色が付けばいいのにね。できれば手すりは色付きがいい。
建物の外部は明るい色がいいけど、石造りだから仕方がない。だから手すりには色が欲しい。目立つ色がいいかな。その辺りはお任せでしょう。
それと、各部屋の設備だけど、シングルベッドとトイレ・シャワー・キッチンの水回りに魔導具がほしいですね。五室ずつが並びで廊下があってまた五室。対面で玄関がいいよね。東西にベランダがある。うん、いいかも。
階段は外階段。
三階建てで、中央の廊下までの階段は片側だけでいい。ただ、緩やかな階段にしてほしいな。うーん、難しいよね。距離が取れないでしょ。角度があると大変だけど、お年寄りは一階だからいいかな。あと、ゴミ箱が必要だね。それならゴミ箱の上を使えば階段ができるかな。うん、その上の空間を使ってもらおう。踊り場を作ればいいだけだし。早速ゴミ袋も作らないとね。
屋根は暑さがこもらないようにしてほしいな。
ええと、それくらいかな。
部屋の入り口ドアは鉄で鍵付きだよね。これも防腐・防水・防錆の能力をつけてほしい。
ゴミ箱はあとで作ってもらおうかな。
試作品だよ。
高さだけ開けておいてもらおうか。
うーん、食器とかはいらないでしょ。水を飲むくらいのコップなら孤児院にあるだろうし。
じゃあ、これで作ってみようかな。
ごめん、待っててもらって。ええとね、スラムのみんなが来たら鑑定するから。それまでに住処を造るよ。
ええ?
あはは、全員、同じ反応だ。面白い~
応接室から出ていけば、ノルとアダムさんがいる。
フルレット、来てたの?
「はい。それでは行きますか?」
うん、行こうか。少しだけ待ってくれるかな。
フラットは?
そろそろ戻るはずだ。
じゃあ、その前にひと仕事するよ、俺は。
とことこ移動を始めれば、当然のようにノルがついてくる。
どうやら、ちびっこたちを連れて俺を護衛してくれてるらしい。
ええと、このあたりが一番東だよね。
このあたりに作ろうかな。あまり塀に近いと魔物のことがあるから少し距離を取って。
このあたりからでいいかな。
靴でとりあえず印をつけよう。ここから大通りに向かってつくってもらおう。
じゃあ、イメージするよ。
この線から街道に向かって宿舎を造る。
図面はこんな感じでお願いします。方向はこの方向で。階段は緩やかにするために、大きなゴミ箱を置きたいので、その上を使ってください。階段との兼ね合いはおまかせします。
ゴミ箱の大きさは適当に作りますから。
不具合があれば調整してください。魔物の多いところなので、王宮ほどではないにしても、石建築でお願いしたいです。あと、東西の手すりは縦柵、部屋の入口のドアは鉄で作って欲しい。できれば色付きで、防腐・防水・防錆・防炎を付与してください。
ベッドやミニキッチン、シャワー、トイレなどの魔導具がほしいです。排水の魔導具も地下にほしいです。このあたりの下水はどうなっているかわかりませんが、下水ならつなぎ込み、なければ、魔導具のゴミは肥料にでもなれば嬉しいです。その場合、できるだけ簡単に取り出せればありがたい。
(クリエイト)
ブワッと光が湧き上がる。
おお、すごいね。
じゃあ、ここは大きめの結界を張っておこう。
(結界)
ふっと結界がはれたよ。結構でかいけど。
お待たせ~
「おう。何か作ってるのか?」
そう、集合住宅だよ~
名前は『カームアパート』だよ。
……そ、そうか。
あ、ノルに呆れられたかな?
じゃあ、行くか。
うん、と洗濯屋さんたちをスラムに送り出す。荷物を持ってくるようにってね。
そんな時、フラットが戻ってきた。
『ただいま、ナギ~?』
おかえり~
ご苦労さま。待って、浄化するよ。
(洗浄・浄化)
ブシュシュシュ~とフラットがきれいになったよ。
『ありがと、ナギ。どこに行くの?』
商業ギルドに登録しに行くの。
『そうか。俺、少し休んでいい? おやつも欲しいから』
いいよ。屋敷に戻る? あ、ノル、サンとソラは?
「おやつ食べてるぞ。フラットと一緒に戻すか?」
うん、頼めるかな、フラット。
いいよ~
あはは、癒やされるね。
じゃあ、結界を解除してっと。フラットの首にかけようね。
その場で空間を開いたフラットはのっしのっしと歩いて行きました。お昼寝してね、といえばフサフサの尻尾が揺れました。
シュパッとしまった空間です。これで安心だね。
あれ? 荷馬車がいないよ?
「一度戻りました。ご注文を頂いたので、取りに戻っております」
そうなんだ、ありがとうございます。
とんでもございません。こちらこそ、と頭を下げられたよ。
のんびり歩いてたら、見えてきましたよ、商業ギルド。
うん、デカいね。
「いらっしゃいませ、フルレット様、アダム様。本日は?」
「会頭に会いたいのだが」
すぐに、と受け付けの女性は駆けていったよ。
どうぞ、と通されたのは応接室ですよ。
俺とノルが三人掛けに座ると、フルレットとアダムさんはひとりがけに座ったよ。
「いらっしゃいませ。本日は珍しい組み合わせでございますね」
「そうなんだよ。アダムさんとは要件が違うのだがね」
「はい。その通りです。先にフルレット様、お話をどうぞ」
「では、先に話をしようか。こちらのナギ様はこの度、王宮の依頼を受けられて当地に来られている。そこで、ナギ様個人が孤児院を建設され、経営されることになった。教会は関係のない話だな。もちろん、国王陛下もお願いしたいと頭を下げられるほどだ。そこで、ナギ様が素晴らしい魔導具を作られたのを見た。それを登録してほしいのだが」
フルレット、余計な話がおおいよ、ほんとに。
「それは素晴らしい。ナギ様、私は当ギルドの会頭ニッチと申します。どうぞよろしくお願いします。それでその魔導具はお持ちですか?」
しまった、持ってないよ。
じゃあ、作ろうかな。
ええと、孤児院で作った給水器を作りたい。アイテムボックスの中に作って欲しい。
(クリエイト)
「そうか。持ってきてはおらぬな。既に使っておる故。どういたしましょうか、ナギ様」
いいよ、もうできたし。
は? と会頭の目が点になったよ。
これです、と商品をおきましたよ。
こ、これですか。
どういうものかと聞かれたので説明しました。
魔石か魔力を貯める必要があるけど、給水の手間はない。そして夏には冷たい水にもできる、と切り替えを教えた。
魔力を込めれば、すぐに水が入り始めたよ。
そしてコップを取り出し、使って見せれば、素晴らしいの連続だね。
水も旨いと大喜びだ。あと、冷たくすれば熱い時にはいいけど、一瞬では冷えないと伝えた。
なるほど、と排水を見ている。
だから注意事項として話しました。それと水の出口を清潔に保つことも話したよ。口をつけて飲んだりはダメ。
まあ、そんな人はこれを持つことはないだろうけどね。
読んでいただきありがとうございます。
着々と進んでますね、物事が。
アパートという名前をつけた集合住宅は、各地に増えそうな予感がします。それに、魔道具開発も楽しそう。
それでも、実力と身体の成長の差があるナギですが、最近は忘れてしまうほど忙しくしてます。気をつけてほしいな、体調に。
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




