142 やっぱりでたよ、王族感覚が……
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
その時、ばさりと音がして、上を見ればオニキスがゆっくりと降りてきた。
「ど、ドラゴンだーーー!」
「大丈夫だ、長。昨日のオニキスだから。人を迎えにいってたんだよ」
「ノル。屋敷に連絡して。お茶とお菓子をたくさんね。ひと休みしよう。料理長にも出てきてほしい」
「わかった。すぐに連絡する。フラット! 空間開いてくれ!」
は~い、と駆けてきたね。
代わりにハルトを向かわせたよ。サンとソラがいるからね、と伝えておく。
それと、リリを呼んでもらいましょう。
「ナギ様! わざわざありがとうございました。助かりました」
「うん。悪いね、忙しい所。それで、その人数は何?」
え? と振り返るブルックスだよ。
「料理人は?」
この四人です。
そう、じゃあ、あっちで待ってて。
「残りは?」
「ええと、文官と侍従が二人です」
はぁ~~~~
少し待ってて。
長、料理人を鑑定するから。
おう、と手をあげたな。
一人の男と三人の若者がやってきたね。
あれ? 料理人も見習いも含めて全く問題ないね。それどころか、みんなに仕事があればいいのに。ちゃんとしたところで料理を作りたいと思ってるよ。
あ、ノルが戻ってきたね。
後ろからきたのはフラットだね。
何やら箱を持ってるけど。何?
聞いてみれば、子どもたちのおやつだって。料理長が用意してくれたらしいよ。ありがたいね。
とりあえず、午前中はおやつの時間はなし。午後からだね。上手く周りだせば午前中もあげられるから。
わかった、とフラットはおやつの箱をアイテムボッスに入れたよ。
「料理長、忙しいのに。おやつ、ありがとうね」
「いえ。昼食はどうされるのですか?」
そうだね、昨夜の残り物がどうだろうか。リリは?
あ、駆けてきたよ。
「リリ。今朝の食事が終わった段階で何が残ってるかな、食事」
「すみません、報告をしていませんでした。ローストビーフは出していません。あと、シチューが小さなカップいっぱい分ずつくらい残っています。パンが少しありますが、どうしましょうか」
うーん、野菜は? と聞けばないらしい。
じゃあ、お昼までにはサラダを作る。手伝ってね。
はい! と嬉しそうに笑顔になった。
ノルに子どもたちの部屋のことを説明してもらおうかな。
さて、料理長とこの三人は問題ない。聞き取りはしてないんだと言えば、聞いてくれるって。
じゃあ、俺は向こうに行ってくるから。
フルレットとアダムさんは、執事に世話をしてもらって、手前の部屋で紅茶と焼菓子を食べてるよ。
「こんにちは。ナギです。どの人が料理人?」
ブルレットが後ろから指差す。
ふうん。他の二人は手伝いなの?
「いえ、見習いで来てもらってます」
なるほどね。
じゃあ、鑑定するから。
ええと、これ、どういうことかな。
鑑定結果を念写して確認する。
この料理人はダメだね。料理の腕はBランク。その上、博打好き、女好き。酒好きだって。飲む打つ買うじゃん! 他の二人は純粋な人だね。通いでよかったよ。酒も博打もやらない。女は一人前になるまでは必要ないと思ってるね。
「それで、見習いの二人は辺境から離れるけどいいのかな?」
「はい。俺たちも孤児院出身なので、できるなら子どもたちのために働きたいです」
なるほど、わかったよ。
ブルックス、ちょっとこっち来て。
料理長のところに戻って、鑑定結果を見せる。
これは? と聞かれたので、あそこの料理人の鑑定だよ、と言えば驚いてたね。でも、予想してたみたい。
「やはりですか。俺もそんな気がしたんです。行動がおかしかったので。でも、若い二人は問題ないと思うんですが」
「はぁ。そうだね、若い二人は孤児院出身だから、孤児のために働きたいらしいよ。でも、料理人はダメ。絶対にダメだよ。それをなんで言わないの? お前の時間だけが流れているわけじゃないんだよ。俺の時間を無駄に使うな。それとね、眷属は俺の眷属たち。お前のじゃない。お前のために動くわけじゃないんだ。だから無駄な動きをさせるなよ。西から東まで、オニキスが飛んでくれたけど、あの子だって疲れないわけじゃない。それも最速で飛んでくれたんだよ、お前たちを乗せて、あたりを探索しながら。意味わからんよ、俺は!」
おっと、素に戻って叫んじゃったよ。
「ナギ様。そちらの二人は?」
「うん、いい子たち。孤児院出身だから、孤児たちのために頑張りたいって。料理人はだめだね。料理以前の問題だから」
「なるほど。では、今から屋敷で料理を作ってもらいましょう。試験ですが良いですか?」
「うん。あ、アダムさん、野菜、届いてるのかな?」
タタタ、とかけてきたアダムさんは、外の通りを見て手招きする。
あ、荷馬車が入ってきたね。
「いろいろ用意させましたので、料理長に見ていただけたらと思います」
「それはありがたいですが、よろしいですか、ナギ様」
うん、任せるよ。
それなら、と料理人と見習いたちを連れて行きましたね。
フラットに空間を開けてもらって戻って行きました。
ちゃんと閉めて戻ったフラットだけど、リリに聞いて、持ち出すものを外に出してもらいましょう。ハルトでもいいけど、子どもたちの様子を見て、交代してもいいからと伝えます。子どもたちのものも一応出してほしい。使えそうにないものは捨てるからね、といえば、ハルトと交代するって行っちゃいました。まあ、フラットも子供だし。
じゃあ、中に入ろうか。
ブルックスとフルレットと話すつもりです。アダムさんは外にいますというので、中でどうぞ、と言っておきました。別に聞かれても問題ないからね。当然、ノルとオニキスもついてきたけど。
執事がいたから、さっそくマジックポットに湯を沸かしてくれてるよ。水は給水器を使ってみてもらいましょう。
「宰相。今、いい?」
『ナギ様。おはようございます。構いませんが、なにかありましたか?』
「ありましたか、じゃないよ。ブルックスを王族としてって言ったのはこういうことなの? 侍従が二人来てるんだけど。何もできないの、ブルックスは。どうして侍従のことまで孤児院の料理人に頼まないとなの? 他のこともそうだよ。それじゃ、ただの王族のお坊ちゃんじゃないの。それならうちにはいらないよ。文官でさえどうかと思うよ。ブルックスが文官の仕事ができないからだろうけど」
申し訳ございません、と宰相は青い顔で頭を下げるよね。
「ブルックス。ここの仕事は何だと思ってる?」
「は、ええと。孤児院の院長として、管理とその他のことを仕切ること、でしょうか」
ダメだよ、これは。
「バカなの! そんな管理職みたいな仕事なわけないでしょ。それは市井の人たちの生活じゃない!」
そこからは、俺の怒りの説教が始まったんだ。
院長でも、職員だ。それなら、子どもたちに食事のマナーを教えたり読み書きを教えたり。それ以外にも一緒に遊んだりする。そういう大人を見て、子どもたちは学ぶんだ。院長であるお前が率先して動くことはない。それでも、侍従はお前のことをする、部屋の掃除くらいはするだろうけど。でも、それだけ。
俺の思う院長ならば、一日の報告書を書いて、一日分の様々な注文などを記載して。訪問者のことや、領主がきたらその話の内容。アダムス商会に何を注文したか。それ以外に、子どもたちのことは詳しく報告する。それくらいしても当然だよ。お前は何をしに来るの? 迷宮に入った時と同じだね。意味がない!
あはは、本音のままに言っちゃったよ。
俺の怒りを気にしながら建物のことをオニキスと話しているノル。そして外で長たちと一緒に荷物を出してくれてるハルト。それぞれが自分の役割を探して動いてるのに。こいつだけは使えない。
やっぱりだめだね。孤児院の院長に侍従が二人ついてるところなんかある? 世界中探してもないはず。それに文官だって、さっき話したことくらいしか仕事ない。それでも一日仕事を探してやらなきゃならない。騎士たちだって同じだと思う。王子の護衛はするけど、おそらく孤児院の手伝いなんかしないね。宰相はなんでも使ってくれっていうけど、意味がないと思う。だから、別の人に頼むよ。丁度いい人がいるからね。
思ったとおりに言ってみたよ。
『ナギ様。申し訳ございません。そのようなことになっているとは。ですが、ナギ様。どなたかおられますか、適当な人が』
「うん、俺が頼もうと思ってる人はいる。まだ話してないけど。後で話してみるよ。まあ、それ以外にも聞きたいこともあるから、後で連絡する。俺は建物を建てないとだし、古いのを壊して処分するからさ。遅くなるかもだけど連絡するから」
お待ちしております、と頭を下げて宰相は水晶板から姿を消した。
本当に王族なんて、何の役にもたたない。
全て自分本位だし、市井のことを知りたいとかいってるけど、侍従を二人連れた市井の人がいる?
うちの屋敷には執事も侍従もいるよ。それは同然だよね、屋敷で働いてくれるんだから。誰か個人に付いてるわけじゃない。みんなで屋敷を守ってくれてるんだ。だから安心して俺たちは依頼をこなせる。
孤児院のことは自分のことだけど、それにバカ王子は必要ないね。
そう言えば、ブルックスは泣きそうだね。
フルレットは知らん顔してる。アダムさんもブルックスを見ることはないね。
「失礼します。オーナー、とりあえず子どもたちのサイズは終わりました。男女ともズボンにしますか? 一応、色とかの希望だけは聞きました」
「そうか。ナギ様。では、女の子は、スカートはお出かけくらいでしょうから一人一枚でよろしいですか? 他はどれくらいの枚数用意しましょうか」
そうだね、予備も含めて柄違いとか色違いでそれぞれ十枚ずつお願いしようかな。あと、下着とか靴下、靴は少し多めにお願いします。すぐに駄目になると思うので。
「承知いたしました。では、さっそく準備いたしましょう。料理長はいかがでしたでしょうか」
そうか、それがあるね。ノル、頼める?
「ああ、話を聞いてくる。フラット、開けてくれ」
いいよ~と間の抜けた声だけど、癒やされるんだよね。さっきまで怒ってたけど、少し気持ちが楽になった気がする。
じゃあ、とここに開いてもらうことにした。それなら開きっぱなしでも結界を張れるからね。
わかった~と奥の土壁から上に向かって空間を開いてくれたよ。すぐに入っていったのはノルだね。そこには仲間だけは出入りできる結界を張っておいた。これで大丈夫。ノルも心得たもので、半分くらい入口を閉じてたよ。
さあ、料理人のことが決まればいいかな。人数はどうだろうか。料理人が一人と見習いが五人? 多すぎるかな。でも、配膳とかも頼まないとダメだろうから、いいかな。
「フルレット。奴隷商があるんでしょ。どんな感じなの?」
「そうですね。おそらく私よりアダム殿の方がご存知ではないでしょうか」
そうなの?
「そうですね。奴隷商はいくつかあります。ですが、信頼できるのは1軒だけですね。うちの店にも裏の荷下ろし場や積み込み、配達などには奴隷と職員が参ります。馬番も奴隷ですし、掃除も奴隷です。店内は何度も掃除しますので」
なるほどね、そうなるんだ。
奴隷なら、買い入れて契約をすれば、俺の持ち物になるらしい。だから給金は必要ない。でも、それにも条件があるらしい。主としてしっかりと食事をさせる。病気になれば薬やポーションを飲ませるか治療師に見せるなど決まり事があるんだって。
まあ。それは問題ないけど。
じゃあ、長に話をしてから決めようかな。
早く建物を作りたいけど、それなら、移動する荷物を確認してきましょうかね。
「ナギ様。それでは、私どもは一度戻りまして、子どもたちの洋服を持ってまいりましょう」
うん、お願いしますね。今日の分は現金でお支払いしますので。
ありがとうございます、とアダムス商会の皆は戻っていった。
さて、そろそろ出たかな。
「ハルト、どんな感じ?」
「いろいろあるけど、これ、使うか?」
え? と確認すれば、洋服とか靴だね。下着は穴が開いてるよ。
リリ!
は~い、と駆け出してきた。
「この服とか下着はだめだね。今新しいものを注文した。半分は余分にあると思う。それは新品のままおいておく分だ。それほど数はあるから、捨てようか。それとおもちゃとかは?」
「おもちゃはありません。本もないので。あとは、子供たちが拾ってきた石とか、何かの部品のようなものをおもちゃにしていました」
なんだよ、それは。あまりにひどいね。
「じゃあ、それらも買おう。本は絵本から冒険譚くらいで年齢別でいい? あとは学習用の本とか各道具だね他には?」
「そうですね、計算の練習に使う、玉が移動するものがあります。足し算と引き算を学べますので」
ふうん、そういうことね。
「それなら、学習材料をいろいろ持ってきてもらおう。一度揃ったら、全部複写して、年齢がかわっても、使えるようにするからね」
ありがとうございます。では、ここにあるものはどうしましょう」
子どもたちが持って帰った石とか他のものは箱に入れてそっちにおいて。あとは、そのままでいいよ。
「ナギ! ソラが眠そうなんだけど」
じゃあ、乳母車ごと連れてきて~
う~ん、と聞こえたから大丈夫かな。
それなら、この建物はなくなるけど、いい?
あ、マジックバッグとかコンロが。
それはハルトが取りに行ってくれた。駆け込んだから、大丈夫だろうね。他も見てくるからと長が数人行かせてくれたよ。
これは日当を払わないとね。
読んでいただきありがとうございます。
やっぱり出ました、王族モード。
王族感は抜けてないね、ブルックスは。これならナギじゃなくても怒りますよ。
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
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