131 アルムおじいちゃんの知恵と眷属たちの思い。それと王国の考えは全く違うんだ。
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
「あ、あの。申し訳ございません、ナギ様。そのように考えておったわけではございません。ノル殿とオニキス殿の言われる通りだと思われます。お手数ですが、再考させていただけませんか!」
ふうん、国王が始めて具体的に話したよね。
でも、お金はどうでもいいんだ。
ノルとオニキスの言うことを聞けば、なるほどと納得しちゃったからね。アルムおじいちゃんの使徒だと言われて、大司祭は心から仕えてくれる。ノルが死んだときもそうだった。
それを考えれば、国は簡単な事だと判断してるってことだよね。
なんだか、ちょっと悔しい。おじいちゃんのことを崇拝するならば、こんなざっくりした話にはならなかったと思うよ。金が欲しくてやるんじゃないのに。でも、国としたら、金で示すしかないというのも理解できる。
それならそれで、ちゃんと話してくれたら良かった。
二人に言われたからって、慌てて頭を下げてもらってもね。そういえば、フルレットの辺境に教会を建設する予定は決まったんだろうか。それも聞いてみたいな。
睨み合いみたいになってるけど、どうするかな。
東の辺境に作る予定の教会は、俺が作ってもいい。王弟殿下の西の辺境には教会はあるのかな。
西はブルックスに聞けばわかるよね。
で、西はどうなってるんだろうね。その話もなかったけど。
「ゴーレム迷宮はどうなってるんだ? 施設のための整備を言ってあったはずだ」
「それは、ブルックスが中心に動いております」
「それなら確認に行く。それと、ナギ、言いたいことはあるか?」 うーん、どうでもいいけどね。
「そうだね。別に希望はないよ」
そういいながら、全てをぶっちゃけてみた。
仕事だというなら、しっかりお金はもらう。この金額じゃ嫌だね。黒玉も自動販売機も、魔導具をゼロから作り上げるんだよ? 発案、試作、実験、確認ほか、全てをやるんだから、白金貨数千枚なんて無理でしょ。
パチンコだって商業ギルドに登録するから、真似はできない。
それに、設備協力ってなに? 建設とは書いてないから工事自体に手は出さない。アドバイスはするけどね。それに国境が白金貨三万枚って。人を使って護衛を付けて。本当にその金額でできると思ってる? それで受けてくれる人がいるなら頼んでもらっていい。俺は嫌だ。
それに国境門とかも同じだね。石造りのデカい門を作るのに、人力だと普通に考えても無理でしょ、白金貨五千枚じゃあ。国がどれくらいの職人を連れてるのかは知らない。でも、おそらく誰も引き受けないと思うよ。それに一年以上かかるだろうし。
俺なら魔法で作る。だから丈夫にと仕上げを指定して、時間もかからない。それでも、あんたたちの評価は、俺の能力は職人たち以下。そんなことだから、ユリアロウズ国よりレベルが低いんだと判断する。
それに、フルレットの辺境には教会を作るって言ってたよね。館を作っているのは見た。でも、教会はどこ? もう手を付けてるんでしょ?
アルムおじいちゃんを蔑ろにして、俺が動くことはない。
ざっくりは聞いてたけど、これほど国がバカだとは思ってなかった。
最後は吐き捨てるように言っちゃったよ。
国王も宰相も固まってるけど、知らないよ~
「もういいよ、ノル。国に帰ろう。使用人たちは、今は俺の使用人だから問題ない。屋敷もお返ししますね。ユリアロウズに戻って、俺の土地に屋敷を作る。あっちにいる間は屋敷で寝泊まりすればいいよ。あいつの始末をつけるまでに、陛下とも会うだろうしギルマスとも話すから。拠点もたくさんはいらないでしょ。国に屋敷を持てば、いつでも戻れるから荷造りしてから戻ろう」
そう言えば、国王と宰相が慌てて立ちあがったね。
いまさら知らないよ。
俺は空間に入るから、と告げてフラットに念話すれば、すぐに空間が開いた。どうやら、プールは終わったようだね。
「お帰りなさいませ、ナギ様」
「ただいま。さっきはありがとう。助かったよ。はぁ、疲れちゃった。何だか王族とか、どこも変わりないね。人を利用して自分たちが良くなることしか考えてない」
悲しそうに小さく会釈する執事だけど、悪いね、愚痴を聞かせて。
あるじ~と聞こえて上を見れば、サンとソラが手を振ってるよ。「ただいま」
おかえり~と言うんだけど、どうやって上がったの?
あ、侍従が顔を出したね。忙しいだろうに、ついてくれてたんだ。ありがたいね~
夕食はどうするかと聞かれて時計を見れば、そろそろ準備する時間だよね。
全員屋敷で食べるからと伝えれば、かしこまりました、と料理長のところへ向かったよ。
よくわからなくなってきたから、アルムおじいちゃんに聞いてみようかな。忙しいかなぁ。
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アルムおじいちゃん
ナギです。
ちょっと今日は考えさせられたよ。
ノルとオニキスの言う事、理解できるんだ。改めて聞いたらバカにされた気がするんだ。おじいちゃんの信徒だなんて言ってるけど、教会はどうなってるのか報告もない。
ゴーレム迷宮のことも何も言わない。
新しい迷宮のことを形にして、他国からも一目置かれるような作りにすることを考えてるように見えるんだ。
改めて考えたら腹が立つ。
これなら、おじいちゃんのお仕事してた方がいいよ。無理言って待っててもらってるのに。それに、ユリアロウズ国に戻って元辺境伯の行方も探したい。もちろん、屋敷も表向きは小さく、中は空間拡張して、必要な部屋だけ作りたい。客間はいらないから。
どう思う?
ちょっと、移動に時間がかかるから、一度ユリアロウズ国に戻ったらそのまま滞在して、ある程度終わるまでいないとね。
もう、トランサル王国には何の感情もない。
だからね、俺のやりたい方向に行こうと思うんだ。だけど、可哀想なのは冒険者たちだと思う。俺がいろいろ手を尽くさないと、迷宮に潜ることもできなくなる。無理やり入れば命がなくなると思うんだ。本当はなんとかしたかった。
でも、目的が違う。
そして思いが違うんだ。あんな国、なくても良いかと思うけどね。おそらく簡単に滅することはできると思うよ。そうなれば、国民たちが困る。冒険者も商人も。そして子どもたちも困るからできない。
もう、どうすればいいんだろうね。
疲れるよ、ほんと。
どの方向へ行くのがいいか、教えて欲しい。多分、今ノルとオニキスが国王たちと話してると思うんだ。それを待ったほうがいい?
うーん、何がいいのか、何をやればみんなが幸せになるのか、分からない!
だめだ、少し疲れてるみたい。
だから少し休むよ。ごめんね、結局愚痴ばかりになっちゃった。
じゃあ、お昼寝します。またね~
ナギ
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ふむ。
ナギはかなり疲れておるな。
さて、どうするか。
とりあえず、虚数空間のことを伝えるかの。
フラットの空間内から別の場所につなぐことができるのじゃ。空間を端折ることになるのじゃ。それならば、国にも簡単に戻れるじゃろう。どこでも使えば良いのじゃ。まだ空間は持てぬナギであるが、空間からなら魔力もかなり少なくて良いからの。
エクストラスキル故に、簡単に使えるじゃろう。部屋と部屋をつなぐのはもう少し先になろう。じゃが、多少魔力を多く込めれば無理ではない。度々使えば疲れる故、フラットの空間からのほうがよかろう。
トランサル王国はバカじゃの。
ナギほど人の良い人間はおらぬというのに。情けないのぉ。
今、ノルとオニキスが話をしておるが、直接ノルに返事をするかの。ナギの思いと儂の考えを。その方がいいじゃろう。
ナギにはユリアロウズ国へ戻る手立てがあるということを知れば、かなり動きが広がる。当然、フラットありきにはなるがの。その方が良いであろう。眷属たちは命を持ってナギを守ると思うておる。故に託した方が良いじゃろう。
オニキスも、心して日々過ごしておるようじゃ。
ナギが虚数空間を使いこなせば、通常、オニキスは影に戻ることになる。それで本来の姿なのじゃ。
さて、ナギにメールしてから、ノルに連絡をするかのう。
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ナギ殿
かなり疲れておるようじゃ。
ユリアロウズ国に戻る手段じゃが、虚数空間というエクストラスキルが開花しておる故、使えるのじゃ。空間を端折る、と思えばよいかの。簡単に言えばそういうことじゃ。
フラットの空間をどこかにつなぐことができるのじゃ。
ただし、どこにつなぐか、明確にイメージする必要がある。建物の中が良いかの。
あちらの屋敷のことじゃが、拠点としては最良じゃのう。使用人たちも、外に出られる故、良いことじゃ。
馬も走らせてやれば良い。馬車もある、正面には商会もある。井戸もある故、洗濯や風呂などに水を使うのは良かろう。一度浄化をすれば良いのじゃ。風呂も大型組のものを作れば良い。外でも良いの。ただ、水のことがある故、屋敷内に作るか。前世の記憶を呼び出し作ってみればよいの。
トランサル王国のことじゃが、ノルに詳しい対応方法を伝えた故、心配するでない。もう、既に話しておるじゃろう。
多少の手は貸すことになるが、民のため、冒険者のためと割り切ってやればよいのじゃ。お前の姿を見て、サンやソラは学ぶ。故に強いところも弱いところも全て見せればよい。二人のためになろう。
お前は自分なりにやりたいことを探すのじゃ。
もちろん、始末をつけねばならぬこともある。その上、依頼もあろう。それは仕事じゃ。お前なら理解できよう。きっちり分ければよい。ポーションを作ったり魔導具を作ったりとお前でなければできぬことを楽しむのじゃぞ。
儂はいつも見ておる。
お前の楽しそうな顔を見るのが嬉しい。辛い時にはいつでも連絡すればよい。いつでも待っておるからの。
ならば、少し休むがよかろう。
またの、ナギ。
アルム爺
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ふあぁ~
よく寝た。いや、寝ちゃったよ。
今何時?
あ、もうお昼は随分過ぎてるよ。戻ったのかな、ノルたちは。
んーっとベッドの上で身体を伸ばす。
これは気持ちがいいね~
「ごめん、寝ちゃってたよ」
問題ないと使用人たちは言ってくれる。
「ナギ様。昼食はいかがされますか? 小さなお二人とフラット殿は既に食事をされました。今はテラスでお昼寝中です。毛布をかければ、ソファで眠ってしまわれました」
「そうなの? じゃあ、俺も食べたい。それにしても、ノルとオニキスは?」
どうやらまだらしいね。
すぐに準備いたします、と料理長は動き出した。
『ノル。まだ話してるの?』
『ああ、一応、基本的なことは終わったが、今、職人が来てるんだ。石の職人にざっくり見積もりさせている。あとは、地図で距離を計算して、ミスリルを扱える職人をと聞いている所だ。どうやら、そんな職人はいないらしい』
『そうなの? それじゃ話にならないじゃん。それ以外は?』
『自動販売機に関しては、計算し直すらしい。ただ、自動販売機のことを他国の魔導具を作る国に問い合わせするのは禁じた。そうでないと、お前の考えが漏れる。それとも、俺たちとお前が話して決めるか?』
『うん、それでいいと思うよ。でも、かなりの金額になるけど、大丈夫なの?』
『うむ。いくらでもと言ってたぞ。この国はユリアロウズ国と同じように金は持っているらしい。アルム神様からの連絡で知った。そうだ、お前のことを心配しておられたぞ。メールしたんだろ? だから、実務に関しては俺に連絡が来た。とりあえず、受けるか受けないか、その判断の材料を探すことが先決だな』
『うん。それはそうだと思うけど。俺はユリアロウズ国に戻ろうと思ってたから。だって、あんまりでしょ? それはそうと、昼食は?』
『何やら料理長が持ってきたから食ったぞ。オニキスも食ったから。もしかして、お前食ってなかったのか?』
『今から食べる。僕もおじいちゃんにメールしてから寝ちゃってたんだ。食べたならいいんだよ。じゃあ、食事が終わったらそっちに行くよ。チビたちは寝てるし、フラットも寝てると思う。もう少し待って』
無理はするな、と言ってくれたのはありがたいね。
いつものようにお昼を食べました。
ただし、日本食だったよ。
といっても、日本で食べてたようなもの。
ハンバーグ定食とか焼肉とか生姜焼きとかね。当然サラダは山盛りだった。ゆで卵とトマトもね。
お腹、パンパンです。
侍従にフラットたちが起きたら念話するように頼んでおきます。
じゃあ、と手を振って空間を出ました。きっちり閉めましたよ、入り口。
「ナギ! 大丈夫か?」
うん、大丈夫だよ~
「ナギ様。申し訳ございません、お怒りだとは思うのですが、なんとかお話を」
いいけど……
「できれば、様々お引き受けいただければありがたいのですが」
うーん、どうしようかな。
ノルは? と視線を向けてみた。その後、オニキスにもね。
「我は主の決定に従おう。ただ、主が引き受けなければ、この国は宝の持ち腐れで、そのうち倒れることになろう。我はハッキリ断言できる」
おいおい、オニキス。何いってんの? 倒れるわけないでしょ?
「俺もそれに近い考えを持ってる。今のままで、迷宮の結界を外し冒険者や学者が中に入ったとしても、死人が出るだけだ。フルレットの領地に来てた冒険者を見ただろ? あのレベルだ。本当の怖さを知らない。その点はユリアロウズ国は決定が早かった。俺たちの話を聞いた途端、決定したんだ。国王は絶対的にお前に対して信頼を持ってたし、領主は当然だったからな」
あはは、宰相が泣きそうだよ。
でも、可愛そうだけど現実が見えてないんだよね、この人たち。
しばらく無言で考えていると、侍従長がいい匂いの紅茶を置いてくれる。そして焼き菓子だ。
ありがとう、と笑顔を返して紅茶を口にした。
ふぅ、とため息がでる。
この先のことを話しても、この人たちは理解するんだろうか。
読んでいただきありがとうございます。
なんと言えない微妙な感じですね。
この後、どうなるのか……
少し心配です。
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
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