111 国の第一王子なんてこんなものなんだね。せっかく新しいギルマスに安心したのに……
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※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様
『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。
その時、山盛りの軽食や焼き菓子などが運ばれてきた。
どうやら、ミルクの大瓶と紅茶のポット、果実水もたくさん持って来てくれたみたい。まあ、以前から知ってるからね。
「いただきますね」
そういえば、どうぞと嬉しそうなんだけど、いいのかなジェイク。
みんなも嬉しそうにたべ始めるんだけど、これくらいは一瞬でなくなるよね。
『あるじぃ~、もうなくなった。もうないの?』
「あはは、足りないよね。待って、出してあげるから」
そう言い、今朝料理長からもらったシフォンを出してゆく。そう、ワンホールだよね全部。
全く気にしない皆はそのまま食べてるけど。
飲み物用の大きな器を出せば、フラットに聞いてミルクを注ぐ。
「ナギ、そろそろ人型になってもいいか。紅茶が飲みたい」
「ああ、ごめん。いいよね、ギルマス」
はい、としゃべったことに驚いてるよ。
するりと人型になったノルは、紅茶のポットを手にオニキスと俺、自分に注いでます。俺はその間に、マグカップにサンのミルク。小さいボウルを出してソラにミルクを入れた。
「ブルックス、紅茶でいいのか?」
「あ、はい。すみません」
そう言い、受け取ったブルックスにナイフでカットしたシフォンをとってと渡せば、嬉しそうにフォークで突き刺したよ。ほんとにガキだよね。
「あ、あの。ブルックス、王子殿下ですか?」
そうだよ~
「し、失礼しました。私は……」
「いいよ、ギルマス。確かにブルックスはこの国の第一王子だけど、王位継承権を辞退して俺たちの担当になったんだよ。王宮とのつなぎとか屋敷のことなどね。だから今、ここにいるのはブルックス。いい?」
「は、はい。承知しました……」
あはは、固まったよ。
ノルもフォークでシフォンを食べてるね。
サンは少しちぎってソラにあげてるよ。残りは自分でひと口だね。お代わりを出してあげました。じゃあ、俺もと思った時、フラットがほしいと言うので、皿からボウルに入れましたよ、ワンホール。
こうなると満足するまで止まらないからね、うちの子たちは。
あんぐり口を開けてるジェイクは、ただ、みてますよ。
ドアがなり、副ギルマスが従魔のタグを持って来てくれました。
従魔の首輪はと聞くので、そこからはノルにお任せだね。
「創造神様が俺に能力をくれたんだ。サンは従魔の証明がない。今は、ノーライフキングにもらった王冠をつけてるから、タダのスライムじゃないと思えるけど。それでも、決まりごとがある。だから、従魔の印をスタンプできるんだ。大きさも自由に変わるし、問題ない。俺たちはナギの眷属だから死ぬまでナギから離れることはない。だから問題ないということだ。それでいいか?」
「ええと、従魔のネックレスのメダルと同じスタンプということですか?」
そうだ、とノルは二個目のシフォンを取り分けた。ついでに俺の皿にも入れてくれたよ。
見せてほしいと言うので、サンを呼んで実演だね。
どこにつけるかと聞けば、背中がいいらしい。じゃあ、王冠の反対側の少し下に、とノルの右手が光ったと思ったら、従魔のマークがありました。身体の大きさによって変わるらしいね。
「主。我もそれが良いのだが。ペンダントはノーライフキングからもらったものだけでよい。獣魔の首輪も人型の時は良いのだが、大きめ故、戦う時に邪魔になることがあるのだ。ダメか?」
「うーん、でも、オニキス。ドラゴン姿の時はいいけど、人型になったとき他国へ移動できなくなるぞ。絶対にドラゴン姿じゃないとダメになる。それでもいいか?」
「なるほど、そういうことか。だが、ネックレスがあっても、ドラゴン姿の時はそれもいいのであろう?」
「……そうだろうけど、デカいドラゴンになっても、メダルの大きさは同じだろ? それなら、ナギのマークを考えて、身体に押せばよくないか?」
「主のマークか。国や貴族の印のようなものか?」
「そう。それなら、かっこいいのにすればいいだろ。皆同じものができる」
「それはいいな! では、その印を作るのか?」
「そういうことになるな」
ノルとオニキスの会話を聞いて、えー! と抗議したのは俺だけだった。でもフラットは毛が長いよ、ソラもと言えば、問題ないらしい。身体にスタンプされるから、浮き上がったように見えるんだって。
『かっこいいね、僕、ほしい~』
『あるじぃ、ぽちい~』
あはは、ソラもなの。まあ、いいけど。
「でも、デザインができないとダメでしょ?」
「それはすぐには無理だけど、自分たちで作ってもいいし、ああいう紋章を作る人たちもいるんだろ? そういう人に頼んでいろいろ書いてもらえばいいだろ」
まあ、ノルの言う通りなんだけど。
「そうだね。じゃあ、すぐには無理だけど、いろいろ聞いてみるよ。すっきりしてかっこいいのがいいね」
全員が賛成したところで、お菓子タイムはおしまいですよ~さっさとクリーンして自前のものは片付けました。
「なんだかすごいことになりましたが、私も是非、見せていただきたいです。それで、この後は?」
「依頼に行くよ。王宮からの調査依頼。森も深いからね、この国も」
「そうですね、確かに。ではお気をつけて行かれてください。よろしければ、素材などの買取もお願いします」
わかりました、と席を立つ。そして、サンとソラが入った赤い鞄を斜めにかけた。
そしてノーライフキングの杖を手に部屋を出た。
ジェイクを鑑定したら、とても優秀な元Sランクだった。その上、文官としての才能も高い。これなら、ギルドは大丈夫でしょう。
外に出て、フラットと獣化したノルがいつもの椅子をつけてくれます。それに座る俺たちと、人型のまま空に上がったオニキスは、一瞬で大型のドラゴンになり、ギルマスに手を振って飛び立ちました。
ぐんぐん進みますよ、岩の辺境領地へ。
どうやら、ブルックスが連絡しているようですね。王弟殿下でしょうか。
まあ、きちんと挨拶もできてないからね。ちゃんとしよう、今日は。
「お待ちしておりました、ナギ様!」
あはは、何だか張り切ってるね。
「こんにちは。今日からよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、ありがたいことです。ブルックス王子、お疲れ様でございます。そして眷属の方がたも遠い所をありがとうございます」
こちらへ、と小さな建物に案内される。あはは、ログハウスみたいだけど、まるで現場事務所だね。
ここは?
「はい。王弟殿下が、いろいろと迷宮のことを学ぶために、作られたそうです」
へ? どうやって学ぶの?
「なるほどね。わかりました。ですが、私たちは一度中に入ったら、最下層、というか最終ボスのいる場所まで進んでからでないと戻りません。その間に、いろいろ調べられるのはいいでしょう」
それは……戸惑ってるみたいだね。食事とかはどうするのか、と心配そうですが、空間があるので問題ないと話します。でも、これ以上座ってると、時間食うよね。
「では、私たちはさっそく入ります。入った後は、魔物が逃げてくると困るので中から結界を張ります。決して魔法使いを呼んで、何かしようなどと考えないように。それでは行ってきます」
そう言って小さなログハウスから出た。
「主。どこから入るのだ?」
「どこからなら入れるかな。どこでもいいと思うけど、探索して見る?」
「ならば我が請け負う。少し待ってほしい」
お願いね、とオニキスを送り出す。
「ノルは人型で入る? 剣はどうしようか」
「前のは見つからなかったらしくて。どうしようかと思ってるんだ」
「そう。じゃあね、この中から選んで」
数本の剣を取り出してみた。
全て迷宮から出てきたものだ。俗に言う魔剣だね。でも、ノルならどれでも使いこなせるはず。光も闇も自由に操るからね。
ブン! と一本の剣を振ってるね。
真っ黒の魔剣だけど、あれはどこでもらったのかな。覚えてない。でも、闇の能力というか魔力というか、すごいものだよ。他にも試していたけど、やっぱりあれみたいだね。
「これがいいな。これ、ノーライフキングのドロップ品だったね。売らなかったの?」
「そうだ、あれだ。売っても良かったけど、使いこなせる人はいないだろうっていうから、死蔵してた」
「あはは、ラッキーだな。じゃあ、これ、いいか?」
「うん。長さも丁度いいようだね。使ってよ、ノーライフキングのブレスレットもあるし」
「そうだな。これも攻撃力アップだし、使ってみるよ」
うん、と振り返ってブルックスをみる。
「そっちの剣はどうなの?」
「これですか。使えると思います。数年使っていますが、きちんと手入れはしてもらってますので」
見せてみろ、とノルがその剣を手に取った。
ふむ、といろんな方向から見てるね。
「これはダメだな。みろ、歪んでる。それに純ミスリルじゃないぞ、これ」
え? とブルックスは剣を受け取り歪みをみてるね。
じゃあ、俺は素材鑑定してみようかな。
<鑑定>
あ、本当だ。あと数度強力に打ち合ったら、治せないゆがみになるらしい。その上、ミスリルが80%と鉄が20%みたいだね。どうして? 剣に合金は必要ないでしょ。
「本当です、歪んでますね。どうして……献上された逸品だと言ってたのに」
あはは、もらい物かよ!
「それ、あと数度強力に打ち合ったら治せない歪みになるらしいよ。ミスリルが八割鉄が二割みたいだね」
はぁぁぁぁ~と大きく息を吐いてるけど、どうにもならないよね。
めんどくさ。先に言ってたのに。なんでオニキスかノルに聞かないのかな。
「すみません! ナギ様。新しい剣をお貸しいただけないでしょうか!」
あはは、迷宮に入る前に言う言葉じゃないよね。
数本、ミスリルの剣を取り出してみた。
いろいろと振ってるけど、長さとか重さ、にぎりの具合なんかも見ないとね。
わざと長さも数種類出してるんだから。
「これがいいと思います!」
ええ? 長すぎない?
「どう、ノル。いくつか長さは変えて出したけど。長すぎると思うよ、僕は」
「そうだな、長いだろう。見せてみろ」
俺の出した剣を確認するノル。やっぱりみるところが違うよね。
「これ、どうだ。お前の身長、体重、手の大きさなどを予想してみた」
そういうノルだが、ブルックスは不思議そうに引き抜いた。にぎりも再確認してるみたい。
そして横に振ったり、上段から振り下ろしたりとやってるね。
「これは……私のためにあるような剣ですね」
あははは~
これ、ダメだ。面白すぎる。
「ナギ、笑ってやるな。一国の第一王子だぞ。こんなもんだろうよ」
「そ、そうだね。今までどんな鍛錬してきたんだろうね。面白すぎる。王子って、どこの国もこんな感じなの?」
「まあ、似たようなもんだろうよ」
あははは、そんなもんかぁ~
「あ、あの。なんでしょうか」
「ナギが笑ったのはな、お前の言い草だよ。まあ、普通にいい剣だとは思うが、それほどのものじゃない。あの歪みがわからなかったということは、小手先のことは学んだだろうが、実際に人を切ったり魔物を狩ったり。そういうことはやってきてないんだろうと予想したんだよ、ナギは」
「……あ、合ってます。すごい。今まで何をやってきたんでしょう」
「そう思うなら、迷宮にいれて貰えるうちにレベルアップしろ。ナギやオニキス、俺みたいには無理だ。フラットの動きを見れば情けなくなるかもしれない。サンの攻撃に凹むかもしれない。だが、凹んでいる暇はないだろ? 正直、今のお前は足手まといだ。俺たちの危険が増す。だが、もらったチャンスは自分のものにしろ。しっかり皆の戦い方をみて、何をすればいいのかを考える。わからないなら聞く。戦場で戦ったこともないお坊ちゃんだと自覚があるなら、全てを学べ」
おお、ノル、かっこいいよ~
「わかりました。頑張ります。次の迷宮にも連れていってもらえるよう、頑張りますので!」
おう、とノルが剣を返したら、さっそくつけてたね。
自分の剣は、アイテムボックスに入れたらしい。
サンとソラはその辺りをコロコロ転がって遊んでるんだけど、埃まみれですよ、砂地だし。
「主。丁度良い場所があった。行くか」
「うん、行こう。サン、ソラ、行くよ。その前にクリーンして」
はぁ~い、とサンが自分とソラを綺麗にしてるね。寝てたフラットは起き上がって身体をフルフル。
わー! と俺はその場から離れました。当然、クリーンしてくれてたけど。
フラットはサンとソラを背に乗せて結界を張ったよ。ちゃんと椅子が付いてるのが面白い。
行くぞ、という声を聞いて、ノルは人型でドラゴンのオニキスに駆け上がる。ブルックスも追いついた。
じゃあ、と俺は飛翔で行くことにした。回りをみながらね。
読んでいただきありがとうございます。
ノルの眷属のスタンプはすごいですね。これでサンもどこから見ても眷属です。
スライムってかわいいけど、そういうところはちょっと難儀ですね~
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