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104/202

104 俺のせいでノルは死んだ。だから俺がちゃんと始末するよ。

こんばんは、こんにちは。

あけましておめでとうございます!

昨年はいろいろとありがとうございました。

本年も、どうぞもよろしくお願いします!


※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様

        『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。


 ほんとうに俺はバカだ。俺がこんなことをしなきゃ、ノルは死ななかったかも知れない。俺のせいだ。俺のせいだ。

「それは違うぞ、主。誰がアイテムボックスを持っていようが、それは個人のこと。冒険者には多い事よ。だが、それを人より金を持っている貴族が命を奪って取り上げることが悪なのだ。決して主のせいではない。そのようなことなら、世の中のアイテムボックス持ちは皆命を失うことになる。その証拠に、同行した冒険者たちはうらやましいとは思ったであろうが、命を奪って手に入れようとは思わなんだ。あの冒険者がノルたちを助けてくれたのがよい証拠であろう」

 そうかな。

 俺のせいでもあると思うんだ。

「俺がよかれと思ってノルの腰鞄をアイテムボックスにしつらえたんだ。だから俺のせいでもあるんだ。でも、オニキスの言う通り、命を奪って手に入れるやつが一番の悪だ。今回は、冒険者同士では、そのような争いは起きなかった」

 止まらない涙はフラットが舐めとってくれる。小さな二人は、縋るように俺から離れない。本当にこいつらは優しいやつらだ。 

 じゃあ、誰が悪いのか。

 今回の旅を決めたのは国王か?

 それを騎士だけじゃなく冒険者にも依頼したのは誰? 

 貴族からの依頼だからと安請け合いしたのは?

 

 それぞれが身体を震わせている。

 あれ? ギルマス、いたんだね。

「国王、どう思う? ブルックス、お前は知ってたのか?」

 順番に聞いてやろう。

「冒険者に依頼しようといったのは誰だ?」

 次は。

「フロール、ろくに調べもせず受けたのか?」

 早く答えろ! 

 そう叫ぶ。

 今の俺は十歳のガキであって、そうじゃない。言葉遣いなんか気にしていられない。


「ナギ様。私が決定致しました。以前、ナギ様に教えていただいておりましたので、辺境で務めさせようと考えました」

「ナギ様。私も概ね知っておりました。私として貴族位の剥奪を勧めたのですが、他の貴族たちに反対されました」

 ふうん、ブルックスは少しはマシか?

「冒険者に依頼をといったのは、侯爵本人でございます」

 宰相は淡々としてるね。冷静なのは嫌いじゃないよ。

「ナギ様。申し訳ございません。侯爵様からの、というか王宮からの以来でしたので、二つ返事で受けました。私が精査すべきでした。申し訳ございません」

 やっぱりね。絶対そうだとおもったよ、フロール。


 わかった。じゃあ、今度は俺が話そう。

「司祭? でいいのか。名前は」

「はっ、失礼致しました。トランサル王国アルム神大教、大司祭のブランシュ・コールと申します」

 ふうん、ブランシュね。

「じゃあ、ブランシュ。悪いけど教会でノルを送ってやって欲しい。これからする話は、天に昇るノルには聞かせたくない。アルムおじいちゃんに任せることにするよ。頼むね」

 承りました、と何人もの司祭が入って来て、ノルの棺を担いでいった。

 一緒にもう一人の冒険者のご遺体にも祈りをと頼んでおいた。


 あとで教会に行ってみよう。

 さて。

 ここからは俺の裁きだね。

「とりあえず、そこのバカ貴族は死罪。もう一人は? 呼んでくれるかな。公爵だっけ」

 すぐに、と宰相が指示を飛ばす。


「フロール、お前の今後は世界ギルドに任せるよ。俺ならバラバラにしそうだからね。とりあえず、二度と俺の目の前に顔を見せるな。宰相、世界ギルドに俺の名前をいって、フロールのことを報告して。俺の見えるところにいないようにってね」

 かしこまりました、と宰相は水晶プレートを取り出す。

「あ! ブルックス。通信用水晶板は? 在庫あったのか?」

「は、はい。五枚はありました」

「で、いくら?」

 いえ、それは。とぶつくさ言ってるよ。

「あのね。それは俺が欲しいの。だから全部買う。もっと早く聞いてたらと後悔してるけどね。買いたいっていってるんだから金は払うよ。いくら」

 すぐに、と本体と明細を持ってこさせるという。

 おそいよな、こいつ。

「で、とりあえず、全ての責任の大元はこの国で国王だ。間違いないだろ?」

 はい、と項垂れる国王は哀れだね。

「どう責任をとる? 国としての詫びを考えろよ。国を消すわけにはいかんだろうが! 国民はちゃんと暮らしてるんだぞ。それを脅かしてどうする」

「では、私は国王として引退を表明致しましょう。ブルックスに任せて……」

 バカだ。

 は? と問い返されたよ。

「はぁ。頭悪いよね。国王として引退すればあんたは終わりだろうけど、国民はどうなるんだよ。ブルックスが本当に国王にむいてると思ってるのか?」

 いえ、あの……

 わかってるんじゃないか。

「息子は何人いる?」

 三人だって。

「じゃあ、他の二人に会わせてよ」

 はい、と侍従に指示を出した。


 ふう、とため息をつく。

 ソラもサンも出されたお菓子にも手をつけずに、ずっと寄り添ってくれる。フラットもオニキスも同じ。俺にはこの子たちがいればいい。それ以外はいらない。

「ねえ、みんな。俺はもう大丈夫だよ。だから焼き菓子食べなよ。美味しそうだよ。ね、食べよう」

 そう言えば、こちらを伺ってるけど、本心だからね。

 ふぁふっと鳴いたフラットはパクリと焼き菓子に食らいつく。サンもソラもテーブルに戻って食べ始めた。当然、オニキスもね。

 俺は食べないのか、とこちらをみるので、仕方なく口にはこんだ。

 蜂蜜の香りが鼻に抜けて、甘さが優しい。うん、美味しいよね。

 お代わりもらえる? と聞けば承知しました、と侍女が運んでくる。あれ? 侍女って謁見の間では初めて見るね。そんなことを思いながら、それぞれが皿にのせてもらってるのを見ていた。

 そんな俺の前にも焼き菓子が置かれる。

 ふふふ、嬉しいな~

 ザリッ! と首元に違和感がある。

 え? 首を押さえれば真っ赤だ。何かされたか? ボタボタと落ちる血をみて、妙に心が冷めていると思った。

 主! オニキスが腕を伸ばしてくる。

 ブルックスは、後ろの女を取り押さえてた。

 首元を手で押さえるんだけど、吹き出しはしない程度に血がとまらない。これはちょっとヤバイかも……

『あるじ、これのんで!』

 ん? サンが腕を伸ばしてポーションの瓶を開けてくれたんだけど、飲めるかな。

 口元に当ててくれたけど、首が動かない。そう思っていたら、オニキスが手を使ってグイと押し込んでくれた。強制的に喉に送り込まれるポーションと、肩に乗ったサンが首元にぶっかけてくれるポーションは、最高級品だよ。もったいない、なんて考えてしまった。

 ぶわっと光る俺の身体から傷が消えてゆく。そして体内の回復も進んでいるようだ。

「ブルックス! その者は誰か!」

 オニキスが叫んでるよ。怒ってるよね。怒りがダダ漏れだよ。

「はっ、この者は、侯爵家の長女でございます!」

 えっと、処刑する侯爵の娘? それが何で俺を?

「っつ! 父上を処刑するなんて許されませんことよ! 何様のつもりですか、平民のくせに! 父上は国のために力を尽くしておられるのです、なぜ冒険者風情がひとり死んだくらいで処罰されるの! あなたこそ、死罪だわ!」

 ああ、そういうことね。 

 でもね、おじょうちゃん。それじゃ終わらないんだよ。


 拘束された長女はまだ何か叫んでるね。

 そろそろ大丈夫かな。

 ゆっくりと身体を起こしてみる。

「大丈夫か、主殿」

「うん、大丈夫。サン、ありがとうね。最上級のポーション二本も使わせちゃった。でも、命を助けられたよ、ありがと」

『だいじょうーぶ~』

 また作ってくれるそうだ。

「あはは、太っ腹だね。あれ、一本で金貨五十枚で買い取ってくれたんだよ。だから二本で金貨百枚を使っちゃったよ。でもやることがあるから死ぬことはできなかった。本当に感謝してる」

 頭を撫でてやれば嬉しそうに身体を震わせてる。

「あのね、お姉さん。確かに死んだノルは平民だよ。でもそれが命の価値に関係あるの? あんただって、一歩間違えば平民として生まれてたかもしれない。それをアルム神が貴族の子としてこの世に送り出した。別に全員平民でもいい。それならあんたみたいな事をいうやつはいなくなるだろうね。それでも、だ。貴族と生まれたなら、平民ごときにかなわないからと、命を奪うことなどせず、守ってやればいいだろ。それができない貴族はいらないよ」

 うぬぬ、と唇をかみしめてる。

「主殿。この者も父親と同罪で良いな」

 いいよ、別に。

「ブルックス、この女、知ってるんだろ?」

「はい。幼なじみで。何度も結婚を迫られておりました」 

「いいの、処刑されても」

 全く問題ないそうですよ。

 わなわな震える女はアホだね。



 お待たせしました、と国王の息子が二人連れてこられた。

 ふむ。なかなかいい面してるじゃないか。

 こいつ、いいスキル持ってるじゃないか。統率スキルだよ。次男だね。やっぱりこいつの方がむいてるよ、国王としては。

「ねえ、国王。ブルックスは第一王子だからってことで次代と決まったんでしょ。王太子ってことだよね。でも、次男の方がむいてる。統率っていうスキルを持ってるからね。全ての人を率いることができるスキル。普通なら騎士団長とか考えるんだろうけど、剣の腕がイマイチだよね」

 頷く国王は知ってたんだろうね。

 でも、別に第二王子でもいいんじゃないの?

 国王には責任取ってもらうけど、引退はさせない。今の間にちゃんと貴族を躾けておけと言い渡す。

 ただし、国としてどうケジメをつけるか、それは別の話。国はいらないっていうなら、王宮は殲滅するけど。国民は殺さない。

 そう伝えた。

 

「失礼致します、ナギ様。世界ギルドでは、ギルドマスターの解任を決めました。新しいギルドマスターが来るまでは、副ギルドマスターに対応させるようです」

 ふうん、フロールはお役御免か。まあ、仕方ないよね。

「いつ頃来るの次のギルマスは」

 世界ギルドは我が国内にも拠点がございますので、二日か三日で到着すると思います。

 はやっ!

 この国にもあったんだね、拠点が。まあ、支店ってことかな。宰相は仕事が速くて助かるよ。

 でも、ブルックスの処遇が問題だね。

 どうするかな。

「ねえ、ブルックス。次期国王に第二王子がなるのはいいの?」

 全く問題ないという。むいてないと感じて断り続けていたらしいね。三男は魔法の扱いがすばらしい。魔法騎士団長でもやればいいといえば、納得してくれた。ま、ずっと先の話だよ。

「それで、ブルックスはどうするの?」

「ナギ様。ブルックスは私どもの子息だという事実はかわりません。ですので、それなりのものは分け与えたいと思っておりますが、できましたらナギ様担当としての役目を与えていただけませんでしょうか。その方が学ぶことも多いかと思いますので」

 ふうん。国王は前から本気で俺に、と考えてたみたいだね。どうするかな。

 少し考えるから、と公爵が到着したらしいと告げた。

 ドタドタと音を響かせやってきたのは、やつだ。

「こ、これは。兄上、どうなっておるのですか?」

 あれ? 王弟なの?

 もう一度鑑定してみるけど、こいつじゃないぞ。

「国王、この人じゃないよ。もう一人公爵がいなかった?」

「叔父でございます。そちらでしたか!」

 宰相が通信用水晶板を取り出して連絡を始める。

「これ、ナギ様の御前だ、立ったままでおるやつがあるか!」

 あはは、別にいいよ。

「面倒だし、そういうのはいいよ。悪人以外は立って。こっちに座ればいいよ」

 申し訳ございません、と国王が立ち上がる。ブルックスも立ち上がった。

「ナギ様。水晶板が」

 おお、忘れてたよ。

 どれ?

 見せてもらえば、かなりきれいなものだね。

 どれくらいまで繋がるのかと問えば、各国に販売しているので、世界中ほとんどで通じるらしい。天界とは繋がらないのかな。ま、無理だろうけどね。

 じゃあ、いくら?

 よろしいのでしょうか?

 いいです、早く言ってよ。

「一枚、白金貨二枚でございます」

「思ってたより安いね。じゃあ、これ全部買ってもいいの?」

 よろしいですが。

 じゃ、買います! 

 白金貨十枚を目の前に並べる。使い方は後で教えてもらうことにして、アイテムボックスへいれた。


 さて、公爵はまだなのかな?

 国王が一連のことを王弟に話してるんだけど、どんどん顔が青くなってるよ。

「まだ? 早く終わらせてノルに会いに行きたいんだ。公爵ってどこに住んでるの? 連れにいくか、オニキス」

 それでもいいぞというんだけど。

 

 あれから十分経った時、やっと来たよ、悪いやつ。

「陛下、これは何事ですか!」

 ふん、偉そうだね。

「そ、そなたは。冒険者のナギと申したか。なぜ、そこに座っておるのだ。お前がそのような……」

「うるさいぞ、公爵。お前はあっちだ」

 国王が指さした先には侯爵とバカ娘が捕らわれてるよ。

「じゃあ、始めようか。オニキス、こいつらと悪さしてた豪商の名前を宰相に伝えて。で、宰相は騎士団にそいつを捕まえてくるようにね」

 承知しました、と宰相はメモを持ってオニキスの側に跪く。

「さて。お前たちは国益を害した罪で処刑する。特にそっちの侯爵。自分の欲のために俺の仲間を手にかけた罪は重いぞ。一族でその責を負ってもらう。そして、くだらない悪巧みをした二人は同罪、ま、死罪だな。それと俺を切りつけたバカ娘。お前も死罪だ。アルム神の使徒である俺を傷つけて無罪では他の信者に示しがつかない。だからね、ちゃんと自分のしでかした事の責任を負えよ!」

 そう言い放つ。

 我慢してた俺は、その場で立ち上がる。そして、侯爵親子を氷で氷像と変える。既に死んでるんだけど。

「ごめんね、国王。謁見の間で刑の執行して。我慢してたんだぞ、これでも」

「問題ございません。それに血まみれでもありませんので」

 あはは、面白い解釈だな、と笑いとばす。

 

 豪商が連れてこられたので、騎士団に店を差し押さえろと命じる。国が没取すると伝えるように。すぐに店の商品、金、私財を没収してくるように命じたのは宰相だよ。

 当然、騎士たちは駆けていきました。


 あーだこーだと宰相が説明をする。そして、死罪だと国王が言い渡した。

「こいつらは、俺の私怨じゃないから、ちゃんと国で処刑して。氷の像はどうるする? 消してもいいなら消すよ」

 それなら、と頷いたので消しましょう。


<消えちゃえ>


 無音のまま氷の親子は消えた。おそらくだけど、亜空間であのまま漂い続けるんでしょうね。


 さて、終わりかな。


読んでいただきありがとうございます。


2024年初投稿できました。

ノルのことが大きく進みますので、お楽しみに。

本年もどうぞよろしくお願いします!


コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。

明日もどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナギの大人と子供の感情が入り混じった所がいいですね! [気になる点] ノルはエリクサーや蘇生薬、アルム神の采配、まあノルの彷徨っている魂に聞いてですが、復活するのでしょうか? [一言] や…
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