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103 ノルが死んだ……?

こんばんは、こんにちは。

年末のお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。

ショッキングなタイトルですが、このお話で年内投稿はお休みさせて頂きます。

今日もよろしくお願いします!


※魔物参考資料 『魔物図鑑』 作者:龍崎 明様

        『ファンタジー初心者用語解説』作者:滝川 海老郎様 他を参考にさせていただいております。ありがとうございます。


「それで、ノルのこと、わかった?」

「はい。それが……」

 何だか歯切れが悪いね。

 二日前、隊列が魔物に襲われた。

 その時、当然冒険者たちが最初に対応に当たることになる。数人の騎士を残して馬車は引き返したらしい。冒険者たちは、戦っている最中、はぐれてしまったという。騎士も数人殺された。残った騎士たちは、貴族と合流して、王宮に報告がきたらしい。それが昨日のこと。

 うそ……

 信じられない。

 騎士たちは何をやってた? 冒険者だけを戦わせたの? どんな魔物が出たの? なぜ、探さないの冒険者たちを!

 ブワリと何かがわき上がってくる。

 これは怒り、だろうか。

 ノルは貴族の犠牲になった? いや、まだ死んだとは限らない。それなら助けに行く。今からすぐに行く!


「ねえ、ブルックス。その貴族たちは今どこにいるの? どこかで止まってるんでしょ?」

「はい。手前の街で宿を取ったと聞きました。騎士の治療もありますので」

「ふうん。それで、冒険者たちの捜索は?」

「……してないと思います、おそらく」

 何でだよ!

 どうして探さない?

 まだ生きてるかもしれないのに……

『主、何があった!』

「オニキス、ノルが、ノルが……」

『すぐに行く!』

 そう聞こえたと思ったら、ドシンドシンとオニキスがやってきた。遅れてきたフラットの背にはサンとソラが乗っている。

するすると人型になったオニキスは、ブルックスを睨む。

「説明せよ!」

 はい、とブルックスは俺にした話を皆に聞かせる。

 だんだんと怒りをあらわにするオニキス。

「主、今から行くぞ。我が飛ぶ。フラットの空間に入るのだ。フラットは我の背に。場所はあの国ならばわかる故問題ない」

 では、と執事が駆けていった。


「オニキス様! 私も共に! どうかお連れください。王族として、共に捜索を!」

 ぎろりと視線を向けたオニキスだが、空間に入らず、自分の背にのるならと条件をつけた。じゃあ、一緒に来ている二人の護衛は腕が立つので、共に連れて言って欲しいと言う。一人でも多い方がいいとオニキスは承知した。


 行くぞ、と外に出たオニキスに続いて、俺たちも玄関ホールを歩く。

「ナギ様! これをお持ちください!」

 なんだろう、と中を見れば、たくさんの果実水と焼き菓子だ。おやつにと料理長が用意してくれてたみたいだ。それと水の革袋もたくさん木箱に入ってる。森に捜索に入るからと思っているんだろう。本当に優しいやつらだよ」

「ありがとう。いってくるよ。門以外には結界を張る。それと、これ。お金を預けておく。食料品とか必要なものはそこから買って。頼むね」

 お預かり致します、と執事が恭しく受け取った。

 屋敷の費用に渡そうと思っていた金なので問題ない。

 

 外に出て、騎士たちを呼んで、結界のことを話した。俺がいないから、客は絶対にいれないように。注文の配達以外は出入り禁止だと申し渡した。


 フラットの空間に入る。

 サンとソラと三人で。帰りはノルも一緒だ、と心に決めている。

 オニキスはフラットとブルックス、騎士二人を背に乗せて、すごい速さで飛んでいる。

 騎士たちは、ひっくり返りそうになりながら、座り込んでいる。

 だが、オニキスの速さで飛べば、一時間もかからず、彼の国の上空だ。

 そこでフラットは結界から外に出て、二人で探索を始めた。

 魔物はたくさんいる。

 だが、その中に小さな小屋がある。そこに人の気配があるとフラットから連絡が来た。

 じゃあ、ブルックスを連れていってみて、とお願いした。

 フラットはブルックスを背に乗せて、小屋の前に降り立つ。

「中に誰かいるか! 我はブルックスだ!」

 キィと少しだけ開いたドアからは男が見える。どうやら冒険者のようだ。

「冒険者だ、殺さないでくれ!」

 なにをいってるんだ、とブルックスがドアを開いた。

 そこには、二人横たわっているのだが、様子がおかしい。既になくなっているのだと判断したが、その一人はノルだ。

「ノル殿!」 

 思わず叫んだブルックスは、外のフラットに声をかける。

『ナギ、ノルがいた。でも……』

 嫌な予感がする。

 多分、想像は当たってるだろう。でも、行かなくちゃダメなんだ!

 あけて、とフラットにいえば空間がひらいた。

 サンとソラは赤い鞄に一緒に入って入る。その鞄を斜めがけして外に出た。


 ドアの前にはブルックスがいる。そして後に一人の男がいた。

「主」

 オニキスが肩に手を置いてくれる。

 中に入れば二人の男が寝かされている。その一人はノルだった。

「ノル……」

 ノル、ノル……

 側にいってどれだけ呼んでも目を開けないノル。揺すっても冷たいままだ。

 冒険者は死と隣り合わせ。それは理解できる。だが、ノルが?

 流れる涙を拭くこともできずに座り込んでいた。


 外では戦ってる音がする。

 騎士たちとフラット、オニキスだろう。

「ブルックス、ノルが死んじゃった。なんで? ノルは強かったんだよ。それに得意の短剣すら抜いてないのはおかしくない? 本当に魔物と戦ったの?」

 ノルを見た時思った。

 これは魔物と戦った傷じゃない。

 剣で切られた傷だ。もう一人も同じ傷跡。これは裏切られたんだ。

「ねえ、冒険者さん。魔物って何が出たの? 森まで入れば魔物もいるけど、街道沿いにはいなかったよ。どんな魔物?」

 グッと口をつぐむ。

「隠してもダメだよ。人の命ってそんなに軽いものじゃない。こんなことなら、一人で護衛なんかさせるんじゃなかった。この国に来るんじゃなかったよ」

 ブルックスは辛そうに項垂れてるけど、犯人を見つける必要がある。


 俺は淡々と冒険者に問う。

 どこで襲われたのか。他の冒険者は? なぜ、二人だけが切られたのか。なぜ、一人生き残ってるのか。

 冒険者は訥々と話し始めた。


 他の冒険者も切られた。自分は危険を感じて森に逃げた。

 木に登って追っ手をやり過ごし、街道の様子を見ていた。その時、なにが起こったか。

 貴族が馬車から降り立ち、騎士に命令した。

 冒険者たちの金を奪えと。そしてよい武器も取り上げろと。そして魔法袋を持ってた男からそれを取り上げ、ノルの小さな革製腰鞄を取り上げた。

 何度か使っていた様子を見たが、時間が止まるアイテムボックスなど、市場では見られないほど高級品だ。さすがの貴族も持っていなかったらしい。ノルからそれを奪ったあと、剣も見ていたが先に領地を見てくると騎士と馬車は行ってしまった。

 残された冒険者は、木の上からこの小屋を確認していたので、今の間に、とノルともう一人の遺体を担ぎ上げて運んだらしい。そのあと、街道に戻れば貴族たちが慌てて逃げていった。オークが五頭追いかけていたから。だが、オークは残りのメンバーの遺体を見て、死んですぐだと確認したのだろう、それを手にどこかへいってしまった。

 冒険者は、小屋に戻って息を殺し一日やり過ごしたという。

 どうやら真実らしい。

 

 なんてこと?

 貴族が冒険者を殺して持ち物を奪うなんて。信じられない。

「じゃあ、貴族の宿に行く。あんたはどうする? 次の街まで連れて行こうか?」

 頼む、というのでオニキスを呼んだ。

 オニキスがでっかくなったので、驚いて後ずさる。

 俺の眷属だからと背に乗せた。ブルックスと騎士たちもだ。

 遺体は、オニキスが空間に入れてくれた。連れて帰ってやれると冒険者は喜んだけど。俺の気持ちは最悪だ。

 無言の俺を見て、ブルックスも対応出来ないでいる。

「お兄さん。僕はナギ。ありがとうね、ノルの遺体を守ってくれて。これ、お礼。受け取って」

 とんでもない、という。同じ護衛を受けた仲間だからと遠慮するけど、他の遺体はなかったから。そう言って押しつけた。

 ありがとうと逆に感謝するお兄さんはいい人みたいだね。

「ブルックス。宿に連絡を。貴族だけ連れて戻る。オニキス、頼むね」

 了解した、と皆を乗せて結界を張ったオニキスは空に上がった。

 フラットと俺たちも後に続いて空に上がる。当然、結界は張ってくれた。オニキスについて行こうと思ったら、フラットの背でも落ちたら死ぬからね。


 宿に乗り込んだのは、ブルックスと人型のオニキス、そして騎士たちだ。

 冒険者のお兄さんは、王都ギルドまで一緒に戻りたいというので受け入れた。ご遺体もあるからね。


 貴族を拘束したあと、フラットが狭い空間に押し込んだ。

 再び空に上がった俺たち。

 今は全員がオニキスの背にいる。ただし、俺とサンとソラだけは空間にいるけどね。

 この後、王宮までとんでもらう。

 ギルマスも呼ばれてるはずだよ。


  

 王宮の庭に降り立ったでっかい黒鉄竜オニキスは、皆周知しているので問題ない。

 スルスルと身体を小さくしたオニキスの背から降りたブルックスは、俺の所にやってくる。

「大丈夫ですか、ナギ様」

 大丈夫。

 それだけしか答えられない。

「では行こうか」

 オニキスの声にフラットが背に乗れという。

 言われるままに乗って、くねくねと進んでゆく。上がったり下がったり。本当に王宮は嫌いだ。やっと到着した謁見の間。止められることなく入った俺たちは、ソファを勧められた。

 バッグから出てきたサンとソラはテーブルの上に座る。

 宰相がノルの遺体をというので、騎士たちが持って来た棺にそっとノルを寝かせた。

 冒険者のお兄さんは王宮の控え室で待ってるみたい。家族に連絡したら、すぐに来ると聞いて待っているんだって。


 ノルの頬をひと撫でして、ソファに座った。

「ナギ様。此度のこと、どのようにお詫びして良いか。我が国の貴族、それも侯爵が申し訳ない事をいたしました」

 国王は跪いて頭を下げた。

 宰相も他者も、皆が頭を下げる。

「貴族は捕らえてきたよ。どうするの?」

 出してくれと言われて、フラットが空間から放り出す。

 ドタッと床に放り投げられた侯爵は、一瞬でここがどこか気づいたみたいだ。

 こいつ、確か。最初に俺がダメなやつだといったおっさんだ。

「こ、国王陛下。このような姿で失礼致します。今回のことですが……」

「貴様は黙っておれっ!」

 ふん、何かやらかすとは思ってたけど、まさかノルを殺すとは。許せないよ、絶対。

 ピコン! と音が鳴る。

 おじいちゃんからのメールだ。

 今、このとき来るメールということは、関係あるのかな。眷属以外見えないタブレットを開いて確認すれば、やっぱりおじいちゃんだ。


 ++++++++


 ナギ。

 この度はすまんの。

 儂は地上のこのようなことには口出しできぬのじゃ。もちろん、事前にお前に連絡することもできぬ。故にこのようなことになってしもうた。申し訳ないの。

 だが、本来死ぬはずではなかったノルは殺されたのじゃ。それもこれも、そこの貴族が欲を出したからじゃ。ノルはちゃんと葬ってやる他はないが、己が決めて受けた依頼故、お前に対しては申し訳ないと思うておるのじゃ。それは理解してやるがよいの。

 じゃが、地上の世界の理として、始末をつけよ。お前の役目じゃの。頼む、ナギ。辛かろうが、怒りを晴らすためにも、きっちりと創造神の使徒としてケジメをつけて欲しいのじゃ。よろしく頼む!


                アルム爺


追伸:

 後で教会から司祭が行く。儂が信託をくだした。お前は創造神の使徒であると明かしたが、よかったかの。なんでも申しつければよいのじゃ。使うてやれの。


 ++++++++


 おじいちゃん、余計なことをしたよね。

 俺の事バラしちゃったの? あはは、でもいいよ。いろいろ使うからね教会の人たちを。だから覚悟してよ。


 顔を上げれば、心配そうな顔が見える。

「失礼致します! アルム神様よりのご神託でございます! ナギ様に面会を!」

 うわ、なにそれ。大声で叫ばんでもいいでしょうよ。

 なに?! と国王が扉を開けろといってるよ。


「ナギ様!」

 ザザッと音がしそうな勢いで俺の前に跪いた。

「アルム神様からのご神託がございました。知らぬ事とは言え、申し訳ございませぬ。まさか、使徒様が我が国にご滞在とは。ある程度のことは聞きました。ノル殿のご遺体は、責任を持って教会で安置させていただきましょう」

「悪いね。お願いしてもいいかな。どこか墓地があればと思ってたんだよ。教会が管理する墓地なら、いつでも会いに来られるから」

 承りました、と頭を下げる。


「あの。ナギ様。使徒様、とはどういうことでしょうか」

 国王が正気に戻ったね。

「そういうことらしいよ。アルム神、アルムおじいちゃんは、創造神なんだ。だから、使徒として各地で役目があるんだって。最初はこの国は入ってなかったんだけどね」

 左様でございましたか! と再び皆が平伏する。

 やり過ぎだよ、皆。


「まあ、それはそれだよ。で、そこのバカ貴族。お前、俺が作ったアイテムボックスが欲しかったのか? 今回の護衛でノルに持たせた。仲間だから、できれば無理のないようにしたかった。初めての一人で受ける依頼だったんだ。俺たちが忙しいからと、自分は依頼を受けてくるって。だから、誰も知らなかったはずだよ、アイテムボックスのことは。生き残った冒険者に聞いた。逃げた彼は木の上からお前たちがやったことを見てたらしい。ノルの持ち物を返せ。あいつの個人的なものもあったはずだ。中には魔法袋もあったはず。あれは迷宮で手に入れたものだ。おそらく個人的なものをいれてただろうと思う。ノルを返せ! 俺の仲間を返せ!」

 そう叫んだ。

 貴族の周りに氷がペキペキと棘を出す。それは少しずつ広がってるんだけど。でも、いいか。どうせ、こいつは生かしておかない!

「ちょ、ちょっと待ってください、この腰に……」 

 そう聞こえたとき、ブルックスが剣を引き抜き、縄を避けて服を切り裂いた。

 腰にはノルの鞄がある。

 それだ、と呟いたとき、貴族のベルトはバラバラに切り裂かれていた。

 ブルックスが、両手でそのアイテムボックスを持ってくる。これ、ノルのだ。ごめんねノル。俺がアイテムボックスに加工したばかりに……

 涙が止まらなくなった。そして小さな鞄を抱き込んだ。

『あるじぃ、なかないで~』

『あうじ、らいじょっぷ?』

 サンとソラが俺の身体に張り付く。初めてソラが話したよ。それほど、気にしてくれてるんだね。

 フラットは大きな顔を寄せて涙を舐めとってくれる。オニキスは肩に手を置いてくれた。


読んでいただきありがとうございます。

本年は、突然の復活でしたが、コメントや評価をいただき、ありがとうございました。


年内はこのお話で投稿を終了いたします。

とてもショッキングな年内最後のお話しですみませんでした。年明けのお話は前向きなお話になりますので新たな気持で頑張ります。

年明けは、1月4日からの投稿となりますので、どうぞよろしくお願いします。

良いお年をお迎えください~


コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。

来年も変わらず進んで行きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ノルがぁーーーーー!(´•ω•̥`) でもさ、でもさ、迷宮のドロップ品の中に蘇生薬あったよね?大丈夫だよね? ろくでもない大人は金と権力を持つと必ず破滅に向かう……まるで今の日本の政治家が…
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