2-【箱庭アリス】
容姿端麗。博識洽聞。非の打ち所がないこの学校の生徒会長。それが箱庭アリスという人間だった。
ブロンドの髪を靡かせ、歩けば男女問わず誰もが黄色い悲鳴をあげる。座れば花が咲き誇ったかの様に、周りは頬を赤らめる。
そんな彼女には想いを寄せる男性が二人も存在した。
一人目は周りから箱庭アリスの番犬と呼ばれる、正式な彼氏、滝川 透。
番犬と呼ばれるだけあってか、常に警戒心丸出しの男であった。喧嘩は日常茶飯事だった彼は、箱庭アリスと付き合うことにより喧嘩は一切、関わらなくなったそうだ。けれど両耳で合計十個のピアスや赤い髪色など見た目の派手さや、口の悪さが災いして周りから恐れられている。
二人目は箱庭アリス、滝川透のクラス担任である沼田 琲羅。
眼鏡をかけた至って凡庸な国語教師である。貴方の身近にも居るのではないか、と問いたくなるほど普通の教師だ。
この二人、年齢や容姿を比べるだけでも天と地との差がある。そんな彼らの唯一の共通点が完璧人間、箱庭アリスに好かれている事。
何故、彼女は彼氏という存在が居ながら、冴えない教師を好いたのか。僕は頭を抱えた。好かれる要素もなければ、そもそも接点が担任以外なかった。担任としての接点ですら、必要最低限だった。
「…これはテストより難しい難問だな」
彼は業務を終えた後、ひっそりとドラックストアで胃薬を買ったらしい。