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都市伝説的なチョコ

作者: あまね

 MCの先輩芸人の内田さんが、こちらに目配せをし、スタッフがぐるりと此方に指をさせば、僕は喋りだす。


「皆さんはチョコレートって、流石に知っていると思うんですよ、お菓子の代表格として

 駄菓子屋、コンビニやスーパー、専門店、色んな場所にあって、人気の商品です」


 大丈夫、練習はしてきたし、お祓いもおまじないもしてきた。

 人気番組の【ホンマか都市伝説】の本格的都市伝説を語るわけでもなければ、トップバッターでもなく、下ネタや定番の笑いネタでもない、いわば箸休めか、尺調整のための演目。


 カットするならたぶん自分からなんだろうと、その場合は、後日ネット配信や未公開集でもあればいいほうなのだろうなと考えてしまうが、それならばなおの事、とちるわけにもテンポを落とすわけにもいかない。


「そんなチョコレートですが、神秘な飲み物として、古代の人は神々が与えた神秘の食べ物として扱われていた時期もありました、富や知恵の象徴とも言われていたんですね、ここまでは皆さん聞いたことがあるのかもしれません、今回はそんなチョコレートにまつわるある芸能人のお話です。」


 モニター画面に写し出されたのは、時たま年に全国三回ほど見かけ、テレビに出てくる先輩芸人の江口千横さん。


 その顔を見て内田さんは声をだす。


「知っている、こいつ、よくチョコをもちある歩いてて食べてるわ、大阪の劇場やスタジオ楽屋に、こいつがいたら、上手いチョコないか?って聞いたらお勧め教えてくれる優しい奴や」


「内田さん、それなら江口さんにまつわる恐ろしい噂聞いたことあるでしょ」


「知らん、モテない人気者でもないあいつが3年ぐらい前から、バレンタインに段ボール何箱もらったとかは聞いたことある、人気のある芸人とか男性アイドル並みよな」


「それと関係はしてくるんです、ただ本人は否定しているんですけど、江口さんとチョコレートのある奇妙な噂今からお伝えしますね」


 スタジオのモニターに五年前は有名な賞レースを獲得した元お笑いコンビユーロが映し出されている。

 一人はあまり売れていないピン芸人に、もう一人は一般人になっている。


「懐かしいって言ったらアカンけど、ユーロとなんかあったんか?」


「実はユーロさんとグラビアアイドルとの地方の深夜のバラエティー番組で、江口さんにドッキリ仕掛けて、物凄いキレられたんです」


「ドッキリとか芸人ならある程度は美味しいとか思うんじゃないの?何にキレた?」


「江口さんの鞄の中の私物のチョコレート開封して食べたんです、初めはバラエティーのノリかなってグラビアアイドルとユーロの三人と、スタッフは思っていたんですが、グラビアアイドルの胸ぐら掴んだところで、ガチだと思って、慌ててとめに入るんですが、スタッフ4、5人でも抑えきれないぐらいキレたらしくて」


「あいつそんなムキムキやないでホンマか?」


「実際の映像がありますんで、それを見てください」


 スタッフが借りた当時の番組の一部が流れると、内田さんもドン引きするレベルで怒っている江口さんが囲んでいるスタッフを押しのけて、三人に意味不明な日本語にもなっていない怒声を浴びせている。


「めっちゃ怖いけど、チョコレート勝手に食べただけやんな?」


「江口さん自身、若かったから、当時の彼女から貰った楽しみにしていたチョコレートだったからとか言ってますけどそのレベル明らかに越えてますよね」


 そしてスタジオのモニターがまたユーロさんの写真に戻る。


「それで、ここからなんです、ユーロさんロケやネタ番組とか劇場やの出演しても、トチりまくり、スベりまくります、マネージャーがダブルブッキングするわ、遅刻するわ、スポンサーが不祥事起こして冠番組が潰れて、テレビや劇場とかとんと見なくなり解散します」



 人気絶頂から、いきなり落ちぶれていく姿、後半になるとコンビ同士のすれ違いや言い争いも増えて、目に見えて仲が悪くなり、揉めに揉めたという裏話は芸人仲間は、売れても何かの拍子で転落すると言う事を目の当たりにし、数組は解散していった。


「内田さん、江口さんにドッキリ仕掛けてキレられたグラビアアイドルの子よく見てください、当時の人気ランキング5位の坂上レミちゃんなんです」


 モニターに先ほどの映像を流してもらい、グラビアアイドルの事を確認してもらう。


「実はレミちゃんも悲劇が起きてます、グラビア撮影のためのロケ地が豪雨や大雪等の天候不良による撮影中止、握手会予定ビルの火事、事務所のマネージャーによるストーカー被害、実父の不倫報道、ぶっちゃけ仕事が、激減します」


「こわっ」


「ただ、レミちゃんに至っては3年前からまた人気が出始めて、今年はCM本数3位まで昇っています」


「そうよな、昨日仕事したばかりやで」


「そして内田さん、3年前から人気が復調した背景に、レミちゃんの所属事務所の社長さんが、占いにいったんですって、その時にお供え関連で、何かトラブルありましたか?ってきかれたそうなんですが、当然ないわけですよ、でも、神の食べ物を無断で食べたことで、恨まれて、愛が逃げているから、どうにかしないと会社自体が危ういって言われたそうなんです。」


 一息入れて、目配せでモニターに先ほどのバラエティー番組の映像がまた流れ出す。


「レミちゃん、無断で食べたもので、パッて思い出したのが江口さんのチョコレートだったんで、社長と占い師さんに相談して、義理のチョコレートを所属事務所のアイドル、関係者の女の子からバレンタインの義理チョコとして3年前から江口さん宛に一箱を送ったら、所属事務所のアイドル達の人気が出始めて、業績が上昇したそうです」


「まじかぁ 本当だったら江口なんかあんのかな?」


「実際他の事務所のアイドルの子も送ったら、仕事運が上がったから、段々チョコレート増えているそうです、これが江口さんがチョコレートをバレンタインに段ボール箱換算の理由です」


「なんか偶然にしてはすごいなぁ」



「ところで内田さんあの映像で、江口さんの意味不明な日本語にもなっていない怒声なんですけど、普通怒鳴っているなら相手に分かるように怒鳴りますよね?もしかしたら日本で初めて記録された神の怒声なのかもしれません」


 最後の一言で、スタジオの空気が止まった気もするけれど僕の出番は終わりだ。


 信じるも信じないのも後は自由だ。

 僕はお祓いもおまじないもしてきた。



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