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これをハーレムとは認めねぇ!  作者: 未練マシマシ
一章・さぁ、ハーレムを作ろう
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第三夜 刺して、締められて、背負った

鳴き声の正体は人型の何かの群れだった。

それらは小さな子供程の背丈で酷く痩せ細っていた。

昔見た、貧困と飢餓に苦しむ子供の写真に似ている。

写真と違ってそれらには腹の膨らみさえ無かった。

仮に小人とでも呼ぼうか。


小人達は熊のような大きな動物の死骸に群がり貪っていた。

俺が近付いて来てたのが分かった個体が居たようで何体かは俺の方を見ていた。


状況はすぐに変わった。

黒い刃は一番近い個体に殺到したのだ。

その小人は運が悪い事に他の小人と争っていてちょうど反対側を向いていた。

近寄ってくる俺に気付かなかったのだろう。

逃げる暇も無く背後から伸ばされた黒い刃に首や背中などいたる所を刺し貫かれていった。


その様子を見た他の小人は状況を理解するのに少しだけ時間を有した。

しかし怯える様子は無く、我先にと俺へ向かってきた。

死骸に群がっていたモノ全てが一斉に迫ってきたのだ。

獲物を取られるとでも思ったのか。

仲間を殺されて怒ったのか。

もともとの気性が荒いのか。

理由は分からないが、小人には逃げるという選択肢は無いらしい。


変わって俺の方は変化があった。

視界がどんどん下がっていく。

手足の感覚、外気にさらされた寒さ、鼻をつく腐敗臭…

黒い刃が生えてから失っていた感覚が戻ってきた。


そして俺の目の前には無惨に刺し貫かれていた小人にも変化があった。

黒い刃が刺し貫いた箇所からボコボコと膨張していった。

歪に膨らんだそれは急に萎み、人型へ戻っていく。

いや、背丈は俺と同じか少し高いぐらいだろうか。

肢体はしなやかに伸び、女性のような丸みを帯びていく。

頭髪も短い癖っ毛が早送りされているように生えてきた。


迫り来る小人の一体が手を伸ばせば届く距離まで近付いた頃には刺し貫かれた小人は美しい背を魅せる裸体の女性に変わっていた。


「がぁ!!」


女性は一声獣のように叫ぶとまるで肉食獣が獲物を襲うように近くの小人の頭を掴むと強引に地面に叩きつけた。

体格差故か叩きつけられた小人からは骨と肉塊が壊れる音が出て動かなくなった。

それからは蹂躙という言葉が相応しいだろう。

女性は伸びた手足に戸惑う事なく、腕や脚を使って小人達を薙ぎ払い、踏み潰した。


俺はその光景を尻もちをついて見ている事しか出来なかった。

数分、あるいは数秒。

殺戮の時間は短かった。

小人を殺し尽くした女性は手足が小人の体液で汚れたまま俺の方を見ている。

その眼光は鋭く恐ろしい、そして同時に美しいとも思った。


「あっぐ!?」


俺は女性に何か言わなければと思った。

しかし、俺が何か言葉を発する前に女性は近付き、俺を押し倒して馬乗りになり首を締め上げた。


俺は必死に女性の手首を掴んで離そうとするが、その細腕からは信じられない程の力で俺では振り解けそうに無かった。

俺は息を吸う事が出来ずに意識が朦朧とし始めた。


するとまたあの感覚がやってきた。

痛みが、感覚が薄れて視界が動く。

黒い刃が俺に乗っていた女性を素早く貫く。


なるほど、意識を失う度に黒い刃が現れるのか。

酸欠の頭のどこかで冷静に分析しながら俺は女性が黒い刃で滅多刺しにされて行くのを見ていた。


女性は苦悶の表情を浮かべたが、最後まで泣き叫ぶ事は無かった。

それどころか俺の首をより強く締めようと力んでいた。

俺の視界が上に登った時に見えた。

首から下顎しか無い俺の一部を締めようとする女性の姿。

俺の各部はどうやら黒い刃で繋がっているようだ。

人の部分が残っているせいか、余計に不気味に見える事だろう。


女性を滅多刺しにしたせいか俺の姿は元に戻っている。

側には仰向けに女性が倒れていた。

不思議な事に血や土で汚れてはいたが刺し傷は見当たらず、口元に手をやってみると呼吸もしていた。

どうやら生きているらしい。

女性の首には半透明の首輪と鎖が着けられていて俺の左手に繋がっていた。

俺には半透明の鎖が左手から直接生えているが、触れようとしても鎖や首輪に触れられない。


女性の顔はよく見ると幼く、可愛らしい。

鋭い眼光も寝ている時は無効のようだ。


…多分、これが邪神が与えた能力なのだろう。

俺が何らかの理由で意識を失いそうになると黒い刃の化物になり、刺し貫いた相手を女性に作り変える。

首輪や鎖は作り変えられた証なのだろう。

確かに女性が増えれば俺を愛してくれる者も現れるかもしれない。

好意ではなく、害意を向けられた事には流石は邪神の与えた能力だと納得もした。

俺のハーレム候補にあの強面な男が入ってしまう所だった事に恐怖を感じえないが。


今後、どうするべきか。

俺と女性は互いに裸だ。

このまま、人が居る所に行くのは不味い気もするが、かと言ってこの場に居るのも危険だろう。

この世界は地球ではない別の世界。

小人のように襲ってくるモノも存在するだろう。

熊のような動物も居るようだしな。


俺はともかく、ハーレム候補の女性が殺されるなんて事は何が何でも防がなければ!


まずはここから離れよう。

動物や小人の死骸がいつ、別の存在を惹きつけるか分からないからな。

俺は女性を背負って歩き出した。

…水辺を探そう。

血みどろのままは嫌だ。

【???】


コロス…コロス…

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