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これをハーレムとは認めねぇ!  作者: 未練マシマシ
一章・さぁ、ハーレムを作ろう
3/14

第二夜 殴られて、変わって、暴走した

俺は問い詰められているのだと思う。

椅子に拘束され、強面の男に見下ろされて怒鳴られている。

最初に警察に捕まった時に雰囲気がそっくりだ。

とても懐かしく感じる。

あれから何年経っただろうか。

何度か捕まると態度が変わってくるんだよな。

軟化するというか呆られるというか。


「うぐっ!」


「〜〜〜〜〜!」


顔を殴られた。

現実逃避している場合じゃなかった。

男がまた何かを言っている。

何度か聞いた同じ言葉。

俺に何かを問い詰めている事は分かる。

しかし…


ほめなはい(ごめんなさい)

いへるほほが(言っている事が)わはりまへん(分かりません)


言語が違うから!

男が何を聞きたいのか全然分からんのだ!

話しても殴るし蹴るし!

翻訳アプリでも使ってくれよ!?

無いかもしれないけどさぁ!?


「〜〜〜〜〜!

〜〜〜〜!」


い、いかん。

殴られ過ぎて意識が…


メキョパキ、クチャア。


「〜〜〜!?

〜〜〜〜〜!」


何の…音だ?

体の中から卵が割れるような音が響いてくる。

それと体の痛みや拘束されていた窮屈さが薄れていく。


男は俺を見上げながら狼狽えた様子で後退りしていた。

見上げながら?

俺は椅子に拘束されているのに…


体が勝手に動く。

視界には黒くて鋭利な刃物のようなモノが人間の手を貫いて…貫いて?

お、俺の手の感覚が無い!?

あれは俺の手、なのか?

手首から強引に千切れて黒い刃に貫かれたあの手が!

しかし、それを認識しているのに俺には痛みを感じない。


俺は一体、どうなっているんだ!?


手を貫いた刃物のようなモノはゆらりと動き男へ刃先を向けると目にも止まらぬ素早さで伸びていった。


男も嫌な予感を感じていたのだろう。

咄嗟に動いて紙一重で避けて、そのままドアから飛び出して行った。

黒い刃は男が居た場所を深々と貫き、男の後を追うように更に別の刃を床や壁に刺して前進する。

それに合わせて俺の視界に写る光景も変わっていく。


黒い刃には必ず人間の一部が貫かれていた。

腕や脚、内臓など随分とスプラッタな光景だ。

俺には実感が薄くどこか遠くの、それこそホラー映画のワンシーンに見えるが他の者からすればたまったモノじゃないだろう。

現に俺から逃げる男は何かを叫びながら必死に走っている。

それが助けを呼んでいるのか、非常事態である事を伝えているのかは言葉を理解できない俺には分からない。

しかし、男が化物から逃げているという状態は分かる。


俺が拘束されていたのはいわゆる地下牢と呼ばれる場所だったようで男を追って床だけでなく壁や天井も黒い刃を刺して階段を登っていく。


どうしよう。

今の俺には体の制御が効かない。

このままでは俺はあの男を黒い刃で刺し貫くのだろうか。

殴られたり蹴られたりはしたが殺すのはなぁ…

あの男だって仕事で俺を尋問していただろうし。


それに元の体に戻るのだろうか。

流石に黒い刃で相手を滅多刺しにするような化物のままだと俺は困るのだが。


現実逃避の思考を巡らせていると急に視界が横滑りした。

どうやら俺は地下牢の階段を昇り終えて外まで誘い込まれていたようだ。

外には多くの人が俺に向けて武器や盾を構えていた。

黒い刃は近くに居る者へ殺到するが相手は互いに補助しあって上手く交わしていく。

男が教えたのか黒い刃を盾や武器で受ける者も居ない。

確かに石材の床や壁をやすやすと貫くならば受けない方が良いよな。


そうやって他人事として戦う様子を分析していたら今度は視界が炎で埋め尽くされた。

幸いな事に俺は熱さは感じなかった。

銃器などの音は聞こえなかったがもしかして…

動くカーテンがあるから薄々思っていたけど、邪神の送ったこの世界は魔法があるのだろうか。


炎が邪魔で周囲が見えないが、黒い刃は未だに動けるようで燃えたまま前進していく。

…俺の体は大丈夫なんだよな?

元に戻って大火傷なんて嫌だぞ?

元に戻るかどうかも分からんが…


俺を追う者は居ないようだ。

前しか見えないが足音なんかは聞こえない。

炎もだんだんと消えていく。

黒い刃は元々が黒い上、周囲も暗い事も重なって燃えたかどうか判断出来なかった。


この姿が邪神が言っていた能力なのだろうか?

こんな他者を傷付けるしか出来ない化物に変わる事がだろうか。

もしそうなら…俺は判断を誤ったかもしれない。

これじゃ、ハーレムを作るなんて叶わないじゃないか!

俺に愛する人を刺し殺すような性癖なんて無いぞ!?


…まぁ、邪神と名乗ってたからな。

人の願いを素直に叶える神が邪神って名乗らないよな。

俺は一生、黒い刃が生えた化物として生きていくのか。

はぁ、辛いわ。


しかし、俺は何処に向かっているのだろうか。

ただ猛然と前進し続けているが、周囲は暗くて良く分からない。

時折、見える月明かりで木がいっぱい生えている事だけは分かっているのだが、それ以外はなんとも。


そう思っていると人か獣か分からない存在の叫び声が聞こえた。

声を感知したからだろうか。

俺の体は声の方へ向きを変えて進み出した。

完全に獲物を見つけた化物の行動パターンじゃん。

せめて相手が人じゃなければいいのだが。


俺はそう祈りながら暴走する体に身を任せた。

【???】

あれは…人間に擬態していた魔物かしら?

それとも、変換の術の応用?

報告すべき事がまた増えましたわ。

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