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これをハーレムとは認めねぇ!  作者: 未練マシマシ
一章・さぁ、ハーレムを作ろう
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第十一夜 持ち上げて、羞恥して、感服した

俺は無心になって巨大蟻の死骸…を解体されて、いささか運びやすくなった一部を運んでいた。

蟻の死骸はとても重かった。

それこそ俺が運んでいる解体された足先。

大きさにして掌に収まるサイズなのだが…重たい。

片手では厳しく、両手でようやく少しだけ持ち上げられた。


はたから見れば滑稽な姿だろう。

足をガニ股に開いて両手で小さな物を掴み、地面スレスレで持ち上げた状態ですり足で動く。

周囲にも人が動いている為、顔は正面を向けている。

…非常に重い物を持ち上げているから顔は愉快に歪んでいる事だろう。


俺よりも幼い子や黒い人影が蟻の死骸を形を保ったまま運んでいる姿が見えて心が折れそうだ。

俺はこの世界じゃ重労働は向いていないのだろう。

疲れは知らないがあまりに周りと比べて非力だ。


俺は今、村の復興作業を手伝っている。

魔物の襲撃から数日が経った。


蔦の化け物は俺とベラを包み込んだまま、村に残っていた巨大蟻を絡め取っては縛り上げてバラバラにしていった。

蔦の化け物はどうやら地面から生えておらず、蠢いて自由に動けるようで怪物映画よろしく這い寄る蔦にベラの虐殺から辛うじて生き残った数少ない巨大蟻はなす術も無く殲滅されていった。

俺とベラは蔦に雁字搦めにされて身動きは出来ずにいた。


思えばあの時、蔦の化け物は俺達を巨大蟻から守っていたのだろうがそれを分からなかった俺は蔓の苗床にされると思い込み、恐怖で始終叫んでいた。


今の俺は致命傷を負っても失神モードに移行して散々暴れて傷一つ無い体に戻れる。

しかし、生きたまま苗床にされたら…

流石に生きたまま冬虫夏草のような状態になるのは怖かった。

だから狂ったように叫び続けた。

嫌だとか、離せとか。

ベラに煩そうに睨まれていたが構う余裕なんて無かった。

蟻の殲滅が終わると解放されて戸惑った。

今、思い出しても恥ずかしい。


蔦の化け物は村を囲む巨大な柵の倒壊した部分に留まると幾重にも生い茂っていき隙間を埋めた。

そして…驚くべき事に蔦の一部が人型に固まったかと思えば、俺の愛しの女性…によく似た女の子に変わった。


その子は愛しの女性と同じ仕草で俺達に笑いかけて村の中央へ歩いて行ったのを呆然と見ていた。

目覚めたベラに襲われたが俺は何も反応出来なかった。


いつの間にか、地下に避難していた村の子供達が巨大蟻の死骸の片付けを始めていた。

俺達を見つけたラーニャちゃんはわんわん泣きながら俺と俺の腕をガジガジ齧っていたベラを一緒に抱き締めてくれた。

どうやら避難所から引き摺り出された俺達を案じていてくれていたようだ。

それでようやく、俺は正気に戻れた。


可愛い女の子と密着出来ればどんなに錯乱していても正気に戻れるというものだ。

それも己の身を案じて泣いてくれているならば万病にも効くだろう。

うん、可愛いは正義。

とは言え思い出す度に顔が熱くなる。

年下に落ちつかされるなんて本当に不甲斐ない。

恥ずかしくて、隠れたくなるが村の復興作業をサボる訳にはいかない。


ベラがずっと側に居ただろって?

見た目は可愛いが無抵抗の相手を襲う奴に密着されて心が安まる訳がないだろ。


それからずっと村の子供総出で蟻の死骸の片付けをしている。

指揮は愛しの女性によく似た女の子が執っていた。

とりあえず村の片隅に蟻の死骸を集めるようだ。

村の子供達や黒い人影はそれに従って巨大蟻の死骸の片付けに奮闘している。

とは言え数が数だ。

黒い人影の助力で作業自体は進んでいるが、それでも村の一部の空間をようやく空けれた程度だ。

村の復興はまだまだ先の事だろう。


大人達の姿は見当たらなかった。

魔物の襲撃に対して迎え打って散ったのだろう。

子供達もそれが分かっている様子だが泣いている姿はあまり見かけない。

魔物が跋扈するこの世界では良くある事なのかもしれない。

時折、夜中に啜り泣く声が聞こえてやるせない気持ちになる。


黒い人影とずっと言葉を濁しているが、お察しの通り、俺の新たなハーレム候補、巨大蟻が変化した者達だ。

彼女達を一言で表すならば黒。


黒い髪に前髪は眉まで後ろは首辺りで切り揃えた見事なおかっぱ頭。

褐色のベラよりも黒く、チョコを溶かしたような肌色に黒目がちな目、キュッと締められた小さな口。


月明かりの無い闇夜であれば間違いなく溶け込めるだろう。


その肌色から彼女達の事をショコラと呼んでいる。

ショコラの見分けは難しい。

同じ背丈、同じ体型、同じ髪型、同じ表情。

それが数百人規模で居るのだ。

それと見た目は完全に女児という言葉が当てはまる。

若いというより幼いのだ。


想像してみてくれ。


裸で。

無表情で。

瞬きもせず。

身動きすらせず。

こちらをじっと凝視してくる。

数百人規模の小学生低学年頃の女児達が。


貴方のハーレムですと差し出されたら。


嬉しいか?

俺は恐怖しか感じないのだが?

もうラブコメから道を外れてパニックホラーなんだが?

気分としては未開地のトンデモ部族の風習に巻き込まれたようなものだ。

流石に愛に飢えた俺でも分別はある。


子供を(いと)おしいと見守るのと(あい)したいと目を付けるのは違うだろ。

前世の俺でも小学生に対してナンパはしてない…筈だ!

中校生ぐらいの子にも声をかけた事もあった俺が言うと説得力も無いかもしれないが。

少なくともランドセルを背負った女子児童にアタックはしていないぞ。


邪神様から俺の能力が繁殖可能な存在に変えるとは聞いていたがショコラ達に手を出すのはあまりにも駄目だろう。

初潮を迎えたかも怪しい見た目だし。


首元にはベラと同じく半透明の首輪とお互いを繋ぎ合う鎖が着いていた。

犯罪臭がベラの比じゃない。

俺に一番近い者には新たに右手から生えた鎖と繋がっている。

どうやら距離によって俺へと繋がっている鎖は移動するようで音もなくショコラ達の間で行き来している。


今は村の子共達が用意してくれた布を体に巻いて活動している。

ショコラ達はベラと違って大人しく従順だ。

俺の指示、というよりも村の復興作業の指揮を執っている女の子の指示に従って働いている。

集団で解体されていない蟻の死骸を持ち上げて運んでいくのだ。

うん、確かにショコラ達は元は蟻だったと納得できる光景である。

重さは相当ある筈なのに、見た目に対して怪力具合も蟻基準なのかもしれない。


村の子供達も最初は驚いていた様子だが黙々と働く彼女達を見て布を初めとして食料や寝床などを提供してくれた。

村の子供達には感謝しきれないよ。


ショコラ達のおかげで俺の能力も分かった事もある。


俺の能力で変えられた対象にはどうやら言語、或いは知識を与えられているようだ。

ショコラ達は日本語を単語だけとはいえ話せたのだ。

そしてこの世界の言語も単語だけで話せている様子だ。

既に俺の知らない単語も使って村の子供達とコミュニケーションが取れているから驚きだ。


唸ったり叫んだり攻撃しかしないベラとは大違いだ。

【ショコラ】


姿、変化。

女王、何処?

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