第十夜 出てきて、気付いて、守られた。
間違って未完成で投稿していました。
追記してます。
赤。
自由の効かない体で蟻を相手に無双するベラを追いかけて、ようやく出れた地上。
最初に見えたのは赤い輝き。
空には血走った目のような巨大な赤い円が浮かび、それは怪しく禍々しく輝いていた。
周囲はまるで赤い色眼鏡を掛けて覗く景色のように全てが赤に染まっていた。
村には大量の巨大蟻と数体の巨大な…アリクイだろうか。
それと無数の蔦が何かの触手の如く暴れている。
なるほど、ベラを引っ張り出したのは巨大アリクイの長い舌だったようだ。
…なんで蟻と食蟻獣が一緒に!?
食蟻獣なんて蟻の天敵だろ!?
もし口がきけたらそんな叫びを俺はあげていただろう。
今はベラを追跡する事しか叶わないが。
地下を掘った狭い空間から広い場所に出たせいか、単純に敵の数が多くなったせいかベラはそこまで離れていなかった。
それでも俺が追い付けないスピードで魔物を倒しているからベラは本当に凄い。
病み上がりの半病人があそこまで動けるカラクリは本当に謎だ。
謎は大体、邪神様関連とかだから別に良いけど。
揺れ動く視界で周囲の状況も分かってきた。
村を覆っていた巨大な木造の柵は何箇所か倒壊しており、そこから魔物が侵入してきたようだ。
村の面影は巨大な木造の柵と中央の建物しか見当たらず、それ以外は蟻の大群に覆われてしまっている。
今は動いているのは魔物とベラ、それと蔦しか見当たらない。
逃げてたり、戦っている村人は一人も見かけない。
もしかして…全滅してしまったのだろうか。
あぁ、愛しの女性も既に…
せっかく俺を愛してくれる人を見つけたというのになんて悲劇か!
全体が赤く見える為、上空からの輝きのせいなのか、鮮血のせいなのかは分からない。
しかしこの景色は絶望という言葉が頭に浮かぶ。
淡い希望と言えば人の死体が見当たらない事だろうか。
もしかしたら村の外で頑張っているかもしれない。
村にこれだけ侵入を許して避難所まで掘り当てられてたら希望もないかもしれないけど。
村に侵入した巨大蟻だけで何千何万と居るだろう。
それでは村の外には一体どれだけの数が…
うん、絶望的状況だ。
…今まで無視していたが、あの巨大な蔦はなんなんだ!?
植物とは思えない程、俊敏に動き巨大食蟻獣や巨大蟻に絡みついて覆い尽くしているがアレも魔物か?
村を襲う蟻や食蟻獣を狙って来た新手か?
ベラはますますペースをあげて手当たり次第に蟻や食蟻獣を倒していく。
いや、蟻や食蟻獣達もベラに殺到しているようなのだが返り討ちを通り過ぎて蹂躙してるしな。
象よりも大きい食蟻獣を殴り飛ばすとかどれだけ馬鹿力を発揮しているんだよ…
もうアレだ。
鬼神の如くって奴だな。
一騎当千ならぬ、一鬼当万の働きだ。
問題は段々と蔦の方へ近付いてるんだよなぁ…
植物って殴って倒せる相手か?
俺にはそう思えないんだが。
蔦は一定の範囲から動いていないようだし、根っこから抜けば或いは…
『巨大蟻VS巨大食蟻獣VS這い寄る蔦!』
…B級映画のタイトルか何かだろうか?
蟻と食蟻獣は仲間みたいだしベラも参戦しているから全く違う内容になるだろうけど。
ベラに伝えようにも俺は声を出せないし、指示を出したところでベラが言う事なんて聞かないだろうしな。
俺はただ静観するのみ。
勝手にベラを追って動き回る体じゃ静かなんて到底無理だろうけど。
いや、全身がバラバラになって邪神様の一部で繋がってるようなもんだから静観も何もないか。
今だって俺の手足や下顎が失神モードで邪神様の一部に貫かれて遠くに見えるし。
ん?
俺の手足が普通の肌色に見えるぞ?
もしかして色が戻ってきた?
上空に意識を向けると血走った目のような円が目に見えて縮んでいる。
ベラに殺到していった魔物も動きが鈍ってきた。
まるで目的を失って戸惑っているように見えたのだ。
ベラも相手が向かってこなくなると倒す時間がかかるのか俺との距離が僅かに縮まった。
…よく分からんがチャンスだ!
このまま縮まればベラに接触してようやく止まれる。
ベラを串刺しにして気絶させ、俺は元の体に戻る…あれ?
逆に不味くないか!?
俺だけじゃこんな多くの魔物を相手にできない。
せめてベラを串刺しにする前に魔物を全て片付けてくれていると助かるのだが。
俺の気持ちと裏腹にベラと俺との距離はますます縮まっていく。
巨大蟻はその場から動かなくなり、巨大食蟻獣はついにベラから逃げるように柵の倒壊した方へ去っていく。
…待ち構えていた蔦に捕まっていったのは見なかった事にしよう。
そしてついに、ベラの右の太腿に邪神様の一部が突き刺さった。
バランスを崩して転ぶベラに邪神様の一部は殺到して残酷に串刺しにしていく。
そんなスプラッター映画のワンシーンのような状況の横で俺の体はスルスルと元に戻っていく。
空の異常と失神モードが終わったのは殆ど同じだった。
しかし、まだ事態は終わっていなかった。
「勘弁してくれよ」
俺は思わずぼやいてしまった。
何故なら動きを止めていた巨大蟻がジリジリと俺達を囲み始めたのだ。
目は赤から黒に変わり落ち着いたのか積極的に襲ってくる様子はないが、ジリジリと近寄ってくるから逃すつもりもないらしい。
頼みの綱であるベラは服はボロボロになっていたが案の定、傷一つなく、そして…気絶していた。
どうやら食蟻獣に喰われた時も布団で簀巻きにされていたのが功を奏したのだろう。
「おい、起きろ!
今がお前の活躍する時だぞ!
お願いだから起きて!」
俺はベラを起こそうとゆすったがびくともしない。
俺は痛いのを覚悟してベラの上に覆いかぶさった。
俺は失神モードになれば傷も治るがベラは違うかもしれない。
せめて巨大蟻が俺の首でも折ってすぐに失神モードに成ればベラは無事に助かるかもしれない。
蟻の顎が俺に触れそうになったその時、それを阻むかのようの上から何かが俺達を包みこんだ。
よく見るとそれは植物…それも新手の魔物である筈の蔦だった。
蔦の隙間からは巨大蟻に絡んで身動きを封じ、締め上げてバラバラにしていく様子が見てとれた。
【???】
あぁ、良かった。
間に合いました
でも、なんでこんな所に出てきているのでしょう?