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これをハーレムとは認めねぇ!  作者: 未練マシマシ
一章・さぁ、ハーレムを作ろう
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第九夜 擦られて、弾かれて、考えた

全身を木材でガリガリと削られながらベラと繋がっていた半透明の鎖が実体を持ち俺に巻き込まれていく。


痛い。

全身が痛い。

左手が特に痛い。

痛くて痛くてしょうがない。


しかし幸か不幸か、その連続した痛みで俺は意識を失う事は無かった。


それどころか俺はこの生き地獄とも言いたくなる程の激痛に苛まされながらもとても冷静だった。

時間にして一瞬の出来事だったからか。

それとも痛みの許容限界を超えて分からなくなったのか。


ともかく、俺には余裕があった。


村での巻き込みで天井に突っ込んだ時の怪我が治りかけてたのに、なんて益体もない考えが脳裏に浮かんでくるぐらいには冷静だった。

現状を理解できてなかっただけかもしれないが。


俺は赤い光のなか、ガリガリと削られて…そして外に出た。


外には…大量の巨大な蟻。

大型犬程の巨大な目が赤く輝いた蟻。

それと…なんだろうか?

巨体のわりに細長い顔、反り返った巨大な爪、赤く輝く目、それから…


鎖は細長い顔の先端、口の中に入ってた。

ベラはアレに喰われていた。


呑気に傷の具合なんかを考えていた俺は頭が真っ白になった。

痛みすら忘れて、その細長い口先に入ってる鎖だけしか見えなくなった。


鎖はどんどん巻き込まれて俺は得体も知れない巨大な魔物の口へ吸い込まれていく。

まるでパスタでも啜るように見えている鎖は短くなっていき俺の手が例の魔物の口先に触れそうになった。


その時、細長い顔の中央が膨らみ…破裂した。


「があああっ!!」


「うごっ!?」


魔物の肉片と体液をぶち撒けながらベラは最初に出会った時よりも大きな獣じみた叫び声をあげながら出てきた。

魔物の顔を内から壊す為に暴れたのだろうが。


繰り出した拳が俺の顔に命中しやがった。

それもなかなか良い所に。


体の感覚が無くなっていく。

視界が妙な動きを始めている。

意識を失っちまったようだ。


そのおかげで周囲の状況が見えるようになった訳だが。

ここはどうやら地中らしい。

斜め上から眩しい程の光が差し込み、周囲は整備もされていない剥き出しの土。

ここは赤土だったか?

全体的に赤く見える。


俺達が避難していた場所は想像通り地下だったようだ。

蟻といえば巣穴は地下だし、あのよく分からない魔物も地面を掘るに適したような巨大な爪を持ってた。

穴を掘るぐらい簡単だろう。


自由の効かない視界にはベラが巨大な蟻の群れに飛びかかって暴れ回っているのが見える。

まるで蟻をハリボテでも壊しているかのようにベラは潰して千切って壊して…


本当に出会った当初みたいじゃないか。

ベラが相手を蹂躙して俺はそれを見ているだけ。


違いは…俺の体もベラを狙って動き回っている所か。

揺れ動く視界のなかで見えた実体化していた鎖。

巻き込みがまだ終わっていなかったのだ。

終わる前にベラに顔を殴り飛ばされたからな。

にしても…ベラ、強くないか?

邪神様と会うまでは栄養失調のせいか、動きも鈍く、力もいつもと比べたら弱々しかったのに。

もしや死を目前にして火事場の馬鹿力でも発揮しているのだろうか。


まぁ人間、追い込まれたらなんだってできるか。

俺だって若くしてホームレスになったがなんだかんだで死ぬまで長生きできたしな。

愛されたくて数多の女性に諦めずにアタックもしたしお金を拾い集めて縁結びの神社巡りもしたしな。


そりゃ命の危険に晒されればベラにだって魔物の群れなんて蹂躙…できるか!?

いや、普通に考えておかしいだろ!?

どこの世界に病み上がりの病人があんな獣じみた咆哮をあげながら大型犬程の巨大蟻に突っ込むんだ!?


…今度、邪神様に会ったらベラの事を尋ねよう。

元は魔物だし、ベラは普通の人間とは違うのだろう。

なんかこう、魔物特有の特殊な体の仕組みがあるのかもな。

それにしても強い。

そして素早い。

一体に対して一撃で確実に壊して地上を目指していくベラを眺めながら俺は自由の効かない体で追いかけていく。

うん、早い早い。

今の異形形態の俺ってなかなかの素早さだと思うがそれでも追いつくどころか先を行くベラから少しづつ離されてるし。


視界の端でボコボコと歪に膨れていく蟻の姿も見えた。

それも複数体だ。

ベラを追ってる間に黒い刃が刺さったのだろう。

それなら元の姿に戻ると思うのだが。

毎回、ベラに殺されそうになって黒い刃の化け物に変わってはベラを滅多刺しにして元に戻ってたのに。


それにしても蟻かぁ。

前世じゃ空腹に耐えかねて虫にも手を出したけど…

バレたらまた嫌悪の対象になっちまうのかな。

ベラに加えて複数の女性から逃げられない状況で罵詈雑言に暴力を振るわれたら心が折れてしまう。


蟻が膨らんで時間が経ったのにまだ黒い刃の化け物から元に戻らない。

まさか眷属にしたベラに刺さるまで追いかける気か!?

このままじゃ村の人に俺が人じゃないとバレちまう。

…慌てても体は勝手に動き回るんだが。


それにしても、いつまでも今の状態を黒い刃の化け物っていうのも邪神様に失礼かもしれないな。

無礼と言われて能力を取り上げられても嫌だし、この際だしなんか名前でも考えるか。


気絶したら刃の化け物になるから…よし、今日から失神モードと呼ぶか。

【ベラ】


テキヲ…コロス、スベテ…コロスゥ!!

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