プロローグ
ようこそ。
『これをハーレムとは認めねぇ!』を
読んでくれてありがとう。
感想があると作者も頑張れます。
雪が降る寒い日の夜。
男は月明かりを頼りに長い長い階段を息をきらしながらも黙々と登っていた。
男の血走った目線の先には雪が積もったあまり整備がされていないような色褪せた鳥居があった。
男が階段を登り終えると一面が雪化粧された中で今にも屋根に積もった雪に潰されてしまいそうなボロボロな神社があった。
男は紫色になったガサガサの唇を歪ませて神社へとそのまま近づいていく。
賽銭箱の前まで来るとあっちこっちが破れている厚手の上着のチャックを少し開けて首に掛けていた小袋を取り出した。
かじかんで上手く動かない手で小袋を開けると賽銭箱の上で逆さまにした。
小袋の中には小銭が入っていたらしく数枚の硬貨が賽銭箱へと入って行った。
男は小袋を仕舞うと深く息を吸い、腹の底から叫んだ。
「神様ぁ!!
縁結びのぉ!!
神様ぁ!!
どうかどうかぁ!!
俺の事がぁ!!
大好きな女の子とぉ!!
出会わせてくれぇ!!」
それから男は己の願望を隠さずに全て吐き出して禿げ上がった頭を下げた。
礼儀も作法も無い神頼みだった。
しかし、男は本気だった。
男は頭を上げるとその場で気安く話し始めた。
「神様、聞いてくれよ。
俺はいろんな縁結びの神社を巡ってるんだ。
落ちてる金を拾い集めてさ、全部神様に捧げてんだ。
アンタも俺に力を貸してくれ」
男はいわゆるホームレスだった。
モテたいと努力しては失敗する事を繰り返し、果てには光源氏計画と評せる考えで児童福祉施設に突撃し警察に捕まった前科があった。
前科が付いてからは雇ってくれる所も減ったうえ、雇われても主に女性関連で問題を起こして解雇された。
身内からは早々に見限られていた男は金を稼ぐあてを失い住んでいたアパートを追い出されてホームレスになった。
そこまで堕ちても男は女を追い求めた。
女性に話しかけて不審者として通報されても諦めず、痴漢や性犯罪者として冤罪を掛けられても男は諦めなかった。
しまいには都市伝説の怪異として若者に流行り、嘲笑や暴行などにも遭ったが男は辞めなかった。
警察の間ではちょっとした有名人になる程、世話になっても男は繰り返した。
男には何も無かったが時間だけはあった。
徒歩で移動を続けながら何度も女性に突撃しては玉砕する事を繰り返した。
しかし不清潔な見知らぬホームレスに惹かれるような女性とは出逢えず、男は彷徨い続けた。
そして辿り着いた結論が神頼みだった。
今まで縁が無かったから失敗したのだ。
ならば神様に縁を結んで貰えば良い。
そんな突拍子もない考えから実行に移したのが縁結びの神社巡りである。
女性に声を掛けつつお金を拾い集め、縁結びの神社を探し出しては先程のように願い続けた。
昼間は追い出されてしまう為、夜中のひと気の無い時間帯を狙って参拝する様になった。
まさに溺れる者は藁をも掴み、下手な鉄砲も数打ちゃ当たれ精神で男はやっていた。
男は賽銭箱の前でひとしきり話すと雪の降るなか、来た道を戻った。
「っ!?」
しかし、ここで男は不運に見舞われた。
月明かりがあるとは言え足元は暗く、雪が降り積もって滑りやすくなった階段。
男は鳥居を超えて降りた一段目で足を滑らせて長い階段を転げ落ちた。
翌日、中年のホームレスが階段の中段辺りで雪が積もった状態で発見された。
【???】
クケケ!
魂ゲットじゃ!!
早速、加工じゃー!