入ります
公園での出来事の次の日。
「広江さん、放課後体育館の裏へ来ていただけませんか?」
「へっ!ちょっえっ?ううん。でもまだ出会ってそんなにじゃない?」
「まあ、放課後だからよろしくね。」
広江はまだ告白とかされたことがない人であった。
だから、男、体育館裏、約束ときたら、もうそれはそれしか考え付かなかった。
その日の授業中、広江はずっとそわそわしている。
右斜め前の席にいる普通を、10秒に一度の頻度をチラ見していた。
「広江ここの部分を読んでくれ。」
広江は、授業なんてまともに受けられる状況ではなかった。
社会科の後藤先生が、何度も広江と呼ぶが全く気付かない。
「いた!」
後藤先生が、手に持っている教科書で広江の頭をポンと叩いた。
「広江どうしたいつもならすらっと答えるのに、何かあったのか?ほら同盟の意味の部分を読んで教科書のここ。」
「はい、付き合うことです!」
「まあニュアンスはそうだが、お前なんか告白される夢でも見たのか?」
「あはははは!」
周囲の生徒たちが、先生の小粋なジョークに爆笑する。
広江は、あまりの恥ずかしさにうつ伏した。
顔の表情は確認することが出来なかったが、耳がトマトのように赤みを帯びている。
放課後。
「風紀委員長、2年の男が鬼ごっこをして廊下を走っています。」
「ふーん」
「風紀委員長、自転車に羽をつけて空を飛ぼうとしています。」
「ふーん」
「風紀委員長、蛇口からミカンジュースが出てきています。しかも果汁1パーセントらしくてマジ許せないっす。」
「ふーん」
「やっぱり今日はおかしいって。いつもはおんどりゃーって小さなことにもカリカリするのに。」
「何かあったのよ。そーっとしといてあげましょう。」
「そうね」
約束の時間となった。
僕はその数十分前から、スタンバっていたが帝国に彼女の姿はない。
「今日はうまく伝えるんだ。」
体育館の隣には、僕たちの教室が存在する校舎がある。
その出入口から、黒髪ロングの凛としたたたずまいの少女が出てきた。
なんか足取りがおぼつかないようすで、千鳥足のようにゆらゆらしている。
「野人君、話って何かな」
評価の方をよろしくお願いいたします。