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爆弾魔

 なぜ誰も私が書いた曲を聴かないのだろう。


そう思った私は


「南千歳」という曲を書いた。

「函館」という曲を書こうとしてやめた。

「仙台」という曲を書いた。

「勝浦」という曲を書いた。

「館山」という曲を書いた。

「東京」という曲を書いた。

「熱海」という曲を書いた。

「名古屋」という曲を書いた。

「熊野市」という曲を書いた。

「新大阪」という曲を書いた。

「岡山」という曲を書いた。

「尾道」という曲を書いた。

「下関」という曲を書いた。

「小倉」という曲を書いた。

「鹿児島中央」という曲を書いた。

「霧島神宮」という曲を書いた。


 私はそれらの曲と同じ数の中古スマートフォンを買い


ジョン・ケージの4分33秒が10回流れた後に自分が書いた曲が1曲、1回流れるプレイリストを作成した。


「南千歳」と「仙台」が入ったスマートフォンはズボンのポケットに入れ、それ以外のスマートフォンをバックパックに入れて家を出て、仙台駅のコインロッカーにバックパックを入れて仙台空港から新千歳空港へ飛んだ。


新千歳空港に降り立ち、南千歳駅に向かい、ジョン・ケージの4分33秒と「南千歳」が入ったスマートフォンのプレイリストを音量最大で再生してコインロッカーに入れ、列車に乗った。


「南千歳」が流れた時には、間違いなく私は駅にいないだろう。


 再び仙台駅にやって来てコインロッカーへ向かい、私のバックパックと「仙台」が入ったスマートフォンを入れ替え、音量を最大にして再生、ロッカーの扉を閉じた。


同じやり方で勝浦、館山、東京、熱海、名古屋と周った。熊野市にはコインロッカーが無かったため、自動販売機の下に隠して再生した。当然、1日では周りきらないためネットカフェや安ホテルに泊まった。テレビや新聞はあまり見ないようにした。


 霧島神宮駅に到着し、バスで1時間ほどの祖母の家を訪れた。


夕方、テレビで東海道新幹線沿いや内房線、紀勢本線などで聴いたことのない曲が流れているというニュースを見た。


祖母は「誰だろうねこういうことするのは」と言っていたが、私は「さあね」と答えた。その時私は「出雲市」という曲を書いていた。


 仕事もないので祖母の年金を頼りに1ヶ月ほど居候をして、祖母に「帰る」と告げ駅へ向かった。


祖母は見送りに来てくれた。祖母が駅員から切符を買っている間に、私はこっそりコインロッカーに「霧島神宮」の入ったスマートフォンを入れて音量を最大にして再生した。


 鹿児島中央駅の新幹線改札の前で祖母と別れた。祖母が音楽テロの犯人が私だと知るのは、まだまだ先だろう。


出雲市、鳥取、京都、金沢…

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