013話「オガエ・スマイル」
前に見た写真と一致している。
オガエ・スマイル…。
何で前世の世界…地球にいるんだ!?
ナル「嫌ぁ!お姉ちゃん!」
必死に揺さぶるが、姉の返事は帰ってこない。
それを見たオガエは、狂った笑いをしながらナルに狙いを定めてビームを撃った。
打ち返すのが間に合わない!
そう、思った夢希は咄嗟にナルの手を引いた。
しかし、ビームがナルの左手を貫通し、それが宙に舞った。
痛みと悲鳴をあげる少女。
夢希「2人とも!彼女をお願い!」
そう言ってオガエを魔法で外に吹き飛ばし、人気のない野原に場所を移した。
起き上がったオガエは狂ったような笑いをしている。
夢希「アンタ達の狙いは私でしょ!何で関係ない彼女達を!?それに、どうやってこっちに!」
オガエはその問いに答えずにビームを連射してくる。
夢希は次々とかわしながら銃で応戦する。
ビームを少しかすったが、この程度では…。
夢希(!?これは!)
スカウターを確認すると、自分の体力が残り「1」になっていた。
夢希(ライフアンチか!)
マネー・リッチと戦っていた時に使ってきた「ライフアンチ」だ!予想をしていたが、まさかビームを混じえて使うとは…。
効果が切れるまでビームを避けないと。
夢希(…そうだ!)
オガエのビームが夢希に向けて放ち、土煙をあげた。…が何故かそのままそのビームがこっちに戻ってきてすぐにかわす。
土煙がはれると、夢希は青白い光に包まれていた。
夢希(スマブラに登場する某キツネ達が使う、飛び道具を跳ね返す「リフレクター」を貼ったわ。これでしばらくうかつに使ってこないわ。力をくれたフレアちゃん達に感謝しないと)
オガエはすぐに理解したのか、巨大な大剣2本を作り、それを夢希に向けて振り回した。
夢希(20年成長した大木位の大きさの大剣をしかも2本を軽々と扱うなんて!?私が言うのもなんだけど化け物なの!?)
狂った笑いをしながら攻撃をし、それを避けるのが精一杯だ。
夢希(そうだ!物理攻撃なら…!)
2つの剣が夢希に直撃した!…しかし。
夢希「カウンター!」
それをトリガーに、大きな回し蹴りをし、オガエを吹き飛ばした。
それもスマブラおなじみで、隙が大きいが成功すればノーダメージの上に反撃ができる。
夢希「いつまでも一方的のままではいけないわ!勇者達のみんな!今度は貴方達の力を借りるわ!」
そうすると、両手に、王者と天空の剣を出現した。
某国民的RPGゲームでおなじみの剣だ。
二刀流なら二刀流で勝負だ!
剣同士のぶつかり合いで火花が走る。
夢希(剣の腕は互角…。なら、一気に勝負をつける!)
夢希は後ろに飛び、両剣を鞘に納める。
勝負を捨てたのか?そう思ったオガエは一気に接近した。
夢希(二刀流…)
斬りかかる直後に夢希は素早くオガエを通り過ぎ、オガエはそのまま動かない。
夢希「双・居合斬り!」
鞘を再び納めたと同時にオガエのアーマーが切り刻まれ、それが崩れ落ちた。
振り返ると、産まれたままの、赤髪ツインテールの美少女が立っていた。
深紅の色をしたツリ目。
ラノベとかで良くある妹系キャラのような容貌。
…だが、夢希は剣を構えた。
前回の事があるからおそらく今回も…。
狂ったような笑いをしているオガエは、突然悲鳴を上げるような言葉を言いながら頭を抱えた。
オガエ「イヤっ!やめてもう笑いたくない!あんなので笑いたくない!あんなの面白くもない!あんな気持ち悪い物を、嫌いな物を、男同士何か見たくないっ!」
今まで一言も発しなかった言葉が、壊れたからくり人形のように何度も繰り返す。
しばらくして落ち着き、虚ろな目で夢希を見て近づいてくる。
またマネー同様に倒せば…。
64N54に持ち変えて構えた。
夢希が足のつま先を地面に蹴ると、オガエの両サイドに岩の壁が出現した。
夢希「私が何の対策もせずに同じ手を食らうと思った?」
そう言い終わると、頭と心臓に目掛けて発砲した。
オガエ「あ…あぁーーーーっ!」
彼女は大きく痙攣し、崩れ落ちながら倒れていき………
光に包まれると、1つの花になった。
夢希は銃をしまい、その花を採った。
夢希「『命の花・笑』…か」
目を横にやると、ビームを放った兵器と巨大な大剣2本があった。戦利品として貰っとこうか。
すると、手に取った瞬間、何かが頭の中に吸い込まれていく…。これは…この武器達の作り方か?素材や製作方法がまるで前から知ってたかのように記憶している。
すると、夢希のスマフォが鳴り、電話に出た。
キュリテ『よぉ魔王姫!2人目のLPを倒したみたいね?』
夢希「キュリテ!?何でアンタまでこの世界に!?」
キュリテ『オガエが作った転移装置を使ってこっちに来たのよ。嫌な予感がしてドローンで追跡したけど、予想以上のヤバい状況ね』
夢希「アンタと今話している場合じゃない!早く戻らないと…!」
キュリテ『まぁ慌てないでよ。助ける方法を教えてあげても良いんだけどね?』
夢希「…どうすれば?」
キュリテ『アンタの不老不死の薬を使ってあげなよ』
夢希「…っ!?それって…あの子も共犯者に…」
キュリテ『彼女にもこの世界の人間に対して強い憎しみがあるんじゃないの?ドローンがアンタ達を探している間にこの世界を見て回ったけど、聞いてた以上にこの世界の人間の心は醜いわね。殆どが自己保身に自己満足な連中がばかりだね。この状況になっているにも関わらず人間同士の戦争がね…。それに、あの子のお姉ちゃんを生き返らせる方法があるんじゃないの?』
夢希はしばらく考えてから口を開いた。
夢希「…わかった。…けど、それを決めるのはあの子よ」
キュリテ『それじゃ、また後でかけ直すわ。オガエの作った転移装置も調べないといけないし』
そう言って通話が終わり、奈々達にかけて説明する。
夢希「…それで、君の答えを聞かせて?今までの仕打ち以上の苦しみを受ける覚悟で代わりにお姉さんを生き返らせる為に私の共犯者になるか?それともこのままお姉さんの後を追う?」
ナルの答えは…。
ナル『勿論共犯者になる…。お姉ちゃんを生き返るなら私は…。それに…今までの生活の方が地獄なの…。だからお願い…』
夢希「…わかった。奈々ちゃん。私のバッグがそこに置いていっているから、例の不老不死の薬を注射させて。勿論左腕をくっ付けながらね」
電話を切ると、キュリテから再び連絡が来た。
キュリテ『話は済んだようね。こっちも少し調べたけど、どうやらこの転移装置はオガエ独自に開発した物のようね。どうやら個人的な理由で他のLPには話していなく、とある復讐の為に彼女の前世の世界に行くつもりが、間違って貴女の世界に来てしまったようね。どうやら貴女が世界中の男達を絶滅したと勘違いして逆恨みしたって所のようね』
夢希「男達を絶滅…もしかして…」
キュリテ『えぇ。貴女と同じ、男性恐怖症なのよ。その原因は勿論前世の人間達よ。彼女はとある平凡な家庭で生まれ何不自由なく育った。しかしそんな平凡ながらも幸せな人生は突然狂い始めた。小学校とやらの6年生のあくる日、学年でとある話題が始まった。私には理解出来ないから詳細は分からないけど、いわゆるホモ動画ってヤツを彼女に勧められたわ。彼女は興味無いと断ったが、何度もしつこく勧められてくる。ついには相手側が業を煮やし拉致監禁し、無理やり視聴させられた。それから中学や高校に上がってもそいつらは無理やり見せられ聞かせられ暴行をされノイローゼになりつつある。親教師にも相談しても皆クズの味方側だった。「証拠が無い」と一点張りで。今度は証拠を用意しつつも、「いい加減にしろ」と目の前で破られてしまう。そして大学になってから事件は起きた。いつもの通りに無理やりそれを見せられクズ達に「面白そうに笑え」と命令された。勿論彼女にとっては面白くなく何度もNOと答えた。そして暴行されながら何度も強要され、取り巻き達もそれに笑った。その時だった。彼女の笑の世界観が壊れてしまったのが。暴力や汚い言葉の嵐で彼女は狂ったように笑い出し、気づけばその部屋で立っているのは彼女だけだった。周りは人間だった物がいくつも散乱し、床も血の海だった。彼女は狂った笑いをしながら取り合ってくれなかった大人達を殺し回った。イジメを知りつつも黙認し続けた教師も、イジメを相談してもなお彼女自身に問題があると一点張りの親も、そんなクズ達の血を引く親戚やイジメグループの親達も。イジメ達を殺してから1ヶ月半で彼女は警察に逮捕された。彼女は取り調べでイジメが動機である事を語った。1文字も間違えずに。…しかし、世間では彼女は一方的な思い込みという身勝手な動機と隠蔽し、逮捕から数日後に死刑執行という異例をした。何故彼女にとって都合の悪い事に捏造したのかは、彼女は知るよしも無かった。ともあれ彼女は狂気な殺人鬼としてレッテルを貼られてしまった。永遠に…。転生してもなお彼女は笑いを止める事はできなかった。何せ、本当の笑いでは無いのだから』
夢希「…それが彼女の強さでもあり、弱点でもあるのか…」
キュリテ『…けど、それを解放してくれたのは貴女よ。貴女と戦った事で、彼女の心は解放されたのよ。…さて、そろそろお暇するけど、この転移装置とその設計図は貴女の城に送った方が良いかしら?』
夢希「頼むわ」
キュリテ『了解。その代わり、貴女が手に入れたオガエの武器達は全てが終わった後に譲ってくれない?狂った笑いが蓄積した武器が良いコレクションになるわ』
夢希「…考えとくわ」
キュリテ『その花は更に便利そうね。永遠に癒えぬ傷を簡単に治せそうなちからが込められているわね。腕をくっ付けるならそれを使った方が簡単と思うわ。…残りのLPは半分となったわね。言うまでも無いと思うけど彼女達も貴女を狙っているわ。気を付けてよね』
そう言って電話が切れてオガエが倒れてた辺りをしばらく見つめた後、踵を返してその場を後にした。
翌日の朝
夢希達は複数の船の上で遠くにあるズレイブレッグの島が爆発で吹き飛んでいるのを眺めていた。
これであのクズな王国は地図通り、消えてしまった。歴史も文化も全て海の藻屑に…。
新たな決意を固めて、夢希達はその場を後にした。
オガエ・スマイルの命の花の名前の間違いとその説明が無かったのでR-18版にも修正します