012話「ここにいるはずがない」
1週間後
魔王姫達の地球の侵攻は順調で、1国につき平均約5%程の人間が死亡。
ただでさえ世界中の人間達が女になっていることを混乱しているのに、魔王姫達の攻撃によって上手く避難などができていない。
最も、クズ達の結束力は0に等しく、自分だけ助かろうと、親族や恋人等の親しい相手を押しのけたり見捨てたり囮にしたりして逃げようとしていた。
結局我が身が1番可愛いに過ぎなかった。
各現地警察も対応しているが、殆どが殉職か撤退しかなかった。
警視庁でも、この一件を『テロ』として捜査している。
夜桜志穂は、先日の動画の一件で一方的に怒鳴られていた。
『何で●●●を名乗る人間から犯行予告を黙っていた』と。
勿論、全く聞き入れてくれなかった志穂は、ただ拳を握るだけしか無かった。
しかし、なせ『名乗る』と表現しているのだろうか?
あの時の彼女が言った『誰かさん』とは誰の事だろうか?
上司達も何か隠しているような気がする…。
公にできないような何かが…。
あの日以来、彼女は(少なくとも日本国内では)姿を見せない。
動機や目的等は今の所不明だが、自分達の部下達にテロを仕掛けている。
一刻もこの事件を解決しなければ…。
テレビでは、連日のように夢希に関する話題ばかりだ。
お昼のバラエティ番組でも、その話をしている。
各タレントの多くは女になってしまっているので、国に名札を付けた紐をぶら下げているを
すると、番組内のスタッフが夢希から電話がかかってきたと言ってきた。
タレント達は話し合ってテロ行為をやめさせて自首するようにするらしい。
熟練タレントが電話に出た。
夢希『もしもし?テレビを通して話を…』
タレント「おい●●●!お前のやっている事はテロなんだぞ!」
夢希『人が話している時に…』
タレント「いいか!お前はクズな犯罪者なんだぞ!わかっているのか!?」
どう見ても話し合っているのではなく一方的に怒鳴りつけているしか見えない。…しかし、出演者や志穂以外の視聴者には「普通」にしか見えてない。
タレント「いいか?何で全人類が全員女にしたかは知らないけど、お前はすぐに警察に捕まり死刑になる!罪もない人間達を無意味に殺しまわり…がぺっ!」
電話の途中にタレントの頭部に銃弾が貫通し、そのまま倒れた。
スタジオは悲鳴を上げ、そのまま「しばらくお待ちください」の画面になった。
ただ見てるだけの自分が恨めしい…。
一刻も早く捕まえなければ…。
………んで……………くれな…………。
志穂(…?)
な………でわた………ないの………。
志穂(何?この記憶?)
誰かの声がしたような気がする…?
随分前に聞いたような…?
しかもその声の主に最近会ったような…?
記憶の中の人物がモザイクになっている。
思い出しそうで思い出せない…。
同時刻
空間魔法を使って、電話の相手のタレントを射殺した。
携帯テレビの画面は「しばらくお待ちください」になっている。
夢希「自分達から話し合うって言ってたくせに、案の定これか。…予想通り対話は不可ね」
夢希達一行は、高速ボートに乗ってとある目的地に行くため海の上を走っていた。
蓮花「そういえば聞いてなかったけど、アタシ達どこへ向かっているの?」
夢希「…人種差別と奴隷の国『ズレイブレッグ』」
奈々「何それ?聞いた事無い国だけど…?」
夢希「私も最近知らなかったけど、今言った通り人種差別と奴隷主義の国よ。地図には載ってないけど、日本とパラオの中間の位置にあるわ」
蓮花「聞いただけでヤバそうな国ね」
夢希「とりあえず順を追って説明するわ」
ズレイブレッグは、古くても日本がまだ戦国時代の頃からあった国で、主に世界中から多くのドレイが集まり売買されているろくでもない国よ。
特に黒人女性のドレイは酷い扱いで、自分達は裕福な生活をしているのにドレイたちはペット以下の扱い。
生まれてから強調されて中には言葉も上手く発せない人もいたらしいわ。
病気等で使えなくなった途端にすぐに廃棄され、生まれた証すら残してくれない。
21世紀になっても変わらず、それどころか政治家や芸能人等の有名人も裏でその国と繋がっているらしいわ。
奈々「何でそんな酷いことを…」
夢希「報告によると、各国にズレイブレッグの手先があちこちにいて、連中で言う上級国民以外の人間にはこの事を漏らさないようにしているらしいわ」
蓮花「世間には知られていないドレイが日本にもいるの?」
夢希「そういう事。行方不明の殆どがズレイブレッグに流れて行くわ。年間で(日本円にして)1兆前後らしいわ」
奈々「そんな所に行って大丈夫なの?」
夢希「少なくとも厳重なセキュリティや公表されてない武器があるらしいわ…まぁ、私達の敵では無いけどね」
30分後
ズレイブレッグに到着し、現地にいた看守達と合流した。
目立たないようにフードを被り街の中を偵察していた。
21世紀とは思えないほどの光景で、まるで中世ヨーロッパとしか思えなかった。
住人達は首に鎖で繋がれた少女達をペットのように扱い、道の隅には瀕死の状態の少女達が倒れている。
この国ではドレイを殺してと罪には問われず、逆に保証として購入した金額の半分が戻ってくる狂った法律がある。
ドレイは人間所か生き物すら扱ってもらえず、死亡した場合はゴミと共に廃棄場行きである。
蓮花「どうするのよこんな国?」
夢希「勿論滅ぼすわ。ドレイ達も救ってね」
蓮花「どうやって」
夢希「勿論元凶を叩くわ」
蓮花「あそこに見える城を?」
夢希はスマフォの時計を確認した。
夢希「…そろそろね」
直後に街のあちこちで爆発が起きた。
奈々「な、何!?」
夢希「看守達が国中に暴れ回ってもらっているの。ドレイ達の解放にクズ達を殺す。逃げ出さないように船やヘリに車等はすぐに破壊してね。国と言っても離島だから逃げるに逃げられないからね」
蓮花「相変わらずエグイわね…」
夢希「褒め言葉として受け取るわ」
そう言うと夢希は右腕を横に伸ばした。
夢希(…フレアちゃん…今こそ貴女の力を使うわ…)
夢希の手から炎が満ち溢れ、炎の剣を取り出した。
ゲームで彼女が使うところをよく見るのだが、実際に手に取って使うのは当然無いので、今までそれらを始めとした武器を密かに練習し、今日初めて実践に使うのだ。
夢希「皆…行くわよ!」
城に殴り込み、城の中の人間達を次々と殺し回った。
駆けつけてきた兵隊達もすぐに殺した。
中にはドレイ達を盾にしようとしているやつも。
勿論ドレイに傷つけずに殺したが。
この国を墜すのは王様を殺すのが早い。
そうすれば国の機能が落ちるのは時間の問題だ。
王様の部屋にたどり着き、扉を蹴飛ばした。
案の定おり、ドレイ2人を盾にしている。
夢希は銃を構えた。
夢希「…言葉通じないと思うけど、そんな事をしても無駄よ。お前はもうすぐ死ぬ。くだらない人種差別とドレイ制度と共にね」
何か言っているが、当然ながらこの国の言葉は分からないので、2発発砲した。
人質を避けるように弾が曲がり、横から頭と心臓を貫通し死亡。
人質2人は逃げるように夢希に駆け寄った。
人質「ア…アリガトウ…ゴザイマス…」
夢希(!?日本語?)
カタコトだが、日本語が通じる。
2人共肌が黒い。黒人と話すのは初めてだ。
顔がかなり似ている。双子だろうか?
夢希「奈々ちゃんと蓮花はこの部屋で売買の資料とか探して。私はこの子達と話をするから」
そう言って膝まづいて双子の目線の高さに合わせた。年齢的に14歳前後だろうか?
夢希「私の名前は夢希・緑奈。悪い人から貴女達を助ける仕事をしているのよ」
もう1人の人質「オネェチャン…イイヒト?」
夢希「そう!良い人!お名前は」
※ここから先は日本語で分かりやすく変換します
人質「ナル…私の名前は『ナル』」
もう1人の人質「私はナルの姉の『ミア』です…」
夢希「ミアちゃんにナルちゃんか。どこで日本語を?」
…………話を何度も聞き返しながら整理すると、物心がついた時からこの城のドレイ用の牢屋に入れられているらしく、親の顔も知らないらしい。
名前は色んな国から連れてこられた年上のドレイ達に付けられ、言葉も教えてもらったらしい。
他のドレイ達は色んな人に買われてしまうが、自分達はこの国の王に気に入られて手元に入れていられたらしい。
夢希(命の危機になった途端に掌を返すように使い捨ての盾にするなんて…相変わらず酷い性格ね…)
すると、奈々と蓮花が来た。
奈々「ドレイの売買とかの書類を見つけたよ」
蓮花「この王様を含めた人間全員殲滅したわ。魂全部看守達に渡したから」
書類を受け取ると、それを見通した。
顧客に日本人の名前もあり、どれもこれも有名な芸能人や著名人等の名前もあった。どいつもこいつもここと繋がっていたとは…。
ある所で手を止めて丁寧に読んだ。
夢希(…ここで日本人も高値で売買されると聞いてたけど…やっと見つけた…私を産んだ実の父親の情報を…!)
全ての書類をしまった後、再びミアとナルに話しかけた。
夢希「2人共、ここから出たくない?大丈夫。生活とかは私が保証する。こんな嫌な思いの生活はヤダでしょ」
2人は顔を見合わせた後頷いた。
夢希「良し!決まったね!」
彼女達を含めたドレイ達の暮らしを確保する為に一旦零帝国に連れて帰らないと。
連れて行こうと立とうとしたら…その時だった。
ミアの背後からビームが飛んできて、彼女の腹部を貫いた。
一瞬の出来事でスローモーションで見ているようだ。
ミアが倒れ、妹が姉の名を叫びながら姉を揺する。
奈々「み…ミアちゃん!?」
蓮花「夢希!確か前にクズ達に回復魔法をかけていた事があったよな!回復魔法を!」
だが、夢希は首を横に振った。
夢希「…出来ない…。私の回復魔法は…敵にしか効かないのだから…」
蓮花「な、何だって!?どうして…」
言い終わる前に、ビームが放たれた方から壁が破壊された。
そこに居たのは…異様な形の無数の銃火器。素肌も全く露出してない漆黒の鎧。その頭部の後ろから唯一無二露出している赤髪のツインテール…。
何故ここにいるんだ!?
第7249の国「スマイル王国」の王女「オガエ・スマイル」
彼女は狂った笑いをしながらこちらを見ていた。
架空の国を出したのは、現実の国で第2のLPとの戦闘の舞台にしたら国際問題になりそうなので、この世界の人間の醜さと外道さを強調する為に登場しました。また、作中では語ってませんが、初登場した双子の性別は元々女の子です。